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<概要>
 原子力産業は総合的な長期間の大きな投資を必要とする分野であり、また放射性廃棄物処分の長期の監視、防災と事故時の影響の低減、材料の再利用、資源の有効利用等の観点から、規制情報等の密接な交換・検討が望ましい。
 米国との原子力規制情報交換の取決めは1974年に結ばれた。その後、双方の機構改革を経て、2006年に日本は文部科学省科学技術・学術政策局及び経済産業省原子力安全・保安院と、米国は原子力規制委員会(NRC)の間の取決めとなった。仏国との取決めは1979年に結ばれ、2006年には文部科学省科学技術・学術政策局及び経済産業省原子力安全・保安院と、フランス原子力安全・放射線防護局(DGSNR)の間の取決めになった。(注:原子力安全・保安院は2012年9月18日に廃止され、原子力規制委員会の事務局として2012年9月19日に発足した原子力規制庁がその役割を継承している。)
<更新年月>
2009年02月   

<本文>
1.目的
 エネルギー資源の多様化、二酸化炭素の低減、放射線利用の拡大等から、原子力利用は国際的に広がっている。原子力産業は総合的な長期間の大きな投資を必要とする分野であり、利用技術、放射線防護・安全技術、経済性・福祉等の効果的な向上の観点から科学技術情報の交換は不可欠であり、また、放射性廃棄物処分の長期の監視、防災と事故時の影響の低減、材料の再利用、資源の有効利用等の観点から、規制情報の密接な交換・検討は原子力利用に好ましい効果が期待できる。
 日本は、表1に示す国々と原子力の規制情報交換等の取決めを結び、経験・知見を公開し相互に助言と意見交換を図り、より合理的で効果的な規制の検討に反映している。
2.日米規制情報の交換
(1)経緯
 米国との取決めは、1974年に当時の科学技術庁原子力局及び通産省資源エネルギー庁と、米国原子力委員会の間で結ばれた。その後、取決めは延長を繰り返し、その間に双方に機構改革があり、表1に示すように2006年には日本の文部科学省科学技術・学術政策局及び経済産業省原子力安全・保安院と、米国の原子力規制委員会(NRC)の間の取決めとなった。(注:原子力安全・保安院は2012年9月18日に廃止され、原子力規制委員会の事務局として2012年9月19日に発足した原子力規制庁がその役割を継承している。)
(2)活動
 取決めに基づき、日米間で原子力施設の許認可、原子力施設の事故・故障等の情報交換会議が開催されている。表2は、情報交換の主な項目を年度別に示す。会議は隔年開催が恒例であるが、必要に応じて適宜開催されている。
 1977年の第1回会議では軽水炉の配管のひび割れ等について意見交換があった。
 1986年のチェルノブイル事故までは、軽水炉の設計、新型炉の安全評価、耐震性、安全評価の方法等が主題であった。事故後の4年間は、チェルノブイル事故の教訓を始として、重大事故(シビアアクシデント)、緊急時対策等が意見交換の主題であった。さらに、保守管理(メインテナンス)、運転員などの管理に関するヒューマンファクター、教育訓練等が主題になった。
 それ以降2000年頃までは、原子力発電技術の成熟により、高燃焼度燃料原子炉の経年劣化、原子炉の廃止措置等が主題である。さらに、改良炉や新型炉の規制についても意見交換されている。コンピュータに組み込まれた時計の作動に関する2000年問題(Y2K)も課題になっている。
3.日仏規制情報の交換
(1)経緯
 取決めは、1979年に当時の科学技術庁原子力局及び通産省資源エネルギー庁と、仏国原子力施設安全本部との間で結ばれた。その後、取決めは延長を繰り返し、その間に双方に機構改革があり、表1に示すように、2006年では日本の文部科学省科学技術・学術政策局及び経済産業省原子力安全・保安院と、フランス原子力安全・放射線防護局(DGSNR)の間の取決めとなった。
(2)活動
 1980年の第1回の会議では、高速増殖炉の安全性、米国TMI事故の教訓等について意見交換があった。会議は隔年開会が恒例であるが、必要に応じて分野別に適宜開催されている。(表3
 1986年のチェルノブイル事故以降の4年間は、防災対策、放射性廃棄物、緊急時対策等の課題が話し合われた。1995年の「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故の後では、高速炉について意見交換があった。
 規制全般のバランスと原子力防災は一貫した課題になっている。
(前回更新:2003年3月)
<図/表>
表1 二国間原子力規制情報交換等の枠組み(2009年)
表1  二国間原子力規制情報交換等の枠組み(2009年)
表2 日米規制情報交換の活動
表2  日米規制情報交換の活動
表3 日仏規制情報交換の活動
表3  日仏規制情報交換の活動

<関連タイトル>
日米原子力協定 (13-04-02-01)
日仏原子力協定 (13-04-02-03)
日露原子力協定 (13-04-02-07)
原子力規制情報交換等の日米、日仏間の取決め (13-04-02-09)
原子力規制情報交換等の日独、日・スウェーデン、日韓間の取決め (13-04-02-10)
日英原子力協定(1998年) (13-04-02-12)
エネルギー環境分野における日中技術協力の動向 (13-04-02-13)

<参考文献>
(1)原子力安全・保安院、海外規制機関との交流
(2)原子力安全委員会、原子力安全白書、昭和56−平成18年、二国間協力
(3)原子力安全委員会、原子力安全白書、平成9年、第2編 第5章、第2節 二国間協力
(4)原子力安全委員会、原子力安全白書、平成13年、第3編 第7章 第3節 二国間協力
(5)原子力安全委員会、原子力安全白書 平成18年、第4編、第7章、第2節 二国間による協力
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