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<概要>
 高速増殖炉技術の開発は、再処理MOX燃料 加工の燃料サイクル技術と整合性のとれた開発を進め、総合的な核燃料リサイクル技術体系の確立を目指す。実証炉の開発は電気事業者が進め、高速増殖炉固有の技術の研究開発は国が行い、動力炉核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)は実用化までの技術開発の中心的役割を果たす。実証炉は2基建設し、2030年頃までに実用化が可能となるよう技術体系の確立を目指す。実証炉1号炉は、着工目標を2000年代初頭とする。再処理及び燃料加工技術の開発は、2000年代の早い時期に高速増殖炉再処理技術の確立を目指し、2010年代半ばの試験プラント運転開始を目標に建設計画を具体化し、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)の燃料加工施設によるMOX燃料加工等を通じて、高速増殖炉用燃料加工技術の高度化等を図り、実用化への見通しを得る。先進的核燃料サイクル技術については、長期的な研究開発に取り組む。本稿は原文を掲載する。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
第3章 我が国の原子力開発利用の将来計画
6.核燃料リサイクルの技術開発
(2) 将来の核燃料リサイクル体系の確立に向けた技術の開発
1) 高速増殖炉技術の開発
 (イ) 高速増殖炉開発の長期的な進め方
  高速増殖炉は、発電しながら消費した以上の核燃料を生成することができる原子炉であり、軽水炉などに比べてウラン資源の利用効率を飛躍的に高めることができることから、将来的に核燃料リサイクル体系の中核として位置付けられるものです。エネルギー資源に乏しい我が国としては、高速増殖炉を相当期間にわたる軽水炉との併用期間を経て将来の原子力発電の主流にしていくべきものとして、その開発を計画的かつ着実に進めていくこととします。高速増殖炉は核燃料をリサイクルしてはじめてその真価が発揮されるものであり、再処理、MOX燃料加工等の燃料サイクル技術と整合性のとれた開発を進め、総合的な核燃料リサイクル技術体系の確立を目指していきます。
  また、軽水炉と経済性において競合し得る高速増殖炉の開発を目標に置き、そこに至る具体的な過程に柔軟性を持たせつつできるだけ明確にし、それぞれの段階における開発目標を段階的に達成していくこととします。
  高速増殖炉の開発は、国を中心とした原型炉もんじゅ」までの開発成果に基づいて電気事業者がこれに続く実証炉を建設し、発電プラント技術の習熟、性能の向上、経済性の確立を図っていく段階に入りつつありますが、今後は電気事業者が進める実証炉の開発と国を中心とした高速増殖炉固有の技術の研究開発を両輪として官民連携の下、開発を進め、安全性、信頼性はもとより、経済性のさらなる向上を図っていくこととします。
  動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)は、高速増殖炉の実用化までを見通し、長期的に継続して主体的な研究開発を実施し、高速増殖炉固有の技術体系を確立していくこととし、技術開発の中核的役割を果たしていくものとします。
  今後、実用化までに建設される2基の実証炉において革新的技術、大出力化に必要な技術などを実証することにより軽水炉並みの建設費を達成していくこととします。また、革新的技術の開発状況はもとより、円滑な技術の継承等も勘案しつつ、適切な間隔で実証炉1号炉、これに続く実証炉2号炉の建設を進め、燃料サイクル技術の開発と整合性をとりつつ2030年頃までには実用化が可能となるよう高速増殖炉の技術体系の確立を目指していきます。
  なお、高速増殖炉の開発過程における核燃料の増殖については、その性能の確認は行いますが、プルトニウムの需給動向、国際情勢等の観点から弾力的に考えていくこととします。
  また、高速増殖炉の開発に当たっては、その成果が国際公共財的な役割を発揮できるよう国際的に協調して進めることが透明性の向上のためにも重要であり、欧米諸国の研究者の参画を求めつつ、開かれた体制の下、「常陽」、「もんじゅ」等の積極的活用を図っていきます。
(ロ) 実証炉1号炉を中心とする当面の開発の進め方
  高速実験炉「常陽」については、照射性能を向上させ、引き続き高速増殖炉の実用化のための燃料・材料開発用照射炉として活用していきます。
  原型炉「もんじゅ」については、性能試験を着実に進め、1995年末の本格運転を目指しますが、その後も高速増殖炉技術を確立するための試験デ—タを取得するとともに原型炉としての運転実績を積み重ね、その安全性、信頼性等を実証していきます。さらに、炉心性能等の向上を図り、得られる成果を実証炉以降の高速増殖炉開発に反映していきます。
  実証炉1号炉は、電気出力約66万kWとし、ループ型炉の技術を発展させたトップエントリ方式ループ型炉を採用するとともに、経済性を向上し実用化を展望できる新たな革新的技術を積極的に取り入れることとします。同炉は、これらの開発の見通しや原型炉「もんじゅ」の運転実績の反映等を考慮して、2000年代初頭に着工することを目標に計画を進めることとし、電気事業者は、必要な技術開発を進めるとともに、その着工に向けての所要の準備を進めるものとします。
2) 再処理技術及び燃料加工技術の開発
 (イ) 使用済燃料の再処理技術
  高速増殖炉の使用済燃料は、プルトニウムの含有量が多いこと、軽水炉等に比べ燃焼度が高くなることなどから、これらに対応した再処理技術を確立することが必要であり、今後とも動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)を中心に実用化に向けて研究開発を進めていくこととします。
動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)は、再処理のプロセス・エンジニアリングの確立を図るため、工学規模のリサイクル機器試験施設RETF)を2000年過ぎの運転開始を目標に建設し、このRETF等を活用して必要な研究開発を行い、2000年代の早い時期に現行の湿式法に基づく再処理技術の確立を目指すこととします。
  さらにRETFと将来の実用プラントをつなぐ試験プラントについては、今後得られる新たな技術や先進的核燃料リサイクル技術の研究開発の成果も踏まえることとし、2010年代半ば頃の運転開始を目標に、その建設計画を具体化していきます。
(ロ) MOX燃料加工技術
  実証炉1号炉用MOX燃料の加工については、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)の燃料加工施設を有効に活用することとし、必要な施設等の整備を図っていきます。また、原型炉「もんじゅ」用の次世代高性能燃料と実証炉1号炉用の初装荷燃料の加工を通じて、高速増殖炉用燃料加工技術の高度化、経済性の向上を図り、実用化への見通しを得ていくこととします。
3) 先進的核燃料リサイクル技術の研究開発
 原子力開発利用に当たっては、安全性、信頼性、経済性等の向上のみならず環境への負荷の低減、核不拡散性への配慮など将来の社会の多様なニーズに対応できる技術の可能性を追求し、技術の選択の幅を広げていくことが重要です。
 このため、我が国が実用化を目指している現行のリサイクルシステムの他に高速増殖炉技術をベースにした新たなリサイクルシステムとして、窒化物燃料、金属燃料等の新型燃料によるリサイクルやアクチニドのリサイクルを行う先進的な核燃料リサイクル技術について長期的な研究開発に取り組んでいきます。
 これらの技術は未だ初期的な研究段階にあることから、今後長期にわたりその可能性を追求するための研究開発が必要であり、当面は、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)等において必要な試験施設・設備の整備を進めるとともに、試験炉の必要性についても検討していきます。
 なお、今後の具体的展開については、原子力委員会の核燃料リサイクル専門部会において早急に検討を進めることとします。
<関連タイトル>
原子力開発利用の基本方針(平成6年原子力委員会) (10-01-03-03)
核燃料リサイクルの技術開発[その1](平成6年原子力委員会) (10-01-04-06)
核燃料リサイクルの技術開発[その3](平成6年原子力委員会) (10-01-04-08)

<参考文献>
(1)原子力委員会(編):21世紀の扉を拓く原子力 −原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画− 大蔵省印刷局(平成6年8月30日)
(2)原子力委員会(編):原子力白書 平成6年版 大蔵省印刷局(平成7年2月1日)
(3)日本原子力産業会議:原子力産業新聞 第1752号(1994年7月28日)
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