<大項目> 国際協力・原子力関連機関
<中項目> 国際条約・協定等
<小項目> 二国間協定・取決め
<タイトル>
日露原子力協定 (13-04-02-07)

<概要>
 日ソ両政府間の原子力平和利用の協力は、1973年に署名された科学技術協力協定の下で行われてきたが、その後、地理的に近接する両国の間でより高い水準の安全性確保の面でより一層の協力を推進する必要があるという共通認識の下、1991年4月に日ソ間で原子力平和利用の協力協定を締結するに至っている。
しかし本協定は行政協定であって、核物質、原子力関連資機材、機微な技術の移転等は、この協定の下での協力の対象とはされていない。したがってこの協定の下での協力内容としては、例えば放射性同位元素および放射線の分野での研究、応用といったことが見込まれる。旧ソ連諸国の原子力安全確保や核兵器解体の援助、高速増殖炉研究開発に関する協力などスタートしているものもあり、2003年1月、両国は今後も定期的に日露原子力協議を開催することを確認した。
 なお1991年12月にソ連邦が消滅したのに伴い、本協定はソ連邦を継承したロシアが引き継いでいる。
<更新年月>
2003年03月   

<本文>
1.協定締結に至る経緯
(1)原子力の平和的利用の分野における日ソ両政府間の協力は、従来、1973年(昭和48年)10月に署名された科学技術協力協定の下で行われてきたが、近年両国において原子力発電所の安全性に対する関心が高まってきたとの事情もあり、地理的に近接した両国の間で、特に原子力活動における高い水準の安全性の確保に関する協力を推進することが重要であることについて、1990年(平成2年)9月の日ソ外相協議において認識の一致をみた。
(2)上記認識の一致を踏まえ、日ソ両政府間で協議を行った結果、合意をみるに至ったので、1991年(平成3年)4月ゴルバチョフ・ソ連大統領の訪日を機に、日露原子力協定(「日ソ原子力協定」ともいう。正式には、「原子力の平和的利用の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定」という。)について、日本側中山外務大臣とソ連側ベススメルトヌィフ外務大臣との間で署名を行うに至った。
2.協定の概要
「原子力の平和的利用の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定」(日露原子力協定または日ソ原子力協定)の全文を表1に示す。
日ソ原子力協定の概要は次のとおりである。
(1)両政府は、それぞれの国の法令および予算の範囲内で、かつ、関係する国際約束にしたがい、原子力発電所の活動における安全性等原子力の平和的利用に関する一定の分野における相互主義に基づき発展させるよう努力する。
(2)前記の協力は、両国の政府、政府の権限のある当局または公の研究機関の間で、情報の交換、専門家の交流等一定の方法により行われる。
(3)両政府は、両国の各種団体および機関ならびに個人の間の前記の分野における協力をできる限り促進する。
(4)両政府は、協力の効果的な実施のため、外交上の経路を通じて随時協議し、また、協力計画について合意する。
(5)両政府は、原則として毎年交互に日本国およびソ連邦において協議を行う。
(6)この協定は、署名の日に効力を生じ、二年間効力を有し、その後も、いずれか一方の政府がこの協定を終了させる意思を他方の政府に通告した日から6か月間効力を有する。
 なお、ここで注意を要する点は、核物質、原子力関連資機材、機微な技術の移転は、行政取極であるこの協定の協力の対象としては想定されていないことである。
3.協定の意義
 ソ連はわが国に地理的に近接していることもあり、同国の原子力発電所の安全性が確保されることは、わが国にとっても極めて重要である。この協定の締結により、原子力発電所の活動における安全性等の分野で情報の交換、専門家の交流等の協力を行う枠組みが整備されることは、両国の原子力活動における高い水準の安全性の確保に資するものであり、両国政府にとり有益なものと考えられる。
 また、この協定の下では、放射性同位元素および放射線の研究および応用等の分野での協力も予定され、原子力の平和的利用の分野における両国間の協力を推進していく上で、この協定が重要な貢献をなすものと考えられる。
4.日露原子力協議
 日ソ原子力協定に基づき、1991年(平成3年)10月、第1回日ソ定期協議がモスクワで開催され、両国の原子力発電の現状、IAEA等の多国間問題など、幅広く意見交換を行った。
 その際、わが国としては、旧ソ連地域の原子力発電所における高い水準の安全性を確保するため、この分野において研修生を受け入れる等の協力案を提示し、その実施に関し合意をみた。
 その後2003年(平成15年)2月までに、両国の原子力協議は以下のとおり3回開催された。
 第2回日露原子力協議(1992年(平成4年)11月)、場所:東京
 第3回日露原子力協議(1998年(平成10年)3月)、場所:東京
 第4回日露原子力協議(2001年(平成13年)3月)、場所:モスクワ
1998年の第3回協議で、旧ソ連諸国の原子力安全確保や核兵器解体の援助のため、日本が117億円を支出することを決めた。また、日本から両国の高速増殖炉研究開発に関する具体的協力の可能性について、両国政策担当者を含めて検討を行う会合の開催の提案を行った。これを受けて、1998年10月に第1回高速増殖炉に関する日露専門家会合がロシア原子力省(モスクワ)において開催した。本会合において、日本から協力テーマの提案を行い、両国はこの協議が今後の高速増殖炉分野の協力を強化するために有意義な会合であったことを評価し、今後とも協議を継続し協力内容の具体化に向けて作業することに合意した。
 平成15年(2003年)1月10日、モスクワにおいて日露首脳会談が行われた。このときに作成された「日露行動計画」で、原子力に関し両国は今後も定期的に日露原子力協議を開催することを確認した。
5.ソ連邦の消滅と本協定との関係
 1991年(平成3年)12月、ソ連邦が消滅したのにともない、ソ連邦と継続性を有する同一の国家であるロシア連邦が、この協定上の義務を引き継いでいる。
<図/表>
表1 日露原子力協定の全文

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<関連タイトル>
旧ソ連諸国の核兵器廃棄への西側支援 (14-06-01-14)
旧ソ連の科学者・技術者の流出に係る国際科学技術センター(ISTC)の協力・支援 (14-06-01-15)

<参考文献>
(1)(社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑平成4年版(1992年11月2日)p.222−223
(2)外務省原子力課(監修):原子力国際条約集、(社)日本原子力産業会議(1993年6月10日)p.23−24,p.405−407
(3)科学技術庁(監修):平成12年版科学技術六法、(株)大成出版社(2000年3月31日)
p.1837
(4)原子力安全委員会(編):原子力安全白書平成5年版,大蔵省印刷局(1994年3月31日)p.123
(5)(社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力ポケットブック2002年版(2002年11月8日)p.388
(6)原子力委員会(編集):原子力白書平成10年版、大蔵省印刷局(1998年8月31日)p.304−305
(7)原子力委員会:高速増殖炉関連技術に関する国際協力の現状、長計第三分科会事務局(平成12年1月17日)
(8)首相官邸:日露行動計画、http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2003/01/10keikaku.html
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