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<概要>
 原子力供給産業は、今後の原子力開発利用を支える重要な担い手として、「・原子力技術の改良、高度化」、「・信頼性の高い機器、燃料及び役務の供給」、「・技術の共通化等を通じた経済性の向上」、「・市場の国際化、国際競争力の向上」、「・核燃料サイクル、高速増殖炉等の今後の展開に向けた技術的基盤の強化」等を図っていくことが期待されている。軽水炉分野については、電気事業者との連携を図りつつ、技術開発を積極的に進めることが重要である。核燃料サイクル産業のうち、ウラン濃縮、再処理等については、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)から事業主体への技術移転を円滑に進め、事業主体の技術力の向上を図ることが重要である。また、今後は国際展開を図り、我が国の優れた技術力を積極的に示すことによって、我が国の原子力開発に対する海外の理解も深まることが期待される。本稿は原文を掲載する。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
第3章 我が国の原子力開発利用の将来計画
11. 原子力産業の展開
 原子力産業は、原子力機器、役務等を供給する原子力供給産業と電気事業者に分けられます。原子力供給産業には原子炉、機器等を供給する原子力機器供給産業、ウラン濃縮、燃料加工、再処理等を行う核燃料サイクル産業、保守等を行う原子力ソフト・サービス産業等があり、多種多様な企業群により構成されています。
 原子力産業は、総合的な装置産業という性格も有しており、原子力開発利用の進展はこれら広範な企業群を維持、活性化させることとなり、ひいては国民経済や雇用にも好影響を及ぼすことが期待されます。また、原子力発電は発電コストに占める機器設備等に要する割合が大きいため内需誘発効果が高いという面もあります。
 現在、原子力発電の経済性は化石燃料による発電と比べて同等以上ですが、原油価格の低迷、円高等により、差は狭まっており、今後、一層の経済性の向上が求められています。また、同時に安全性・信頼性の一層の向上も要求されています。
 このような状況の下で、原子力供給産業は調和のとれた複合産業として、これまでの技術力・開発力を維持向上させるとともに、産業として成熟・自立していくことが望まれます。
 原子力供給産業は、今後の原子力開発利用を支える重要な担い手として、
 ・原子力技術の改良・高度化
 ・信頼性の高い機器、燃料及び役務の供給
 ・技術の共通化等を通じた経済性の向上
 ・市場の国際化、国際競争力の向上
 ・核燃料サイクル、高速増殖炉等の今後の展開に向けた技術的基盤の強化
等を図っていくことが期待されています。このため、原子力供給産業自らが今後とも高い意欲を持って研究開発に取り組むことが重要です。また、原子力供給産業の需要は電気事業者の設備投資、研究開発投資に負うところが大きいことから、電気事業者は長期的視点に立ち、適切かつ計画的にこれを行うことが期待されている等その役割は極めて大きいものです。一方、政府関係研究開発機関は、民間との共同研究の推進等技術開発における連携を図り、人材の交流・移籍、施設の活用、データベースの整備及び提供等を通じて技術力の向上に寄与していくことが重要です。
 さらに、原子力産業が研究開発意欲を向上させ、その研究開発活動が円滑に進むよう環境整備を図ることも重要です。
1) 技術的基盤の維持向上
 軽水炉分野については既に産業として定着していることから、今後、安全性・信頼性・経済性の一層の向上の要請に応えるなど軽水炉主流時代の長期化に向けた諸課題に対応していく必要がありますが、これらについては原子力供給産業が長期的視点に立ち、電気事業者との連携を図りつつ、技術開発を積極的に進めることが重要であり、必要に応じてその技術の実用化に際して国が適切な支援等を検討することも必要です。
 核燃料サイクル産業のうちウラン濃縮、再処理等については、事業化が具体的に進展しているところであり、これまで開発を進めてきた動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)から事業主体への技術移転を円滑に進め、事業主体の技術力の向上を図ることが重要です。また、国際競争力をも有する自立型の産業への展開に向けて技術的基盤を強化していく必要があり、関係機関が協力して、それぞれの特長を活かしつつ長期的視点に立って研究開発を進めていく必要があります。
2) 国際的展開
 国際協力については、原子力先進国としての我が国の国際貢献の視点及び長期的視点に立って、核不拡散の確保を前提としつつ、国は開発途上国におけるニーズの把握、協力の進展に応じた二国間原子力協力協定の締結等により、原子力平和利用の協力の基盤を整備するとともに、相手国のニーズ、レベルに応じた研究交流、原子力発電に係る協力等を進めていくことが重要です。
 我が国の原子力機器供給産業は、プラントの信頼性・安全性等の点で優れた技術力を有しており、これまでも十分な実績を挙げてきています。また、これらを背景に海外から原子力機器供給について期待が高まっています。今後、国際展開を図り、我が国の優れた技術力を積極的に示すことによって、我が国の原子力開発に対する海外の理解も深まることが期待されます。このため、相手国の国情等を勘案し、安全性と核不拡散の確保の観点を十分に踏まえた協力の在り方について検討していくことが必要です。その際、国は、原子力機器供給産業の国際競争力の強化等、国際展開に必要な措置を講じていくことが重要です。
<関連タイトル>
国内外の理解の増進と情報の公開(平成6年原子力委員会) (10-01-04-03)
原子力発電の将来見通しと原子力施設の立地の促進(平成6年原子力委員会) (10-01-04-04)
軽水炉体系による原子力発電(平成6年原子力委員会) (10-01-04-05)
核燃料リサイクルの技術開発[その1](平成6年原子力委員会) (10-01-04-06)
核燃料リサイクルの技術開発[その2](平成6年原子力委員会) (10-01-04-07)
核燃料リサイクルの技術開発[その3](平成6年原子力委員会) (10-01-04-08)
バックエンド対策[その1](平成6年原子力委員会) (10-01-04-09)
バックエンド対策[その2](平成6年原子力委員会) (10-01-04-10)
バックエンド対策[その3](平成6年原子力委員会) (10-01-04-11)
国際協力の推進(平成6年原子力委員会) (10-01-04-14)

<参考文献>
(1)原子力委員会(編):21世紀の扉を拓く原子力 −原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画− 大蔵省印刷局(平成6年8月30日)
(2)原子力委員会(編):原子力白書 平成6年版 大蔵省印刷局(平成7年2月1日)
(3)日本原子力産業会議:原子力産業新聞 第1754号(1994年8月11日)
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