冷却材に気体を用いる原子炉。多くの発電用原子炉では冷却材に液体(軽水、重水など)を用いるが、ガス冷却炉では炭酸ガス、ヘリウムなどを用いる。商用発電炉開発の初期に英国では、天然ウランを用いた黒鉛減速炉が実用化された。この炉は燃料被覆材としてマグネシウム合金を用いていたため、マグノックス炉と呼ばれる。マグノックス炉は経済性に難があったため、その後、低濃縮の二酸化ウラン燃料を用いた改良型ガス冷却炉が開発され、1980年代末までに英国で14基が建設された。これらのガス冷却炉は冷却材に炭酸ガスを用いているため、最悪の場合でも原子炉冷却材の圧力が大気圧程度まで下がるだけであり、軽水炉の冷却材喪失事故に相当する事象がない。また、炭酸ガスは化学的に不活性で相変化も発火も起こらないので、燃料や被覆管とは発熱反応を起こすことはない。さらに、減速材黒鉛の熱容量が大きいため、異常発生時でも温度変化が緩やかであるなどの長所も持っている。なお、より高性能なガス冷却炉として、ヘリウムを冷却材とする高温ガス炉の開発が進められてきたが、実用化には至っていない。