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<概要>
 手で放射性物質の入っている容器を直接取り扱ったり、汚染した床面に立つなど、手指や足等の人体の一部が全身に比べて局所的に大きな被ばくを受ける場合、これを局部被ばくという。局部被ばくによる線量は、普通局部線量計を利用して測定評価される。
<更新年月>
2004年03月   

<本文>
1.局部被ばくの概要
 放射線による外部被ばくにおいて、人体のある特定の部位が、他に比べて大きな被ばくを受ける場合、これを局部被ばくという。強透過性放射線による比較的大きな距離を介した照射に対しては局部被ばくは問題とならず、全身に対する一様な被ばくと見なせる。しかしながら、放射線の線量は、照射距離が短くなるにつれて急激に増大する。局部被ばくは、放射性物質のごく近傍での被ばく、特に放射性物質の入っている容器等に直接人体の一部が接触するような場合に問題となる。例えば、グローブボックス等を利用した非密封放射性物質取扱作業や汚染した床面に立つ場合などがこれに該当する。従って、通常、局部被ばくの対象部位は手指あるいは足等の四肢とされる。このような四肢の被ばくでは実効線量当量に対する寄与は小さく、主な対象組織は皮膚とされ(等価線量)、被ばく線量の測定評価は70μm線量当量γ線中性子線、β線の各々の70μm線量当量の総和)について実施される。但し、眼の水晶体の被ばくが問題となる場合は3mm線量当量で評価される。
 局部被ばくでは、体幹部の組織や器官に比べて被ばくによる重篤度は低く、このためその線量限度値(等価線量に係る限度)もこれら(実効線量の限度値)に比べて大きな値(眼の水晶体では3倍、その他は10倍)となっている。
2.局部線量計
 局部被ばくの測定には一般に局部線量計が使用されている。局部線量計の例を図1に示す。局部線量計は、小さな測定器を指輪形やクリップ形のホルダーに挿入したもので、手指や袖口、場合によっては皮膚表面に粘着テープで張り付けるなどして使用される。局部線量計は、校正方法や、実際の照射を受けたときの条件等の把握が難しく、その測定評価の精度は、全身被ばく測定用の線量計よりもかなり低い。また一方、作業内容によっては、局部線量計の着用によって、作業効率やその円滑な遂行が阻害され、かえって被ばくを増加させる可能性もあるので、局部線量計の選択に際しては、その形状等に十分注意する必要がある。
 非密封の放射性物質を取り扱う作業では、汚染防止のため、ゴム製やポリエチレン製の手袋を使用することが多い。このような場合には局部線量計はこれらの手袋の内側の線源と相対する位置に装着する。
 眼の水晶体の線量の測定には、特別の場合(例えば体幹部不均等被ばくなど)を除いて独自の局部線量計は用いられず、全身被ばく測定用の個人線量計で代用している。
<図/表>
図1 局部線量計の例
図1  局部線量計の例

<関連タイトル>
被ばくの形態(内部、外部、局部) (09-04-04-02)
外部被ばくの評価 (09-04-04-03)
外部被ばくモニタリング (09-04-07-02)
個人モニタリング (09-04-07-01)
個人線量計の着用 (09-04-07-03)
実効線量 (09-04-02-03)
個人線量計 (09-04-03-03)
線量限度 (09-04-02-13)

<参考文献>
(1)International Atomic Energy Agency, Basic Requirements for Personnel Monitoring,IAEA Safety Series No.14(1980)
(2)盛光亘他編:外部被曝モニタリング 日本アイソト−プ協会、東京 (1986)
(3)International Commission on Radiation Protection,General Principles of Monitoring for Radiation Protection for Workers. ICRP Publication 35 Ann. ICRP 9(4).(1982)
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