<本文>
1.設立の経緯および目的
財団法人「原子力環境整備センター」(略称、原環センター)は、放射性廃棄物処理処分の専門研究機関として、内閣総理大臣と旧通商産業大臣(現経済産業大臣)の許可を受け、1976年10月に設立された。
設立当初は低レベル放射性廃棄物の試験的海洋処分の実施に向けた調査研究と低レベル放射性廃棄物の陸地処分基礎研究を進め、その後、低レベル放射性廃棄物の均質固化体や雑固体の陸地処分に対する調査研究を進めてきた。一方、高レベル放射性廃棄物に関して、処理・処分技術、処分のための資金確保方策等の調査研究の他、返還高レベル放射性廃棄物受入れに関する検討を行ってきた。また、TRU廃棄物に関しても、処理処分技術を中心とした調査研究を実施してきた。
原環センターは、2000年5月(平成12年)成立の「特定放射性廃棄物の処理処分に関する法律」に基づいて、高レベル放射性廃棄物の処分の実施主体となる「
原子力発電環境整備機構」(原子力百科事典ATOMICA<13−02−01−10>参照)が積み立てる最終処分積立金の資金管理業務を行う法人として同年11月に国から指定された。これにより、従来からの放射性廃棄物処理処分に関する調査研究業務に加え、資金管理業務を開始した。2000年11月、名称を財団法人「原子力環境整備促進・資金管理センター」(略称:原環センター、Radioactive Waste Management Funding and Research Center(RWMC))と変更し、放射性廃棄物処理処分の第三者機関としての役割を果たしている。
2.組織
図1に(財)原子力環境整備促進・資金管理センターの組織図を示す。
3.主な事業活動
3.1 低レベル放射性廃棄物調査研究
原子力発電所からの低レベル放射性廃棄物の処分施設として、青森県六ヶ所埋設センターが、1992年12月から創業を開始し、均質固化体の埋設(1号廃棄物埋設地)に引き続いて、2000年から充填固化体の埋設(2号廃棄物埋設地)を行っている。
原環センターでは、これらの廃棄物の埋設に伴う調査研究として、埋設廃棄体の基準作成、廃棄物の処理技術、廃棄体の検査・確認技術、合理的な輸送方法、処分の安全性評価、各種廃棄物の処分方式の合理化等を実施してきた。また、今後処分が予定される使用済制御棒等の放射性
核種濃度の比較的高い廃棄物、原子炉施設の
解体に伴い発生する放射性物質濃度の極めて低い廃棄物(クリアランスレベル廃棄物)に加え、燃料加工施設等から発生する
ウラン廃棄物を対象に、処理・処分システムや、処分のための技術的な基準等に関する研究を実施している。
主な成果および継続中の調査研究内容の要点を以下に記す。
(1)各種廃棄体の基準および処理技術
均質固化体、雑固体の技術基準策定に寄与。雑固体廃棄体製作マニュアルの作成。
(2)廃棄体の検査・確認技術
非破壊の放射性核種濃度測定装置を開発。核種濃度評価方法の確立に寄与。
(3)合理的な輸送方法
ハンドリング機器の設計等を含め、廃棄物輸送システムの具体化に寄与。
(4)処分の安全性評価
核種の環境への移行挙動評価のため分配係数を測定し、
安全評価に寄与。
(5)各種廃棄物の処分方式の合理化
経済性の観点からベントナイト混合土を改良し、埋設施設の合理化に寄与。
(6)放射性核種濃度の比較的高い廃棄物の処理・処分システム
処理・輸送・処分システムの最適化、廃棄体の基本性能等の検討。
(7)放射性核種濃度の比較的高い廃棄物の処理・処分技術
放射性物質濃度の評価方法の最適化、地下水流動予測手法の高度化、人工バリア材の長期性能評価および高度化の検討。
(8)クリアランスレベル廃棄物等の処分技術
金属等廃棄物の
トレンチ処分の安全性評価、クリアランス廃棄物の区分手法の限定再利用方策等の検討。
(9)
ウラン廃棄物の処理処分システム
安全評価パラメータ取得等による処理・処分システムの検討。
(10)ウラン廃棄物の処理技術
ウランのハロゲン化等による
除染技術の検討。
3.2 高レベル放射性廃棄物およびTRU廃棄物の調査研究
日本では再処理施設から発生する高レベル放射性廃棄物を、ガラス固化体にして貯蔵冷却した後、
地層処分する方針であり、そのための研究開発が進められてきた。
図2に高レベル放射性廃棄物地層処分場の概念を示す。また、再処理施設およびMOX(
ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料加工施設から発生するTRU核種を含む放射性廃棄物は、放射性核種濃度に応じ、クリアランスレベル以下の廃棄物、トレンチ処分、コンクリートピット処分、
余裕深度処分および地層処分の各々に分けて処分される。
原環センターでは、海外再処理に伴う返還高レベル放射性廃棄物の受入れ、高レベル放射性廃棄物の処理・処分技術、地層処分に必要な地質構造の長期変動予測技術、高レベル放射性廃棄物処分事業の実施体制等に関する調査研究を実施してきた。
また、高レベル放射性廃棄物の地層処分事業に向けて、国の政策立案のための適切な技術情報の整備・提供を行うとともに、周辺技術(社会的安心に係る技術)、基盤技術(処分の品質確保、安全確保の基盤となる技術)の調査研究や、高レベル放射性廃棄物処分の安全基準・安全規制に関する調査研究を実施している。
TRU核種を含む放射性廃棄物については、処理・処分概念の構築、処理・処分技術の検討等の調査研究を実施している。
主な成果および継続中の調査研究内容の要点を以下に記す。
(1)
返還廃棄物の受入
返還高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の輸送・貯蔵方法等に調査研究の成果を反映。
(2)高レベル放射性廃棄物処理・処分技術
国内外で実施されてきた処理・処分代替技術に関して、技術開発度、特徴等の調査を実施。
(3)地質構造の長期変動予測技術
解析対象地域の地質データ、弾性波速度データ等をもとに、三次元地質構造モデル等を構築し、地質構造の長期変動シミュレーション法を調査研究。
(4)高レベル放射性廃棄物処分費用
資金確保の制度化に関して調査研究を実施。制度化に反映。
(5)高レベル放射性廃棄物処分事業の実施体制
実施主体の業務、備えるべき要件、法人形態等の調査研究を実施。制度化に反映。
(6)TRU核種を含む放射性廃棄物の処理・処分概念の構築
処理・処分フローの検討、処分区分の検討、地層処分概念の構築等の調査研究を実施。
(7)TRU核種を含む放射性廃棄物の処理・処分技術等
人工バリア長期性能評価、ガス移行挙動原位置試験等の調査研究。
(8)高レベル放射性廃棄物処分の技術情報の整備・提供
国の政策立案のための適切な技術情報の整備・提供。
(9)高レベル放射性廃棄物処分の周辺技術
政策推進のための社会的安心に係る技術開発として
モニタリング、記録の保存等の調査研究。
(10)高レベル放射性廃棄物処分の基盤技術
処分の品質確保、安全確保の基盤となる技術として地質環境調査・評価技術、遠隔溶接・定置技術の調査研究。
3.3 資金管理業務
資金管理業務は原子力発電に伴い生じた
使用済燃料の再処理後に残る特定放射性廃棄物の最終処分を計画的かつ確実に実施するための最終処分費用の拠出制度、最終処分を実施する主体の設立、拠出金の管理を行う法人の指定等について規定した「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(平成12年法律、第117号)により「指定法人」に指定を受けたことから、2001年2月から業務を行っている。資金管理業務に係る基本的スキームを
図3に示す。
なお、資金の管理・運用には、資金管理業務を適切かつ確実に実施するため、「資金管理業務部」が設けられ、約定等を行う「資金運用課」と決済業務等の管理を行う「業務課」、外部の有識者による適切な助言を求めて資金運用を行うため「積立金運用委員会」が設けられた。資金管理業務の事業計画は、「資金管理業務規程」に基づき、評議員会の審議を経た上で、理事会の議決を得て、かつ、経済産業大臣の認可を受けて行われる。資金業務に関する組織図を
図4に示す。
3.4 海外とのプロジェクトの推進
原環センターは各国の放射性廃棄物の実施主体や研究機関と制度、安全規制・基準、実施状況等に関する情報交換協定を締結し、情報交換を行っている。NAGRA(放射性廃棄物管理協同組合)等の海外機関との情報交換、旧ソ連の大量破壊兵器科学者の軍民転換支援による流出防止、市場経済移行支援等を目的とした政府間協定に基づくISTC(国際科学技術センター)への協力、国際機関IAEA事業への協力(放射性廃棄物データベースの構築、調整研究プロジェクトへの参加など)、スイス連邦インナートキルヘンにあるITC地下廃棄物貯蔵・処分国際研修センターへの協力がある。
3.5 情報蓄積・提供および成果等の普及
(1)季刊誌「原環センター・トピックス」の刊行、頒布
(2)「放射性廃棄物データブック」及び「放射性廃棄物ポッケトブック」の刊行、頒布
(3)講演会、研究発表会
<図/表>
<関連タイトル>
六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターの概要 (05-01-03-04)
外国における高レベル放射性廃棄物の処分(2)−ベルギー、スイス、カナダ編− (05-01-03-08)
<参考文献>
(1)原子力環境整備促進・資金管理センターホームページ:
http://www.rwmc.or.jp/
(2)原子力環境整備促進・資金管理センター:パンフレット、RWMC(2001年8月)
(3)原子力環境整備促進・資金管理センター、資金管理業務: