<大項目> 原子力安全規制
<中項目> 総論
<小項目> 安全規制の枠組
<タイトル>
原子力施設の設置(変更)に係る安全審査 (11-01-01-04)

<概要>
 原子力施設安全設計の審査は、関係法令に基づいて段階的に実施される。安全審査の段階では、原子力施設の安全確保上の基本的な事項全般について調査審議を行うことになるので、詳細設計など後続する安全規制の枠付けをするという意味で重要な役割をもっている。原子力施設の安全規制上の手続きは施設の計画、設置、建設、運転の各段階に亘っている。そのうち安全審査では、事業者の設置許可申請を受けて、所管行政庁による1次審査と原子力安全委員会による2次審査が、施設の基本設計または基本設計方針について、特に施設とその立地条件との関連などについて重点的に行われる。このように、安全審査では1次審査と2次審査とからなるダブルチェック体制を採っている。

(注)東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故を契機に原子力安全規制の体制が抜本的に改革され、新たな規制行政組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。上記事故を受けて原子力政策の転換が行われつつあり、原子力施設の設置(変更)に関する動向は不透明な状況にあるが、安全審査に係る従来の手続き等の全面的な見直しについて、原子力規制委員会が一元的に対応していくことが決まっている。なお、原子力安全委員会は上記の規制組織改革に伴って廃止された。
<更新年月>
2008年12月   

<本文>
1.原子力施設の安全審査体制
 原子力施設の安全審査は、「核原料物質、核燃料物質および原子炉の規制に関する法律」(以下、「原子炉等規制法」という)等関係法令に基づいて段階的に実施される。原子力施設を設置(または大きな変更を)しようとする場合には、事前にその施設の基本設計あるいは基本的設計方針(または変更箇所)を記載した設置許可申請書(または設置変更許可申請書)を所管行政庁に提出し、所管行政庁による審査を受ける必要がある。設置の段階での規制は、所管行政庁が基本設計あるいは基本的設計方針が原子炉等規制法第24条に定められた原子力施設の設置許可基準に適合しているか否かの安全審査(これを1次審査という)を行う。
 1次審査の結果について、原子力安全委員会が行政庁とは別の立場で、行政庁の安全審査の結果(行政庁から提出される安全審査書案等)を安全審査指針等に照らして再審査(これを2次審査という)を行う。併せて、それぞれの行政庁の安全規制を統一的に評価する。これらの安全審査において最も重点が置かれるのは、原子力施設の設計方針とその施設が設置される場所固有の立地条件との関連についてである。この段階での審査は、原子力施設の安全確保上の基本的な事項全般について行うことになるので、詳細設計など後続する安全規制の枠付けをするという意味で重要な役割をもっている。このように、安全審査では1次審査と2次審査とからなるダブルチェック体制を採っている(図1)。(注:原子力安全委員会は原子力安全・保安院とともに2012年9月18日に廃止され、原子力安全規制に係る行政を一元的に担う新たな組織として原子力規制委員会が2012年9月19日に発足した。)
 原子力安全委員会が原子力施設の安全性に関する調査審議(2次審査)を行う際には、安全委員会の内部に設置されている専門審査会、すなわち原子炉施設については原子炉安全専門審査会、核燃料施設については核燃料安全専門審査会による調査審議を活用する。
 原子力安全委員会は、行政庁から提出された審査(1次審査)結果について最新の科学技術的知見に基づいて客観的な立場から調査審議するが、特に、
・既に設置許可等の行われた施設と異なる基本設計の採用
・新しい技術上の基準または実験研究データの適用
・施設の設置される場所にかかわる固有の立地条件と施設との関連
・施設の運転管理(技術的能力)
等に関する安全上の重要事項を中心に調査審議を行うほか、現地調査、公開ヒアリング等により、地元の状況、地元住民の意見を把握し、これを参考とすることにしている。なお、原子炉施設、核燃料施設、中間貯蔵施設その他原子力施設の安全審査に係る基準・指針は、原子力安全委員会に設置された原子力安全基準・指針専門部会において策定されている。審査が終了すると、設置許可等に係る基準の適用についての審査の結論、審査の過程で重点的に検討された事項の検討結果等からなる答申が作成される。答申に際しては、必要に応じ重要事項を指摘し、それらを所管行政庁に通告する。
2.原子力施設の安全規制上の手続き
2.1 実用発電用原子炉
 実用発電用原子炉および研究開発段階にある原子炉で発電用のものは、設置地点の選定から運転開始の段階までにはそれぞれ図2および図3に示すような安全規制のための手続きが必要である。これらの規制は経済産業省が一貫して行っている。
(1)計画の段階:実用発電用原子炉の設置に際しては、事業者による計画地点の選定の後、立地可能性調査や環境影響評価等の手続きを経た上で、経済産業省が設置に係る諸問題について、地元住民の理解を深めるとともに、その意見を聴くため、公開ヒアリング(第1次公開ヒアリング)を行う。その後に、経済産業大臣による重要電源開発地点としての指定を受ける必要がある。これは、従来の電源開発基本法に基づく手続きに代わるものであり(下記注参照)、事業者からの申請を受けて、地元の都道府県知事の意見聴取、関係省庁との協議の上、経済産業大臣が指定を行うこととなっている。
(注)従来は、事業者が提出した設置計画は電源開発促進法に基づいて電源開発基本計画に組み入れられ、電源開発地点としての指定を受けてきたが、平成15年10月に同法が廃止されたため、推進することが特に重要な電源(原子力、水力、地熱等の長期固定電源)の開発に係る地点の指定を経済産業大臣が行うこと等が平成16年9月に閣議了解され、その内容が平成17年2月に「重要電源開発地点の指定に関する規定」として官報に告示、施行に至っている。
(2)設置の段階:電気事業者から原子力発電所の設置許可申請書が経済産業大臣に提出されると、経済産業大臣は、その申請に基づいて原子炉施設の構造等が災害防止上支障のないものであること等、許可基準に適合しているかどうかを審査(1次審査)し、その審査結果について原子力安全委員会と原子力委員会に意見を求めるため、両委員会に諮問する。
 諮問を受けた原子力安全委員会は、必要と認めた場合、同委員会の下にある原子炉安全専門審査会に対し、当該原子炉施設の安全性について調査審議を行わせるなどして原子力安全委員会としての意見をまとめる(2次審査)。経済産業大臣が事業者の設置許可申請を許可する場合には、原子力安全委員会の意見を十分尊重しなければならない。原子力安全委員会も経済産業省による原子炉の新増設に関する安全審査の結果を調査審議する際には、その原子炉の安全性について公開ヒアリング(第2次)を実施することになっている。
2.2 試験研究用および研究開発段階にある原子炉施設
 試験研究用原子炉および研究開発段階にある原子炉施設(発電用のものは除く)の安全規制については、文部科学省が一貫して行っている。その手続きは、所管行政庁が文部科学省であることと施設の計画の段階を除いて実用発電用原子炉の場合とほぼ同様である。すなわち、文部科学省は原子炉施設の設置(変更)を許可するにあたっては、文部科学省と原子力安全委員会によるそれぞれ1次および2次の安全審査の結果を尊重して行う(図4)。
2.3 核燃料施設
 製錬、加工、再処理の事業および核燃料物質、核原料物質の使用については、原子炉等規制法による規制が行われている。すなわち、核燃料物質、核原料物質を取り扱うに際しては、その取扱の形態ごとに、事業指定、事業(変更)許可、設計および工事の方法の認可、使用前検査、保安規定の認可、定期検査等の規制が行われており、これらの規制は、経済産業省において一貫して行われている。原子力安全委員会は、原子炉施設と同様に経済産業省が行った製錬、加工および再処理の事業についての事業指定または事業(変更)許可等申請に対する安全審査の結果について、最新の科学技術的知見に基づき客観的な観点からダブルチェックを行う。
(1)設置等建設前段階
○製錬施設
 製錬の事業を行おうとする者は、経済産業大臣の指定を受けなければならない。この事業の指定に際しては、計画的遂行、技術的能力、経理的基礎および災害の防止の観点から審査を行う。
○加工施設
 核燃料物質の加工の事業を行おうとする者は、経済産業大臣の許可を受けなければならない。この事業の許可に際しては、加工能力、技術的能力、経理的基礎および災害の防止の観点から審査を行う。
○再処理施設
 再処理の事業を行おうとする者は、経済産業大臣の指定を受けなければならない。この指定に際しては、平和目的、計画的遂行、技術的能力、経理的基礎および災害の防止、また、承認に際しては災害の防止の観点から審査を行う。さらに、これら製錬の事業の指定、加工の事業の許可および再処理事業の指定又は承認に係る審査結果については、原子力安全委員会および原子力委員会(核燃料サイクル開発機構および日本原子力研究所の再処理施設の設置承認に係る審査を除く)に意見を求めるため、両委員会に諮問を行うこととなっており、両委員会は、それぞれの所掌に応じダブルチェックを行い経済産業大臣に答申を行うこととされている(図5)。
 原子力安全委員会は、必要に応じて核燃料安全専門審査会に調査審議を指示し、ダブルチェックを行う。ダブルチェックは、原子力安全委員会が策定した指針類に基づき、安全上の重要事項を中心に行われる。また、主要な原子力施設の設置に当たっては地元住民の意見等を聴取するために公開ヒアリング等を実施している。
 原子力安全委員会は経済産業大臣に答申する際に、安全審査および事業者の技術的能力に関する報告書、公開ヒアリングの参酌状況報告書を作成するとともに、更に必要に応じ設置許可後の段階において確認すべき重要事項について指摘を行っている。
2.4 廃棄物管理事業と廃棄物埋設事業
 廃棄物管理事業については、事業許可申請が経済産業大臣に対して行われる。経済産業省は、廃棄物管理施設の構造等が核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物による災害防止上支障がないものであること、事業を適切に遂行するに足りる技術的能力および経理的基礎があること等、許可の基準に適合しているかを審査する(変更認可申請においても同様の手続が必要)。さらに、その審査結果については、原子力安全委員会および原子力委員会に意見を求めるため、両委員会に諮問を行うこととなっており、両委員会は、それぞれの所掌に応じダブルチェックを行い経済産業大臣に答申を行うこととされている(図6)。
 廃棄物埋設事業についても、事業許可から申請から事業の廃止まで、廃棄物管理事業の場合とほぼ同様の流れで規制が行われている(図7参照)。
2.5 使用済燃料の貯蔵事業
 原子力発電所で発生した使用済燃料の発電所外における貯蔵(中間貯蔵)については、1999年(平成11年)6月に原子炉等規制法の一部改正により「使用済燃料の貯蔵の事業」に関する規定が定められ、使用済燃料貯蔵事業(原子炉等規制法施行令で1トンU以上の貯蔵が対象)は、事業許可申請が経済産業大臣に対して行われる。経済産業省は、事業許可に際して、使用済燃料の貯蔵施設の位置、構造および設備が使用済燃料又は使用済燃料によって汚染されたものによる災害の防止上支障がないことが確認されること、設計および工事の方法の認可並びに使用前検査等において、臨界防止を含め所要の技術基準に適合することが確認されること、事業を適切に遂行するに足りる経理的基礎があること等、許可の基準に適合しているかを審査する。さらに、その審査結果については、原子力安全委員会および原子力委員会に意見を求めるため、両委員会に諮問を行うこととされており、両委員会は、それぞれの所掌に応じダブルチェックを行い、経済産業大臣に答申を行うこととされている。
2.6 その他の事業
 核燃料物質等の輸送においては、以下のように安全規制が行われている。陸上輸送の場合には、輸送物が技術基準に適合していることについて、文部科学大臣又は(独)原子力安全基盤機構の確認(試験研究用の場合)、あるいは経済産業大臣又は(独)原子力安全基盤機構の確認(事業用の場合)を受けなければならない。海上輸送の場合には、上記適合について国土交通大臣の確認を受けなければならない。、また、輸送方法の技術基準の適合については国土交通大臣又は(独)原子力安全基盤機構の確認を受けなければならない。さらに、輸送に当たってはあらかじめ運輸経路を管轄する都道府県公安委員会に届け出て運搬証明書の交付を受けなければならない。陸上輸送に係る安全規制の流れを図8に示す。
 放射性同位元素(RI)および放射線発生装置における安全規制については、RIを使用とする者、業として販売(または賃貸)をしようとする者、あるいは業としてRIまたはRIに汚染されたものを廃棄しようとする者は、文部科学大臣の許可又は文部科学大臣への届出が必要である(図9)。
(前回更新:2001年1月)
<図/表>
図1 原子力施設の安全規制の概要
図2 実用発電用原子炉施設の規制の流れ
図3 研究開発段階の発電用原子炉施設の規制の流れ
図4 試験研究用および研究開発段階にある原子炉施設(発電用は除く)の規制の流れ
図5 再処理事業の規制の流れ
図6 廃棄物管理事業の事業許可申請から事業廃止までの流れ
図7 廃棄物埋設事業の事業許可申請から事業廃止までの流れ
図8 核燃料物質等の陸上輸送に係る安全規制の流れ
図9 放射性同位元素および放射線発生装置における安全規制の概要

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<関連タイトル>
原子力施設に対する国の安全規制の枠組 (11-01-01-01)
原子力安全委員会の安全規制に関する活動(2001年) (11-01-01-02)
原子力施設の安全確保を図るための基本的考え方 (11-01-01-05)
安全審査指針体系図 (11-03-01-01)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成18年版、佐伯省印刷(2007年7月)
(2)原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成11年版、大蔵省印刷局(2000年9月)
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