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<概要>
 IAEAでは Safety Series の中で、放射性廃棄物の処分を前提とした分類と重要な特性、また処分した場合の放射性物質の地中における移行を抑制する、各段階の隔壁の役割等についての考え方を示している。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 IAEAの Safety Series No.58(1983)、No.68(1986)で、放射性廃棄物の陸地処分の場合の、廃棄物の放射能レベル及び特性の分類、処分のあり方等を勧告している。
  表1 はIAEAによって勧告された「処分を前提とする放射性固体廃棄物の分類とその重要な特性、ならびに好ましい陸地処分のあり方」を示すものである。同表から明らかなように、IAEAは「処分」を前提とする場合、放射性廃棄物を5種類に分類し、それぞれに対する処分法のあり方を提示している。
  表2 は「処分」における一般的なシステムのあり方を示したものである。基本的な考え方は「(廃棄物の固形化による核種漏洩の抑制)→(容器による閉込め)→(処分場、すなわち人工バリアーによる閉込め機能の保持)→(天然バリアーによる抑制または移行遅延化)→(モニタリングを含む管理の実施)→(人間環境におけるリスク評価)」のような道筋で示される。
 もし天然バリアーの抑制効果が不十分で、リスク評価に問題が出てくるような場合には、表1の欄外(注)に記されているように、「短寿命低中レベル廃棄物」であっても坑道、空洞または(深)地層処分の採用が望ましい。
 放射性固体廃棄物を陸地または地層中に処分する場合、低レベル、高レベル廃棄物を問わず、安全性に関連して最も注意しなければならない点は「地下水」のアタックとそれによる放射性物質の拡散である。もちろん埋設処分に伴い、他に多くの留意しなければならない要因がある。しかしほとんどの事象が、結局は地下水問題と密接に結びついている。 浅地中埋設(処分)の場合には、過去に一般廃棄物(非放射性)を対象とする多くの経験がある。この経験は放射性廃棄物に対しても、ほぼそのまま適用できる。少なくとも廃棄物対策の基本理念に大差はない。ただし、近年、各国における「環境基準」が厳しさを増し、自然保護を標榜する住民パワーも無視できなくなった。
 なお、アメリカでは、1980年に策定された「低レベル放射性廃棄物政策法」が1985年に改正され「低レベル放射性廃棄物政策改正法」として1986年1月に公布された。それと関連して従来の浅地中埋設の方式では、施設の側壁や上蓋の強化が行われない限り、地元の容認は難しくなってきた。また、1982年には「核廃棄物政策法」が策定され、高レベルの核燃料廃棄物使用済燃料)を国の責任で引取り処分し、その費用は発生者が負担することを定めている。
 (注)アメリカで永らく踏襲されてきた浅地中埋設の方式、すなわち「素掘りトレンチ」方式には技術的に多くの問題があることがわかってきた。ウエストバレイ(ニューヨーク州)とモアヘッド(ケンタッキー州)の2処分場の閉鎖は、それを裏付けるものである。また、「低レベル放射性廃棄物政策改正法」の施行に伴い、多くの州や州連合体は、従来法(トレンチ)に代わるべき陸地処分法の採用を意図するようになった。例えば、ケンタッキー州とイリノイ州(満杯で閉鎖されたシェフィールド処分場を有す)とで構成される連合体Central-Midwest Compact は、今後の処分場の建設に当っては在来のトレンチ方式の採用を禁止した。
<図/表>
表1 「処分」を前提とする放射性固体廃棄物の分類と重要な特性、ならびに好ましい陸地処分のあり方
表1  「処分」を前提とする放射性固体廃棄物の分類と重要な特性、ならびに好ましい陸地処分のあり方
表2 放射性廃棄物処分の一般的なシステム
表2  放射性廃棄物処分の一般的なシステム

<関連タイトル>
IAEAにおける放射性廃棄物の安全基準(RADWASS)計画の概要 (05-01-01-11)
再処理プロセスと安全性についての基本的考え方 (11-02-04-01)
再処理プロセスと安全性についての基本的考え方 (11-02-04-01)
高レベル放射性廃棄物の処理対策の概要 (11-02-04-03)
放射性廃棄物の発生源・発生量と安全対策の概要 (11-02-05-01)
わが国における低レベル放射性廃棄物の処分についての概要(制度化の観点から) (11-02-05-02)
TRU(超ウラン元素)含有廃棄物の処分方針と基準 (11-03-04-03)
国際原子力機関(IAEA) (13-01-01-17)

<参考文献>
(1)下川純一:日本原子力事業NAIG特報、1987年 9月、11月号
(2)日本原子力産業会議(編・刊):放射性廃棄物管理ガイドブック1994年版、1994年7月
(3)資源エネルギ−庁公益事業部発電課(編):原子力発電便覧1995年版、電力新報社(1995年2月)
(4)科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック1995年版、日本原子力産業会議(1995年6月)
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