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<概要>
 「原子力政策大綱」ではアジア地域との協力について、「相手国の自主性を重んじ、パートナーシップに基づくことを基本として、例えばアジア原子力協力フォーラム(FNCA)、国際原子力機関(IAEA)のアジア原子力地域協力協定(RCA)といった多国間の枠組みや、二国間及び国際機関を通じた枠組みを目的に応じて効果的に利用する」としている。この考えの下に、アジア原子力協力フォーラム(FNCA)で、日本は(1)研究炉利用、(2)放射線の農業利用、(3)医学利用、(4)工業利用、(5)放射線・廃棄物管理(6)原子力広報、(7)原子力安全文化、(8)人材養成の協力を進めている。また国際原子力機関(IAEA)のアジア原子力地域協力協定(RCA)では、医療分野のプロジェクトで主導的な役割を果たし、原子力の安全利用のため「アジア原子力安全ネットワーク(ANSN)」の構築を進めている。さらに、韓国、中国、インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシアとの間に二国間協力がある。
<更新年月>
2009年02月   

<本文>
1.アジア地域協力の考え方
 1955年に原子力基本法が制定され、1956年に原子力委員会が発足した。それ以来、原子力委員会は日本の原子力利用と研究・開発の目的、方向および方法を示す基本計画、「原子力開発利用長期計画」を定め、ほぼ5年おきに改定してきた。2005年の改定では、「原子力政策大綱」と名称を改めた。
 「原子力政策大綱」では国際協力について、「平和利用、核不拡散の担保、安全の確保、核セキュリティの担保を求めることを大前提としつつ、二国間や多国間、国際機関を通じての情報や経験の交換等の国際協力を推進する」としている。
 さらにアジア地域との協力において、「相手国の自主性を重んじ、パートナーシップに基づくことを基本として、例えばアジア原子力協力フォーラム(FNCA)、国際原子力機関(IAEA)のアジア原子力地域協力協定(RCA)といった多国間の枠組みや、二国間及び国際機関を通じた枠組みを目的に応じて効果的に利用する」としている。
2.アジア原子力協力フォーラム(FNCA)
 近隣アジア諸国との原子力分野の協力を効率的、効果的に推進するために、1990年に「アジア地域原子力協力国際会議」が開催された。その後同会議は開催を重ね1999年に、より効果的で組織的な協力のため「アジア原子力協力フォーラム(FNCA)」に移行した。参加国は、日本、オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの10カ国である。
 FNCAは、(1)研究炉利用、(2)放射線の農業利用、(3)医学利用、(4)工業利用、(5)放射線・廃棄物管理(6)原子力広報、(7)原子力安全文化、(8)人材養成の各分野において、ワークショップ等を開催し、技術の移転を図り、意見と情報を交換している。表1に最近の主な活動を示す。
3.国際原子力機関(IAEA)−アジア原子力地域協力協定(RCA)
 IAEAの技術支援・協力は、原子力の平和利用に関するもので技術協力局が主に担当する。技術協力は、1)アフリカ地域、2)アジア・太平洋地域、3)ヨーロッパ地域、および4)ラテンアメリ地域に分けて分担され、(A)国別協力、(B)地域協力および(C)地域間協力の形式に分かれる。
 このうち地域協力は、夫々の地域とIAEAで協力協定を結ぶ方式である。アジア原子力地域協力協定(RCA)は、アジア・太平洋地域の協力協定で1972年以来17国が参加し、農業、医療等の8分野、20のプロジェクトがある。日本は、表2に示すような医療分野のプロジェクトで主導的な役割を果たしている。
4.ニ国間協力
 原子力の平和利用、研究開発、安全確保に要する人材育成のため、専門家を派遣しセミナーを開催し、また日本に研修生を受入れる。
 表3は日本と協力各国の担当機関、協力分野および協力期間を示す。韓国との協力分野は、原子力規制や安全情報の交換、放射性廃棄物の処理・処分、光科学および核融合研究まで多岐にわたる(表3−1)。中国との協力も、原子力規制や安全情報の交換、光科学、核融合、さらに高温ガス炉に関する協力まで広範である(表3−2)。インドネシア、タイ、マレーシアおよびベトナムとの協力は、研究炉の運転利用、放射線利用等である(表3−3)。
5.アジア原子力安全ネットワーク(ANSN)
 ANSNの構築は、2002年、国際原子力機関(IAEA)の提案から始まった。アジア地域の原発導入機運の高まりから、原子力利用の安全技術、法規と体制の整備、人材の育成、緊急時対応体制の充実等を進める必要があった。
 日本はANSNでは中心的役割を担い、(独)原子力安全基盤機構に活動拠点を設置した。主な支援国は、日本、米、韓国、仏、スペイン、独等であり、主な被支援国は、中国、ベトナム、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン等である。
2003年には教育訓練が中心のプロジェクトが実施され、2004年に原子力安全に関する経験と情報がデータベース化され教育訓練に利用されるようになった。2006年、廃棄物管理および緊急時対応分野の活動が開始された。
(前回更新2004年2月)
<図/表>
表1 アジア原子力協力フォーラム(FNCA)の主な活動(2008)
表1  アジア原子力協力フォーラム(FNCA)の主な活動(2008)
表2 日本が参加するIAEA-RCAプロジェクト(2008)
表2  日本が参加するIAEA-RCAプロジェクト(2008)
表3−1 韓国との協力(2007)
表3−1  韓国との協力(2007)
表3−2 中国との協力(2007)
表3−2  中国との協力(2007)
表3−3 インドネシア、タイ、マレーシアおよびベトナムとの協力(2007)
表3−3  インドネシア、タイ、マレーシアおよびベトナムとの協力(2007)

<関連タイトル>
原子力委員会と長期計画(平成6年原子力委員会) (10-01-01-01)
アジア原子力協力フォーラム(FNCA) (13-01-03-22)
IAEAのアジア・太平洋地域協力協定(RCA) (13-03-02-02)
日本のIAEA/RCAへの協力 (13-03-02-03)

<参考文献>
(1)原子力委員会:原子力白書2008年、第5章 国際的取組の推進、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/hakusho/hakusho2007/5.pdf、p.149−50
(2)原子力委員会:平成19年度版原子力白書データ集、第5章、近隣アジア諸国及び開発途上国の関連機関との協力(平成19年)、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/hakusho/hakusho2007/data.pdf
(3)IAEA:RCA projects,active project,http://www-tc.iaea.org/tcweb/tcprogramme/recipients/eastasiapacific/queryrca/default.asp
(4)原子力安全委員会:原子力安全白書、第7章 原子力安全に関する国際的な取組、p.265
(5)経産省:総合資源エネルギー調査会資料(平20年6月)
(6)FNCA:FNCAとは、http://www.fnca.mext.go.jp/about/aboutfnca.html
(7)FNCA:プロジェクト、http://www.fnca.mext.go.jp/project.html
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