<本文>
第3章 我が国の原子力開発利用の将来計画
6.
核燃料リサイクルの技術開発
(1)
核燃料リサイクル計画の具体化
1) MOX燃料利用
(イ) 軽水炉による利用
軽水炉によるMOX燃料の利用は、将来の
高速増殖炉の実用化に向けた実用規模の核燃料リサイクルに必要な技術の確立、体制の整備等の観点から重要であり、エネルギー供給面で一定の役割を果たすことにも留意しながら、これを計画的に進めていきます。
現在の
原子力発電所においても既に炉内でウランがプルトニウムに転換され、このプルトニウムの
核分裂が、
原子力発電から得られるエネルギーの約3分の1を担っています。軽水炉によるMOX燃料利用は、海外において多くの実績があり、我が国の少数体規模での実証計画において燃料のふるまい等について良好な結果が得られていることを踏まえると、現在の軽水炉でMOX燃料を利用することについては、特段の技術的問題はないと言えます。今後、我が国においては、燃料仕様の共通化等により一層の経済性の向上を目指していくことが重要です。
軽水炉でのMOX燃料利用は、再処理施設の規模等を勘案し、高速増殖炉の実用化までの間、適切な規模で経済的に行っていく必要があります。具体的には、1990年代後半から加圧水型軽水炉(
PWR)と沸騰水型軽水炉(
BWR)それぞれ少数基において利用を開始し、2000年頃に10基程度、その後、2010年までには十数基程度の規模にまで計画的かつ弾力的に拡大することが適当です。
(ロ) 新型転換炉による利用
新型転換炉は、プルトニウム、回収
ウラン等を柔軟かつ効率的に利用できるという特長を持つ
原子炉として自主開発を進めてきており、新型転換炉による核燃料リサイクルを継続することによりMOX燃料の利用について国内外の理解と信頼を深めることは、将来の高速増殖炉による本格的なリサイクルを実現する上で重要です。原型炉「ふげん」については、核燃料リサイクル上の柔軟性を活かした技術の実証や新型転換炉の基盤技術の高度化を目指し、実証炉開発にも有効に活用するため運転を継続します。実証炉(電気出力約60万kW)については電源開発(株)が、青森県大間町に2000年代初頭の運転開始を目標に建設計画を進めていきます。その後の計画については、実証炉の建設の状況、実用化に向けての経済性の見通し、核燃料リサイクル体系全体の開発状況等を踏まえつつ対処するものとし、適切な時期に具体的に検討していく必要があります。
2)
使用済燃料再処理
使用済燃料の年間発生量は、2000年、2010年、2030年において、それぞれ800〜1000トン、1000〜1500トン、1500〜2300トンと予想されますが、我が国は、使用済燃料は再処理し、回収したプルトニウムやウランを利用することを基本としており、核燃料リサイクルの自主性を確実なものとするなどの観点から、再処理を国内で行うことを原則とします。なお、海外再処理委託については、国内外の諸情勢を総合的に勘案しつつ、慎重に対処することとします。
東海再処理工場は、安定運転を進め、六ケ所再処理工場の操業開始まで再処理需要の一部を賄うとともに、同工場の操業開始以降は、軽水炉MOX使用済燃料、新型転換炉使用済燃料、高速増殖炉使用済燃料等の再処理のための技術開発の場として活用していきます。
現在建設中の六ケ所再処理工場(年間処理能力800トン)については、2000年過ぎの操業開始を目指すこととし、その順調な建設、運転により商業規模での再処理技術の着実な定着を図っていきます。
民間第二再処理工場は、核燃料リサイクルの本格化時代において所要の核燃料の供給を担うものとして重要な意義を持っています。同工場は、六ケ所再処理工場の建設・運転経験や国内の今後の技術開発の成果を踏まえて設計・建設することを基本とし、軽水炉MOX燃料等も再処理が可能なものとするとともに優れた経済性を目指すこととします。その建設計画については、プルトニウムの需給動向、高速増殖炉の実用化の見通し、高速増殖炉使用済燃料再処理技術を含む今後の技術開発の進展等を総合的に勘案する必要があり、六ケ所再処理工場の計画等を考慮して、2010年頃に再処理能力、利用技術などについて方針を決定することとします。
研究用原子炉等の使用済燃料については、再処理又は長期保管することとし、その具体的方策について関係機関で検討を進めていきます。
3) 使用済燃料の貯蔵・管理
使用済燃料は、プルトニウムや未燃焼のウランを含む準国産の有用なエネルギー資源の一つと位置付けられることから、国内の再処理能力を上回るものについては、エネルギー資源の備蓄として、再処理するまでの間、適切に貯蔵・管理することとします。これらは、当面は発電所内で従来からの方法で貯蔵することを原則としますが、貯蔵の見通しを勘案して将来的な貯蔵の方法等についても検討を進めます。
また、今後、軽水炉によるMOX燃料等の利用に伴って発生する使用済燃料についても、再処理するまでの間、発電所内で適切に貯蔵・管理します。
4) MOX燃料加工
(イ) 軽水炉用MOX燃料加工
海外再処理により回収されるプルトニウムについては、基本的には欧州においてMOX燃料に加工し、1990年代後半から開始される我が国の軽水炉によるMOX燃料利用に使用することが適当であり、電気事業者は、この計画を実施するための検討、準備を進めることとします。その際、我が国と原子力協力協定を締結していない国が関係する場合には、国は、平和利用担保のために必要な措置を講じます。
また、軽水炉によるMOX燃料利用計画と六ケ所再処理工場の操業を踏まえると、2000年過ぎには年間100トン弱程度の規模の国内MOX燃料加工の事業化を図ることが必要です。このため、電気事業者が中心となって加工事業主体を早急に確定するとともに、
動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)からの円滑な技術移転を図るため、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)のMOX燃料加工施設の活用について、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)と民間関係者の間で早急に結論を得ることが重要です。なお、国は民間事業化のために必要な支援方策について検討します。
(ロ) 新型転換炉用MOX燃料加工
原型炉「ふげん」用MOX燃料加工については、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)において、MOX燃料加工施設の所要の設備整備を進めます。
また、実証炉用MOX燃料については、新型転換炉用MOX燃料加工技術の実証を含め、同施設において燃料を加工できるよう、実証炉建設計画の進捗状況等も勘案しつつ、追加的な設備整備等について関係者で検討していくこととします。
5) MOX燃料等の返還輸送
1992年度に実施された「あかつき丸」によるプルトニウム返還輸送は、輸送が日米原子力協定等の規定等に従って、確実かつ安全に実施できることを実証しました。今後のMOX燃料等の返還輸送については、電気事業者等関係者において実施体制を検討していくこととします。また、返還輸送については、国際的な理解と協力を得ていく必要があり、輸送の安全性、必要性等に係る情報提供や広報活動を適切に実施していくこととします。
<関連タイトル>
原子力開発利用の基本方針(平成6年原子力委員会) (10-01-03-03)
核燃料リサイクルの技術開発[その2](平成6年原子力委員会) (10-01-04-07)
核燃料リサイクルの技術開発[その3](平成6年原子力委員会) (10-01-04-08)
<参考文献>
(1)原子力委員会(編):21世紀の扉を拓く原子力 −原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画− 大蔵省印刷局(平成6年8月30日)
(2)原子力委員会(編):原子力白書 平成6年版 大蔵省印刷局(平成7年2月1日)
(3)日本原子力産業会議:原子力産業新聞 第1752号(1994年7月28日)