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1.フランスの原子力利用と研究・開発
フランスには、軍事利用と民生利用の二つの原子力利用がある。民生ではヨーロッパ最大規模の原子力発電利用国であり、58基の原子力発電炉を稼動して国内電力需要の75%を供給している。また、近隣諸国に売電している。さらに、発電炉1基(FLAMANVILLE-3)を建設中であり、高速実験炉PHENIXを有している。軽水炉サイクル−高速炉サイクルは既定の路線であり、そのための研究開発がある。
2.フランスの研究・開発の組織
原子力庁(CEA)は民生と軍事の双方を統括している。2010年5月以降は、CEAの正式名称はCommissariat a l'energie atomique et aux energies alternatives(Alternative Energies and Atomic Energy Commission)となった。エネルギー資源の多様化を目指すわけである。 図1に原子力庁(CEA)の下の、軍事研究用の4センター及び民生研究用の5研究センターを示す。さらに表1に示すように、民生利用研究の5研究センターは二つに分かれる。サックレー、カダラッシュ及びマルクールの原子力エネルギー研究センターは、燃料製造技術、放射性廃棄物の分離・核変換技術、ナトリウム及びガス冷却高速炉、高温ガス炉、水素製造技術、新エネルギーなどの研究開発を進めている。また、フォントネ及びグルノーブルの工学研究センターはマイクロ・ナノ技術、マイクロ電子技術、マイクロ光学、ナノバイオ技術などの研究・開発を進めている。
基礎的研究はいずれの研究所でも進められており、分野は、生物物理・ライフサイエンス、原子力技術の医療利用、熱核融合研究、気象・環境科学、放射線科学、放射線生物学、ナノ科学、低温科学など多岐にわたる。
国立原子力科学技術研究所(INSTN)は、フランスが原子力開発に乗り出した1956年に設立された。サックレーに本部があり、文部省とCEAの共管である。エネルギー技術と経済、核分裂の原子力利用、関連する研究・開発、放射線の基礎から利用、計算機シミュレーション、放射線防護、教育等の原子力関連分野を網羅した上級教育の場所である。 表2に、放射線防御、放射性廃棄物の処理処分の研究開発機関と原子力学会を示す。放射線防護原子力安全研究所(IRSN)の業務は、(1)定常的な環境放射線量の計測と非常時への対応、(2)放射線防護、(3)原子力施設の事故回避の検討、(4)原子炉安全、(5)工場・施設・輸送・廃棄物処理の安全、(6)核物質防護等である。
国立放射性廃棄物管理機構(ANDRA)は、フランスの放射性廃棄物の処理・処分の実施主体であり、(1)最終的な処分方法の研究・開発、(2)処分場の運営に関する技術開発、及び(3)廃棄物情報の公開、の3業務を進める。 表3に、フランスの主な高エネルギー加速器関連の研究所を示す。国立科学研究センター (CNRS)は、国立原子核・素粒子物理研究所(IN2P3)ほか9研究所を統括する。ヨーロッパ放射光研究所(ESRF)はヨーロッパの19ヵ国が共同で設置した施設である。
(前回更新:2004年2月)<図/表>