<大項目> 国際協力・原子力関連機関
<中項目> 原子力安全確保等に関する協力
<小項目> ロシアおよびNIS、中・東欧諸国への協力
<タイトル>
原子力安全条約(原子力の安全に関する条約:Convention on Nuclear Safety) (13-03-01-08)

<概要>
 1986年のチェルノブイリ原発事故を契機に、国際原子力機関(IAEA)主催の「原子力安全国際会議」は、「原子力安全条約(原子力の安全に関する条約:Convention on Nuclear Safety)」の策定を検討した。1994年に当条約は署名のため開放され、1996年に発効した。日本は1995年に締約国となった。条約は4章35条からなり、前文、第1章:目的、第2章:義務、第3章:締約国会合、及び第4章:その他の規定に大別される。前文で、原子力利用のためには国際的に安全利用に徹する必要があると説かれている。第1章で当条約の対象は民生利用の原子炉施設であると述べられている。第2章で、締約国は検討会議に「国別報告書」を提出し会議に出席する義務があり、会議で指摘・推奨された事項に適切に対応するよう求めている。第3章は、3年に一度の締約国会合の開催と「国別報告書」提出の手続等を定める。また第4章は、条約への加盟、条約の改廃等について定める。2011年の検討会合では、各国の「国別報告書」の検討に加え、福島原子力発電所事故(以後、「福島原発事故」と記す。)に関して検討され、今後さらに詳細な事故報告の提供を求められた。さらに、福島原発事故から学ぶため、2012年に「臨時検討会合」の開催が予定されている。
<更新年月>
2012年01月   

<本文>
1.「原子力安全条約」に関する経緯(表1参照)
 1986年のチェルノブイリ原発事故を契機に、国際的に旧ソ連、中・東欧諸国の原子力発電所の安全が課題となった。1991年に国際原子力機関(IAEA)主催の「原子力安全国際会議」で、各国の原子力施設の安全確保を目的とした「原子力の安全に関する条約」の策定が提案された。1992〜1994年の一連の専門家会議の検討を経て条約の草案は合意を得、1994年6月の外交会議で「原子力安全条約(原子力の安全に関する条約:Convention on Nuclear Safety)」が採択された。当条約は1994年10月の総会で署名のため開放され、日本を含む38ヵ国が署名した。日本は1995年に批准し加盟国となり、1996年に当条約は発効した。
 条約の規定により、1999年から3年毎に検討会議(Review Meeting)が開催され、2011年末まで5回を数える。検討会議の事務局はIAEAが勤める。
 2011年6月末の締約国はEUを含め74ヵ国で、原子力発電所を有する国は全て締約国である。
2.「原子力安全条約」の概要
 表2に条約の概要を示す。条約は35条からなり、前文、第1章:目的、第2章:義務、第3章:締約国の会合、及び第4章:最終条項・その他の規定、に大別される。
2.1 前文
 ここでは、以下のように条約の必要性を述べている。原子力は、安全利用こそ重要であり、安全技術を高め、社会に安全文化を醸成しながら利用する。この条約は、その為の基本的原則に関するものであるが、より高い安全のため逐次更新される。また、その基本的原則は放射性廃棄物の管理や、核燃料サイクルの安全と技術を高めるのに有用である。
2.2 第1章 目的、定義及び適用範囲、第1条〜第3条
 当条約の目的は、1)国際協力により原子力の安全の世界的な達成・維持、2)原子力施設による放射線被ばく量とその影響の低減、3)放射線事故の防止とその影響の緩和、である。当条約を適用するのは、民生用の原子力発電所と所内の燃料貯蔵施設、廃棄物管理施設等である。
2.3 第2章 義務、第4条〜第19条
 締約国(Contracting Parties)は、原子力施設に関する「国別報告書(National Report)」(第5条)を検討会議(Review Meeting)(第20条)に提出し、その検討により指摘・推奨された事項について原子力施設の停止を含め適切に対応する。会議の最終日に議長報告(Summary Report)をまとめる。
 検討会議は国際的な安全向上のための会議であり、締約国は原子力施設とデータの品質保証、所要の財源と人材の確保、労働者と大衆の放射線防護、緊急事態の準備等、に関し措置する。締約国は、原子力施設の立地、設計、建設及び運転に関し適切な方法を講じる義務がある。
2.4 第3章 締約国会合、第20条〜第28条
 締約国が3年に一度開催される検討会議(第20条)に予め提出する「国別報告書」(第5条)について、その手続き、報告書の内容、報告書内容の秘密性等について定めている。2.5 第4章 最終条項・その他の規定、第29条〜第35条
 締約国間の意見の相違の解決法、条約への加盟、条約の改廃等について定める。
3.日本の「国別報告書」と「福島原発事故」
 表3に2011年までに開催された検討会議と国別報告書を提出した国を示す。報告書は形式に従って作成されており、検討会議の前年にIAEA事務局に提出される。日本は全検討会議に国別報告書を提出している国の一つである。
3.1 2010年「国別報告書」と検討会議
 表4に日本が2011年の検討会議で提出した「国別報告書」の概要を示す。報告書は形式に従い、A 序論:国の方針、B 概論:前回の会議で指摘・推奨された事項の実施状況の説明、C 各論:条約第6〜19条に関する事項の状況説明と改良・改訂の説明、及びD 付属書:添付資料、で構成される。
 会議では、原子力利用の拡大と法律制定と人材養成、原子力発電所の設計、情報伝達の透明性、長期運転と定期的な安全レビュー、サイト問題、原子力発電を開始する際の問題、緊急時への準備と対応、人的因子と組織等、に関して検討された。
3.2 福島原発事故に関する2012年「臨時検討会合」
 2011年検討会議の議長報告の中で、福島原発の事故に関して今後さらに詳細な事故報告を期待された。また、福島原発事故から安全を学び、学んだ事柄を共有し、関連する条文をレビューする為に、2012年に「臨時検討会合(Extraordinary Meeting)」の開催が予定された。この会合に各締約国は、以下の9課題を含めた簡潔な「国別報告」の提出が求められている。
 1)外的要因による事故に対する原子炉施設のデザイン、
 2)緊急時のオフサイトの役割・責任、
 3)緊急時に対する備え、
 4)同一サイトに複数の原子炉を設置する際の安全の考え方、
 5)緊急時の使用済燃料の冷却、
 6)緊急時に対応するオペレーターの訓練、
 7)緊急時の放射能漏れを含む放射線モニタ
 8)民衆の保護、
 9)緊急時の連絡・通報
(前回更新:2003年3月)
<図/表>
表1 原子力安全条約の成立と活動の経緯
表2 原子力安全条約の概要
表3 検討会議に国別報告書を提出し、レビューを受けた国々と機関
表4 日本の第5回「国別報告書」の構成と概要

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<関連タイトル>
米国スリー・マイル・アイランド原子力発電所事故の概要 (02-07-04-01)
チェルノブイリ原子力発電所事故の概要 (02-07-04-11)
原子力施設に対する国の安全規制の枠組 (11-01-01-01)
原子力安全委員会の安全規制に関する活動(2001年) (11-01-01-02)
原子力施設の設置(変更)に係る安全審査 (11-01-01-04)
原子力安全の基本原則 (11-01-02-01)
発電用原子炉の安全規制の概要(原子力規制委員会発足まで) (11-02-01-01)
安全審査指針体系図 (11-03-01-01)
国際原子力機関(IAEA) (13-01-01-17)
国際原子力規制者会議(INRA) (13-01-03-23)

<参考文献>
(1)法庫、「原子力安全条約」の訳文 Convention on Nuclear Safety,

(2)IAEA、ホームページ、Convention on Nuclear Safety,
http://www-ns.iaea.org/conventions/nuclear-safety.asp
(3)原子力安全条約、「国別報告書」平成22年、

(4)原子力安全条約の検討会議、2011年議長報告
http://www-ns.iaea.org/downloads/ni/safety_convention/cns-summaryreport0411.pdf
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