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<概要>
 国内外の理解の増進と情報の公開を次のとおり行う。(1)国民の理解の増進と情報の公開;原子力開発利用を円滑に進めるためには、「国民とともにある原子力」でなければならない。国民参加型の意見交換の場等を通じた国民が納得できる行政運営に努め、国民が判断する際の基礎となる情報を適時的確に提供していく。青少年に対し、科学技術、エネルギー、環境等の正確な知識を普及し、原子力に関する学習機会を確保・充実するため、研修施設の整備、科学館等における展示の充実や分かりやすい資料の充実等に努めていく。(2)国際的な理解の増進;厳しく平和利用に限るとともに、核物質が核兵器に転用されないよう万全の措置を講じていること、安全を確保してきたことへの実績を積極的に示していく努力が必要である。特に、我が国の核燃料リサイクルへの取り組みに対する理解を得るため、積極的な広報活動を行う必要がある。本稿は原文を掲載する。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
第3章 我が国の原子力開発利用の将来計画
3.国内外の理解の増進と情報の公開
(1) 国民の理解の増進と情報の公開
 原子力開発利用を円滑に進めていくためには、「国民とともにある原子力」でなければならず、そのためには、まず国、原子力事業者に対する国民の信頼感、安心感を得ることが重要です。
 信頼感、安心感の醸成には安全確保や核不拡散の実績を着実に積み重ねることが第一ですが、国民参加型の意見交換の場等を通じた国民が納得できる行政運営に努めることも重要です。また、行政は国民の支持の下に推進されるべきものですから、国民が判断する際の基礎となる情報を適時的確に提供していくよう努めることが重要です。
 情報の提供については、従来から努力してきたところですがなお不十分という声が国民の中にあります。
 その背景として、まず、公開情報が不当に制限されているという意識があることが考えられ、さらには、知りたい情報が公開されてはいるものの、情報へのアクセスが困難であったり、内容が難解であったりするため公開感が得られていないということが考えられます。前者については、公開を原則とします。もちろん、核物質防護、核不拡散、財産権の保護に関する情報など非公開とすべきものはありますが、都合の良い情報のみを選択的に提供しているとの非難を受けることのないよう一層配慮していくこととします。後者については、情報公開そのものというよりはむしろ広く情報提供という観点で捉え、情報ネットワークを活用した情報提供、「草の根」的な広報、体験型の広報など実効性のある事業を体系的に実施していくとともに、多様な組織との連携の促進等を通じて広報事業そのものの周知を図っていきます。また、情報提供という観点から報道機関の果たす役割は極めて重要ですから、報道関係者に対し、正確で客観的な情報を適時的確に提供するよう努めます。
 より多くの人々が原子力に対する客観的な判断力を持つようになることが期待されますが、将来を考えると青少年に対する原子力についての正確な知識の普及はとりわけ重要であり、このことは今後の原子力分野の人材の裾野を広げることにもつながります。その際、原子力のみを特殊な分野と捉えることなく科学技術、エネルギー、環境等との関連でバランスよく正確な知識を普及していくことが重要です。このような観点から、青少年の原子力に関する学習機会を確保・充実するため、研修施設の整備、科学館等における展示の充実や青少年にも分かりやすい資料の充実等に努めていきます。また、学校教育に原子力を取り上げることの重要性に鑑み、関係省庁の緊密な連携の下、現場のニーズに応じた教師の研修など具体的方策を拡充していきます。

(2) 国際的な理解の増進
 近年、核不拡散や原子力の安全確保に関する関心が、国際的に高まっています。その中で、我が国の原子力開発利用を円滑に進めていくためには、世界の国々から理解と信頼を得ることが必要です。そのため、我が国の原子力開発利用の意義、計画の具体的内容について、合理性を確保することはもちろんのこと、我が国の原子力開発利用の推進が、世界のエネルギーの安定供給に寄与することや、我が国の原子力平和利用に関する技術が世界の原子力の安全性向上などに役立つことを示すことも国際的な理解の増進につながると考えられます。また、過去30年以上にわたって、厳しく平和利用に限るとともに核物質が核兵器に転用されないよう万全の措置を講じていること、安全を確保してきたことの実績を積極的に示していく努力が必要です。
 特に、我が国の核燃料リサイクルへの取組に対する理解を得るため、積極的な広報活動を行う必要があります。このため、核燃料リサイクルを推進する意義、計画の具体的内容、核不拡散努力等について説得力のある情報を各国との協議の場で提供して理解の促進を図っていくとともに、積極的に広く海外に情報を発信するような体制を確立していきます。また、核不拡散に配慮しながら、核燃料リサイクル関係施設への訪問や技術者との対話の機会を広く海外の関係者に提供し、実態に即した理解を得られるよう配慮します。
<関連タイトル>
原子力委員会と長期計画(平成6年原子力委員会) (10-01-01-01)
長期計画改定の背景(平成6年原子力委員会) (10-01-01-02)
長期計画策定に当たっての配慮事項(平成6年原子力委員会) (10-01-01-03)

<参考文献>
(1)原子力委員会(編):21世紀の扉を拓く原子力 −原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画− 大蔵省印刷局(平成6年8月30日)
(2)原子力委員会(編):原子力白書 平成6年版 大蔵省印刷局(平成7年2月1日)
(3)日本原子力産業会議:原子力産業新聞 第1752号(1994年7月28日)
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