<大項目> 原子力の行政・制度・政策
<中項目> 原子力関係法規・法令
<小項目> 原子力関係法令
<タイトル>
放射線障害防止法 (10-07-01-06)

<概要>
 放射線障害防止法は「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(1957年6月、法律第167号)の略称である。この法律に基づき、放射性同位元素、放射線発生装置および放射性同位元素により汚染された物の取扱い関して、許可の申請または届出を行わせる。そして事前に放射線取扱主任者の選任および放射線障害予防規定の作成を行わせている。施設には一定の許可基準を設け、許可後には施設検査等を行い、この基準に合致する維持管理を行わせる。取扱いに当たっては、放射線業務従事者に関する行為基準を設けて遵守させ、放射性同位元素等の事業所内外の運搬についても基準を設けて規制している。放射線障害のおそれのある場所に関しては、放射線の量、汚染の状況を、人に関しては、放射線施設に立ち入る者の受けた線量、汚染の状況を、それぞれ測定し、その結果を記録し保存すること等を定めている。さらに放射線業務従事者等の教育訓練、健康診断、放射線障害を受けた者又は受けたおそれのある者に対する措置、記帳および報告の義務を定めている。その他、譲渡譲受、所持、取扱の各制限、および危険時の措置などの基準を定め遵守を求めている。当法律は、以上のことを遵守させることにより、放射線障害を防止し、公共の安全を確保することを目的としている。なお本稿では放射線障害防止法の関係法令についてもふれ、放射線障害防止法の主要項目のより詳細な解説も行っている。
<更新年月>
2001年11月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.はじめに
 「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(1957年6月、法律第167号)(略称「放射線障害防止法」、以下、単に「法」ともいう)は「原子力基本法の精神に則り、放射性同位元素の使用、販売、賃貸、廃棄その他の取扱い、放射線発生装置の使用および放射性同位元素により汚染された物の廃棄その他の取扱いを規制することにより、これらによる放射線障害を防止し、公共の安全を確保することを目的」(法第1条)として、制定、公布されたもので、その後、国際放射線防護委員会の勧告等に対応して、適宜、改正が行われてきている。 表1 に放射線障害防止法の目次を示す。
 当法律では、この目的を達成するため、概略、次のような枠組みで規制を行っている。
(1)放射性同位元素および放射性同位元素により汚染された物(放射性同位元素等という)、および放射線発生装置の取扱いには、使用者、販売業者、賃貸業者および廃棄業者(使用者等という)は、取り扱い開始前に、文部科学大臣の許可または同大臣への届出を必要とする(法第3条〜第4条の2)。また許可または届出後にそれらの内容の変更があった場合も許可あるいは届出が必要となる(法第3条の2、法第10条〜第11条)。
(2)放射性同位元素等の取扱いに先立って、放射線障害予防規定(法第21条)を作成し、放射線障害の防止について監督を行う放射線取扱主任者(法第34条〜第38条)の選任を行い、これらを文部科学大臣へ届出る必要がある。
(3)使用施設、貯蔵施設、廃棄施設等の放射線施設については、施設・設備の設置に当たっては、ハードウェア面での安全を確保するため、施設基準として一定の許可基準が設けられており(法第6条〜第7条の2)、許可後においては、この基準に適合するように維持管理が義務づけられている。また定められた基準以上の使用施設の設置および増設、定められた基準以上の貯蔵能力のある貯蔵施設の設置および増設、または貯蔵能力の定められた基準以上への変更、廃棄施設の設置および増設、または放射線発生装置を使用する使用施設の増設および変更については、それぞれ施設検査が必要になる(法第12条の8)。さらに定められた基準以上の貯蔵能力等によって定期検査を必要とする(法第12条の9)。
(4)放射線施設で作業する放射線業務従事者が放射線同位元素等または放射線発生装置を取扱うに当たって、ソフトウェア面で安全を担保するため、行為基準を設け、作業者の遵守を必要にしている。これらの行為基準として、使用、詰替、保管、運搬の各基準(法第15条〜第18条)が設けられている。
(5)放射性同位元素等の運搬については、事業所内運搬と事業所外運搬に分け、それぞれ基準を設けている(法第18条、法第18条の2)。放射線業務従事者以外の一般の人に近接する可能性が残るので、事業所外運搬の基準はより厳しく、この基準に合致できれば事業所内運搬も可能である。一方、管理区域内運搬など除外規定がある。
(6)使用者等は放射線障害のおそれのある場所に関し、定められた場所(施設、区域、境界)について、放射線の量、放射性同位元素による汚染の状況、および排気および排水の放射性同位元素による汚染の状況を、それぞれ測定する必要がある。また使用施設その他の定められた施設に立ち入った者について、その者の受けた放射線の量および放射性同位元素による汚染の状況を測定する必要がある。使用者等はこれらの測定結果について記録の作成、保存、その他の定められた措置を講じる必要がある。(法第20条)
(7)使用者等は放射性同位元素等の取扱い作業者の教育訓練(法第22条)、健康診断(法第23条)、放射線障害を受けた者または受けたおそれのある者に対する措置(法第24条)、帳簿を備え定められた事項の記帳(法第25条)、報告(法第42条)を行う必要がある。
(8)使用者等は、その他、放射性同位元素の譲渡譲受、所持、取扱の制限(法第29条、法第30条、法31条)危険時の措置(法第33条)などの基準を遵守する必要がある。

2.放射線障害防止法の関係法令等
 放射線障害防止法関係法令の体系は、上記の規制を柱として、「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令」(1960年9月、政令第259号)(以下、「放射線障害防止法施行令」という)、「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する施行規則(1960年9月、総理府令第56号)(以下、「放射線障害防止法施行規則」または単に「則」という)、および、その他関係告示等により構成されている。 図1 に放射線障害防止法の規制体系を示す。
 放射線障害の防止に関しては、この法律が公共の安全を確保するという目的から放射線同位元素等の取扱いを規制するものであるのに対して、特定の職域における放射線障害の防止を目的とした規則もある。代表的なものを 表2 に示す。

3.規制の対象となる放射性同位元素等
 本法律により規制の対象となる放射性同位元素、装置、機器は、概略以下のものである。
(1)放射性同位元素
 放射線を発生する同位元素、その化合物および含有物であって、その特性によって第1群から第4群に分類されており、規制の対象となる数量および濃度は、「放射線を放出する同位元素の数量等を定める件」(2000年10月、科学技術庁告示第5号)(以下、「数量告示」または単に「告」という)に定められている(告第1条)。ただし、「原子力基本法」(1955年12月、法律第186号)に規定されている核燃料物質および核原料物質は、放射性同位元素から除かれている。また、「薬事法」(1960年8月、法律第145号)第2条で規定される医薬品も規制対象から除外されている。
(2)放射線発生装置
 シンクロトロン、サイクロトロン、ファン・デ・グラーフ型加速装置等の荷電粒子を加速することによって放射線を発生させる装置であって、放射線障害防止法施行令に規定されている10種類のものである。ただし、1センチメートル線量当量率による規制除外規定がある。また1メガ電子ボルト未満のエネルギーの電子線やX線を発生させる装置は、放射線障害防止法の規制対象ではなく、「労働安全衛生法」(1972年6月、法律第57号)および「労働安全衛生法施行令」(1972年8月、政令第318号)の下部規定である「電離放射線障害防止規則」(1972年8月、労働省令第41号)により規制されている。
(3)放射性同位元素装備機器
 硫黄計その他の放射性同位元素を装備している機器で、現在、放射線障害防止法施行令にはガスクロマトグラフ用エレクトロン・キャプチャ・ディテクタ(ニッケル63を装備しているものに限る)が放射性同位元素装備機器として指定されている。

4.施設の放射線管理基準
 作業環境における空気中および施設から放出される排気(又は空気)並びに排液(又は排水)中の放射性同位元素の「空気中濃度限度」、「排気中又は空気中の濃度限度」、「排液又は排水中の濃度限度は、それぞれ「数量告示」により放射性同位元素の種類毎に細かく規定され、表示されている(告別表第1)。放射性同位元素の単位放射能を吸入摂取あるいは経口摂取した場合の実効線量(実効線量係数)(単位:mSv/Bq)も表示されている(告別表第1)。また該当する放射性同位元素の種類が上記の告別表第1に記載されていない場合における空気中濃度限度等についても規定され、表示されている(告別表第2)さらに作業環境における表面密度限度についても規定されている(告別表第3)。「数量告示」には、「放射線障害防止法施行規則」により定義された「管理区域」(則第1条)に係る設定基準として、外部放射線放射線の線量、放射性同位元素の空気中濃度、放射性同位元素によって汚染された物の放射性同位元素の表面密度が規定されている(告第4条)。管理区域およびそこに立ちる人については、これらの線量、空気中濃度、表面汚染に関する測定、物品の持ち出し、作業者の出入り等の管理を行わなければならない。

5.放射線取扱主任者と放射線障害予防規定
 事業所等で放射性同位元素等の取扱いに関する管理を行う放射線取扱主任者は、国家試験(通例、年1回)に合格し、指定講習を終了して免状を取得したものから選任することとなっている。免状の種類には、第1種、第2種(一般)および第2種(放射性同位元素装備機器名)の3種類がある。第1種放射線取扱主任者免状取得者は、取り扱う放射性同位元素等の種類、数量、形態などの区分によらず放射線取扱主任者に選定できるが、その他の免状取得者には、密封されていない放射性同位元素の使用、販売および放射線発生装置の使用は認められていない。これらの区分について細かい規定があり区分に応じて放射線取扱主任者に選任できる(則第30条)。
 事業所等における放射線障害を防止するための放射線障害予防規定には、安全管理組織、施設の維持管理、放射線の量や汚染等に関する測定、放射線業務従事者等の教育訓練や健康診断、災害時の措置等について定めることとなっている。この予防規定に定めるべき項目は、「放射線障害防止法施行規則」に規定されている(則第21条)。

6.その他
 許可後における施設の管理および放射線障害予防規定の遵守状況に関する立入検査や報告を受けること等によって、放射線障害の防止に関する適切な規制が行われる。
<図/表>
表1 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(目次)
表2 特定職域における放射線障害の防止に係る主な規則
図1 放射線障害防止法の規制体系

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<関連タイトル>
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放射線障害防止関連法令の用語および単位の改正に伴う新旧の対比 (18-04-04-01)

<参考文献>
(1) (社)日本アイソトープ協会:アイソトープ法令集(1) 放射線障害防止法関係法令 2001年版、丸善(2001年1月)
(2) (社)日本アイソトープ協会:アイソトープ法令集(2) 医療放射線防護関係法令集 2001年版、丸善(2001年9月)
(3) (社)日本アイソトープ協会:放射線障害の防止に関する法令 概説と要点(改訂5版)、丸善(1996年5月)
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