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<概要>
 核燃料リサイクルの推進に当たり、我が国は余剰のプルトニウムを持たないとの原則の下に、プルトニウム利用計画を明らかにし、その透明性を高めてゆくこととしている。
 我が国のプルトニウム需給の見通しは、関連する計画の進捗状況によって変わり得るものであるが、現時点での各々の計画の見通しに沿って、「国内再処理によって回収されるプルトニウム」及び「海外再処理によって回収されるプルトニウム」の2ケースについて需給見通しを試算した。その結果、核燃料リサイクルを推進するに当たっては適切なランニングストックは必要であるが、我が国の今後の核燃料リサイクル計画に基づくプルトニウムの需給は、いずれのケースもバランスしており、「余剰のプルトニウムは持たない」との原則に沿ったものとなっている。我が国としては、今後ともこの原則を厳守していることを内外に示していく。本稿は原文を掲載する。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
第3章 我が国の原子力開発利用の将来計画
6.核燃料リサイクルの技術開発
(3) 核燃料リサイクル計画の透明性の向上
 我が国は、核燃料リサイクルを推進するに当たって、余剰のプルトニウムを持たないとの原則の下、プルトニウム利用計画を具体的に明らかにし、その透明性を高めていくこととしています。
 我が国の今後のプルトニウム需給見通しについては、計画の進捗状況によって変わり得るものですが、現時点での各々の計画の見通しに沿って試算をすれば次のとおりになります。なお、プルトニウム量は核分裂性プルトニウム量です。
<国内再処理によって回収されるプルトニウム>
 我が国の国内再処理によって回収されるプルトニウムの需給見通しに関しては、六ケ所再処理工場が操業を開始する以前について、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)が所有する高速増殖原型炉「もんじゅ」等の研究開発用に約0.6トン/年の需要に対し、東海再処理工場で回収されるプルトニウム量は約0.4トン/年で、単年毎に見れば、国内的には需要が供給を上回る状態が続くことになります。なお、1990年代末までの累積需給については、東海再処理工場からのプルトニウムと既に海外から返還されているプルトニウムを合わせた約4トンが、高速増殖原型炉「もんじゅ」等の研究開発用に使用されます。
 六ケ所再処理工場が本格的に操業される2000年代後半の段階においては、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)が所有する高速増殖原型炉「もんじゅ」等の研究開発用などの約0.8トン/年の需要に、高速増殖実証炉の約0.7トン/年、新型転換実証炉の約0.5トン/年及び軽水炉によるMOX燃料 利用の約3トン/年が加わり、合計で約5トン/年の需要となり、供給は六ケ所再処理工場からの約4.8トン/年及び研究開発を中心とする東海再処理工場からの約0.2トン/年の合計約5トン/年となります。なお、2000年から2010年の間に国内で回収されるプルトニウムは、六ケ所再処理工場と東海再処理工場をあわせて約35〜45トンとなり、これは、高速増殖炉、新型転換炉等の研究開発用に約15〜20トン及び軽水炉MOX燃料用に約20〜25トンが使用されます。
<海外再処理によって回収されるプルトニウム>
 我が国の電気事業者と英仏の再処理事業者の再処理契約によって、2010年頃までにはプルトニウムが順次回収されるとともに、我が国の核燃料リサイクル計画に沿って、その全量が順次返還され使用されます。既契約の使用済燃料から推算すると、回収されるプルトニウムは累積量で約30トンと見込まれますが、これらは、基本的には、海外において軽水炉MOX燃料に加工された後、我が国に返還輸送して軽水炉で利用されることとなります。なお、六ケ所再処理工場が本格的に運転を開始する以前において、高速増殖炉、新型転換炉等の研究開発用の国内のプルトニウムが若干不足することが予想されます。この場合には、海外再処理によって回収されるプルトニウムのうち、数トン程度は研究開発用に用いられることとなります。
 実際の核燃料リサイクル計画を円滑に進めるに当たっては適切なランニングストックは必要ですが、以上のように、我が国の今後の核燃料リサイクル計画に基づくプルトニウムの需給はバランスしており、余剰のプルトニウムは持たないとの原則に沿ったものとなっています。
 我が国としては、今後ともこの原則を厳守していることを内外に示していきます。
<関連タイトル>
核不拡散へ向けての国際的信頼の確立(平成6年原子力委員会) (10-01-04-01)
核燃料リサイクルの技術開発[その1](平成6年原子力委員会) (10-01-04-06)
核燃料リサイクルの技術開発[その2](平成6年原子力委員会) (10-01-04-07)

<参考文献>
(1)原子力委員会(編):21世紀の扉を拓く原子力 −原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画− 大蔵省印刷局(平成6年8月30日)
(2)原子力委員会(編):原子力白書 平成6年版 大蔵省印刷局(平成7年2月1日)
(3)日本原子力産業会議:原子力産業新聞 第1752号(1994年7月28日)
(4)日本原子力産業会議:原子力産業新聞 第1753号(1994年8月4日)
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