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<概要>
 原子力安全委員会は、原子力安全行政の「かなめ」として、規制機関としての行政庁から独立した委員会で、委員会の所掌事務について必要があると認めるときは、内閣総理大臣を通じて関係行政機関の長に勧告することができるなど、極めて強い権限を持っている。ここでは、原子力安全委員会の主な任務及び「原子力委員会の当面の施策の基本方針」の実施状況、原子力安全委員会本会議における決定報告等の状況、主な安全基準・指針類、規制調査、各審査会・専門部会等の活動、原子力安全委員会の政策評価等を内容とする原子力安全委員会の活動状況について、平成21年(2009年)を中心に述べる。
 なお、平成23年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、国の安全規制体制等に関し検討・見直しが進められており、原子力安全委員会の位置付け等も変更される。
<更新年月>
2012年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.原子力安全委員会の主な任務等
 原子力安全委員会の任務は、「原子力基本法」と「原子力委員会及び原子力安全委員会設置法」に基づき、次の事項に関し、企画、審議及び決定することである。
(1)原子力利用に関する政策のうち、安全の確保のための規制に関する政策
(2)核燃料物質及び原子炉に関する規制のうち、安全の確保のための規制
(3)原子力利用に伴う障害防止の基本
(4)放射性降下物による障害の防止に関する対策の基本
(5)原子力利用に関する重要事項のうち、安全の確保のための規制
 原子力安全委員会は、上記の任務を遂行するため本会議を原則週2回開催し、また専門部会等を含めた会議の開催を行うなどの活動を行っている。図1に平成23年2月現在における原子力安全委員会の組織を示す。
2.「原子力安全委員会の当面の施策の基本方針」の実施状況
 原子力安全委員会は、平成11年9月に発生したJCO臨界事故を受けて、平成12年1月「原子力安全委員会の当面の施策の基本方針」を決定した。これらの諸施策は概ね達成、実施されつつある状況にあり、また、近年の安全確保に係る新たな国内外の動きや今後の情勢等を踏まえ、平成16年9月13日に新たな「原子力安全委員会の当面の施策の基本方針について」を決定した。新たな基本方針では、当面3年程度を念頭に取り組む事項をあげ、さらに長期的な視点に立ち着実に検討を進めるべき課題として、以下に示す3項目が基軸として示された。
・現行の安全確保活動:諸活動の質の向上・充実強化
・将来を見通した活動:安全規制システムの一層の高度化
・安全確保の基盤強化
 基本方針に基づいた平成21年の取組は、以下のとおりである。
(1)現行の安全確保活動:諸活動の質の向上・充実強化
イ.安全確保活動の質の向上
 a.規制調査の充実
 平成21年3月に改訂された「規制調査の実施方針」に基づき、規制調査のねらいを以下の3つに分けて、より効果的な規制調査の実施に継続的に取り組んでいる。
 1)設置許可等の安全後続規制活動について、継続的な品質と透明性の向上を促す規制調査【品質監査型規 制調査】
 2)安全規制上の共通的な課題等について、運用面・制度面における合理性、実効性及び透明性の向上を促す規制調査【課題着目型規制調査】
 3)規制活動の妥当性を確認し、安全確保を確実なものとする規制調査【安全審査の答申の際に摘出した重要事項に関する規制調査】
 平成21年においては、品質監査型規制調査9件と課題着目型規制調査1件を実施した。
 b.放射線防護対策の充実
 平成21年7月に開催した放射線防護専門部会において、原子力安全委員会の安全審査指針類における放射線防護に関する基本的考え方の検討を開始し、本専門部会の下に「原子力安全委員会の安全審査指針類における放射線防護に係る記載の考え方検討ワーキンググループ」を設置し、安全審査指針類における放射線防護に係る個別事項の記載の考え方等について検討している。
ロ.バックエンド分野等の安全確保の充実
 a.再処理
 再処理施設安全調査プロジェクトチームにおいて、規制行政庁が実施した日本原燃(株)六ヶ所再処理施設における使用済燃料を用いた総合試験段階(以下、「アクティブ試験」という。)計画の確認結果について、調査審議を行い、意見・見解を取りまとめた。引き続き、アクティブ試験の進捗に合わせて調査・審議を行っている。
 b.高レベル放射性廃棄物処分
 特定放射性廃棄物処分安全調査会において、高レベル放射性廃棄物処分における安全規制の制度的事項及び精密調査地区選定段階に考慮すべき環境要件の考え方について検討している。
 c.低レベル放射性廃棄物処分
 放射性廃棄物・廃止措置専門部会において、炉内構造物等の低レベル放射性廃棄物の埋設処分施設に係る安全審査指針等の検討について、より詳細な検討に資するため、第二種廃棄物埋設分科会を設置して検討している。
 d.クリアランスレベル
 放射性廃棄物・廃止措置専門部会の下にウラン廃棄物埋設検討小委員会を設け、ウラン・超ウラン元素(TRU)取扱施設のクリアランスレベルの考え方について検討し、平成21年10月に「ウラン取扱施設におけるクリアランスレベルについて」を取りまとめた。
ハ.事故・故障対応、防災対応等の充実
 a.事故・故障情報の収集と分析
 原子力事故・故障分析評価専門部会において、関係機関における事故・故障情報の活用の取組について報告を受けるとともに、国内外の原子力施設で発生した事故・故障について分析・整理を行った。
 b.原子力防災対策等の充実
 平成21年9月30日にJCO臨界事故の発生から10年を迎えることを踏まえ、原子力施設等防災専門部会並びに緊急技術助言組織会合、原子力艦災害対策緊急技術助言組織会合、武力攻撃原子力災害等対策緊急技術助言組織会合を平成21年9月に合同で開催した。原子力安全委員会がJCO臨界事故以降実施してきた取組状況をまとめた「JCO臨界事故10年を迎えて−原子力安全委員会の取組状況について(案)」について説明を行いコメントを聴取した。
(2) 将来を見通した活動:安全規制システムの一層の高度化
イ.リスク情報の活用
 平成16年4月に設置した「リスク情報を活用した安全規制の導入に関するタスクフォース」は、平成15年11月に原子力安全委員会が決定した「リスク情報を活用した原子力安全規制の導入の基本方針について」に基づいて、我が国にリスク情報を活用した安全規制を導入・推進していく場合の課題やリスク情報の活用に関する関係機関の取組等について調査審議を行った。本タスクフォースは、関係機関のリスク情報活用の取組状況に関する評価及びリスク情報を活用した安全規制の導入に向けた今後の課題・方向性等について審議を行い、平成17年12月に中間取りまとめを、平成19年9月に最終報告書を取りまとめた。
ロ.安全規制体系の方向性の検討
 a.パフォーマンス指標の検討
 安全目標専門部会の下に性能目標検討分科会を設け、発電用軽水型原子炉に対し、安全目標を満たすパフォーマンス指標としての性能目標の指標の選定及び指標値等について検討し、平成18年3月に「発電用軽水型原子炉施設の性能目標について−安全目標案に対応する性能目標について−」を取りまとめた。
(3) 安全確保の基盤強化
イ.安全研究の推進
 「原子力の重点安全研究計画(第1期)」(平成16年7月、平成20年6月一部改訂)に基づき安全研究の推進に努めた。平成21年度で第1期が終了することに伴い、平成21年8月に平成22年度から5年間の「原子力の重点安全研究計画(第2期)」を策定した。
ロ.透明性、トレーサビリティの確保
 情報公開については、平成16年5月に原子力安全委員会で決定された「原子力安全委員会における情報公開等について」に基づき、主にホームページを活用することにより、会議の議事及び資料の公開、委員会の活動等に対する意見の受け付け、政策決定等に対する意見の公募、対話の推進等を履行している。平成21年4月23日に「原子力安全委員会における情報公開等について」の一部改訂を行い、政策決定等に対する意見の公募方法等の明確化を図った。
ハ.国際対応の拡充
 国際対応については、国際原子力機関(IAEA)や経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)等の各種国際会議に原子力安全委員が出席するとともに、専門家を各種国際会議に派遣する等の対応を行っている。具体的には、国際原子力規制者会議(INRA)や国際原子力安全諮問グループ(INSAG)会議、IAEA効果的原子力規制システムに関する国際会議に原子力安全委員長が出席し意見交換を行うなど、国際社会との経験、知見の共有を図っている。
ニ.社会とのコミュニケーションの推進
 安全の最前線である「現場」の各発電所の原子炉主任技術者と直接的な意見交換を行うため、「原子炉主任技術者と原子力安全委員会との意見交換会」を平成19年より開催しており、第3回意見交換会を平成21年12月22日に実施した。
3.原子力安全委員会等の活動状況について
(1)原子力安全委員会本会議における決定報告等の状況
 原子力安全委員会は、毎週月曜日に定例会議、ほほ毎週木曜日に臨時会議を開催している。平成21年1月から同年12月末までにおける主な活動の内、安全規制に関する見解、指示及び二次安全審査についての答申を表1にまとめて示す。また、原子力安全委員会による東京電力柏崎刈羽原子力発電所7号機及び6号機の耐震性評価等に関する見解を表2に示す。
(2)規制調査について
 規制調査(規制行政庁が行う設置許可等の後続規制に対する調査)
 これまでの規制調査の実施経験及び現状の規制の動向を踏まえ、より一層実効的な規制調査を行うため、平成21年3月30日に「規制調査の実施方針について」を改訂した(図2参照)。
(3)専門審査会及び専門部会等の活動状況
 原子力安全委員会には、現在2つの専門審査会、3つの助言組織、8つの専門部会、特定の調査審議を実施する組織が4つ設置されている。平成21年の専門審査会及び専門部会等の主な活動状況を表3-1表3-2に示す。
(4)主な安全基準、指針類について
 日本では、原子力の安全を確保するため、国による安全基準指針類の整備が行われている。表4に平成21年における指針等の整備の要点を示す。
 なお、平成23年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、国の安全規制体制等に関し検討・見直しが進められており、原子力安全委員会の位置付け等も変更される。
<図/表>
表1 安全規制に関する見解、指示及び二次安全審査についての答申(平成21年1月から同年12月まで)
表1  安全規制に関する見解、指示及び二次安全審査についての答申(平成21年1月から同年12月まで)
表2 東京電力柏崎刈羽原子力発電所7号機及び6号機の耐震性評価等に関する見解(平成21年 原子力安全委員会)
表2  東京電力柏崎刈羽原子力発電所7号機及び6号機の耐震性評価等に関する見解(平成21年 原子力安全委員会)
表3-1 原子炉安全専門審査会等の主な活動状況(平成21年)(1/2)
表3-1  原子炉安全専門審査会等の主な活動状況(平成21年)(1/2)
表3-2 原子炉安全専門審査会等の主な活動状況(平成21年)(2/2)
表3-2  原子炉安全専門審査会等の主な活動状況(平成21年)(2/2)
表4 指針等の整備の要点(平成21年)
表4  指針等の整備の要点(平成21年)
図1 原子力安全委員会の組織、(平成23年2月現在)
図1  原子力安全委員会の組織、(平成23年2月現在)
図2 平成21年3月改訂「規制調査の実施方針について」の概要
図2  平成21年3月改訂「規制調査の実施方針について」の概要

<関連タイトル>
原子力安全委員会の当面の施策の基本方針について(2000年1月) (10-03-02-09)
原子力安全委員会の当面の規制調査の実施方針について(2000年6月) (10-03-02-10)
原子力安全委員会 (10-04-03-01)
原子力災害対策特別措置法(原災法:2012年改定以前) (10-07-01-09)
原子力施設に対する国の安全規制の枠組 (11-01-01-01)
原子力安全委員会の安全規制に関する活動(2001年) (11-01-01-02)
安全審査指針体系図 (11-03-01-01)
指針の整備 (11-03-01-02)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会:平成21年版 原子力安全白書、

(2)原子力安全委員会:原子力安全委員会の組織、体制、

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