<大項目> 国際協力・原子力関連機関
<中項目> 海外の原子力関連機関
<小項目> 国際機関(IAEA・OECD等)
<タイトル>
欧州原子力共同体(Euratom) (13-01-01-09)

<概要>
 欧州原子力共同体(Euratom)は、将来のエネルギー資源の不足に対応する目的で1958年に設立された。2011年にはEU27ヵ国が加盟。目的達成のため、原子力の研究機関の設置と投資、研究開発と情報の普及、原子力資源と燃料物質の適切・公平な供給、核物質の管理・監督、及び国際機関等との協力を進めている。第7次枠組計画(2007-2011)では、エネルギー(核分裂と核融合)開発と原子力利用の安全性が2大研究開発プログラムである。これを進める共同研究センターの研究開発は、7研究分野(標準物質・計測研究、超ウラン元素研究、エネルギー・輸送研究、市民保護・保安研究、環境・持続可能性研究、健康・消費者保護研究、将来技術研究)に分けられ、ペッテン、ゲール、カールスルーエ、イスプラ及びセビリアの各研究所で進めている。Euratomの設立目的に沿って1960年に設立された欧州原子力共同体供給局(ESA)は、加盟国に核燃料マーケット情報や核燃料供給に関する助言を提供する。Euratomは原子力平和利用の安全と発展のため、IAEAの原子力安全条約、核物質防護条約、早期通報条約、相互援助条約、放射性廃棄物等安全条約に加盟している。日本は、日英と日仏の原子力協定を補完するため、2006年に原子力協定を結んでいる。
<更新年月>
2011年11月   

<本文>
1.設立の経緯と加盟国
 欧州原子力共同体(The European Atomic Energy Community:Euratom)は、将来のエネルギー資源の不足に対応するため、1957年の「Euratom」設立条約の締結を経て、1958年に設立された。1967年にEuratomは、欧州経済共同体EEC)と欧州石炭共同体(ECSC)と共に欧州共同体(European Community:EC)の下に置かれた。
 1993年、欧州連合条約(マーストリヒト条約)の発効により欧州連合(European Union:EU)が発足した。EUは、1)欧州共同体(EC)、2)共通外交・安全保障政策、及び3)警察・刑事司法協力の三つの政府間協力で成っている。 Euratomは、EUの下にありながら半独立機関として活動し、条約も締結できる法人である。
 EU加盟国は、Euratomへ加盟するが原子力利用は各国の選択に任される。2011年には以下の27ヵ国が加盟国である:独、仏、伊、英、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、デンマーク、アイルランド、ギリシャ、スペイン、 ポルトガル、オーストリア、フィンランド、スウェーデン、キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトヴィア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロヴァキア、スロヴェニア、ルーマニア、ブルガリア。
2.目的と事業
2.1 目的と目標
 欧州原子力共同体Euratomには、設立目的の「原子力産業の迅速な確立及び成長に必要な条件を創出することにより、加盟国における生活水準の向上及び他の国との関係の発展に貢献」を達成するため、以下の目標がある。
(1)研究開発の推進と情報の普及、
(2)公衆と労働者の安全と健康のため統一的な基準の策定と監督、
(3)原子力利用に要する基礎的研究機関の設置と投資、
(4)原子力資源及び燃料物質の適切・公平な供給、
(5)核物質を目的外に使用しないよう管理・監督、
(6)原子力利用のマーケットの拡大、
(7)濃縮ウランやプルトニウム等の特殊な核物質の所有者の権利行使、
(8)原子力平和利用のため国際機関や関連国との協力
2.2 研究開発計画
 EUには、研究・技術開発などに関する欧州共同体第7次(2007-2013)枠組計画(Framework programmes)が在る。一方、Euratomには二つのプログラムに大別される独自の第7次枠組計画(2007-2011)がある。
 第1プログラムは、核融合エネルギーと核分裂エネルギーに関する研究開発である。核融合の研究開発には、国際熱核融合実験炉(ITER)の開発が含まれる。核分裂エネルギーに関する放射線防護、放射線利用、放射性廃棄物の管理技術等の研究開発は共同研究センター(Joint Research Center:JRC)で進められる。
 第2プログラムには、JRCで進める1)使用済燃料と廃棄物の管理及び環境への影響、2)核燃料サイクルと原子炉の安全性及び第4世代原子炉(Generation IV)に関する国際フォーラムの研究開発、3)核爆弾の不拡散と安全保障が含まれる。
2.3 共同研究センター(Joint Research Center:JRC)
 図1に共同研究センターJRCの組織を示す。JRCの業務は横構造と縦構造に分かれる。
(1)横構造(表1
A.科学政策・総務部(Scientific Policy and Stakeholder Relations)
 ブリュッセルとイスプラに駐在しJRCの戦略策定、実施計画、国際関係等を担当する。
B.資源部(Resource Management)
 ブリュッセル、ゲール及びイスプラに駐在し、財政、人事等を担当する。
C.イスプラサイト管理部(Ispra Site Management:ISM)
 2004年に創設され、ブリュッセル本部と共に政策及び経営業務を分担する。また、イスプラ研究所について、当施設の安全、保安、医療、施設、情報(IT)などを統括する。ITについては、共同研究センターの全研究所にサービスを提供している。技術開発では、当施設の解役、解体、廃棄物処理・管理、安全・保安及び防護関連の業務を担当する。
(2)縦構造
 研究開発は7分野の7研究所(Institute)がある(図2)。表2に7研究所の概要を示す。
a.標準物質・計測研究所、Institute for Reference Materials and Measurements(IRMM)
 ベルギーのゲール研究所を中心に、一般性があり信頼性の高い計測システムの開発を目的に、分析方法、分析機材、標準試料、標準分析法等の普及と比較分析及び教育訓練を進め計測の信頼性確立に努める。
b.超ウラン元素研究所、Institute for Transuranium Elements(ITU)
 ドイツ、カールスルーエ研究所とイタリア、イスプラ研究所を中心に、放射性物質の科学的基礎データを提供するため、アクチノイド研究、核燃料サイクルの安全性と保障措置システムの研究、アクチノイドや放射性同位体の医療利用の研究を進める。
c.エネルギー・輸送研究所、Institute for Energy and Transport(IET)
 持続可能で安全で保安に優れ、効率的なエネルギー生産とその輸送技術の開発を目的に、オランダのペッテン研究所及びイタリアのイスプラ研究所で研究を進める。
d.市民保護・保安研究所、Institute for the Protection and Security of the Citizen(IPSC)
 イタリア、イスプラ研究所が中心の研究開発であり、新しい保安モデルの開発とその成果を利用してEU政策の推進を図る研究を進める。成果は、安定と保安、危機管理、海上・漁場管理、社会インフラの保護等に利用される。
e.環境・持続可能性研究所、Institute for Environment and Sustainability(IES)
 イタリア、イスプラ研究所を中心に、ヨーロッパや地球環境の保護に関する科学・技術的情報を提供するため、生活と環境の相互作用の研究、水、土地、森林、食物、鉱物等の資源の持続的な管理方法の検討を進める。
f.健康・消費者保護研究所、Institute for Health and Consumer Protection(IHCP)
 イタリア、イスプラ研究所で進めており、化学物質、食品、消費材に関して消費者の財産と健康を守る科学・技術的データを提供する。当面は、遺伝子組替え作物、ナノテクノロジー、環境と健康、消費物資と栄養、動物実験に替わる手法の開発等が対象である。
g.将来技術研究所、Institute for Prospective Technological Studies(IPTS)
 スペイン、セビリア研究所で進める。EUの持続可能な発達のため、クリーン技術、エネルギー、輸送、農業、生命科学等に関し、科学・技術情報の評価と社会への影響を評価する。また、EUの政策を評価するとともに、政策立案者と関係者の情報交換及び共通認識の醸成を図り、戦略的なEU政策の立案に貢献する。
2.4 欧州原子力共同体供給局(Euratom Supply Agency:ESA)
 当供給局は、欧州原子力共同体条約の設立目的に沿って1960年に設立された。本部はルクセンブルグに在る。目的達成のため、供給局は加盟国に、1)核燃料マーケットの情報、種々の助言及び専門情報を提供し、2)核燃料マーケットの動向をモニターし安定供給に関して助言し、3)欧州原子力共同体に協力する。当供給局は、また、1)EU域内のウラン鉱石、原料物質、濃縮ウランやプルトニウム等の特殊核物質を売買する権利を保持し、2)EU域外からのそれらの供給契約を結ぶ権利を有する。欧州委員会(EC)は、ESAを監督しESAの理事長を任命する。
3.国際協力
 Euratomは、EU域内の原子力平和利用の発展を図り、その安全性を確保するため以下の協力協定を締結している。
3.1 平和利用の国際協力
(1)原子力安全条約(Convention on Nuclear Safety)
 国際原子力機関IAEAで採択、1996年発効。66ヵ国とEuratomが加盟(2010)。
(2)核物質防護条約(Convention on the Physical Protection of Nuclear Material)
 IAEAで採択、1987年発効。核物質の国際輸送での防護が目的。141ヵ国とEuratomが加盟(2009)。
(3)早期通報条約(Convention of Early Notification of a Nuclear Accident)
 IAEAで採択、1986年発効。事故による被害低減のため、国境を越える原子力事故情報の早期周知を定める。102ヵ国、4国際機関が加盟(2009)。
(4)相互援助条約(Convention on Assistance in the Case of a Nuclear Accident or Radiological Emergency)
 IAEAで採択、1987年発効。原子力事故の被害援助の国際的枠組を定める。102ヵ国とEuratomを含め4国際機関が加盟(2009)。
(5)放射性廃棄物等安全条約(Joint Convention on the Safety of Spent Fuel Management and on the Safety of Radioactive Waste Management)
 IAEAで採択、2001年に発効。使用済燃料及び放射性廃棄物の管理に関する枠組を定める。53ヵ国とEuratomが加盟。
3.2 日本と欧州原子力共同体Euratom
(1)日・欧州原子力共同体の原子力協定
 2006年締結。日本と英・仏との二国間の原子力国際協力を補完・補強する協定である。図3に協定内容を示す。条約の重点は、(イ)核物質等の平和的目的利用、(ロ)核物質にIAEA保障措置の適用、(ハ)核物質を防護する措置の適用、(ニ)核物質等の管轄外移転の規制に関する協力である。
(2)日本と欧州原子力共同体加盟国の二国間原子力協定(表3参照)
 ・日英原子力協定、1968年締結、1998年改正。主な協力範囲は、(イ)情報の提供・交換、(ロ)核物質、設備、施設等の供給、(ハ)役務の提供。
 ・日仏原子力協定、1972年締結、1990年改正。主な協力範囲は、(イ)専門家・情報の交換、(ロ)核物質、設備、機微な技術等の供給、(ハ)役務の提供、(ニ)採鉱、採掘及び利用についての協力である。
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
表1 欧州原子力共同体(Euratom)、共同研究センター(JRC)の経営部署と駐在地
表2 欧州原子力共同体(Euratom)、共同研究センター(JRC)の7研究所
表3 日本と欧州原子力共同体(Euratom)関連の協定
図1 欧州原子力共同体(Euratom)、共同研究センター(JRC)の組織概要
図2 欧州原子力共同体(Euratom)、共同研究センター(JRC)の構成と所在地
図3 日本と欧州原子力共同体(Euratom)との協定内容(2006年)

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
欧州連合(EU) (14-05-15-01)
EUのエネルギー政策(エネルギーの安全保障) (14-05-15-03)
EU共通エネルギー政策 (14-05-15-06)
国際原子力機関(IAEA) (13-01-01-17)
原子力安全条約(原子力の安全に関する条約:Convention on Nuclear Safety) (13-03-01-08)
核物質防護条約 (13-04-01-02)
IAEAにおける原子力防災対策 (10-06-02-04)
放射性廃棄物処分における国際協力 (05-01-03-24)

<参考文献>
(1)Treaty establishing the European Atomic Energy Community(Euratom)

(2)50 YEARS OF THE EURATOM TREATY

(3)JRC Joint Research Center,
JRC-IRMM:
JRC-ITU:
JRC-IET:
JRC-IPSC:
JRC-IES:
JRC-IHCP:
JRC-IPTS:
(4)日本原子力産業協会、「日本と世界の原子力、ユーラトムとの協力」

(5)外務省、「原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府と欧州原子力共同体との間の協定」について
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/treaty164_14_gai.html
(6)植月献二、「EUにおける原子力の利用と安全性、外国の立法、244」(2010.6)、p.39-55、

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