<大項目> 核燃料リサイクル施設
<中項目> 再処理
<小項目> 再処理施設
<タイトル>
使用済燃料の貯蔵施設 (04-07-03-15)

<概要>
 使用済燃料の貯蔵施設は、核燃料サイクルの運用が円滑に進むよう、使用済燃料を一時的に貯蔵する施設である。実際には、再処理を含む核燃料サイクルに対する考え方により、種々の目的の貯蔵施設が計画、運用されている。発電所内、再処理施設内及び発電所外貯蔵施設には、プール中に貯蔵する湿式、空気中で貯蔵する乾式、輸送用キャスクのまま貯蔵するキャスク貯蔵方式、サイロに貯蔵するサイロ方式等がある。
<更新年月>
1999年07月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
(1)使用済燃料の貯蔵施設の区分
 使用済燃料の貯蔵の目的は、次の4項に大別できる。
a)炉心から取り出したばかりの使用済燃料を次の工程に送るために、比較的短い半減期の放射能を減衰させ、放射線強度と発熱量を低減させるため、初期の冷却をする(〜1年程度)。この施設は当然、発電炉の炉心と繋がりを持つ建屋構造の中に設置され、発電所内使用済燃料貯蔵施設(At Reactor Storage,ARS)と呼ばれる。
b)使用済燃料は、ウラン、プルトニウムを回収して再利用するため再処理工場に送られる。再処理を開始する時期は、工場の設計基準として定まっているので、処理前に必要な冷却期間を確保するため一時貯蔵することになる(1年〜4年程度)。再処理工場の使用済燃料受け入れ貯蔵施設という。
c)再処理施設とすぐ繋がらない場合、中間的な貯蔵所を適当なサイトに設けることがあり得る。発電所外使用済燃料施設(Away From Reactor Storage,AFRS)と呼ばれる。再処理施設等のサイト内に置かれる場合もある。
d)使用済燃料を再処理することは考えずに高放射性廃棄物の一種として永久処分する考え方がある。この場合使用済燃料を長期間密封しなければならないので、そのための処理施設が建設されることになる。また、この種の処理を待つ期間や貯蔵初期の期間は、監視付きで必要があれば再び取り出せる施設で保管することになると考えられている。この種の施設を監視付回収可能貯蔵施設(MRS,Monitored and Retrievable Storage)と言う。技術的にはガラス固化された高放射性廃棄物の貯蔵、保管、廃棄処分の場合と共通するところが多いと思われるが、放射能量、発熱量、多量の核燃料物質、密封性等すべての点で、より難しい条件が課せられる。
(2)貯蔵施設の設計
 施設によって貯蔵する機能の他に、燃料集合体輸送容器に装荷し又は輸送容器から取り出す機能、集合体を特殊な貯蔵容器に収納する機能等を適宜持っている。これらの操作を水中で行う場合と空気中で行う方式が考えられ、それぞれ「湿式」または「乾式」と呼ばれる。
 湿式では、プール状槽内の水中で集合体を取り扱うが、水が放射線の遮蔽と熱の除去の役目をする。プール水は、燃料被覆材の外部の汚れ、または被覆材の欠陥から放射能汚染の可能性があるので、浄化装置が付設される。
 乾式では、換気を利用して除熱を行い、遮蔽はコンクリートの壁等で行う。
 湿式、乾式の貯蔵施設の他に、遮蔽容器(キャスク)に収納したまま屋外または建物内に並べておく方式があり、キャスク貯蔵と呼ばれている。貯蔵専用のキャスク(またはサイロ)に詰め替えるのは手間がかかるので、輸送用キャスクをそのまま貯蔵に兼用する方式が開発されている。キャスクの単基の大きさは、大きい程貯蔵効率がよくなる訳であるが、輸送中の取扱いの制約があるので、百トン前後の重量に抑えられる。使用済燃料の燃焼度、冷却期間、臨界設計条件等によって異なってくるが、十数体の集合体が1基のキャスクに収納される。
 中間貯蔵を、どの程度の規模で行うかは、燃料サイクルの実施上の戦略と現実によるが、数百トン程度を発電所の敷地内で中間貯蔵する場合にはキャスク貯蔵がコスト上有利であり、数千トンの規模になれば専用施設を建設した方が有利であると言う試算もあるが、キャスク貯蔵には柔軟性がある。多数のキャスクを必要とするキャスク貯蔵方式では、廉価なキャスクが望ましいので、落下時の衝撃に耐える球状黒鉛鋳鉄を使ったキャスクが開発されている。鋳造法は鍛造法に較べて大量生産時のコスト低下が見込めるためである。
(3)貯蔵施設の実例
a)発電所内燃料貯蔵施設:軽水炉では、BWR、PWRそれぞれ原子炉の構造に合わせて貯蔵プールが設計されているが、いずれも全炉心燃料および1回取り替え量以上の貯蔵が可能なようになっている。炉によって異なるが270 〜500%炉心分の容量が標準である。使用済燃料は輸送可能になるまで冷却すれば再処理施設等へ送られるが、その受け入れが整うまでの対策としてARSの貯蔵能力を増加させる試みがなされている。BWRの様に貯蔵プールが原子炉本体建屋の一部を構成している場合は、プールの容積を増やすことは難しいので、貯蔵密度を増やすため中性子吸収材を用いた貯蔵架を使用する等がある。
 炉心からの熱の取り出しに通常の水を使用する軽水炉では、使用済燃料貯蔵施設はすべて湿式の設計になっている。発電所内のキャスク貯蔵はc)項に述べる。
b)再処理施設の使用済燃料貯蔵施設:再処理施設の使用済燃料貯蔵は、受け入れから再処理開始までの中間貯蔵であり、受け入れ可能冷却期間(輸送可能冷却期間とほぼ同じ、約1年程度)と、再処理開始冷却期間(約4年程度)との差に、工場の年間処理能力を掛けた量が、名目上の最小必要貯蔵容量になる。実際は、最小貯蔵容量に適当な余裕を見て、貯蔵施設の容量を決めている。
 日本原燃(株)の六ケ所再処理工場の使用済燃料の貯蔵能力は3千トン・ウランで、最大再処理能力は8百トン・ウラン/年である。
 イギリス原子燃料会社(BNFL)のセラフィールドサイトの貯蔵容量は、B-27貯蔵プール約2千トン、THORPの貯蔵プール約1千2百トン(他にAGR燃料3百トン)及び増設した約1千2百トン(同3百トン)で合計4千4百トンである。次のフランスと同様、BNFLは外国との再処理役務契約があり、再処理工場の建設計画が遅れた(5年以上)ため、上記のような大きな余裕を持つ必要があった。
 フランス核燃料会社(COGEMA)(現 AREVA NC社)のラ・アーグのサイトは、軽水炉用の燃料貯蔵施設としてプールを5基、逐次建設してきた(ポンドA,B,C,D,Eと呼ぶ)。A,Bで千トン、C,D,Eそれぞれ3千トンで計1万トンである。
 これらの大規模な貯蔵能力によって、再処理を委託している発電炉に、燃料の予期せぬ停滞はないようになっている。図1にラ・アーグの貯蔵施設の概要図を示す。
 このような再処理サイトでの使用済燃料の大規模貯蔵施設は、次項のAFRSの一つとも考えられる。
c)発電所外燃料貯蔵施設(AFRS):軽水炉の開発者であり、所有基数も世界最大(109基、1994年6月末)である米国は、核燃料サイクルの路線について最も混乱している。軽水炉燃料再処理工場もNFS社がウエストバレー工場(WVRP)、GE社がモリス工場(MFRP)、AGNS社がバーンウエル工場(BNFP)等を運転または建設したが現在稼働しているものはない。したがって、米国では独立した大規模AFRSを建設する必要があるのであろうが、具体的な動きはない。当面、発電所内に簡便なキャスク貯蔵または、サイロ貯蔵を考え、米国エネルギー省(DOE)の一部費用援助で、バージニア電力のサリー発電所サイトで独立使用済燃料貯蔵施設(ISFSI,Independent Spent Fuel Storage Installation,キャスク貯蔵方式)の概念実証を実施中(1986年認可取得) である。CASTOR-V型キャスク(ドイツ開発、鋳鉄製輸送・貯蔵兼用キャスク、PWR燃料〜21体収納)を屋外のコンクリートパッドに縦置するもので計84基が貯蔵できる。米国製のNAC,MC10キャスクも使用することになった。図2にサリー発電所のキャスク貯蔵施設を示す。
 一方、カロライナ電力のロビンソン発電所サイトでNUHOMSシステムと呼ばれる横型サイロ貯蔵の開発と実証が進められている(1986年認可取得、89年試験開始)。その後、同電力のブランズウィック発電所、デューク電力のオコーニー発電所バルチモア、ガス電力のカルバートクリフ発電所でも実用貯蔵に入った。PWR集合体7体を収納するキャニスターを横型のコンクリートサイロに輸送用キャスクからサイロのモジュール(単位収納庫)に水平に押し込む方式である。キャニスターのキャップは溶接で密封する。 図3 にNUHOMSシステムを示す。
 独立の使用済燃料貯蔵専用施設にスウェーデン核燃料供給公社(SKBF)の使用済燃料中央貯蔵施設(CLAB)がある。オスカーシャム発電所に隣接する地下岩盤を掘削して地下約25メートルに3千トン貯蔵プールを備えてある。将来、9千トンまで拡張できる。輸送キャスクから燃料を取り出し、貯蔵容器に収納する設備は地上にある。図4にCLABの概要図を示す。
 スウェーデンは、適当な代替電源があれば原子力発電を逐次停止してゆく意向があり、使用済燃料の再処理についてはCOGEMAと契約していたが、それを変更して、使用済燃料をそのまま埋設処分することを考えている。2050年位までCLABで貯蔵した後、使用済燃料処理施設(BSAB)で、永久処分に適する梱包等を施し処分場へ送る。スウェーデンのエネルギー戦略は完全に固定したものではないが、現在決めている方向に対しての足取りはすっきりしているように見える。
 米国でも採り上げられているキャスク貯蔵方式は、ドイツで開発されたもので、ドイツはCASTORキャスクに収容した使用済燃料を大型建屋の中に保管する方式の中間貯蔵施設を、ゴアレーベン、アーハウス、バッカースドルフに計画し、アーハウスの施設は一部運用している。バッカースドルフのWAW再処理工場は1986年から一部建設に踏み切ったが、1989年にその計画は中止された。ゴアレーベンのキャスク貯蔵方式の燃料貯蔵建屋は完成しているが、その使用は決まっていない。図5にドイツのキャスク貯蔵方式の概念図を示す。
d)MRS及び永久貯蔵施設:MRSという造語は米国のもので、DOEは、1982年の核廃棄物政策法(NWPA)の路線で、使用済燃料は発電所内敷地で一時貯蔵、1998年からMRSに中間貯蔵、2003年から処分といったスケジュールを発表したことがあるが、DOEが実施する後2者は、延び延びになっていて確定していない。MRSは、西部立地と予想される処分場まで輸送し貯蔵する便宜を考えて、燃料集合体を解体減容処理を行う施設で、発電炉の多い東部との中継施設と考えられる。
 カナダは、CANDU炉の燃料の再処理を考えていないので、地下深部直接処分について地道な研究開発を行っている。
<図/表>
図1 ラ・アーグの使用済燃料貯蔵施設の概要図
図2 キャスク貯蔵方式の概要説明図(サリー発電所)
図3 横型サイロ方式(NUHOMSシステム)の概要説明図
図4 CLABの断面図
図5 キャスク貯蔵方式の概念図(ドイツ)

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
使用済燃料の受入、貯蔵 (04-07-02-01)
軽水炉の使用済燃料 (04-07-01-02)

<参考文献>
(1) 清瀬量平訳:燃料再処理と放射性廃棄物管理の化学工学、原子力化学工学 第IV分冊(1983)、日刊工業新聞 (株)
(2) PROCEEDING OF SEMINAR ON EUROCHEMIC EXPERIENCE Jun 9-11, 1983 Mol, Belgium(1984)
(3) THE WEST VALLEY DEMONSTRATION PROJECT, WEST VALLEY NUCLEAR SERVICES Co.Inc.'S Publication(1983)
(4) NUCLEAR ENGINEERING INTERNATIONAL, DEC. 1987 p47-48.(1987)
(5) 日本原子力産業会議(編):原子力年鑑平成8年版,p147,日本原子力産業会議(1996年10月)
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ