<本文>
総合資源エネルギー調査会の設立の経緯、業務及び現状について述べる。
1.総合資源エネルギー調査会の設立の経緯
経済産業省とエネルギー行政の関連及び総合資源エネルギー調査会の設立の経緯について概要を述べる。
1925年(大正14年)に農商務省から分立した商工省は、商工業の奨励と規制が主務であった。第二次世界大戦中に商工省と農林省は廃止され、軍需省と農商省が設置された。この際に電力行政が逓信省から軍需省に移管された。
1945年(昭和20年)、敗戦により軍需省と農商省は再編成され、旧組織の商工省と農林省が復活したが、電力行政は商工省に留まった。同年、外局として石炭庁が設置され、日本のエネルギー行政は商工省の所掌となった。
1949年(昭和24年)、商工省は廃止され、通商、鉱工業、計量、資源、エネルギー、中小企業振興等に関する事務を所掌する通商産業省が設置された。
1973年(昭和48年)、第一次オイルショックを契機に、鉱山石炭局と公益事業局を統合する形で外局に「資源エネルギー庁」が設立され、原子力の利用推進と安全に関する事務を所掌した。2001年(平成13年)、中央省庁再編により通商産業省が廃止され、新たに経済産業省が設置された。経済産業省に置かれた資源エネルギー庁には、原子力利用の安全及び産業保安の確保を図る「原子力安全・保安院」及び「総合資源エネルギー調査会」が置かれた。当調査会は、鉱物資源とエネルギーの安定供給及び利用に関する重要事項等を総合的に調査審議し、かつ、大臣の諮問に応えた。資源エネルギー庁の所掌に、1973年以来の原子力利用の「推進」業務と「規制」業務が並立する状況が続いた。
2011年(平成23年)3月の福島第一原発事故を経て、安全規制の一元化が図られ、2012年(平成24年)9月に内閣府の「
原子力安全委員会」と資源エネルギー庁の「原子力安全・保安院」を廃止し、新たに「原子力規制委員会」が環境省の外局として設置され、その事務を担当する「原子力規制庁」が置かれた。原子力利用の「推進」業務と「規制」業務は分離され、経済産業省、資源エネルギー庁及び「総合資源エネルギー調査会」の所掌の見直しが行われた。
2.総合資源エネルギー調査会
2.1 総合資源エネルギー調査会に関する法令
(1)経済産業省設置法(平24年8月22日、法律第59号)
a)資源エネルギー庁と総合資源エネルギー調査会の設置
資源エネルギー庁は、経済産業省設置法の第14条により外局として置かれ、鉱物資源及びエネルギーの安定的かつ効率的な供給の確保、並びにこれらの適正な利用の推進を図ることを任務としている。この任務達成のため、資源エネルギー庁に同法第18条により「総合資源エネルギー調査会」が置かれた。
b)総合資源エネルギー調査会の任務
総合資源エネルギー調査会の所掌事務は、経済産業省設置法の第19条に示されており、イ)エネルギー基本計画の立案に関する事項の処理、ロ)資源・エネルギーの利用施策に関する経済産業大臣の諮問に対応、ハ)石油需給に関する経済産業大臣や関係大臣の諮問に対応、ニ)上記イ)〜ハ)について意見具申、ホ)損害賠償、争議等に関する諮問に対応の5項目である(
表1参照)。
(2)総合資源エネルギー調査会令(平成25年6月28日、政令第199号)
平成25年6月末に、以前の「総合資源エネルギー調査会(以下、「旧調査会」という)」が再編成され、同年7月1日に新たな「総合資源エネルギー調査会(以下、「新調査会」という)」が設立された。
a)新調査会の構成(第2条〜5条)
新調査会は30名以内の委員を置き、互選により会長を置く。会長は会務を総理し新調査会を代表する。新調査会には、特別の課題に対して、臨時委員や専門委員を置くことができる。委員の任期は2年で再任を妨げない。臨時委員や専門委員は、特別の課題の調査・審議の終了で解任される。委員、臨時委員及び専門委員は経済産業大臣が任命し、新調査会の庶務は、資源エネルギー庁長官官房総合政策課が処理する(第10条)。
b)分科会(第6条)
「総合資源エネルギー調査会令」に定められた新調査会の分科会を
図1に示す。分科会は、イ)基本政策分科会、ロ)省エネルギー・新エネルギー分科会、ハ)資源・燃料分科会及び ニ)電力・ガス事業分科会の4つからなる。新調査会には部会を置くことができる。
旧調査会では、分科会、部会、小委員会等を合わせて84あったが、新調査会では平成25年8月末現在、4分科会と13小委員会及び21ワーキンググループを合わせて38となっている。委員会等の数は、今後の審議・調査により増減がある。
2.2 分科会の主な活動
各分科会の所掌事務と関連する法律を
表2に、また、各分科会に置かれた小委員会を図に示す。
(1)基本政策分科会(
図2)
当分科会では、新しい「エネルギー基本計画」の策定が課題である。「エネルギー基本計画」はこれまで3年毎に見直しを行っていたが、東日本大震災と福島第一原発事故後のエネルギー・環境会議が決定した「革新的エネルギー・環境戦略」を受けて、経済産業省資源エネルギー庁は、現行の「エネルギー基本計画(平成22年6月閣議決定)」を見直した新しい「エネルギー基本計画」の策定のため検討を開始した。この検討会は、平成25年3月15日〜6月27日の間に4回開催された。
平成25年7月1日に経済産業省の審議会の見直しを経て、新調査会が同年7月24日に第1回基本政策分科会を開催し、エネルギー基本計画の検討が再開された。今後は、当分科会の上部に親部会となる「総合部会」を置いて、エネルギーの安定供給、エネルギーコスト低減の観点も含めた検討を続け、平成25年内を目処に新しい「エネルギー基本計画」を取りまとめる予定である。
この基本計画の策定に対し、国民は電子メール、郵便、ファックス等により意見を述べることができる。
(2)省エネルギー・新エネルギー分科会(
図3)
平成25年7月に照明器具等判断基準ワーキンググループ及び住宅・建築物判断基準ワーキンググループ、同年8月に工場等判断基準ワーキンググループの検討会が開催された。
(3)資源・燃料分科会(
図4)
平成25年7月1日に実施された審議会の見直し後、8月末まで分科会は開催されていない。
(4)電力・ガス事業分科会(
図5)
電気料金審査専門小委員会、火力電源入札ワーキンググループ及び廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループが調査・検討を開始した。
旧調査会にあった原子力部会は、原子力小委員会に格下げされ、その下部組織の「国際戦略検討小委員会」、「核燃料サイクル技術検討小委員会」及び「電力自由化と原子力に関する小委員会」は廃止されたが、「放射性廃棄物小委員会」はワーキンググループに格下げされ存続する。このワーキンググループは、放射性廃棄物の審議のあり方、国民理解の醸成に向けた取組の強化、現世代の取組のあり方、
地層処分に関する技術的観点等について検討を進めている。
また、新たに、「原子力の自主的安全性向上に関するワーキンググループ」が設置された。このワーキンググループは、事業者が規制基準を順守し、さらに自主的な規制を超える安全レベルの達成のため、産業界が意識改革を進め、自主的に課題を明らかにして解決を図るための取組方法について検討を開始した。
旧調査会の総合部会に置かれた「電気料金審査専門委員会」は、当分科会に移管された。また、都市熱エネルギー部会の「料金制度小委員会」は廃止され、当分科会に「ガス料金制度小委員会」が新設された。
2.3 旧調査会の活動
2011年から2013年7月にかけて、「旧調査会」の活動の歴史を示す調査審議の報告書例を
表3に示す。これらはホームページから入手できる。
(前回更新:2006年7月)
<図/表>
<関連タイトル>
ベストミックス (01-02-02-07)
エネルギー政策基本法 (01-09-01-06)
エネルギー基本計画 (01-09-01-07)
革新的エネルギー・環境戦略(2012年) (01-09-01-10)
新・国家エネルギー戦略 (01-09-09-09)
日本における原子力行政の新体制(2001年) (10-04-01-01)
原子力規制委員会 (10-04-03-02)
文部科学省と原子力行政 (10-04-05-01)
経済産業省と原子力行政 (10-04-06-01)
国土交通省と原子力行政 (10-04-07-01)
<参考文献>
(1)経済産業省設置法:
(2)総合資源エネルギー調査会令:
(3)資源エネルギー庁、総合資源エネルギー調査会、ホームページ:
(4)経済産業省、総合資源エネルギー調査会:
http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/council39.html
(5)経済産業省、News Release:総合資源エネルギー調査会、見直しの方針(平成25年6月25日)