<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> エネルギー政策
<小項目> エネルギー政策の基本
<タイトル>
エネルギー基本計画 (01-09-01-07)

<概要>
 2003年10月7日、エネルギー政策の基本となる計画が閣議で決定された。この基本計画は、エネルギー安定供給の確保と環境問題への対応を二つ基本としている。とくに注目されるのは、ウラン資源の安定供給及び地球温暖化対策上優れた特性をもつエネルギーとしての原子力発電を基幹電源とての位置付けていることである。また、東京電力のトラブル隠しなどで信頼が揺らいでいる原子力発電は、安全確保を前提に推進すると明記している。
 電気・ガスなどエネルギー市場の自由化については、供給不安や環境破壊を引き起こさないように慎重に進めることとしている。
 分散型エネルギーシステムとして期待されている新エネルギー及び燃料電池については、技術開発、インフラ整備及び規制の見直しを含む総合戦略を強力に推進するとしている。水素エネルギーシステムについても、長期展望を踏まえた取組が記述されている。
<更新年月>
2003年12月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.はじめに
 資源小国のわが国は、特定の国やエネルギー源に偏らない「最適な組み合わせ(ベストミックス)」を政策の基本としてきたが、それが達成できなかった場合の責任が問題になることはなかった。ここに、十年先を見通した国のエネルギー政策の指針となる基本計画が、閣議で決定された。
 近年、わが国でも電力・ガス事業の自由化を推進してきたが、2002年6月に制定されたエネルギー政策基本法の作成にかかわった参院議員加納時男によると「この基本計画には、市場原理優先を見直し、安定供給と環境保全を二本柱にエネルギー政策を再構築する狙いがある」という。
 この基本計画では、所管する行政セクションごとに対応がばらばらで、横並びで扱われてきた各種エネルギーに、政策としてのメリハリをつけている。発電電力量の約3分の1を担い、地球温暖化対策上優れた特性をもつエネルギーとしての原子力発電は基幹電源と位置付けられている。また、東京電力のトラブル隠しなどで信頼が揺らいでいる原子力発電は、安全確保を前提に推進すると明記されている。
 議員立法で制定されたエネルギー政策基本法(第12条第4項)を受け、経済産業省において、総合資源エネルギー調査会基本計画部会(部会長:茅 陽一)における審議を踏まえつつ、2003年4月から10月にかけて計画策定に向けて作業が進められた。このあと10月7日の閣議で決定し、国会に報告された。
2.エネルギー基本計画の概要
 エネルギー基本計画は、エネルギー安定供給の確保と環境問題への対応の二つを基本とし、電気・ガスなどエネルギー市場の自由化は、供給不安や環境破壊を引き起こさないように慎重に進めることとしている。
 エネルギー基本計画の目次を表1に示す。4つの章から構成され、A4版で37ページからなる。経済産業省資源エネルギー庁は、これをまとめ、エネルギー基本計画(骨子)として発表している(表2-1表2-2表2-3)。
 原子力分野の関係者にとって関心深い原子力発電、核燃料サイクル、バックエンド事業及び新エネルギーについては、第2章第3節「多様なエネルギーの開発、導入及び利用」に、また、水素エネルギーシステムについては、第2章第6節「エネルギー需給構造についての長期展望を踏まえた取組」に記述されている。以下にその注目点を列記する。

○第2章第3節「多様なエネルギーの開発、導入及び利用」の1.「原子力の開発、導入及び利用」の中で、
・原子力発電の位置付け
 原子力発電は、ウラン資源の安定供給面及び二酸化炭素を排出しないという地球温暖化対策の面等で優れた特性を有し、安全確保を大前提に基幹電源として推進する。
・核燃料サイクルの確立
 核燃料サイクルは、供給安定性等に優れた原子力発電の特性を一層改善するものであり、この推進を国の基本的な考え方としている。安全の確保と核不拡散を前提として、着実に取り組むことが必要である。プルサーマルを当面の中軸として、国民の理解を得つつ着実に推進する。
・バックエンド事業
 国の施策としての推進と企業としての投資リスクの整合性を図ることが重要である。このため投資環境整備の観点から、適切な制度及び措置を検討し、整備していく必要がある。2004年末までに制度・措置を検討し、必要な措置を講ずる。

○第3節の2.「原子力の安全の確保と安心の醸成」の中で、
 国及び事業者は、一連の不正問題等を踏まえ、信頼を回復するため、透明性の確保と説明責任を果たしつつ、改革された安全規制制度の下で、不正の再発防止、安全確保を確実に実施する。

○第3節の3.「新エネルギーの開発、導入及び利用」の中で、
 新エネルギーは、当面は補完的エネルギーとして位置付けられるが、自給率向上、地球温暖化対策に資するとともに分散型エネルギーシステムとしても期待されている。燃料電池は広範な分野における応用が期待される戦略技術であり、技術開発、インフラ整備及び規制の見直しを含む総合戦略を強力に推進する。

○第2章第6節の3.「水素エネルギー社会の実現に向けた取組」の中で、
 原子力水素供給の位置付けについて、つぎの文言に注視されたい。
 「水素は利用段階ではゼロエミッションのエネルギー媒体であるものの、化石燃料から水素を製造する場合には二酸化炭素等が排出されることとなるため、化石燃料の改質による水素製造技術の改善を進める。また、製鉄所の副生ガス等の副生水素の活用、将来的には、二酸化炭素を極力排出しない手段、例えば、原子力や太陽光、バイオマスを活用した水素の製造等、化石燃料に依存しない水素の製造が実用化されることが期待される」
3.「エネルギー基本計画」案に対する見解
 資源エネルギー庁は、エネルギー基本計画(案)を閣議決定に諮る前に、パブリック・コメントの募集を行った。(社)日本原子力産業会議(現日本原子力産業協会)、福島県知事佐藤栄佐久、福島県エネルギー政策検討会、全国消費者団体連絡会などが見解や意見を述べている。この中で、日本原子力産業会議(現日本原子力産業協会)が提出した基本計画案に対する見解(2003年9月26日)は、全体にわたってコメントしながら、この計画を支持することを表明している。この見解は、基本計画の内容を理解するうえで助けとなるので、以下に紹介する。

 2002年6月に施行されたエネルギー政策基本法に基づき、今般、最終的な「エネルギー基本計画」案が公表された。地方自治体関係者からの意見も踏まえたうえで、わが国のエネルギー需給を長期的に見とおし、総合的に推進する具体的政策の考え方が明確に示されたことの意義は大きい。
 今般の計画案においては、安定供給に優れ環境負荷の少ない原子力の利用等について、その特性を的確に捉え、今後の利用のありかたについて重要な方向性が包括的に示されているものと評価を与えるとともに、支持を表明するものである。具体的な考えを以下に示す。
(1)エネルギー基本計画案においては、安定供給が可能であり、地球温暖化対策上優れた特性を有するエネルギーとしての原子力発電について、安全確保を大前提に、核燃料サイクルの確立と相まって基幹電源として推進することを明記した点が評価される。あわせて、原子力発電をはじめとするエネルギーの安定供給と安全の確保や国民の理解を得るための取組みにおいて官民双方の努力が必要だと指摘しているが、実際に事業を担う民間産業界においては、健全な推進のため体制の整備強化を進めるとともに、率先して、安全確保への品質保証システムや自主保安体制の確立、立地地域住民をはじめとする国民の理解や協力を得るため情報公開と説明責任を全うすべく、なお一層の取組みを進めることが重要と考える。
(2)計画案では、供給安定性等に優れている原子力発電の特性を一層改善する核燃料サイクルの推進を進めるにあたっては、安全性と核不拡散の確保を前提に、経済性に留意しつつ柔軟性のある取組みが必要と指摘したうえで、とくにプルトニウム利用の当面の中軸となるプルサーマルを着実に推進することが謳われている。プルサーマルは従来、電気事業者がウラン資源の有効利用等の観点から早期実施に向けて鋭意取り組んできた計画であり、今般の計画案で、エネルギー政策の一環として明確に推進の方針が示されたことを踏まえ、プルサーマルの意義をあらためて確認するとともに、事業者の活動に加え、国が前面に出た理解活動等とあわせて、その実現に向けて取り組みを進めていく所存である。
 また、プルサーマル推進の意味において、プルトニウムの長期的利用を進める上で不可欠な再処理事業の意義について基本計画案の中で明確な位置付けがなされたものと考える。これと呼応して、民間関係者においては、予定される再処理事業の操業に向け推進のための態勢や品質保証活動等に細心の注意を払い、所要の取り組みを図ることが極めて重要であることをここに確認したい。
(3)電力小売自由化と原子力発電および核燃料サイクル推進との両立について、自由化の拡大に伴い懸念される事業者側の投資リスクに配慮した上で、継続して原子力発電の推進を図るための諸制度整備の必要性が指摘されているとともに、バックエンド事業についても、国の政策としての推進と企業における投資リスクとの整合を図ることの重要性が指摘されている。このことから、今後は、事業者側の不断の経営努力とコスト削減への取組みを前提として、国においては、その円滑な遂行を支える制度的枠組み作りや、再処理、廃棄物処分などバックエンド事業への投資促進の環境整備を図るための適切な制度ならびに措置が講じられることが期待される。
(4)同計画案では、重点的に研究開発の施策を構ずべき技術として、原子力の長期安定利用の観点から、核燃料サイクル技術の研究開発の必要性が明示されている。資源小国のわが国においてエネルギー安全保障を実現する視点からも、輸入ウランの一層の有効活用を実現する高速炉開発や燃料サイクルの早期の確立に必要な研究開発を継続していくことは極めて重要であり、産業界としても同分野の研究開発については積極的に支援を行ってきたところである。今後は新法人が中心となることを明確にして、これらの分野における研究開発が拡充されることを期待する。また、原子力技術の多様な活用の観点からは、高温ガス炉や、将来的な見地から核融合などの研究開発の必要性も指摘しておくことが望ましいと考える。
(5)同計画案において、将来の水素エネルギー社会の実現に向けた取組みとして、燃料電池開発利用の高度化への期待が示される中で、本格的な水素供給のインフラ整備を進めることが述べられている。それとともに、化石燃料に依存しない原子力を利用した水素製造実用化への期待が示されていることから、来るべき水素エネルギー社会の需要に応えられるよう、国の誘導的施策とともに、新法人を中心として、原子力関係機関においても原子力技術を利用した水素製造の研究開発を着実に進めていくことが肝要と考える。
(6)エネルギー資源の大半を輸入に依存するわが国のエネルギー安全保障の観点からは、海外諸国との外交関係の強化や国際協力活動の推進を図ることで、円滑な資源流通環境をつくり、維持することが重要との認識を明確にしておくことが望ましい。
(7)今般の基本計画案は定性的指針としての側面が強調されているが、本来ならば、民間企業による事業計画の策定に際し、エネルギー基本計画の具体的数値が根拠となり参考とされるべきものである。さらには、京都議定書に基づく国際的公約として、わが国は1990年レベル比で6%の温室効果ガス排出削減が求められていること(現実には2001年度末で5.2%増加)を勘案すると、エネルギー政策の遂行に真に必要な数値を定量的に捉え、このような基本計画の中に具体的な目標値として明示することも必要であろう。
<図/表>
表1 エネルギー基本計画の目次
表2-1 エネルギー基本計画(骨子)(1/3)
表2-2 エネルギー基本計画(骨子)(2/3)
表2-3 エネルギー基本計画(骨子)(3/3)

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<関連タイトル>
エネルギー政策基本法 (01-09-01-06)

<参考文献>
(1)資源エネルギー庁:エネルギー基本計画について、報道発表(2003年10月7日)
(2)資源エネルギー庁:エネルギー基本計画(骨子)
(3)(社)日本原子力産業会議:「エネルギー基本計画」案に対する見解(2003年9月26日)、http://www.jaif.or.jp/ja/news/2003/0926.html
(4)堀 雅夫:高まる原子力による水素生産への期待、原子力eye、vol.49, no.10(2003年10月号), p.51
(5)日本経済新聞:「原子力発電 安全確保前提に推進」(2003年7月19日)
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