<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> フランス
<タイトル>
フランスの原子力安全規制体制 (14-05-02-04)

<概要>
 原子力規制は経済・財務・産業省が開発、安全の双方について主に管轄している。ただし、同省内では、開発、安全で所管の部署が異なり、原則的な両者の規制の独立性が確保されている。また、原子力安全規制には国土開発・環境省も経済・財務・産業省と同等の権限を有している。許認可手続きはアングロ・サクソン諸国に比べて、地方自治体に最終権限がない、公聴会制度がないなど中央集権的でラテン法の特徴が出たものとなっている。しかし、フランスでは許認可手続きの中に、公衆意見調査と呼ばれる制度が存在し、地元の意見聴取が行われている。
<更新年月>
2001年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 原子力分野では経済・財務・産業省が開発、安全の双方について主に管轄している。同省内では開発、安全で所管の部署が異なり、原則的な両者の規制の独立性が確保されている。また、原子力安全規制には国土開発・環境省も経済・財務・産業省と同等の権限を有している。許認可手続きはアングロ・サクソン諸国に比べて、地方自治体に最終権限がない、公聴会制度がないなど中央集権的でラテン法の特徴が出たものとなっている。しかし、フランスでは許認可手続きの中に、公開意見調査と呼ばれる制度が存在し、住民など公衆の意見聴取が行われている。
 なお、これまでフランスの原子力関係法規には、全体を取り纏めた原子力法に類するものが存在しないため、原子力法制定の動きが出ている。
 また、原子力安全規制についても、安全規制と放射線防護規制を一元化するため、規制機関を統合する計画がある。
[注]ラテン法(大陸法)と英米法
 ラテン法はヨーロッパ大陸の法体系を意味しており、ローマ法およびゲルマン法の影響を多く受けている。この法体系はあらかじめ抽象的な法を制定し、これを具体的な事件に適用するという考え方に基づいている。英米法の起源は英国で、判例が法と考えられ、後に起こった事件はそれまでの判例に基づき判決を下す。
 また、私権と公益の関係でいえば、ラテン法では公益によって私権が制限される傾向が強いのに対して、英米法では公益より私権の保護が優先される傾向が強い。
1.原子力の規制体制
 原子力の開発規制は経済・財務・産業省のエネルギー・一次資源総局ガス・電気・石炭局(DIGEC)が中心となって行っている。
一方、安全規制は同省の原子力施設安全局(DSIN)が中心である。また、DSINは国土開発・環境省も管轄している。フランスの原子力行政組織を 図1 に示す。
 1999年末現在、DSINの本局および地方局の職員数は217名である。本局は主に担当する原子力施設の種類によって6つの部局に分れている。安全解析作業など詳細な技術的検討は原子力庁(CEA)の原子力安全防護研究所(IPSN)に委託される。このIPSNの所属するCEAは開発主体でもあるため、1990年の組織再編でCEA内でのIPSNの独立性の強化が図られた。また、原子力施設に関する技術的問題を検討するため、DSINの諮問機関として常設専門家グループも設置されている。このグループは外国人も含めた各種専門家、行政官で構成されている。
 実際の施設の検査および監督は、中央官庁の地方組織である産業・研究・環境地方局(DRIRE)の原子力施設部(DIN)が実施する。DINは全国で9か所に設置されている。また、安全規制には経済・財務・産業省のほか雇用・連帯省(旧厚生省)、国土開発・環境省なども主に許認可手続きを通じて関与する。特に国土開発・環境省は経済・財務・産業省と同等の許認可権限を有している。
 なお、現在、安全規制と放射線防護規制を一本化する組織改編が計画されている。従来、放射線防護については、電離放射線防護局(OPRI:雇用・連帯省が管轄)が行ってきたが、再編計画では、OPRIを解体し、DSINおよびIPSNに取り込むことになっている。2000年12月中旬には新組織として、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)の設置法案が、フランス国民議会(下院)で可決された。また、IPSNは完全にCEAから独立した機関となる。当初はDSINは従来の管轄省庁から独立した米国の原子力規制委員会(NRC)に近いものが構想されていたが、議論が紛糾し放棄された。実際に再編が行われるのは2002年の総選挙と大統領選後とみられている。
 諮問機関としては原子力安全情報最高会議(CSSIN)と原子力基本施設各省間委員会(CIINB)が重要である。CSSINは産業・郵政・通信大臣および環境大臣の諮問機関で、国会議員、関係官庁、労働組合、有識者など35名で構成され、国会、地方議会、県議会などの要請によって原子力施設の安全問題および原子力の情報公開について調査、諮問を行う。CIINBは各省の代表者で構成され、許認可申請、規則の策定、適用などについて両大臣から諮問を受ける。
 また、規制機関ではないが、議会科学技術選択評価局も最近、重要性を増しつつある。同局は国民議会(下院)、元老院(上院)それぞれ8名の議員で構成されており、全般的な科学技術選択問題について議会に報告し、法制化を援助することを役割としているが、1991年の長寿命放射性廃棄物法の制定以来、議会が原子力問題について発言力を強めているため、同局のまとめる報告書も一定の影響力を持ちつつある。
2.許認可手続き
 許認可手続きは、1)原子力を含めた一般施設について必要な手続きと、2)原子力に固有の手続きに大きく分けられる。前者の代表は公益性認定宣言手続き(DUP)で、公益性を有する施設を建設するに当たって必要な土地収用のための手続きであり、産業・郵政・通信省のガス・電気・石炭局が管轄している。DUPの中心は公衆意見調査(enquete publique)で、サイトを中心に5km以内に全部または一部が入る市町村と県庁所在地で実施される。調査の方法はそれら役所での環境影響調査などの資料閲覧と住民による意見記入であるが、最近は一般公衆が参加できる聴聞会を開催することも多い。
 他方、原子力に固有の手続きとしては原子力施設設置許可が重要である。設置許可は同省のDESINが中心となって審査を行う。許可の公布には産業・郵政・通信大臣と環境大臣の署名が必要である。運転許可は4段階に分けて審査される。原子力発電所の設置許可の手続きを 図2 に、運転許可の手続きを 図3 に示す。
3.原子力法規
 公益性認定宣言手続きは、フランス民法第545条およびこの条文に基づく1958年10月23日付けの規則を根拠としている。その具体的な手順などは1976年5月14日付けの首相令などで定義されている。また、公衆意見調査は、1983年7月12日付けの公衆意見調査の民主化と環境保護に関する法律および1985年4月23日付けの政令で定義されている。
 一方、原子力固有の規制は、1963年12月11日付けの基礎原子力施設に関する政令(1973年3月27日付け政令で改正)が重要である。設置許可はこの政令に基づき公布される。また、放射性液体およびガスの放出については、1974年12月31日付けの政令および同年11月6日付けの政令(1995年5月4日付けの政令で改正)に基づき許可が行われる。
 このようにフランスには全体的な原子力規制の根拠となるような一本化された原子力法が存在しないため、最近、議会で原子力法を制定すべく、活発に議論が展開されている。しかし、議論が紛糾し、制定の見通しは立っていない。
 なお、国際的な条約では欧州原子力共同体(ユーラトム)設立条約(1957年3月25日制定)に基づき、放射性物質放出計画、核分裂物質管理計画などをユーラトムに届け出なければならない。
4.原子力発電所の事故・故障評価尺度
 1988年から原子力発電所の事故・故障の程度を一般にも理解しやすいように、地震の震度に類似したフランス独自の6等級の区分を導入し、そのような事故・故障が発生する度に、一般に事故・故障レベルを公表してきたが、1994年4月に国際原子力機関(IAEA)が策定した7段階の国際原子力事象評価尺度INES)を正式に導入した。
<図/表>
図1 フランスの原子力行政組織図
図2 原子力発電所の設置許可の手続き
図3 原子力発電所の運転許可の手続き

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
フランスの原子力政策および計画 (14-05-02-01)
フランスの原子力開発体制 (14-05-02-03)
フランスの核燃料サイクル (14-05-02-05)
フランスの電気事業および原子力産業 (14-05-02-06)
フランスのPA動向 (14-05-02-07)

<参考文献>
(1) 「海外主要国の原子力開発に関する情報収集分析」成果報告書、科学技術庁1989年度科学技術調査資料委託調査資料、(1990年3月)p.67−114
(2) (社)日本原子力産業会議:原子力年鑑 2000−2001年版(2000年9月)、p.316−322
(3) DSIN, Ministere de l’industrie, Nuclear Safety in France 1999,p.40−45,329
(4) Nucleonics Week, October 12, 2000,p.9
(5) (社)海外電力調査会:海外電力2000年10月号、p.97−98
(6) (社)日本原子力産業会議:原子力ポケットブック2000年版、(2000年5月)、p.376−379
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