<大項目> バックエンド対策
<中項目> 放射性廃棄物の処理、処分
<小項目> 放射性廃棄物総論
<タイトル>
ロシアの放射性廃棄物管理 (05-01-01-12)

<概要>
 原子力発電がまだ発展段階の頃、旧ソ連邦では既に全閉鎖式核燃料サイクルの概念が採用された。すなわち、使用済燃料再処理プラントで再処理し、ウランプルトニウムを抽出分離して不純物を除去した後、回収ウラン核燃料サイクルに再利用するというものであった。再処理で分離した核分裂生成物は、各種の処理を行った上で、保管または埋設される。現在、ロシア原子力省(MINATOM)は、最終的に最も環境的に安全な高放射性廃棄物の保管状況を確保できる全閉鎖式(クローズドサイクル)の核燃料サイクルの概念を採用している。全閉鎖式核燃料サイクルは、商業用原子力発電所の使用済燃料の再処理分野で実施した膨大な研究開発の結果、実現が可能となった。原子力産業技術の基礎研究は、モスクワにある無機材料研究所、サンクトペテルブルグにあるフローピンラジウム研究所およびオブニンスクにある物理エネルギー研究所等で実施した。
<更新年月>
2003年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1. 原子力産業で発生する放射性廃棄物の発生場所
1.1 放射性廃棄物の発生場所(参考文献1、5、6)
 原子力産業で発生する放射性廃棄物は、原子力発電所および核燃料サイクルを構成するすべての施設で発生する。これをウラン採鉱から再処理まで整理すると次のようになる。
1) ウラン採鉱、六フッ化ウランへの転換、ウラン濃縮、核燃料の成型加工して新燃料になる。
2) 核燃料を原子炉に入れて発電し、使用済燃料を発電所内で貯蔵する。
3) 使用済燃料の再処理と再処理で発生した放射性廃棄物の処理を実施する。
 原子力産業の評価によると、原子力産業における放射性廃棄物の総発生量は、危険な産業廃棄物総発生量の5%以下である。しかし、放射性廃棄物は特別な処理および最終処分が必要である。
1) 核燃料サイクルのうち、六フッ化ウランへの転換、ウラン濃縮および核燃料の成型加工の各プロセスで大量の低レベル廃棄物を発生する。ウラン鉱山の鉱滓貯蔵には広い土地を必要とする。幾つかの鉱滓貯蔵所は、現在操業をしておらず、将来この土地を利用できるよう土地改良作業を実施している。
2) 原子力発電所の運転により、低レベルおよび中レベルの液体廃棄物、固体廃棄物、気体廃棄物を発生する。燃料被覆管が破損した場合は少量の高レベル廃棄物を発生する。
 図1にロシアの原子力発電所の地図を、図2にロシアの核燃料サイクル関係の施設と研究所の地図を示した。
1.2 VVER型およびRBMK型原子力発電所の使用済燃料(参考文献1、2、3、4)
 VVER-440(40万kWe級)の使用済燃料は、現在「生産合同マヤーク」にあるRT-1再処理工場で再処理している。再処理で発生した高レベル廃棄物はガラス固化をして「生産合同マヤーク」内に貯蔵している。
 VVER-1000(100万kWe)の使用済燃料は、クラスノヤルスクにあるRT-2再処理工場の敷地内に建設した使用済燃料受入貯蔵施設で貯蔵している。2003年現在、VVER-1000の使用済燃料を再処理するRT-2再処理工場の建設は資金面で中断しているが、完成すれば再処理を行う。
 RBMK-1000(100万kWe)の使用済燃料は、使用済燃料中に含まれるウラン235の濃縮度が低いため、再処理のメリットが無いとして、使用済燃料を発電所内か発電所の近くに建設した使用済燃料貯蔵施設で貯蔵している。
 核兵器生産を目的とした軍事プログラムの初期時代には、プルトニウム生産炉から取出した使用済燃料の再処理によって発生した低レベル廃棄物は、河川や池に放出するのが一般的であったが、中・高レベル液体廃棄物は、特別に建設した貯蔵施設や貯蔵プールに貯蔵していた。後になって、中・高レベル液体廃棄物は、特別に作ったステンレス鋼製タンクに貯蔵し、またトムスクK−7(現在のシベリア化学コンビナート)やクラスノヤルスク−26(鉱山化学コンビナート)、デミトロフグラードの原子炉科学研究所では液体廃棄物を深地層へ注入した。
2. 原子力発電所の概要(参考文献6)
 ロシアには、2003年1月現在、原子力発電所が9カ所あり、運転中の原子力発電所の総設備容量は2,255.6万kW、30碁の原子炉がある。これを原子炉別に分類すると、VVER型(ロシア型加圧水炉)が1,59.4万kW、14碁、RBMK型(軽水冷却黒鉛減速炉)が1,130.0万kW、14碁、高速増殖炉が60万kW、1碁、沸騰水型炉6.2万kW、1碁である。
 発電所名をアルファベット順に列挙すると次の通りである。
 バラコボ発電所、ベロヤルスク発電所、ビリビノ発電所、カリーニン発電所、コラ発電所、クルスク発電所、レニングラード発電所、スモレンスク発電所である。
 表1にロシアで運転中の原子力発電所の原子炉型式、基数および発電設備容量を示した。
3. 原子力発電所における放射性廃棄物処理および使用済燃料の貯蔵
3.1 原子力発電所で発生する放射性廃棄物管理(参考文献1)
 ロシア原子力省(MINATOM)は、国家プログラムとして放射性廃棄物および使用済燃料に関する諸問題を解決するためプログラムのスピードアップを図り、また原子力プログラムに必要な新しい安全必要事項を促進してきた。2005年までの必要金額は、1992年中期時点の価格で2,023億ルーブルである。この予算は、政府の特別財源によるものである。
 このプログラムには、原子力発電所の放射性廃棄物管理、民間船舶炉(原子力砕氷船)および原子力発電所の使用済燃料輸送、核燃料施設等の予算を含んでいる。
 原子力発電所で発生する液体廃棄物の固化は、ほとんどの発電所がアスファルト固化(ビチューメン固化)およびセメント固化を採用している。また、濃縮液体廃棄物をステンレスタンクに入れて保管している所もある。ただし、アスファルト固化は1990年代中頃までは実施していたが、1997年以降は実施していない。中レベル放射性廃棄物およびスラッジ(残滓)は、ほとんどセメント固化で処理している。これらの固化体は発電所敷地内の貯蔵所で保管している。
 発電所内で発生する放射性固化体は、焼却可能なものは焼却炉で焼却減容している。この焼却による減容率は1/(20〜80)である。不燃性物質は圧縮により減容し、特殊容器に収納して貯蔵している。圧縮による減容率は1/(3〜4)である。これらの処理された固体廃棄物は、原子力発電所敷地内の固体廃棄物貯蔵所で貯蔵している。
表2に原子力発電所で発生する液体廃棄物の貯蔵量、貯蔵比率、固化設備の種類および操業開始年を、表3に原子力発電所で発生する固体廃棄物の処理法(圧縮または焼却)および操業開始年を、表4に原子力発電所における使用済燃料の貯蔵状況示を、表5に原子力発電所で発生した液体および固体廃棄物を示した。表3表4表5の素値はいずれも1994年現在の数値である。
4. 核燃料サイクル施設における放射性廃棄物管理
4.1 ウラン鉱山(参考文献1)
 ウラン鉱山の鉱滓の貯蔵には、広い土地を必要とする。幾つかの鉱滓貯蔵所は現在操業してなく、将来この土地を利用できるように土地改良作業を実施している。
4.2 ウラン濃縮工場(参考文献1)
 低レベル放射性廃棄物を発生するが、詳細な情報はない。
4.3 成型加工工場(参考文献1)
 低レベル放射性廃棄物を発生するが、詳細な情報はない。
4.4 使用済燃料再処理工場(参考文献1、2、4)
1) 生産合同マヤーク(当初チェリャビンスク−40と呼ばれていたが、チェリャビンスク−65に改称し、現在は生産合同マヤーク)
 RT−1再処理工場で使用済燃料を再処理した時に発生する高レベル放射性廃棄物は、蒸発により濃縮している。マヤークは地層が悪くて放射性液体廃棄物の地下への注入ができないため、ガラス固化を行っている。
 放射性廃棄物の処理は、工学的構造物で管理できる状態にしての貯蔵および構造物の中に処分している。これらの方法は、人類および環境保護のための主要課題である。従って、放射性廃棄物を取り出し可能な方法、つまり取替可能なパッケージに入れて貯蔵するか、もしくは最終処分を行う。放射性廃棄物を地層処分した場合、再び取り出すことは考えていない。
2) シベリア化学コンビナート(旧トムスク−7)
 低レベルおよび中レベル廃棄物は地上でタンクに貯蔵している。高レベル廃液はコンクリート建屋内のステンレススチール製タンクに貯蔵している。放射性液体廃液は1963年から特殊ポンプで地下注入を実施しており、この地層注入技術には約30年間の運転経験がある。1992年現在、既に約35x(10exp6)立方mの液体廃棄物をポンプで地下の非浸透性地層に注入した。なおこの施設は国が管理している。
 トムスク−7の敷地内の地層を調査した結果、ここは地層が良く、上の透水層と下の透水層の間の絶縁層(非透水性地層)があるので、地層に注入した放射性液体廃棄物は他の地層に浸透してこない。放射性核種の移動は年間5mであるので5km移動するのに約1000年、12〜15km移動するのに3000年もかかる。また、この施設では、地層サンプルを40年間採取して調査を実施している。
3) 鉱山化学コンビナート(旧クラスノヤルスク−26)
 この施設内の地層は良く、石油が貯まっているのと同様な地層で、上の地層と下の地層の間に絶縁層があるため、放射性核種が他の地層に移動することがない。この施設にある再処理工場で発生した液体廃棄物は、シベリア化学コンビナートと同様、再処理工場近くの非浸透性地層に注入している。
 表5に核燃料産業で発生した放射性液体・固体廃棄物を、表6に核燃料産業で発生した中・高レベル放射性液体廃棄物(いずれも1994年現在の数値)に示した。
5. 研究所、大学、工場、病院等で発生する放射性廃棄物処理場「PAラドン」(参考文献3、7)
 旧ソ連内には、4,000カ所以上で研究、産業、医療用に使用された放射性同位元素(RI)廃棄物が発生しており、これらは、旧ソ連内にある34の地域毎に設置された地域処理・処分施設が責任をもって集荷し埋設している。現在、ロシアにはこのような施設が「Production Association Radon:PAラドン」を含めて16カ所ある。この中でもラドンは最大で、ロシア全体の放射性廃棄物管理で指導的な役割を果たしている。
PAラドンの概要
 ラドンのモスクワ研究所およびPAラドンは1961年に設立された。モスクワ市の北北東約100kmのセルギエフ・ポサドの北側に位置している。この受持区域はモスクワ州の周辺7州の計8州にある研究所、病院等から、年間数千立方mの中・低レベル放射性廃棄物を処理している。原子力関係研究所では、理論物理研究所、クルチャトフ研究所、無機材料研究所も含まれ、研究用の使用済燃料再処理廃棄物も処分している。
 PAラドンは、低・中レベル放射性廃棄物の輸送、処理および最終処分を行っている。集荷した固体廃棄物は、圧縮固化体やセメント固化体にしている。液体廃棄物は遠心分離してセメント固化体またはアスファルト固化体にしている。処理された放射性廃棄物は、強化コンクリートで作られた貯蔵用構造物の中で貯蔵する。毎年約6,000立方mの低レベル放射性廃棄物貯蔵施設に貯蔵(図3参照)している。
 PAラドンでは、低レベル放射性液体廃棄物のセメント固化パイロットプラントおよび移動型モジュールタイプ電気透析プラントを開発し製造した。
6. 放射性廃棄物の処理・処分および使用済燃料に関する技術開発(参考文献1)
 モスクワにある無機材料研究所、化学技術研究所、物理化学研究所、サンクトペテルブルグにあるエネルギー設計研究所、フローピンラジウム研究所、構造材料研究所、中央ボイラータービン研究所、エカテリンブルグにある化学機関研究所が、放射性廃棄物の処理・処分および使用済燃料関係の多岐にわたる技術開発を実施している(表7)。
<図/表>
表1 ロシアで運転中の原子力発電所の原子炉型式、基数および発電設備容量
表2 原子力発電所で発生した液体廃棄物の処理
表3 原子力発電所で発生した固体廃棄物の処理
表4 原子力発電所における使用済燃料の貯蔵状況
表5 核燃料サイクル関係施設で発生した放射性廃棄物
表6 原子力発電所および核燃料サイクル産業で発生した放射性液体・固体廃棄物
表7 放射性廃棄物の処理・処分および使用済燃料関係の技術開発
図1 ロシアの原子力発電所の所在地図
図2 ロシアの核燃料サイクル関係の施設および研究機関の地図
図3 PAラドンの低レベル放射性廃棄物処分場垂直断面図

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
放射性固体廃棄物の処分のあり方に係るIAEA勧告 (05-01-01-10)
IAEAにおける放射性廃棄物の安全基準(RADWASS)計画の概要 (05-01-01-11)
ロシアの核燃料サイクル (14-06-01-05)

<参考文献>
(1)Nuclear Power Plant Spent Fuel and Radioactive Management in Russia and other CIS countries,IBR社,1994, p.1-6, Table1-5,1-6,1-7,1-8,1-9,Annex 1-1
(2)日本原子力情報センター「ロシア原子力施設視察団報告書、1992年10月4日〜10月15日」、p.27-32
(3)日本原子力情報センター「ロシア原子力施設視察団報告書、1993年8月1日〜8月31日、p.59-62,67,68
(4)海外電力調査会「海外諸国の電気事業第1編、1998年」1998年3月、p.313、314
(5)日本原子力産業会議「原子力年鑑2003年」2002年11月14日、p.413
(6)日本原子力産業会議「世界の原子力発電開発の動向2002年次報告」2003年5月31日、p.90、118-121
(7)(社)ロシア東欧貿易会(ロシア東欧経済研究所)「旧ソ連原子力情報収集事業報告書」ロシア連邦における放射性廃棄物の処理処分の現状、p.37
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ