<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> フランス
<タイトル>
フランスの核燃料サイクル (14-05-02-05)

<概要>
 フランスは、核燃料サイクルの完結を目指して研究開発、実用化を進めている。研究開発は1960年代からフランス原子力庁(CEA)が、実用化・産業化は1976年に設立された国営のフランス核燃料公社(COGEMA)グループが、原子炉の製造については主にフラマトム社が携わってきた。フランス政府は、資本力の強化を目的として、2001年11月に新持ち株会社AREVA(アレバ)社を設立、原子力産業界の再編を図った。現在、核燃料サイクル部門はAREVAの完全子会社であるAREVA NC(アレバNC、旧COGEMA)により、採掘、濃縮、成型加工、再処理まで一貫した事業体制を世界的規模で構築している。
 フランスは原子力政策を強力に推進しており、国内58基のPWRが稼動中で、年間1150トンの使用済燃料が発生する。使用済燃料はAREVA NCのラ・アーグ工場(1600tHM/年)で再処理され、マルクールのMELOX工場(195tHM/年)でMOX燃料に加工されて、再び90万kW級PWR20基に装荷される。なお、放射性廃棄物の処理・処分に関しては、放射性廃棄物管理庁(ANDRA)が中心となって行っている。低中レベル廃棄物は浅地中処分され、中・高レベル長寿命廃棄物は2006年の放射性廃棄物管理法に従い、核種分離・変換、長期貯蔵を適宜取込んだ深地層処分が選択されている。今後、ビュール地下研究所の知見を踏まえてサイト選定を行い、2025年の最終処分場操業を目指している。
<更新年月>
2010年02月   

<本文>
 フランスは、核燃料サイクルの完結を目指して研究開発、実用化を進めている。研究開発は1960年代からフランス原子力庁(CEA)が、実用化・産業化は1976年にCEA生産部が独立して設立された国営のフランス核燃料公社コジェマ(COGEMA)グループが、原子炉の製造については主にフラマトム社が携わってきた。一方、フランス政府は、官民の資本が入り組むフランス原子力産業界の複雑な構成を簡素化して資本力を強化するため、2001年11月に新持ち株会社AREVA(アレバ)社を頂点とする原子力産業界の再編と行政組織の刷新を図った(図1参照)。現在、フランスの核燃料サイクル部門は原子力世界最大手AREVAの完全子会社であるAREVA NC(アレバNC、旧COGEMA)により、採掘、濃縮、成型加工、再処理まで一貫した事業体制を構築している。AREVA NC社は、ウラン探鉱事業では世界市場の20〜25%、転換事業では25〜30%、濃縮事業では20〜25%、燃料加工では30〜35%、再処理事業では70〜75%、PWR燃料製造では20〜25%、MOX燃料製造では65〜70%のシェアを占める。なお、AREVA傘下のAREVA NP(アレバNP、旧Framatome ANP)は原子力プラント部門を担当する。表1に核燃料サイクル施設の概要を、図2にその配置図を示す。
1.ウラン資源
 AREVA NCは、英国・オーストラリア企業リオ・ティント(Rio Tinto)、カナダのカメコ(Cameco)社に次ぐ世界第3位のウラン生産者で、2008年には約6300トンの天然ウランを生産し、世界市場の約14.6%を占めた。生産拠点はカナダ、カザフスタン、ニジェール等である(図3参照)。カナダでは完全子会社であるアレバ・リソーシズ・カナダ(AREVA Resources Canada)を通して世界有数のウラン埋蔵地域であるサスカチワン州アサバスカ盆地でウランを生産、McArthur River(マッカーサー・リバー)鉱山を含めた複数の鉱山を所有している。カザフスタンでは国営企業Kazatomprom(カザトムプロム)と1996年に合弁企業KATCOを設立、年間約1500トンのウランを生産している。ニジェールではニジェール政府との合弁であるSOMAIR(Societe des Mines de l'Air)社、また日本のOURD(海外ウラン資源開発株式会社)なども含めた合弁のCOMINAK(Compagnie Miniere d'Akouta)社を設立し、1971年からウラン生産を行っている。また、2009年にアフリカ最大で世界第2の規模を持つImouraren鉱床の開発を行い、ニジェール政府の合意を得て権益の66.65%を所有する。Imouraren鉱床ではISL(in situ leaching)法で年間4000tU規模のウラン生産が見込まれ、2012年頃の生産開始を予定している。フランスはウラン資源調達の多様化を求め、オーストラリアの北部準州の開発、南アフリカ共和国のウラン開発企業UraMin(ウラミン)の買収(2007年)など、事業エリアを積極的に拡大させている。なお、国内ではJouac(ジュワック)鉱山の閉山(2001年)を最後に生産活動を終了した。2010年には年間10,153tUのウラン需要が見込まれ、2012年までに12,000tUの生産を目指している。
2.転換
 AREVA NCの子会社Comhurex(コミュレックス)社が1963年からMalvesi(マルベシ)とPierrelatte(ピエールラット)の2カ所でウラン鉱石の転換を行っている。マルベシ工場でU3O8をUF4に転換した後、ピエールラット工場でUF4をUF6に転換する。年間処理能力は両者とも14,000tUにのぼる。さらにAREVA NCの子会社FBFC SNC社のロマン(Romans)工場でUF6をUO2に再転換する(1200tU/年)。再転換事業はドイツのリンゲン工場(Lingen、400tU/年)、米国のリッチランド工場(Richland Fuel、1200tU/年)でもAREVA NCにより行われている。なお、AREVA NCは2007年5月にマルベシとピエールラットの拡張計画ComhurexIIを発表し、2012年までに15,000tU/年、さらに21,000tU/年までの設備拡張を予定している。2009年1月にはフランス電力会社(EDF)と2025年までの長期濃縮役務供給契約を締結した。
3.濃縮
 Comhurex社で転換されたUF6は、トリカスタンにあるEurodif(ユーロディフ)社経営のGeorges Besse(ジョルジュ・ベス、10,800tSWU/年)工場で濃縮される。ユーロディフ社は、COGEMAがイタリア、ベルギー、スペインとの共同出資により設立した国際企業で、現在ではフランスとイランのジョイント・ベンチャー企業Sofidifが参加する。CEAが開発したガス拡散法技術を採用して1979年に操業を開始、4カスケード、1400段、40〜100%の間で生産調整をしながら運転している。2012年には停止が予定され、隣接サイトのジョルジュ・ベスII濃縮工場へ移行する。ジョルジュ・ベスIIでは分離係数が大きく、電力消費量が小さく(第1工場の1/50程度)、プラントの分割建設が可能であることから遠心分離法が採用されている。南ユニット(4000tSWU/年)を2013年から、北ユニット(3500tSWU/年)を2016年から運転開始する。なお、劣化UF6については、安全当局がフッ化物での保管は認めない方針で、ピエールラットにU3O8への転換施設(W施設)を建設し、1984年から処理を開始した。2005年までの処理量は30万tUF6で、大部分はU3O8に転換して貯蔵し、副産物の沸酸は売却、ヨーロッパ市場の30%を占める。国外では、イーグル・ロック濃縮工場(3000tSWU/年)の建設が米国アイダホ州で進められている。建設・運転はAREVA Enrichment Services, LLCが行い、2014年の運転開始を目指している。
4.燃料の成型加工
 PWR燃料の製造は、AREVAの子会社FBFC(Franco-Belge de Fabrication de Combustibles)社がRomans(ロマン、生産能力1,400tHM/年、1974年操業開始)工場とベルギーのDessel(デッセル)工場で行っている。国外では、AREVA NPが米国Richland(リッチランド、年間生産能力700tHM)とドイツLingen(リンゲン、生産能力650tHM/年)工場でPWRおよびBWR燃料を製造している。MOX燃料は、マルクールのMELOX(メロックス、195tHM/年、1995年操業開始)とデッセル工場で製造している。なお、MELOXではフランス国内のほかドイツ、ベルギー、スイスなどのMOX燃料を製造し、2006年からは日本向けのMOX燃料も製造している。MOX燃料はフランス国内の運転中58基のPWR(90万kW級34基、130万kW級20基、145万kW級4基)のうち、90万kW級20基に最大炉心装荷割合30%で装荷され、その発電量は年間300〜400億kWhである(図4参照)。
5.再処理
 再処理事業は、1958年にマルクールUP1施設でプルトニウム生産炉のGCR燃料を再処理したことから始まるが、1987年にはGCR燃料はUP1に集約され、ラ・アーグUP2施設はPWR専用再処理施設となった。UP1は累計約4900トンを再処理し、1997年9月に閉鎖されたが、1978年には商業規模のガラス固化施設AVMが付置された。UP2では1994年、軽水炉燃料に加え、MOX燃料や高燃焼度燃料の再処理施設が増設され、年間処理能力は400トンから800トンに拡大した(UP2-800)。国外再処理向けにはUP3(800tHM/年)が1990年から本格操業を開始し、ベルギー、ドイツ、日本、オランダ、スイスの約30社の電力会社と再処理契約を結んだ。但し、委託再処理作業で発生した放射性廃棄物はすべて外国顧客に返還されている。現在、AREVA NC所有のUP2-800とUP3の2つの再処理施設が運転中で、UP2-800にはR7施設(1989年稼動)が、UP3にはT7施設(1992年稼動)がガラス固化体を製造している。2008年には両施設で937トンを処理し、これまで15,000体(キャニスター)以上のガラス固化体を製造している。詳細はATOMICAタイトル「フランスの再処理施設<04-07-03-08>」参照のこと。
6.放射性廃棄物の処理・処分
 廃棄物は放射能レベルに応じて極低、低、中、高の4つのレベルに分類した上で、半減期が30年を境に短寿命と長寿命に区別される(図5参照)。実施主体は放射性廃棄物管理機構(ANDRA)。短寿命の低中レベル放射性廃棄物は、La Manche貯蔵センター(ラ・マンシュ、容量53万m3)が満杯となり閉鎖したため、1992年からL'Aube貯蔵センター(オーブ、容量100万m3)がCENTRACO集中処理センターで減容処理した廃棄物を浅地中処分している。極低レベル放射性廃棄物は2003年からMorvilliers貯蔵センター(モルヴィリエ、容量65万m3)で貯蔵している。一方、中・高レベル長寿命放射性廃棄物は1991年の放射性廃棄物管理研究法(通称バタイユ法)の採択で、(1)地層処分、(2)核種分離・変換、(3)長期地表中間貯蔵を比較、また、2006年の放射性廃棄物管理法で相互補完しながら深地層処分手法を確立することが規定された。現在、ビュール(フランス北東部ミューズ県、粘土層)に地下研究所が設置され、最終処分地は研究所を中心に250km2区域からサイト特定を行い、2025年には運転開始に持ち込みたい意向である。詳細はATOMICAタイトル「フランス、ベルギー、スイスに於ける放射性廃棄物処理・処分の動向<05-01-03-26>」参照のこと。
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
表1 フランスにおける核燃料サイクル施設の概要
図1 フランスの原子力行政組織図
図2 フランスの核燃料サイクル関連施設サイト
図3 世界の既知ウラン資源量におけるフランスの獲得ウラン権益
図4 フランスのMOX燃料利用状況
図5 フランスにおける放射性廃棄物管理施設の概要

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<関連タイトル>
フランスのウラン鉱山 (04-03-01-08)
フランスの再処理施設 (04-07-03-08)
外国における高レベル放射性廃棄物の処分の概要(1)−仏、英編− (05-01-03-07)
フランス、ベルギー、スイスに於ける放射性廃棄物処理・処分の動向 (05-01-03-26)
フランスの原子力政策および計画 (14-05-02-01)
フランスの原子力開発体制 (14-05-02-03)
フランス社会党政権の原子力政策 (14-05-02-09)

<参考文献>
(1)(社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第1編 2008年版(2008年10月)、p.144-146
(2)(社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向 2009年版(2009年4月)
(3)(社)日本電気協会新聞部:原子力ポケットブック2009年版(2009年8月)
(4)(財)原子力環境整備促進・資金管理センター: 諸外国における高レベル放射性廃棄物の処分について(2009年2月)、p.16-17、p.118-132、p.172-178
(5)(財)原子力環境整備促進・資金管理センター: 諸外国の高レベル放射性廃棄物処分等の状況、フランス
(6)(財)原子力環境整備促進・資金管理センター:諸外国における放射性廃棄物関連の施設 フランス(2009年3月)
(7)(財)原子力環境整備促進・資金管理センター:原環ポケットブック、再処理施設から発生する放射性廃棄物、http://www.rwmc.or.jp/library/pocket/dispose/
(8)resource.ashigaru :資源について、http://resource.ashigaru.jp/top_company_arevanc.html
(9)国際原子力機関(IAEA):原子燃料サイクル情報システム(NFCIS)、http://www-nfcis.iaea.org/NFCIS/NFCISMain.asp?RPage=1&RightP=CountryReport
(10)フランス大使館原子力部:フランスの原子力とエネルギー
(11)放射性廃棄物管理機関(ANDRA):http://www.andra.fr
(12)AREVA(アレバ):AREVA's operations
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