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<概要>
 国土交通省では、原子炉等規制法放射線障害防止法、船舶安全法および航空法に基づき、核燃料物質等の輸送の安全確保並びに原子力災害対策特別措置法等に基づく原子力防災対策を行っている。
<更新年月>
2004年05月   

<本文>
 はじめに
 国土交通省(Ministry of Land, Infrastructure and Transport)は、中央省庁等改革の一環として、国土の総合的、体系的な利用・開発・保全、そのための社会資本の整合的な整備、交通政策の推進等を担う責任官庁として、2001年1月6日に北海道開発庁、国土庁、運輸省および建設省を母体として設置された。
 国土交通行政の5つの目標は、次のとおり。
1.自立した個人の生き生きとした暮らしの実現
2.競争力のある経済社会の維持・発展
3.安全の確保
4.美しく良好な環境の保全と創造
5.多様性のある地域の形成
 国土交通省の原子力関係業務には、上記の第3の目標である「安全の確保」が強く関わっている。核燃料物質等の輸送の安全確保に関する業務は、陸上輸送については自動車交通局(一部、鉄道局)、海上輸送については海事局、航空輸送については航空局がそれぞれ行っている。国土交通省の組織の概略および原子力関連の組織図を図1に示す。
 以下に放射物性物質の輸送および原子力災害に係る安全確保、原子力災害対策並びに原子力利用に関する調査研究等について記す。
1.核燃料物質等の輸送の安全規制
 核燃料物質等の輸送については、国内においては主としてトラック又はトレーラーによる陸上輸送により行われる。また、使用済燃料の輸送については、各原子力発電所から国内又は海外の再処理施設への輸送が専用の運搬船により行われている。
 核燃料物質等の輸送の安全規制は、国際原子力機関(IAEA)が定めた放射性物質安全輸送規則(1996年版)をわが国を含め各国が各々の国内規則に取り入れることによって行われている。具体的には、陸上輸送に関しては、核原料物質及び核燃料物質については原子炉等規制法により規制が行われている。海上輸送に関しては船舶安全法により、また、航空輸送に関しては、航空法による規制が行われている。このように、輸送形態毎にそれぞれの法令に基づき、各行政庁において安全規制が実施されている。
 陸上輸送の場合、核燃料物質等の運搬を行おうとする者は、運搬の都度、核燃料輸送物が技術基準に適合するか否かについて、核燃料物質の使用者および試験研究の用に供する原子炉設置者に係るものについては文部科学大臣又は原子力安全基盤機構の確認を、製錬、加工、使用済燃料貯蔵、再処理、廃棄事業者および発電の用に供する原子炉に係るものについては経済産業大臣又は原子力安全基盤機構の確認をそれぞれ受けなければならない。また、外国原子力船運航者および船舶に設置する原子炉に係るものについては国土交通大臣の確認を受けなければならない。しかし、定常的な輸送においては、あらかじめ、核燃料輸送物の設計が輸送物の種類毎に定められた技術基準に適合していることを確認する設計承認、および個別の輸送容器毎に承認された設計どおりに製作され、維持されていることを確認する容器承認を受けておくことができる。
 さらに、輸送方法が技術上の基準に適合するか否かについて国土交通大臣又は原子力安全基盤機構の確認を受ける。また、核燃料物質等の輸送に当たっては、あらかじめ、運搬の経路を管轄する都道府県公安委員会に届け出て、運搬証明書の交付を受けなければならない。
 陸上輸送に係る安全規制の流れを図2に、核燃料物質の陸上輸送の様子(実例写真)を図3に示す。
 海上輸送の場合においても、基本的には陸上輸送の場合と同様の規制が国土交通省によって行われている。なお、核燃料輸送物に関する技術基準は基本的には陸上輸送に供されるものと同等であり、陸、海一貫輸送される核燃料輸送物については、文部科学省、経済産業省又は指定運搬物確認機関(2003年10月1日以降は原子力安全基盤機構。以下、同じ)の確認が行われた場合には、船舶安全法に基づく国土交通大臣の確認を受けたものとみなされる。
 また、高レベル放射性廃棄物の返還輸送などのように海上輸送が国際間にわたる場合は、関係国の法令に従うのはもとより、IAEAなどの国際基準および輸送に係る国際条約等を満足することが求められる。さらに、輸送方法が技術上の基準に適合することについて国土交通大臣の確認を受けなければならない。
 航空輸送の場合においても、基本的には陸上輸送の場合と同様の規制が行われている。なお、核燃料輸送物に関する安全基準は基本的には陸上輸送に供されるものと同等であり、陸、空一貫輸送される核燃料輸送物については、文部科学大臣、経済産業大臣又は指定運搬物確認機関の確認が行われた場合には、航空法に基づく国土交通大臣の確認を受けたものとみなされるが、航空輸送のための追加要件に関しては航空法に基づく国土交通大臣の確認が必要となる。さらに、輸送方法が技術上の基準に適合するか否かについて国土交通大臣の確認を受けなければならない。ただし、これまで国内では核燃料物質等の本格的な航空輸送は行われていない。
 なお、経済産業省、文部科学省、国土交通省、総務省、厚生労働省、海上保安庁、警察庁および消防庁からなる放射性物質輸送関係省庁は、必要に応じ連絡会を開催し、事故時対策等について協議を行うこととしている。
2.原子力災害対策
 1999年12月に制定された原子力災害対策特別措置法に基づき、国土交通省内の原子力防災対策に関する業務計画、資機材等の整備を進めている。また、放射性物質輸送の安全確保のため、毎年全国3ヶ所で関係事業者等を対象に、放射性物質安全輸送講習会を開催するとともに、放射性物質の安全確保、防災対策等に関して調査を行っている。
 2002年4月、防災基本計画第10編原子力災害対策編に、「原子力艦の原子力災害」に対する記載が拡充されたことを踏まえ、原子力安全委員会は同年6月には原子力艦災害対策緊急技術助言組織を設置し、原子力艦の原子力災害の発生するおそれがある場合又は発生した場合に的確に活動できるように、原子力安全委員会をはじめ、関係省庁の事故対策の対応を定めた。
3.原子力利用に関する調査研究等
 放射性物質輸送の安全確保、原子力防災対策等に関する技術的事項のうち、国土交通省所管の原子力試験研究は独立行政法人を含む試験研究機関等で実施している。
 また、海上保安庁および気象庁では、保全対策として放射能監視および放射性廃棄物の処理、処分対策における海洋環境調査のために、海水、海底および大気中の放射能調査等を行っている。
<図/表>
図1 国土交通省の組織の概略と原子力関連の組織図
図1  国土交通省の組織の概略と原子力関連の組織図
図2 陸上輸送に係る安全規制の流れ
図2  陸上輸送に係る安全規制の流れ
図3 核燃料物質の陸上輸送
図3  核燃料物質の陸上輸送

<関連タイトル>
原子炉等規制法の一部改正及び原災法の制定について(1999年11月) (10-02-02-06)
原子炉等規制法(平成24年改正前) (10-07-01-04)
原子炉等規制法(平成24年改正)の概要 (10-07-01-05)
放射線障害防止法 (10-07-01-06)
原子力災害対策特別措置法(原災法:2012年改定以前) (10-07-01-09)
わが国の核燃料物質輸送に係る安全規制 (11-02-06-01)

<参考文献>
(1)国土交通省:http://www.mlit.go.jp/
(2)原子力委員会(編):原子力白書(平成15年版)、国立印刷局(2003年12月)、p.262
(3)原子力安全委員会(編):原子力安全白書(平成15年版)、国立印刷局(2004年4月)、p.140−143, p.148, 152
(4)日本原子力産業会議(編集・発行):原子力年鑑2001/2002年版(2001年11月)、p.416
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