<大項目> バックエンド対策
<中項目> 放射性廃棄物の処理、処分
<小項目> 放射性廃棄物の処分方法
<タイトル>
放射性廃棄物処分における国際協力 (05-01-03-24)

<概要>
 放射性廃棄物は放射能レベルや特性に基づいて低・中レベル、高レベルなどに分類され、それぞれの分類に対する管理(処理や処分などを含む)の課題が検討されている。また、これらの課題は、処理・処分の技術及び事業などに係るものと安全規制に係るものに分類できる。国際協力においても、これらの課題は基本的には上述したように分類されて検討が実施されている。中でも、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関しては、各国が進める安全に係る研究開発や実証試験において、国際協力により知識集約や費用分担を行うことによってその効率化等を図ることが重要であると認識され、また、処分場の立地選定や推進に対しては、技術的、社会的、政策的な面での国際的な情報交換と情報集約、共有化を図ることが、処分事業の推進や政策支援のために必要とされている。他方、低・中レベル放射性廃棄物に関しては、放射性廃棄物の管理(処理、処分等)において、様々な課題の検討がなされており、その中に処分に係る検討が含まれている。
<更新年月>
2012年01月   

<本文>
1.国際協力の概要
 放射性廃棄物の処分は原子力の平和利用を進める各国が持つ重要な課題であり、各国の協力の下、これらの課題を合理的に検討するための国際協力が展開されている。国際協力の中心はIAEAとOECD/NEAであり、IAEAでは、原子力の安全規制に係る文書の体系的な整理が実施されており、そのなかで、低・中レベル放射性廃棄物の管理(処分を含む)に係る規制内容が示されている。また、処分に係る技術や事業の推進に関しては、IAEAとOECD/NEAにおいて検討が実施されており、高レベル放射性廃棄物と低・中レベル放射性廃棄物の各々の処分に係る検討が実施されている。特に、近年では原子力施設廃止措置事業が活発に進められていることから、低・中レベル放射性廃棄物の処分に係る検討、経験の集約などが実施されている。他方、放射性物質環境安全処分国際協会、廃棄物地下貯蔵処分の国際研修センターなど、放射性廃棄物の処理処分に限定し、国の枠組みにとらわれずに国際協力による情報交換や課題検討なども行われている。これらは、主として高レベル放射性廃棄物の処分に関する協力であり、原子力利用を進める上で高レベル放射性廃棄物(使用済燃料を含む)の処分事業の推進が重要な役割を負っていることを示すものである。
2.国際原子力機関(IAEA)
 IAEAは1957年に創設されて以来、継続して放射性廃棄物の管理(処分を含む)の分野で国際協力を促進しており、この分野での協力は、加盟国の多様な利害を反映し、加盟国に利益をもたらす活動として位置づけられている。IAEAにおける放射性廃棄物処理処分に関する活動は、情報交換などの処分を推進するための活動と、安全基準の整備に係る活動がある。このうち、推進に係る活動では、国際会議の開催、技術報告書の作成、ネットワークによる情報交換が進められている。また、安全基準等に関する活動では、安全基準文書の策定、放射性廃棄物の長期貯蔵に関する検討、浅地中処分の安全評価方法論の適用に関する新たな計画の策定、国際会議、シンポジウム、セミナー、教育プログラムなどがある。
 主要テーマとして取り上げ進められている活動は以下の通りである。
A.推進に係る活動
(1)地下研究施設ネットワーク(URF:Uunderground Research Facilities)
 放射性廃棄物の地層処分に係る研究開発と実証に関する国際共同の促進が重要であることから、2001年に本ネットワークが設立された。現在、10ヵ国(ベルギー、カナダ、チェコ、フランス、ドイツ、日本、スウェーデン、スイス、英国、米国)において開発された13ヵ所の地下研究施設とその付属研究所が、他国の利用のために開放されている。これらの国をパートナー(協力者)と呼び、これらの施設の利用や情報交換などのための参加国(協力国以外)は、上述した施設提供国以外で、23ヵ国(アルゼンチン、アルメニア、ブラジル、ブルガリア、チリ、中国、クロアチア、フィンランド、ハンガリー、インドなど)に及んでいる。主要な活動は、トレーニング(一般的な研修コース)、知識や技術に係る情報の交換、保存、公衆の理解を得るための活動の支援などである。選定された数ヵ国からなる調整グル-プにより活動計画の立案、計画レビュー会合などが開かれ運営が進められている。
(2)低・中レベル放射性廃棄物処分に係るネットワーク(DISPONET:Near-surface Disposal)
 原子力利用を進める一部の国では、既に低・中レベル放射性廃棄物の処分が実施され、中には、処分場が閉鎖されている場合もある。このような国では低・中レベル放射性廃棄物処分に係る経験、知見、技術を所有しているが、一方では、放射性廃棄物の処分に関して経験を有していない国もあり、実際の処分の経験から得た教訓や知識の効率的な移転は重要である。このような目的から、低・中レベル放射性廃棄物処分を対象としたネットワークが作られて活動を進めている。活動の主要な目的は、十分な処分計画を持たない加盟国の支援、教育、知識や経験の移転などである。
B.規制に係る活動
 安全規制に係る活動では、原子力安全・セキュリティ局の下に放射線・輸送・廃棄物安全部門が在り、同部門は、政策及び計画支援、放射線及び輸送安全、放射性廃棄物安全の3つのセクションより構成されている。このうち、放射性廃棄物安全のセクションでは、放射性廃棄物の管理、原子力施設の廃止措置及び放射性物質で汚染された土地の修復など、放射性廃棄物管理の安全に関して、網羅的に基準の整理が行われている。安全基準文書の整備体系は図1のとおりであり、安全基準委員会(CSS)及び分野毎の4つの委員会(NUSSC、RASSC、WASSC、TRANSSC)において、審査・承認を行う構成体制が作られている。放射性廃棄物安全についてはWASSCが、放射性廃棄物安全に関する基準の開発、見直し及び改訂に関する全体計画についてのアドバイスを行っている。これまでに整備された安全基準に関する報告書を表1に示す。
3.経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)
 NEA(The Nuclear Energy Agency)では、1975年に設置された放射性廃棄物管理委員会(RWMC:Radioactive Waste Management Committee)の下で放射性廃棄物管理に係る課題(使用済燃料、長寿命廃棄物、解体廃棄物等に関する安全な管理戦略等)の検討が行われている。本委員会は規制当局、放射性廃棄物管理政府機関及び研究開発機関からの代表で構成され、主要な役割は、情報交換のためのフォーラムの設置、基本的な問題に対する共通的な理解の促進、技術及び科学的レベルでのレビュー、会議及び出版を通じた情報の普及、研究開発計画、安全評価等の国際ピアレビュー等である。
 本委員会の下で実施されている放射性廃棄物処分に係る活動に、高レベル放射性廃棄物の処分を対象とした協力(IGSC:Integration Group for the Safety Case)があり、近年では、これらの検討に基づいて報告書(Establishing and Communicating Confidence in the Safety of Deep Geologic Disposal Approaches and Arguments, OECD, Nuclear Energy Agency)が刊行されている。なお、低・中レベル放射性廃棄物の処分等に係る検討は、廃止措置に係る課題の検討を進めるグループ(WPPD)において実施されている。
 一方、本委員会の支援の下に以下の国際協力が進行中である。
 a.記録、知識、記憶の保存に係る検討(2010年-現在)
 b.可逆性と回収可能性に係るプロジェクト(2007年-2011年)
 c.吸着に係るプロジェクト(1997年-現在)
 d.熱化学データベースに係るプロジェクト(1984年-現在)
 e.廃止措置に係る協力(1985年-現在)
 以上のうち、「廃止措置に係る協力」では、廃止措置で生じる低・中レベル放射性廃棄物に関しても情報交換の対象とされている。他の協力は、放射性廃棄物処分に係る安全性を評価するための基礎的データの整備を中心にしたものである。
4.放射性物質環境安全処分国際協会(EDRAM
 EDRAM(The International Association for Environmentally Safe Disposal of Radioactive Materials)は1998年に設立された協会であり、各国の実施主体間で戦略的問題を話し合うためのフォーラムである。廃棄物管理に適用される国際的原則についての共通理解の促進、地下研究施設等における共同研究の奨励、促進等を設立の目的としており、現在、年2回、春と秋に会合が実施されている。参加機関は11ヵ国から12機関(Andra(フランス)、BfS(ドイツ)、DBE(ドイツ)、 Enresa(スペイン)、Nagra(スイス)、NDA(イギリス)、Numo(日本)、nwmo(カナダ)、OCRWM(米国)、Ondraf Niras(ベルギー)、Posiva(フィンランド)、SKB(スウェーデン))が参加している。
5.廃棄物地下貯蔵処分の国際研修センター(ITC)
 国際研修センター(ITC:School of Underground Waste Storage and Disposal)は2003年4月、ベルン大学(スイス)、カタロニア工科大学(PUC、スペイン)、スイス連邦原子力施設安全本部、(財)原子力環境整備促進・資金管理センター(日本)及びスイス放射性廃棄物管理協同組合(NAGRA)が発起人となり、放射性廃棄物の最終処分に係る国際的な教育・研修を目的とした協会として設立された。会員として、2012年1月現在、16ヵ国から規制機関、大学、研究機関、実施主体、企業など54の機関が登録されている。この協会は全ての機関から独立した非営利団体であり、産業界、規制当局、大学、政府機関全てから研修生を受け入れ、放射性廃棄物等の有害廃棄物の最終処分に携わる次世代の科学者、技術者、意思決定者に、最終処分に求められる幅広い知識を伝えることを目指している。なお、我が国からは(財)電力中央研究所、(株)間組、(財)エネルギー総合工学研究所、(株)アイ・イー・エー・ジャパン、日揮(株)など18機関が参加している。
6.その他の活動
 上述した以外にも、放射性廃棄物処分に係る様々な課題を対象にして国際的な活動が展開されている。中でも、放射性廃棄物管理に係る条約の締結やICRPにおける被ばく基準の作成は、放射性廃棄物処分に限定したものではないが、重要な役割を果たしている。また、放射性廃棄物管理分野における欧州委員会(EC:The European Commission)の活動は、多くの原子力発電所を所有する欧州諸国の国際協力として注目しておく必要がある。以下にこれらの活動について概説する。
A.放射性廃棄物等安全条約
 IAEA(International Atomic Energy Agency)では、放射性廃棄物処理処分について技術及び安全基準等に関する研究開発を行い、加盟国への普及を図っている。その重要な活動として、使用済核燃料や放射性廃棄物の安全管理のための法令上の枠組みを定めることを締約国に義務付け、使用済核燃料や放射性廃棄物の管理水準を世界的に引き上げることを目的とした、「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約(放射性廃棄物等安全条約)」が1997年に採択され、2001年に発効された。日本は、2003年に本条約に加入した。本条約に関して、2003年11月に第1回検討会合が開催され、締約国それぞれの管理状況等についての情報が共有された。その後、3年に1度の頻度で検討会合が開催され、各国は放射性廃棄物の管理状況等について報告し、その結果に基づいてピアレビューを受ける仕組みが作られている。
B.欧州連合
 欧州連合(EU:The European Union)ではEU加盟国における放射性廃棄物管理の状況のとりまとめ、処理処分方針の作成などを進め、加盟国の廃棄物管理及び効率化を促進する活動を展開している。また、放射性廃棄物管理研究の強化及び調整面の改善が重視され、放射性廃棄物管理研究については、加盟国の廃棄物に係る意識調査、ウラン鉱山や残差の処理に係る検討などが行われ報告書が刊行されている。
C.国際放射線防護委員
 国際放射線防護委員会(ICRP:International Commission on Radiological Protection)は専門家の立場から放射線防護について勧告を行う民間の学術組織として位置づけされている。ICRPの勧告は公的な力を持たないが、実際には多くの国々において勧告に沿った法制度が整備されている。我が国における放射性処分の安全基準を策定する上でも重要なものとして考慮されてきた。これまでに、放射性廃棄物処分関連の主な図書として以下のものが刊行されている。
 a.ICRP Pub.46:放射性固体廃棄物処分に関する放射線防護の諸原則
 b.ICRP Pub.77:放射性廃棄物の処分に対する放射線防護の方策
 c.ICRP Pub.81:長寿命放射性固体廃棄物の処分に適用する放射線防護勧告
 d.ICRP Pub.82:長期放射線被ばく状況における公衆の防護
<図/表>
表1 IAEAで整備された放射性廃棄物処分の安全基準に関する報告書
図1 IAEA安全基準文書の整備体系(2012年1月現在)

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
IAEAにおける放射性廃棄物の安全基準(RADWASS)計画の概要 (05-01-01-11)
原子力発電および核燃料サイクルに関するIAEAの活動 (13-01-01-15)
国際原子力機関(IAEA) (13-01-01-17)
国際原子力パートナーシップ(GNEP)構想 (14-04-01-44)

<参考文献>
(1)IAEAホームページ:http://www-ns.iaea.org/
(2)OECD/NEAホームページ:http://www.nea.fr/html/rwm/
(3)EUホームページ:
(4)EC研究開発関連(CORDIS)ホームページ:
(5)EDRAMホームページ:http://www.edram.info/
(6)ITCホームページ:http://www.itc-school.org/
(6)ICRPホームページ:http://www.icrp.org
(7)IAEA:ホームページ:安全基準、http://www-ns.iaea.org/standards/default.asp?s=11&l=90
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