<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 放射線による生物影響
<小項目> 急性放射線影響
<タイトル>
放射線による骨髄の損傷(骨髄死) (09-02-04-06)

<概要>
 急性放射線障害の一つであり、比較的高線量を浴びたときに起こる。全身に1〜10Gyの線量が照射された場合、骨髄の造血能が著しく抑制され、白血球血小板といった成熟した血球が減少する。そのため、照射後感染と出血が起こって7日から60日目にかけて死亡することを骨髄死という。
<更新年月>
2001年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.骨髄死(骨髄損傷)の機構
 生体内では一日に白血球の約20分の1、血小板は約9分の1が入れ替わっている。しかしながら、正常な人間では白血球や赤血球の減少が起こらないのは血球の大本の細胞、すなわち造血幹細胞が絶えず自己再生と分化をし、成熟細胞を供給しているためである。細胞分裂が盛んな細胞は放射線に非常に感受性があるため、ある線量以上の放射線を浴びると造血幹細胞が死んでしまい、白血球と血小板が減少し、感染や出血が起こって照射後7日から60日頃にかけて死ぬことになる。チェルノブイル事故における緊急作業従事者の血小板数の変化の模式図を 図1 に、同様に急性放射線病患者(予測線量:2.4〜3.3Gy)の好中球、リンパ球と血小板数の推移を 図2 に示す。この際、造血幹細胞(骨髄細胞)を血中に注射することにより命が救える確率が高くなる。この処置を骨髄移植といい、現在白血病の治療法として広く用いられている。ただし、骨髄移植を行う場合、提供者と患者との組織適合性が問題となる。
2.線量との関係
 1〜10Gy以下の全身被ばくを受けると骨髄症候群が発症する。その発症率や重篤度は一般的には線量にほぼ依存するが、置かれた環境、例えば被ばく後無菌室に入ることができれば、同じ線量を浴びても症状は軽減化できる。国際放射線防護委員会ICRP)の報告書(1990年)によると全身に均等に被ばくした人の半数が骨髄の障害で2か月以内に死亡するような線量は3〜5Gyである( 表1 参照)。
<図/表>
表1 低LET線に急性全身均等被ばくをしたヒトの特定の放射線誘発症候群および放射線死亡に関する線量の範囲
図1 チェルノブイル事故における緊急作業従事者の血小板数の変化の模式図
図2 急性放射線病患者の好中球、リンパ球、血小板数の推移

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<関連タイトル>
放射線の急性影響 (09-02-03-01)
放射線の造血器官への影響 (09-02-04-02)
白血病 (09-02-05-02)
放射線障害に対する治療法 (09-03-05-01)
骨髄移植 (09-03-05-02)

<参考文献>
(1) 北畠 隆:「放射線障害」朝倉書店 (1968)
(2) 放射線医学総合研究所(監訳):UNSCEAR 1988 Report 「放射線の線源、影響及びリスク」実業公報社(1990年)
(3) E.J.Hall,(著)、浦野宗保(訳):放射線科医のための放射線生物学、篠原出版(1980)
(4) 日本アイソトープ協会(編):ICRP Pub.60日本語訳、国際放射線防護委員会の1990年報告、丸善(1991)
(5) 菅原努(監修)、青山喬(編著):放射線基礎医学、金芳堂(2000)
(6) 坂本澄彦:放射線生物学、秀潤社(1998)
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