<大項目> 海外情勢
<中項目> 北米各国
<小項目> アメリカ
<タイトル>
高レベル放射性廃棄物対策の現状(MRSの立地可能性調査状況) (14-04-01-18)

<概要>
 1987年放射性廃棄物政策修正法は、エネルギー省(DOE)に対し、ネバダ州のユッカマウンテンが使用済燃料の最終貯蔵所(処分場)のサイトとして適しているかを調査するよう要求するとともに、DOE長官に対し監視付回収可能貯蔵(MRS)施設を立地する権限を与えた。また、DOE内の独立した組織として、MRS施設の誘致に際して州やインディアン居留地などの地元当局者と折衝にあたる核廃棄物交渉官事務所が設立された。しかし、MRSの候補地として名乗り出た州やインディアン居留地はなく、また、それまでの折衝から、MRSのような使用済燃料の中間貯蔵所を進んで誘致するような州やインディアン居留地は現れないとの結論が得られたため、DOEでこの問題を担当している民事放射性廃棄物管理局(OCRWM)の1995会計年度(1994年10月〜1995年9月)予算から中間貯蔵所に関連した活動予算が削られた。1995年1月には、放射性廃棄物交渉官事務所の法的権限が失効した。なお、MRS施設という言葉は、現在、放射性廃棄物政策法の規定に明記されるだけになってしまった。ただし、ユッカマウンテンに計画されている最終貯蔵所の開設がどんなに早くても2010年ごろになるとみられているため、電力会社は独自に中間貯蔵所を建設するための努力を続けている。
 以下の本文ではこれまでの経緯について説明した。
<更新年月>
2001年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.MRS施設の必要性と廃棄物交渉官による立地推進の特徴
 1982年の放射性廃棄物政策法(NWPA)では、エネルギー省(DOE)が、使用済燃料および高レベル廃棄物を最終処分するための深地層貯蔵所のサイト決定、施設設計、建設および運転を行うことが規定された。また1987年の同修正法では、最終処分場が使えるようになるまでの期間、使用済燃料を貯蔵するための監視付回収可能貯蔵(Monitored Retrievable Storage:MRS)施設について、サイトの決定から運転まで行うことがDOEに認められた。MRSは、最終貯蔵所が利用できるようになるまでの期間にわたって、各発電所サイト内の貯蔵所プールの容量を超えた使用済燃料を集中的に貯蔵するための施設である。MRSは、さらに使用済燃料を最終処分場へ送るために除染解体および包装するための施設としても使われることになっている。1987年の修正法では、こうしたMRSをネバダ州以外に建設しなければならないという規定も盛り込まれていた。
 また、1987年の修正法によって、放射性廃棄物交渉官事務所(Office of the Nuclear Waste Negotiator)が設立され、5年間の任期をもった放射性廃棄物交渉官がMRSの立地交渉を担当することになった。1990年8月には、デイビッド・リロイ氏が初代の交渉官として任命され、1993年まで任にあたった。5名のフルタイムスタッフとともにアイダホ州ボアズに事務所が設置されたが、しかし、この交渉官事務所の実質的な作業は、人手不足のためほとんど外部のコンサルティング会社に委託された。同交渉官事務所は、米国行政府の独立した機関であり、したがってどの省庁にも属さず、交渉官は大統領および議会に直接報告を行うことになっていた。交渉官には、MRSの立地を受け入れる可能性のある州の知事やインディアン居留地の執政官と交渉する任務が与えられているが、この交渉官による立地交渉で特徴的なことは、そのような施設の立地を自発的に受け入れ、誘致してくれる地域がないかどうかを交渉官自らが探すという点であり、さらに、少しでもその立地に興味を持っている地域に対しては、MRSというものを地域自身が自分たちで評価するための補助金が交付されるという点であった。
2.MRS施設の立地交渉の進め方と進捗状況
 このような補助金の交付に当たっては、基本的には次のような基準が設けられた。
  ・プロセスは、真に自発的でなければならない。
  ・情報の要求および事前の話し合いが行われたとしても、それは、それから先へ進むための意思表示とは見なされない。
  ・全ての交渉は、立地受け入れの意思表示で終止符を打つことができる。
  ・全ての議論は、健康、安全、および環境の保護を巡る問題に対する慎重な評価から始めなくてはならない。
  ・あらゆる問題が相互に関連している。
  ・将来、立地受け入れを行う地域は、国家的な問題の解決に取り組むに当たって、公平に扱われる権利を有する。すなわち国家的問題だからといって、地域の利害が無視されてはならない。国家的な問題の解決には、立地受け入れ地域の懸念やニーズ、要望が十分に反映されていなければならない。
  ・プロセスは、広範囲な住民参加を喚起するものでなければならず、全ての関係者の意見を確実に考慮に入れるものでなければならない。
  ・プロセスの成功は、全ての参加を通じてのみ可能である。
 また、このような補助金交付は、フェーズI、フェーズII-AおよびフェーズII-Bの3段階に分けられ、それぞれ10万ドル、20万ドル、280万ドルが交付される。それぞれの段階の補助金は、以下に示すような活動のために交付されることになっていた。
(i) フェーズI(10万ドル)[申請期限:1992年6月30日]
 廃棄物管理システムとMRS施設の技術的特徴を理解することと、申請者が、フィージビリティ評価プロセスを進めるにあたって、関心を持っているかどうかを判断することとを目的に、情報の周知徹底と、交渉を行う。このための具体的手段としては、(1)調査グループの設置、(2)教育ビデオの使用、(3)原子炉サイトおよび廃棄物貯蔵サイトの訪問と視察、(4)技術コンサルタントへの委託、などがある。
(ii) フェーズII-A(20万ドル)[申請期限:1993年3月31日]
 この段階においては、まず、公的出先機関が広報活動を実施し、MRSに関して会合を開催するほか、候補サイトとして可能性のある地域を抱える州知事もしくはインディアン居留地の執政官は、以下のことを廃棄物交渉官に書簡で通知する。
  ・州もしくはインディアン居留地が、交渉官との正式な交渉を開始する用意のあること。
  ・MRSサイトとして考えられるような1地点以上の地域が候補としてあがっていること。
  ・その提案地域は、申請者の管轄内にあり、申請者は、その地域を統轄するための何らかの手段を有していること。
  ・関係を持った政府機関との間で情報交換と調整が行われていること。
(iii) フェーズII-B(280万ドル)[申請期限:未定]
 この段階においても、フィージビリティ調査が継続される。これには、環境の現況調査、影響分析、基盤整備状況調査などを支援する活動などが含まれる。また、関係政府機関同士の適切な情報交換と調整および住民の理解を得るための一層緊密な活動が図られ、MRSに関した会合が開催される。さらに、MRS施設の候補サイトとして考えられる1地点以上のサイトを特定し、交渉官と正式に協議を開始するとともに、連邦法で要求されている環境影響評価を開始する。
 1993年1月14日に大統領および議会に提出された交渉官の1992年度活動報告によると、フェーズIの申請は1991年度の7団体に加えて、13団体が1992年度に申請を行い、そのうち、10団体が補助金交付を受けた。また、フェーズII-Aの申請も、メスカレロ・アパッチ居留地(ニューメキシコ州)およびスカルバレー・バンド居留地(ユタ州)の2団体が行っている。これらの申請状況を 表1−1 および 表1−2 にまとめる。
3.MRS施設の立地による地元の利益
 これらの補助金によって地元自らが行うフィージビリティ調査において、地元側が最も重視するのは、MRS施設の立地によって、地元にどのような利益がもたらされるか、という点である。これに対し、交渉官としては、安全性の確認をまず行わなければならず、地元利益は最後の検討事項であるとの説明を行った。しかし、そうした事実にもかかわらず、交渉官と州やインディアン居留地の代表との話し合いでは、潜在的にどのような利益を地元が受け得るのか、という点に議論が集中せざるを得なかった。このため、交渉官事務所では、MRS施設の立地によって、どのような地元利益があるかということについて、以下のようなリストを作成した。
  ・高速道路、鉄道、用水路、空港、その他の公共事業を含む基盤整備
  ・大気および水域の清浄化、廃棄物問題の解決などを含む環境改善
  ・公立学校の支援プログラム
  ・高等教育プログラム
  ・保健衛生・医療プログラム
  ・他の連邦プロジェクトの併設および既往の連邦プロジェクトの拡充
  ・総合地域振興プログラム
  ・連邦資産の所有権の移転
  ・税控除もしくは固定資産価値のかさ上げ
  ・公共リクレーション改善事業
  ・直接の財政援助
  ・地元雇用および地元への発注の優先
 なお、放射性廃棄物政策法では、MRSの立地を受け入れた州やインディアン居留地に対して、使用済燃料を受け入れる以前については毎年500万ドル、使用済燃料を受け入れてから施設が閉鎖されるまでの期間については毎年1000万ドルが政府から支給されることになっていた。
4.MRS施設のその後の経過
 MRSの立地交渉を担当する廃棄物交渉官の精力的な活動により、ニューメキシコ州メスカレロ・アパッチ・インディアン居留地がMRS候補サイトとして選定された。しかし、ニューメキシコ州の強力な政治圧力と反対活動により、同プロジェクトは建設着工の寸前に暗礁に乗り上げた。この計画頓挫後、34社の電力会社がメスカレロ・アパッチ・インディアン部族と民間の建設計画について直接協議を行ったが、最終的な合意には至らなかった。また、ノーザンステーツ・パワー(NSP)社が主導する11社の電力会社も交渉を続けたが、1996年4月、計画は打切りになった。
 しかし、電力会社は1997年1月、新たにユタ州トゥエール郡のスカルバレーバンド地区に居留するゴシュート族と借地契約を締結、1997年6月末に米国初の中間貯蔵施設の建設許可申請を原子力規制委員会(NRC)に提出した。同プロジェクトはユタ州当局の必死の抵抗にもかかわらず、中間貯蔵施設の実現に向けて着実に前進している。
 なお、MRSサイトの実現可能性が極めて小さいため、DOEはこの問題を担当している民事放射性廃棄物管理局(OCRWM)の1995年会計年度(1994年10月〜1995年9月)予算から、中間貯蔵に関連した活動予算を削減し、1995年1月には廃棄物交渉官の法的権限を失効した。
<図/表>
表1−1 MRS施設立地交渉の進捗状況(1992年)(1/2)
表1−2 MRS施設立地交渉の進捗状況(1992年)(2/2)

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<関連タイトル>
アメリカの核燃料サイクル (14-04-01-05)
ユッカマウンテン処分場の調査状況(2003年) (14-04-01-14)
低レベル放射性廃棄物対策の現状(州間協定に基づく処分場開発の状況) (14-04-01-15)
アメリカの使用済燃料の中間貯蔵 (14-04-01-27)

<参考文献>
(1) Office of the United States Nuclear Waste Negotiator,”1992 Annual Report to Congress”,Jan.1993.
(2) 株式会社 アイ・イー・エー・ジャパン:「米国原子力情報サービス」(1993年3月)
(3) ”Science,Society,and America's Nuclear Waste-The Nuclear Waste Policy Act: An Overview(、(2000年12月6日)
(4) Office of Civilian Radioactive Waste Management,DOE,”Program Plan-Revision 3”,February 2000
(5) United States Department of Energy, Office of Civilian Radioactive Waste Management,”Financial Statements”, September 1998
(6) 放射性廃棄物政策法((NWPA:THE NUCLEAR WASTE POLICY ACT OF 1982)ホームページ
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