<大項目> 原子力安全規制
<中項目> 安全審査指針等
<小項目> 放射性廃棄物処理・処分に関する安全規制
<タイトル>
原子力発電所内の使用済燃料の乾式キャスク貯蔵について (11-03-04-09)

<概要>
 日本の発電用軽水型原子炉から生じる使用済燃料は、使用済燃料プールにおける一定期間の冷却を経て、日本と海外で再処理されている。使用済燃料を再処理するまでの間、原子力発電所内で適切に貯蔵管理するための方法として種々の方式が検討されている。このうち既存の使用済燃料プール貯蔵とともに「乾式キャスク貯蔵」方式は、海外において既に貯蔵実績があり、日本においても貯蔵方式の一つとして具体化の検討が進められている。日本としては、「乾式キャスク貯蔵」は従来のプール貯蔵と異なった新たな使用済燃料の貯蔵概念となるので、この貯蔵方式を導入する際には、従来の方式と同様に災害の防止上支障がないことを確認する必要がある。原子力安全委員会原子炉安全基準専門部会では、乾式キャスク貯蔵施設で使用済燃料を貯蔵する場合の安全審査に当たって、安全設計の基本的考え方、乾式キャスク貯蔵施設の安全機能と安全審査に当たって確認すべき項目及び指針への適合性等について検討し、報告書「原子力発電所内の使用済燃料の乾式キャスク貯蔵について」に取り纏めた。ここではこの報告書の概要について述べる。

(注)東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、新たな規制行政組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。本データに記載されている「使用済燃料の乾式キャスク貯蔵」については、原子力規制委員会によって再検討が行われる可能性もある。なお、原子力安全委員会は上記の規制組織改革に伴って廃止された。
<更新年月>
2009年12月   

<本文>
 「原子力発電所内の使用済燃料の乾式キャスク貯蔵について」(1992年8月27日原子力安全委員会了承、2001年3月29日、2006年9月19日一部改訂)の報告書の概要は次のとおりである。
1.まえがき
 原子炉安全基準専門部会では、乾式キャスク貯蔵施設で使用済燃料を貯蔵する場合の安全審査に当たって確認すべき事項について検討した。
2.用語の定義
 本報告書における用語の定義は、以下のとおりである。
・「乾式キャスク貯蔵施設」とは、使用済燃料を収納する乾式貯蔵キャスク、キャスクを支持する支持構造物、貯蔵中の密封監視等を行う装置及びこれらを収納する貯蔵建屋をいう。(図1参照)
・「乾式貯蔵キャスク」とは、使用済燃料の収納時にその内部を乾燥させ、使用済燃料を不活性ガスとともに封入(装荷)し貯蔵する容器をいい、キャスク本体、蓋部(二重)、バスケット等で構成される。(図2参照)
・「設計貯蔵期間」とは、乾式貯蔵キャスクを設計する際に評価する期間をいう。
・「使用済燃料プール」とは、使用済燃料を水中において貯蔵する水槽であり、使用済燃料プール(BWR)又は使用済燃料ピット(PWR)のことをいう。
・「発電所内の適切な使用済燃料貯蔵施設」とは、原子炉建屋内使用済燃料プール等、適切な格納系及び適切な空気浄化系を有する使用済燃料貯蔵施設であって、乾式キャスク貯蔵施設以外の施設をいう。
3.安全設計の基本的考え方
(1)安全機能
 使用済燃料が、核分裂性物質及び核分裂生成物等を内包し、放射線を発生し、崩壊熱を伴うことを考慮し、使用済燃料を収納する乾式キャスク貯蔵施設は、周辺公衆及び放射線業務従事者の安全を守る観点から以下に示す安全機能を有するよう設計する必要がある(「安全機能」とは、以下に記す4つの機能をいう。)。(図3参照)
 1)除熱機能:使用済燃料の健全性及び安全機能を有する構成部材の健全性が維持できるよう、使用済燃料から発生する崩壊熱を適切に除去すること。
 2)密封機能:周辺公衆及び放射線業務従事者に対し、放射線被ばく上の影響を及ぼすことのないよう、使用済燃料が内包する放射性物質を適切に閉じ込めること。
 3)遮へい機能:周辺公衆及び放射線業務従事者に対し、放射線被ばく上の影響を及ぼすことのないよう、使用済燃料の放射線を適切に遮へいすること。
 4)臨界防止機能:想定されるいかなる場合にも、使用済燃料が臨界に達することを防止すること。
(2)構造強度
 乾式キャスク貯蔵施設の安全機能を維持するために重要な役割を果たしているキャスク本体、蓋部、バスケット等の構造強度部材は、設計貯蔵期間中の温度、放射線等の環境、並びにその環境下での腐食、クリープ、疲労、応力腐食割れ等の経年変化に対して十分な信頼性のある材料を選定し、その必要とされる強度、性能を維持し、必要な安全機能を失うことのないように設計する必要がある。また、乾式貯蔵キャスクは、事業所内運搬を行うため、運搬も考慮した設計をする必要がある。
(3)管理・運用
 安全機能の維持及びその確認の観点から、次の事項が守られることが前提条件となる。
 1)乾式貯蔵キャスクには、原子炉から取り出した後、既設の使用済燃料プールにおいて一定期間以上冷却した使用済燃料であって、かつ運転中のデータ、シッピング検査等により健全であることを確認したものを装荷する。
 2)使用済燃料を装荷した乾式貯蔵キャスクは、発電所内の貯蔵建屋に事業所内運搬を行い貯蔵する。
 3)貯蔵中の乾式貯蔵キャスクの密封機能及び貯蔵場所の放射線レベル等の連続監視を行う。
 4)乾式貯蔵キャスクに収納された使用済燃料を再処理工場等の事業所外に運搬する場合は、発電所内の適切な使用済燃料貯蔵施設で輸送キャスクに詰替えを行い搬出する。
 5)乾式貯蔵キャスクを落したり、一次蓋と二次蓋間の圧力低下等の異常があった場合は、原則として発電所内の適切な使用済燃料貯蔵施設へキャスクを搬入し、必要な処置を行う。
4.乾式キャスク貯蔵施設の安全機能と安全審査に当たって確認すべき項目
 乾式キャスク貯蔵施設に必要な安全機能に係る設計方法・設計基準等、安全審査に当たって確認すべき項目は以下のとおりである。
4.1 安全設計に係る項目
(1)除熱
 a.使用済燃料の崩壊熱評価方法:使用済燃料からの崩壊熱は、燃料型式、燃焼度ウラン濃縮度、冷却年数等を条件として、信頼性のある燃焼計算コードにより核種の生成、崩壊及びそれに基づく発熱を算定する。b.乾式貯蔵キャスク各部の温度評価方法:乾式貯蔵キャスクの各部温度は、使用済燃料の崩壊熱、外部からの入熱及びキャスク周囲温度を条件として、キャスクの実形状を適切にモデル化し、信頼性のある伝熱解析コードを使用して求める。キャスクの構成部材が健全性を保つ温度以下であることとする。c.使用済燃料被覆管の温度評価方法:使用済燃料被覆管の温度は、使用済燃料の崩壊熱とb項で求めた乾式貯蔵キャスク各部温度を条件として、燃料集合体及びバスケット等の実形状を適切にモデル化し、信頼性のある伝熱解析コードを使用して求める。燃料被覆管の累積クリープ量が1%を超えない温度以下であることとする。d.貯蔵建屋の除熱評価方法:貯蔵建屋内の空気の温度は、使用済燃料の崩壊熱と給気温度を条件として、建屋の冷却方式等を考慮して求める。キャスク周囲温度が妥当なものであることを確認する。
(2)密封
 a.密封評価方法:密封機能については、長期間にわたって密封性能を維持する観点から、耐熱性、耐食性等を有し耐久性の高いと考えられる金属ガスケット等のシールを採用するとともに、蓋部を一次蓋と二次蓋の二重とし、一次蓋と二次蓋との間の圧力を監視することにより密封性を監視できる設計とする。乾式貯蔵キャスクの内部の放射性物質の外部への漏洩を実質的に無視し得るよう、設計貯蔵期間中、キャスク内部の負圧を維持する設計とする。密封評価では、設計貯蔵期間、キャスク内部初期圧力と自由空間容積、一次蓋と二次蓋間の初期圧力と容積、温度等を条件として、適切な評価式を用いて、設計貯蔵期間中キャスク内部圧力を負圧に維持するのに必要とされるキャスク密封境界の漏洩率を求める。使用する金属ガスケット等のシールの性能が上記で求めた必要とされる漏洩率以下であることとする。
(3)遮へい
 a.使用済燃料の線源強度評価方法:使用済燃料の放射線源強度は、燃料型式、燃焼度、ウラン濃縮度、冷却年数等を条件として、信頼性のある燃焼計算コードにより核種の生成、崩壊の計算結果から求める。b.乾式貯蔵キャスクの線量率評価方法:乾式貯蔵キャスクの線量率は、収納する使用済燃料の放射線源強度に基づき、乾式貯蔵キャスクの実形状を適切にモデル化して、信頼性のある遮へい解析コードを使用して求める。また、設計貯蔵期間における乾式貯蔵キャスクのガンマ線遮へい材及び中性子遮へい材の放射線照射等による放射線遮へい性能の低下を考慮する。表面の線量率を2mSv/h以下及び表面から1mの点における線量率を100μSv/h以下とする。c.敷地境界外における空間線量評価方法:敷地境界外における空間線量は、b項で得られる乾式貯蔵キャスクの線量率の評価結果を条件とし、貯蔵建屋の位置・構造、サイトの地形効果等を考慮して、直接線及びスカイシャインによる空気吸収線量を評価する。人の居住の可能性のある敷地境界外における空気カーマを年間50μGy以下とする。
(4)臨界防止
 a.臨界防止の評価方法:乾式貯蔵キャスクの臨界防止機能は、中性子実効増倍率で評価する。中性子実効増倍率は、燃料捧単位セル計算により燃料集合体平均の核定数を求め、乾式貯蔵キャスクの実形状を適切にモデル化して信頼性のある臨界解析コードを使用して求める。計算に当たっては、収納する使用済燃料のウラン濃縮度及び燃焼度、乾式貯蔵キャスクの配列、キャスク内外の水の存在、バスケット内の燃料位置、中性子吸収材の濃度等をそれぞれ保守的に仮定する。また、設計貯蔵期間における中性子吸収材の減損も考慮する。中性子実効増倍率の計算結果に計算誤差を考慮しても0.95を上回らないこととする。
(5)構造強度
 a.構造強度の評価方法:乾式貯蔵キャスクの構造強度材料の選定に関しては、キャスクの最低使用温度における低温脆性を考慮するとともに、設計貯蔵期間における放射線照射影響、腐食、クリープ、疲労、応力腐食割れ等の経年変化に対して十分な信頼性を有する材料を選定する。乾式貯蔵キャスクの構造強度は、安全機能を維持できることを確認するために、以下のようなキャスクの各構成部材に関し、想定される荷重に対してキャスクの実形状を適切にモデル化し、信頼性のある構造解析コード等により評価する。1)キャスク本体等:キャスク本体、一次蓋で構成される部位は密封容器を構成しているため、密封機能維持の観点からキャスク本体、一次蓋、一次蓋締付けボルト及び密封シール面について構造強度評価を行う。また、キャスク本体、一次蓋及び二次蓋は放射線遮へい材であるため、遮へい機能維持の観点からもその構造強度評価を行う。2)バスケット:バスケットは、中性子吸収材を含むとともに収納する使用済燃料を所定の幾何学的位置に保持する役割を持つため、臨界防止機能維持の観点からその構造強度評価を行う。なお、バスケットは使用済燃料の崩壊熱を伝達する部材であるため、除熱機能維持の観点からもその評価を行う。3)使用済燃料:使用済燃料被覆管の健全性及び形状の維持は、乾式貯蔵キャスクの安全機能を評価する上での前提条件となるため、燃料被覆管に加えられる荷重等を評価し、燃料被覆管への影響を評価する。b.耐震重要度分類の考え方:乾式キャスク貯蔵施設の耐震重要度分類は、以下のとおりとする。1)乾式貯蔵キャスク:乾式貯蔵キャスクは、使用済燃料を貯蔵していること及び想定されるいかなる場合にも収納する使用済燃料の臨界を防止する必要があることから、使用済燃料プールと同じくSクラスとする。2)支持構造物:支持構造物は、乾式貯蔵キャスクを直接支持することから、乾式貯蔵キャスクと同じSクラスとする。3)貯蔵建屋:貯蔵建屋は、Sクラスの乾式貯蔵キャスクを収納し、その間接支持構造物となることから、基準地震動Ssに対して安全上支障のないことを確認する。なお、貯蔵建屋内においては、乾式貯蔵キャスクの密封境界である一次蓋の開放を行わないことを前提としているので、貯蔵建屋は、遮へい機能を必要としないためCクラスとする。
4.2 安全評価に係る項目
(1)安全評価において想定すべき異常事象
 乾式キャスク貯蔵施設に係る安全評価の目的は、想定すべき異常事象時において所定の安全機能を満足することを示し、安全設計の妥当性を確認することである。安全評価において想定すべき異常事象は、個々の原子力発電所においての乾式貯蔵キャスクの取扱い時及び貯蔵時において想定される異常事象を内部事象及び外部事象に分けて展開し、それぞれ「設計/運用による対応の有効性」、「事象の結果の大きさ(影響度)」及び「原子炉施設の安全評価事象との包絡性」を考慮して、抽出する。
(2)安全評価基準
 乾式キャスク貯蔵施設の安全評価における各安全機能ごとの評価基準は、以下のとおりとする。a.除熱:想定される異常事象に対して、乾式貯蔵キャスク各部の温度の異常な上昇を防止できること。b.密封:想定される異常事象に対して、必要とされる漏洩率が維持できること等キャスクの密封機能を維持できること。c.遮へい:想定される異常事象に対して、放射線遮へい機能を維持できること。d.臨界防止:想定されるいかなる異常事象に対しても、乾式貯蔵キャスクに収納される使用済燃料が臨界に達しないこと。
5.指針への適合性
 発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針のうちそのままの形では適用できない部分については、本報告書で示した項目が安全審査で確認されれば、現行指針が使用済燃料貯蔵施設に対して要求している安全性と同等以上の安全性を有する乾式キャスク貯蔵施設を実現し得ると判断した。
(前回更新:2001年3月)
<図/表>
図1 乾式キャスク貯蔵施設の概要
図2 乾式貯蔵キャスクの概要
図3 乾式キャスク貯蔵施設の安全確保

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
使用済燃料の貯蔵施設 (04-07-03-15)
原子力発電所からの使用済燃料貯蔵の現状と見通し (04-07-03-16)
海外諸国の使用済燃料貯蔵の現状 (04-07-03-17)
使用済燃料の乾式貯蔵に関する研究 (06-01-05-08)
発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針 (11-03-01-05)

<参考文献>
(1)内閣府原子力安全委員会事務局(監修):改訂12版 原子力安全委員会指針集、大成出版社(2008年3月)
(2)原子力安全委員会:原子力発電所内の使用済燃料の乾式キャスク貯蔵について(平成4年8月27日原子力安全委員会了承、平成18年9月19日一部訂正)
(3)日本原子力発電株式会社:原子燃料サイクル、発電所での管理
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