<概要>
1999年(平成11年)9月のウラン加工工場臨界事故に対応して、
原子力安全委員会のウラン加工工場臨界事故調査委員会(調査委員会)は、同年11月に「緊急提言・中間報告」を原子力安全委員会へ提出した。これを受けて、原子力安全委員会は「原子力の安全確保に関する当面の施策について」(同年11月)及び「原子力安全員会の当面の施策の基本方針について」(2000年1月)を決定した。
原子力安全委員会は、上記の二つの決定で示したとおり、規制行政庁の後続規制について、建設段階および運転段階でも進捗状況、実施状況等の把握と確認を行うこととした。原子力安全委員会は、これらを踏まえて2000年度(平成12年度)からの規制調査を本格的に実施するに当たり、2000年6月19日、「原子力安全委員会の当面の規制調査の実施方針について」を決定し、段階的に実施してゆくことした。
原子力安全委員会決定の全文を、原文のとおり示す。
(注)東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、新たな規制行政組織として
原子力規制委員会が2012年9月19日に発足したため、本データに記載されている原子力安全確保に関する考え方や当面の具体的な対策についても見直しや追加が行われる可能性がある。なお、原子力安全委員会および
原子力安全・保安院は上記の規制組織改革に伴って廃止された。
<更新年月>
2002年02月 (本データは原則として更新対象外とします。)
<本文>
1.はじめに
1999年(平成11年)9月30日に発生した株式会社ジェー・シー・オー(JCO)のウラン加工工場臨界事故に対応して、原子力安全委員会にウラン加工工場臨界事故調査委員会(調査委員会)が設置された。(注:原子力安全委員会は原子力安全・保安院とともに2012年9月18日に廃止され、原子力安全規制に係る行政を一元的に担う新たな組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。)調査委員会は同年11月5日に「緊急提言・中間報告」を原子力安全委員会へ提出、これを受けて、原子力安全委員会は11月11日に「原子力の安全確保に関する当面の施策について」を決定した。また、12月24日の調査委員会の最終報告を受けて、原子力安全委員会は2000年(平成12年)1月17日に「原子力安全員会の当面の施策の基本方針について」を決定した。
原子力安全委員会は、上記の二つの決定で示したとおり、規制行政庁が実施する後続規制について、建設段階および運転段階においても進捗状況、実施状況等の把握と確認を行うこととした。さらに、2000年2月24日に決定した「規制調査の試行について」(
表1)に基づき、同年2月と3月に試行的規制調査を行い、基本データを取得してきた。
原子力安全委員会は、これらを踏まえて2000年度(平成12年度)からの規制調査を本格的に実施するに当たり、同年6月19日、「原子力安全委員会の当面の規制調査の実施方針について」を決定し、段階的に実施してゆくこととした。
なお、本調査の実施に際しては、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法25条(報告等)の規定に基づき、関係行政機関の長および施設設置者等に対して協力を求めることとした。
2.原子力安全委員会の当面の規制調査の実施方針について
以下に、原子力安全委員会決定の全文を原文のとおり示す。
原子力安全委員会の当面の規制調査の実施方針について
平成12年6月19日
原子力安全委員会決定
原子力安全委員会は、平成11年11月11日及平成12年1月17日に行った決定に示したとおり、規制行政庁による設置許可後の後続規制について、建設段階及び運転段階においても進捗状況、実施状況等の把握及び確認をすることとした。さらに、平成12年2月24日行った決定に基づき、平成12年2月及び3月に試行的規制調査を行い、基本データの取得を行ってきた。
当委員会としては、これらを踏まえて平成12年度から規制調査を本格的に実施することとしているところであるが、当面の実施方針を以下のとおりとして、段階的に実施してゆくこととする。
なお、本調査の実施するにあたっては、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法25条に基づき。関係行政機関の長に対して報告を求めることとする。また、現地調査を行う場合には、調査の目的、必要性を明確にした上で関係機関の長及び施設設置者等に対して協力を求めることとする。
1.建設段階における調査
(1)建設段階において、規制行政庁が実施する各規制段階の進捗を把握するため、以下の各段階において規制行政庁より当委員会にその概要について報告を受けることとする。
1)加工の事業、原子炉施設(実用発電用原子炉施設は除く)、使用済燃料貯蔵の事業、
再処理の事業及び廃棄物管理の事業
・設計及び工事方法の認可又は変更認可
・使用前検査又は施設検査の合格
・
保安規定の認可又は変更認可
2)実用発電用原子炉施設
・工事計画の認可又は変更認可
・燃料体設計の認可
・使用前検査又は燃料体検査の合格
・保安規定の認可又は変更認可
3)廃棄物埋設の事業
・廃棄物埋設施設に関する確認
・保安規定の認可又は変更認可
4)
核燃料物質の使用
・核燃料物質の使用許可又は変更許可
・施設検査の合格
・保安規定の認可又は変更認可
(2)当委員会は、
安全審査の際の基本設計ないし基本的設計方針に係る考え方が的確に実現されていることを確認するため、従来の設置許可の際に指摘した重要事項の確認を中心に、上記の報告内容を検討し、設置許可段階における基本設計の審査事項に照らして確認する事項があれば、その都度行政庁に説明を求め、必要に応じて現地調査により確認する。
2.運転段階における調査
(1)運転段階においては、従来から当委員会に報告がなされている
原子力施設に関する事故・故障、放射線管理状況、施設定期検査結果に加えて、保安規定の遵守状況の検査結果、立入検査結果について報告を受ける。
(2)当委員会としては、技術的能力の維持を含め、安全確保対策が適切になされていることを確認するため、上記の報告を検討し、必要に応じて現地調査により確認する。
上記の調査のほか、安全上重要な事故・故障等の再発防止対策の徹底状況の確認など、必要に応じて当委員会より調査対象事項を示して行政庁に報告を求め、その内容について検討するとともに、必要に応じ現地調査により確認する。
3.当面の実施予定
(1)上記により行政庁から報告を求める事項については、以下のとおりとする。
1)建設段階における各規制段階の進捗に関する報告
平成12年7月1日以降に認可等がなされるものについては、定期的に取りまとめて報告されるよう求める。
2)運転段階における定期的な報告
平成12年7月1日以降に実施される施設定期検査及び立入検査の結果については3ケ月毎に取りまとめて報告されるよう求める。従来から当委員会に報告がなされている原子力施設に関する事故・故障の報告、放射線管理状況の報告は従前どおりとする。
なお、保安規定の遵守状況の検査については、改正後の
原子炉等規制法が本年7月1日より施行されることにより、新たに開始されることから、検査の方法等が明らかになった段階で報告を受け、対応を検討することとする。
(2)当委員会は、これらの報告内容について検討し、段階的に調査に
着手していくこととする。個別の調査結果は取りまとめ公表する。
また、規制調査を効果的かつ効率的に実施する観点から規制行政庁の状況も適切に配慮することとし、必要に応じ調査方法を適宜見直していく。
<図/表>
<関連タイトル>
JCOウラン加工工場臨界被ばく事故の概要 (04-10-02-03)
原子炉等規制法の一部改正及び原災法の制定について(1999年11月) (10-02-02-06)
原子力安全委員会の当面の施策の基本方針について(2000年1月) (10-03-02-09)
原子力安全委員会 (10-04-03-01)
原子力施設に対する国の安全規制の枠組 (11-01-01-01)
原子力安全委員会の安全規制に関する活動(2001年) (11-01-01-02)
<参考文献>
(1) 原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成11年版,大蔵省印刷局(2000年9月)、p.84-86
(2) 原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成12年版,財務省印刷局(2001年4月)、p.206-208
(3) 原子力資料公開センター案内のホームページ「原子力安全委員会の当面の規制調査の実施方針について」2002年1月21日
(4) 原子力資料公開センター案内のホームページ「規制調査の試行について」2002年1月21日
(5) 原子力安全委員会のホームページ「原子力安全委員会の当面の施策の基本方針について」2002年1月21日