<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設に係わる放射線防護
<小項目> 放射線防護設備・資機材
<タイトル>
放射線防護機材(マスク、手袋、衣服等) (09-04-10-02)

<概要>
 放射線防護機材(マスク、手袋、衣服等)は、放射性空気汚染物質あるいは表面汚染物質から人体表面の汚染と体内被ばくを防護するために使用される防護機材である。いずれも個人が着用して使用されるもので個人保護具とも呼ばれる。防護の対象となるものは、多くの種類の放射性エアロゾルとガス及び表面汚染である。これらの防護機材は、一般労働衛生上の保護具としての役割も同時に担っている。
<更新年月>
2001年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 放射線防護機材(マスク、手袋、衣服等)は個人が着用し、作業に伴って発生するあらゆる放射性空気汚染物質あるいは表面汚染物質から人体表面の汚染と体内被ばくを防護するために使用される。防護の対象となるものは、多くの種類の放射性エアロゾルとガス及び表面汚染であり、代表的なものに核分裂生成物エアロゾル、プルトニウムエアロゾル、放射性ヨウ素ガスなどがある。表面汚染のみが問題となる場合には手袋、衣服が、空気汚染がある場合にはマスク類が使用される。β線の場合を除いて、外部被ばくの防護に対して、これらは無効である。
 防護機材を大別すると一般に、(1)身体汚染の防止の観点から使用される保護衣類と(2)空気汚染吸入の保護の観点から使用される呼吸保護具がある。(3)なかには、全身を包み身体汚染の保護と吸入防護の機能を兼ね備えた換気加圧型防護服などがある。
 保護衣類・・・保護衣類には、下着(シャツ、ズボン下)、靴下、服(エプロン、実験着、カバーオール)、アノラック、手袋(綿、塩ビ、ポリエチレン、天然・合成・含鉛ゴム)、靴(単靴、長靴、安全靴、靴カバー)、帽子(綿帽、ヘルメット)、腕カバー、防護メガネ等が適時使用されている。これらは、使用する区域に応じて色分けされて使用されることが多い。
 防護手袋は、日本工業規格(JIS)の仕様によれば(1)放射性物質による手の汚染を防ぐため用いられるゴム手袋で、材料には厚さ0.2〜0.35mmの天然ゴムラテックスが使われ、特にピンホールのないことが要求されている(JIS Z4812)。(2)管電圧150kV以下のX線 診療で被ばくを低くするために用いる含鉛のゴム手袋で、0.25〜0.5mmPbの鉛当量を持ち、手全体及び前腕の1/2以上が覆われる形式とした手袋である(JIS Z4802)。
 呼吸保護具は 表1 に示すように大きく3つに分類される。
1)浄気式呼吸保護具
 口と鼻の部分のみをカバーする半面マスク、顔全体をカバーする全面マスクなど肺力によって作業環境の空気を面体に取り付けた粒子フィルタあるいは呼吸缶で濾過しながら呼吸するもので、小型軽量であるため、使用が大変簡単である。個人に配布されて最も使用される頻度が大きい。全面マスクの構造を 図1 に示す。これらのマスクでは顔との密着性能により防護効果は大きく左右される。最近普及しつつあるバッテリー駆動式の空気濾過装置を携行する動力浄気式のマスクは、面体が常に陽圧に維持されていると誰でも大きい防護効果が得られる。
2)自給式呼吸保護具
 いわゆる呼吸器と呼ばれるもので、ボンベに充填した圧縮空気(または酸素)を、あるいは化学反応で発生させた酸素を通常は全面マスクを通して呼吸するものである。吸気時に面体が負圧になるもの(デマンド型)と吸気時においても面体内が陽圧に保たれるもの(プレッシャーデマンド型)があり、後者では大きな防護係数が得られる。この呼吸器の使用時間はボンベの保持空気量によって制限されるので、長時間の活動には予備のボンベの準備が必要である。
3)空気供給式呼吸保護具
 空気汚染の心配のない区域から清浄な空気を加圧ホースを通して全面マスク、フード、ブラウスやスーツ(換気加圧服)内に給気するものである。換気加圧服は最も防護効果が大きいものの一つであり、高濃度汚染雰囲気での比較的長時間作業を安全に行うために使用される。トリチウムの保護などを対象とする場合には、服の材料を通しての浸透性に注意せねばならない。換気加圧服と全身密閉服の例を 図2 に示す。
 呼吸保護具を実際に着用したときに得られる防護効果は、種々の因子によって影響されるので一概には決まらないが、表1に示した防護係数が1つの選定の目安として与えられており参考になる。
 防護係数(protection factor:PF)は、ここでは防護器具での防護効果を表す係数で、例えば防護マスクの防護係数が40であれば、マスクを着けないときに比べ、着けたときの摂取量は1/40に低下することを意味する。
 防護係数は次式で定義される
    防護係数(PF)=環境中濃度(C0)/呼吸保護具内濃度(Ci)
 この係数が大きいほど防護効果は大きいことを表す。
 表1のPF値は多くの実測値から決められたもので、使用経験が十分である、決められた使い方を守っている、維持管理が適切であるなどの条件が満たされていれば、着用者の95%がこの防護係数以上の性能を得るであろうという値である。
 事故や火災時のような緊急時においては、現場が混沌としていたり高濃度の空気汚染、酸欠が疑われるような状況では、行動性のある自給式呼吸器が用いられる。特に面体内が常に陽圧に保たれるプレッシャデマンド型の呼吸器は防護係数も高いので、適切な保護衣類と共に緊急時の初期の防護活動に無くてはならないものである。防護係数の最も高い空気供給式の加圧服もこのような状況の下では、スーツの切り裂きの恐れや、エアラインホースの破損、停電による送風の喪失の恐れがあり使用に適さない。 防護具をじっさいに使用するに当たっては、作業現場の条件に最も適したものを選ぶことになる。先ず、第1には、空気汚染や床汚染のレベルを参考にしてどの程度の防護係数が必要かが決められ、作業性や着用感の良いもの、着脱や除染の容易なものが選ばれる。また、放射能以外の危険性も考慮する必要がある。通話能力は極めて重要な要素である。
 実際の作業に当たっての防護具の選択の基準のようなものは、事業所ごとに決められており、常に現場の状況をよく把握している放射線管理担当者と協議して決められる。選んだ防護具の性能はそれを使用するユーザの熟練度に大きく依存している。着用の繰り返し訓練とともに実際の着用時の防護係数が客観的に評価できれば訓練の成果も大きい。
 呼吸保護具を着用したときの防護効果は、塩化ナトリウムなどのエアロゾルをトレーサとしたマンテスト( 図3 )によって実測される。環境中のエアロゾル濃度と呼吸保護具内の濃度の測定から、前出の式によって防護係数が求められる。
<図/表>
表1 呼吸保護具の種類と選択の目安としての防護係数
図1 全面マスクの構造と主たる漏れの発生部(顔と面体との接触部分)
図2 換気加圧服と全身密閉服の例
図3 マンテスト装置の基本構成図

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<関連タイトル>
放射線防護の3原則 (09-04-01-09)
線源取扱い器具(トング、安全ピペッタ等) (09-04-10-01)
放射線防護上の遮へい (09-04-10-03)

<参考文献>
(1) Respiratord and protective clothing. IAEA Safety Series No.22 (1967).
(2) Manual of respiratory protection against airborne radioactive materials. NUREG-0041 (1976).
(3) JIS T-8115,T-8150,T-8152,T-8156,T-8157,T-8159,T-8160, Z-4809, Z-4810
(4) 飯田博美(編):放射線用語辞典、(株)通商産業研究社(1996)
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