<大項目> 核燃料リサイクル施設
<中項目> 再処理
<小項目> 再処理施設
<タイトル>
アメリカの再処理施設 (04-07-03-11)

<概要>
 アメリカ合衆国は、軍事用施設を政府が所有する他、軽水炉の開発国として、その使用済燃料再処理にも先駆的役割を果たし、1960年代後半から数工場が建設されたが、NFS社のウェストバレイ工場(WVRP)のみが処理実績を持つ。次世代大型工場に当たるAGNS社のバーンウェル工場(BNFP)は、カーター政権の核不拡散政策のあおりで国内再処理凍結に会い、完成したもののプロジェクトは中止になった。現在、アメリカは、使用済燃料を高レベル固体廃棄物として深部地層処分する方針で中間貯蔵、永久処分の施設準備に向かっている。
<更新年月>
2004年10月   

<本文>
1.アメリカの政府管掌の再処理施設
 第2次大戦中、マンハッタン計画(原子爆弾開発)の一部として、照射済天然ウランからプルトニウムを回収するため、化学沈澱法(リン酸ビスマス法)による工場をハンフォード(ワシントン州)に建設、運転(1944年)して以来、より優れた溶媒抽出法による工場が、ハンフォード(1951年〜;レドックス法、1956年〜;ピューレックス法)、サバンナリバー(サウスカロライナ州、1954年〜;ピューレックス法)に建設、運転された。前者は1956年から1989年まで操業し、後者は1954年から1998年まで操業し、1996年に放射性廃液などの安定化プログラムを開始し、2006年頃から廃止措置が開始される予定である。この他に、アイダホ再処理工場(アイダホフォールズ近郊、アイダホ州)があり、海軍艦船用、研究用等の原子炉からの使用済燃料から高濃縮ウランを回収するのに用いられている。この再処理工場は1959年から1992年まで操業していた。
 これらの施設は、政府(原子力委員会:AEC、後にエネルギー省:DOE)が所有し、運転管理を民間業者に委託する方式で運営されている。運転契約は有期限で入札によって決めるので各工場とも運営業者は替わっているが、大部分の従業員は引き継がれている。
 ここで使用される技術は、発電炉の燃料再処理と共通であるため、現在一般に利用されているプロセス、装置等の原型は、これらの施設で、時期的に先んじて実証されているものが多い。
 1990年初頭より、これらの施設の多くが老朽化していること、戦時中以来の生産優先で累積廃棄物処理等に問題があるとして各種の調査が行なわれた。
2.アメリカの民間再処理工場
2.1 NFS社ウェストバレィ工場(WVRP:West Valley Reprocessing Plant )
 1960年代の軽水炉の定着によって、その使用済燃料の再処理技術開発が、オークリッジ国立研究所を中心に始まり、その成果をもとにニュークリア・フューエル・サーヴィス社(NFS:Nuclear Fuel Services)が、米国として初めての民間再処理事業に参入し、バッファロー(ニューヨーク州)南部のウェストバレィにチョップアンドリーチ法前処理とピューレックス溶媒抽出を主工程とする工場(1トン/日)を建設した。
 当時は競合する化石燃料のコストも低廉であり、環境条件等も現在程厳しくなかったので、設備投資を低く抑えたため今日の眼で見ると軽装備のプラントであった。1966年に運開してプルトニウム生産炉、軽水炉燃料(MOX、トリウム炉心燃料等を含む)等の照射燃料合計630トン(内、軽水炉245トン)を処理し、1972年に運転を中止した。なお、総再処理量は641トンである。この頃、アライド・ゼネラル・ニュークリア・サービス社(AGNS)等の競合する工場計画に対抗して、処理量を3トン/日に増大し、廃液処理工程の増強等の更新計画をたてたが、必要追加投資が巨額になったため1976年に運転再開をあきらめた。表1にウェストバレィ工場で再処理を行った使用済燃料の概要を示す。
 1982年から、工場解体計画(ウェストバレィ デモンストレィション プロジェクト)が開始された。タンク貯蔵中の高レベル(HLW廃液)は固化処理が完了し、中レベル廃液56万ガロンを固化し、最終的にはプラントを解体し、旧ホットセルは固化体貯蔵に利用する。再処理設備は、除染後解体撤去し、空いたセルの一部を廃液処理に利用するが、高レベル廃液はガラス固化するので、ガラス固化施設(ハンフォード等で開発されたセラミックメルターを採用する)が新設された。第1フェーズの除染と解体作業は2002年末完了し、全体としては完了であるステージ3段階に移行している。
2.2 ゼネラルエレクトリック社(GE)ミッドウェスト工場(MFRP:Midwest Fuel Reprocessing Plant)
 GEは、BWRのメーカーとして有名であるが、燃料加工供給、発電炉、再処理役務をパッケージとして電力会社にトータルサービスする経営方針を立て、再処理分野にも挑戦した。アクァフルオル法(Aquafluor)と名付けた新しいプロセスを開発して、モリス(イリノイ州)に、1トン/日の工場を建設した(1968年〜1971年)。ウラン製品は、ウラン濃縮の原料である六フッ化ウランまで一気にもってゆくが、途中の工程は極力簡素化し、工程間の貯蔵能力も縮小してある。殆どの工程機器を単一のセルに設置する等、建設費の低減を図った。このような設計方針は、WVRPと同じく、当時の情勢判断のしからしめた結果であった。しかし、この設計意図が裏目に出てコールド試運転中、ウランを粉粒体化する脱硝工程以降、詰まりや流量の不安定が生じ、技術的に解決できないまま、この計画は放棄(1974年)されてしまった。GEは、その後改良アクァフルオル法を提案したが、もはや実証のチャンスはなかった。
2.3 AGNS社バーンウェル工場(BNFP: Barnwell Nuclear Fuel Plant)
 ガルフ石油等の石油資本とアライドケミカル社(六フッ化ウランの最大手メーカー)の技術が結ばれたAGNS社は、DOEの管轄するサバンナリバーサイト(サウスカロライナ州)に隣接するサイトに、1500トン/年の大型再処理工場を計画し、1971年に着工、1975年大部分が完成した。折悪しく、規制当局の混合酸化物燃料使用に伴う環境影響評価(GESMO:Generic Environmental Statement on the recycled plutonium in Mixed Oxide fuel)の作成中(この評価は国際的な専門家の集団の手を借りて行なわれた検討に基づいている)で結論が出るまで、付属施設(酸化プルトニウム施設)の許認可が停止されている中に、カーター政権により核不拡散政策の一環として、米国の民間再処理は凍結される(1977年)ことになってしまった。
 BNFPは、保障措置技術開発等についてDOEの予算の配分を受け、細々とコールド試験を続けていたが、結局、回収プルトニウムの使途は明確にならず、一方DOE施設としてサバンナリバー工場の代替とする案なども検討されものの、1983年12月に正式に工場は閉鎖された。この工場は、湿式再処理工場として本格的なもので、もし計画が続いていれば、UP3(フランス)、THORP(イギリス)、六ヶ所再処理工場(日本)に比肩する酸化物燃料再処理工場になったはずである。
2.4 EXXON社NFRP工場(Nuclear Fuel Recycle Plant)
 石油大資本のエクソン社も、1970年代に再処理事業計画を持ち、BNFP級の大型工場をオークリッジ国立研究所に隣接するサイトに建設することで、予備安全解析書(PSAR)を作成したが、他のプラントと同様に核不拡散政策の一貫として計画は中止になった。以後、米国には軽水炉燃料の民間再処理工場建設の計画はない。
3.再処理中止以降の核燃料サイクル政策
 カーター政権による米国内再処理、核燃料物質のリサイクルの中止政策により、発電炉の使用済燃料は、政府の準備する長期中間貯蔵施設に30〜50年貯蔵した上で、高レベル廃棄物のガラス固化体と共にユッカマウンテン(ネバダ州)の深地層埋設処分地に処分される方向で推移している。米国エネルギー省(DOE)は連邦議会下院(2002年5月)及び上院(2002年7月)によるユッカマウンテン処分場計画の実施の賛成決議を得て、NRCによる処分場認可へ向けて2004年に許可申請をする予定で準備を進めている。長期中間貯蔵施設は、監視付回収可能原子炉サイト外使用済燃料貯蔵施設(MRS:Monitored & Retrievable Spent fuel Storage away from reactors)と呼ばれるが、その具体的な進捗はなく、各発電炉サイトでは使用済燃料の一時貯蔵施設の増設を行なっている例もある。なお、ユッカマウンテンの深地層埋設処分地は、最終適性評価が行なわれた段階である。
 一方、米国エネルギー省(DOE)は核変換プログラムの一環として、プルトニウムの燃焼の検討を進め、2002/2003年度予算から不拡散型の先進的燃料サイクルイニシアチブ(Advanced Fuel Cycle Initiative:AFCI)として新たにプロジェクトを開始した。これは直接処分でもなく、従来型の再処理によるリサイクルでもない、これまでの処分方策と比べてより核拡散に対する抵抗性が高く、コスト効果のある効率的な燃料リサイクルを提案するものである。この燃料リサイクルは、既存の原子力発電所の使用済み燃料から、プルトニウムなどのセンシティブな核物質を抽出せずに、プルトニウム、アクチニド、ウランで構成される先進燃料を新技術によって製作し、原子炉でリサイクルすることを目標としている。このイニシアチブは、2015年までに既存の軽水炉で先進燃料を利用するシリーズ1と2030年までに第四世代炉/高速炉、新型加速器で先進燃料を利用するシリーズ2の二つの開発目標からなっている。この先進燃料の利用により、核不拡散上機微なプルトニウムの大幅な削減が図れるだけでなく、アクチニドや核分裂生成物の量を削減できる。
<図/表>
表1 ウェストバレィ工場で再処理を行った使用済燃料の概要

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<関連タイトル>
再処理技術開発の変遷(歴史) (04-07-01-04)
世界の再処理工場 (04-07-01-07)
アメリカの核燃料サイクル (14-04-01-05)
軍用原子力施設における環境・安全問題 (14-04-01-11)
高レベル放射性廃棄物対策の現状(MRSの立地可能性調査状況) (14-04-01-18)

<参考文献>
(1)清瀬 量平(訳):燃料再処理と放射性廃棄物管理の化学工学、原子力化学工学 第IV分冊 (1983)、日刊工業新聞社(株)
(2)THE WEST VALLEY DEMONSTRATION PROJECT,WEST VALLEY NUCLEAR SERVICES Co.Inc.’SPublication (1983)
(3)NUCLEAR ENGINEERING INTERNATIONAL、1987年12月、p.47?48
(4)(社)日本原子力産業会議:原子力年鑑 平成6年版、(1994年11月)
(5)(社)日本原子力産業会議:原子力年鑑 1999/2000年版、(1999年10月)
(6)(社)日本原子力産業会議:原子力ポケットブック2004年版、(2004年8月)、p.246
(7)(社)日本原子力産業会議:原子力年鑑2004年版・各論(2003年11月)、p.132,168,289
(8)(社)日本原子力産業会議:原子力年鑑2004年版・総論(2003年11月)、p.38
(9)原子力委員会:原子力白書(平成15年版)(平成15年12月)、p.73
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