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<概要>
 日仏原子力協定は、旧協定が1972年に締結されていたが、その後、核不拡散を中心にして原子力平和利用協力の規制が強化されたことを背景に、1988年から6回にわたる協定改正交渉を経て、新協定が1990年7月に発効した。
 改正された主な内容としては、(1) 平和的非爆発目的の明記、(2) 機微な技術の規定導入、(3) IAEA保障措置の適用、(4) 核物質防護規定の導入などがある。
 また本協定の下で実際に行われている協力としては、核燃料の供給、仏コジェマ社に対する使用済燃料の再処理委託、東海村と六ヶ所村の再処理工場の建設、運用等の他、今後は、再処理委託に伴う回収プルトニウムの返還等でも協力が予定されている。
<更新年月>
2003年03月   

<本文>
1.日仏協定の改正に至る経緯
 わが国は、1972年、フランスとの間に原子力協定を締結し、この協定(旧協定)の下で、両国間の原子力平和的利用分野における協力が行われてきた。しかし、時代の推移とともに原子力をめぐる国際関係に新しい状況が生じた。
 すなわち、わが国が核兵器の不拡散に関する条約を締結し(1976年)、同条約上の義務にもとづき国際原子力機関(IAEA)との間で、フルスコープ保障措置協定を締結したこと(1977年)、フランスが欧州原子力共同体(EURATOM)およびIAEAとのあいだで、保障措置協定を締結したこと(1981年)、さらに、1974年のインドの核実験を契機にして、各国の核不拡散政策が強化され、また、原子力資材等の移転に関する供給国グループの指針(いわゆるロンドン・ガイドライン)が作成される(1977年、公表は1978年)等の原子力平和的利用協力の規制が強化されたことなどである。
 これらの事情変更を日仏間の原子力協定にも反映させるため、1988年7月から1990年1月まで6回にわたり協定改正交渉が行われ、1990年4月にパリにおいて日仏原子力協定改定議定書が署名され、両国の国内手続終了後(わが国では6月に国会で承認された)、同年7月、発効した。
2.意義
 協定締結後の核拡散防止のための国際的な動きを旧協定に反映させることの必要性が認識されていたこと、また、旧協定が日仏間の原子力平和利用協力関係の実態にも十分には沿わないものとなっていたことを踏まえ、改正を行ったものである。
 改正議定書の締結は、日仏間の原子力平和利用協力のための法的枠組を一層整備することにより、この分野において我が国にとって重要な長期的に安定したフランスとの協力を確保するものである。また、今後の我が国の原子力平和利用の一層の促進及び核拡散防止への我が国の貢献に寄与するものと考えられる。
3.改正の内容
 改正の主要な内容は次のとおりである。また、日仏原子力協定の規定事項と内容を 表1−1 および 表1−2 に示す。
(1)協定に基づいて移転された核物質等は平和的非爆発目的にのみ使用される。
(2)協定の適用を受ける核物質には、適切な防護の措置がとられる。
(3)協定の適用を受ける核物質には、日仏それぞれとIAEAの間において締結された協定に基づく保障措置が適用される。
(4)核物質等について協定の適用対象とするための要件としての事前通告制を導入する。
(5)両締約国政府は、協定の解釈又は適用から生ずる紛争で交渉等により解決されないものを仲裁手続に付託することができる。
(6)機微な技術に関する規定(平和的非爆発目的利用、管轄外移転規制、機微な技術に基づく設備又は施設を用いて行う処理によって得られた核物質に対する保障措置の適用及び核物質防護措置の適用等)を導入する
<図/表>
表1−1 日仏原子力協定での規定事項(2000年5月)(1/2)
表1−1  日仏原子力協定での規定事項(2000年5月)(1/2)
表1−2 日仏原子力協定での規定事項(2000年5月)(2/2)
表1−2  日仏原子力協定での規定事項(2000年5月)(2/2)

<関連タイトル>
日本の原子力に関する国際協力 (13-03-03-01)

<参考文献>
(1) (社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑 平成4年版(1992年11月)
(2) 外務省原子力課(監修):原子力国際条約集、(社)日本原子力産業会議(1993年6月10日)、p.3−5
(3) 科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック1994年版、(社)日本原子力産業会議(1994年3月)
(4) 原子力委員会(編):原子力白書 平成5年版、大蔵省印刷局(1993年12月)
(5) 原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成5年版、大蔵省印刷局(1994年3月)
(6) (社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力平和利用に関する二国間協力、第11章国際協力の推進、原子力ポケットブック2002年版(2002年11月8日)、p.382−387
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