<大項目> 原子力発電
<中項目> 原子力発電所の事故・故障
<小項目> わが国の原子力発電所の事故・故障・トラブル
<タイトル>
実用発電用原子炉の法令報告事象の分析(2001年〜2006年) (02-07-02-24)

<概要>
 2001年から2006年までの実用発電用原子炉における法令や通達に基づく報告対象事象(以下「法令報告事象」という)87事象を対象に、今後の事故・故障分析に資するため、安全上の重要性(INES)および損傷形態や機能低下といった直接原因などに基づく分析を行い、結果を取りまとめた。
<更新年月>
2007年06月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.法令報告事象
 法令報告事象は、2003年以降原子炉等規制法に基づき、以下のとおり明確化されており、これらの事象は事業者から規制行政庁である原子力安全・保安院への報告、さらに保安院より原子力安全委員会への報告が義務付けられている。
a.核燃料物質の盗取等
b.原子炉施設の故障による自動停止等
c.点検の結果、安全上重要な機器等において構造上の基準を満たしていないとき等
d.火災により安全上重要な機器等の故障があったとき
e.bからdのほか、原子炉施設の故障により運転上の制限を逸脱したとき等
f.原子炉施設の故障等により放射性廃棄物の排気又は排水施設からの異常な排出状況
g.周辺監視区域外の空気中の放射性物質濃度が炉規制法上の濃度限度を超えたとき
h.周辺監視区域外側境界の水中の放射性物質濃度が炉規制法上の濃度限度を超えたとき
i.核燃料物質等が管理区域外で漏えいしたとき
j.原子炉施設の故障等により核燃料物質等が管理区域内で漏えいしたとき
k.原子炉施設の故障等により、管理区域に立ち入る者で特定の被ばくがあったとき(放射線業務従事者においては5mSv、その他の者は0.5mSv)
l.放射線業務従事者が炉規制法の線量限度を超え、又は超えるおそれがあるとき
m.原子炉施設に関し人の障害が発生又は発生のおそれがあるとき(放射線障害以外の障害であって入院治療が不要なものを除く)
 2001年以降は、放射線障害が発生する事象、また、外部への放射性物質の異常な放出のような実用発電用原子炉の事故も発生しておらず、法令報告事象は、主に、運転状態に関する事項(b、dおよびe)、構造上の基準に関する事項(c)、核燃料物質等の漏えい(iおよびj)となっている。
2.分析の方針と結果
 今後の事故・故障分析に資するため、以下の観点から分析を行い、結果を取りまとめた。
2.1 安全上の重要性に基づく分析
 法令報告事象は、INESによる評価を保安院が実施しており、また、INESレベル1に満たない事象に対しても、安全上重要でない事象として、0+(安全に影響を与え得る事象)、0−(安全に影響を与えない事象)、評価対象外(安全に関係しない事象)に分類している。INESレベル1に満たない事象を表1に、INESのレベル1(逸脱)の5事象をレベル評価の理由とともに表2に示す。
2.2 直接原因に基づく分析
(1)静的機器および部品における構造材料の劣化事象
 主要な経年劣化事象毎に、法令報告事象を発生原因および現在までの対応をとりまとめた。静的機器および部品がSCC(表3)、疲労(表4)、減肉等(表5)により損傷する事例が多くなっている。法令報告事象として、静的機器に関しては、運転中およびその損傷により定期検査時に検出された機器の損傷が含まれているが、動的機器の機能低下に関しては、運転中に異常が発見されることが多く、結果的に手動停止等が必要な場合が主対象となっている。このように、検出された時点で分析すれば、運転中に検出された静的機器および部品の損傷を直接原因とするのは14事象であり、動的機器の運転中に検出された異常事象25事象よりも少なくなっている。
 運転中に、静的機器等の損傷を直接原因とした事象をさらに分析すれば、
 −破壊モードによらず、不適切な施工による初期傷等に起因し、SCC、疲労等により損傷した事象(5事象)。
 −疲労破壊については、設計時に考慮されていなかった事象(低負荷遮断試験時のフラッシュバックおよびランダム振動の重畳によるタービン羽の損傷等)(5事象)。
 −減肉等については、エロージョン・コロージョンによる事象(2事象)。
となる。
 逆に、SCC、排気筒における疲労による損傷、蒸気発生器伝熱管の旧振止金具の摩耗減肉や経年劣化による減肉等は多くの場合、停止中の検査で検出されている。
 設計段階で十分考慮されなかった要因により、機器等が損傷した主要事象としては、
 −ハフニウム板型制御棒における照射誘起応力腐食による損傷(2006)
 −大型低圧蒸気タービン動翼における低負荷遮断試験時フラッシュバック振動およびランダム振動の重畳による疲労損傷(2006年)
 −排気筒における振動等による疲労損傷(2004年〜)
 −蒸気発生器伝熱管の旧振止め金具部の摩耗減肉(〜2005年。類似事象は2001年以前に発生)
 −温度差のある流体混合による高サイクル熱疲労(2003年。類似事象は2001年以前に発生)
がある。
 また、2004年以降の傾向として、美浜発電所3号機2次系配管破損事故等を受け減肉等に関する検査手法が明確化されたことも受けて、減肉等による損傷の報告が多く行われている。
(2)ポンプ・弁等の動的機器の機能低下
 動的機器の機能低下については、ポンプ・弁等の機械的機能の低下が多く、その直接原因は、弁等の締付け不足等の不適切な施工によるもののほか、異物等の噛込みや摺動面の摩擦増によるシール機能の低下がほとんどであった(表6)。電気的機能低下は、電子機器の偶発故障(4事象)によるものであった(表7)。
2.3 燃料からの漏えい(表7
 燃料からの漏えいによる報告事象は3件であった。燃料からの漏えいが保安規定に定める値を上回ることから報告されるものではなく、排気筒等の放射線量値増等により報告対象となるものであることにも留意しつつ、長期的な報告件数(図1および図2参照。1炉当たりの燃料漏えいに関する報告事象)をみれば、大幅に減少していることがわかる。
2.4 火災(表7
 火災により機器の故障があった事象は2事象であった。1件は、INESレベル1に分類される事象であった。
2.5 運転・点検時の誤操作(表7
 制御棒の操作時やポンプ切替時の誤操作が各1事象、点検時の誤操作が6事象であった。
3.主要事象に対する原子力安全委員会の指摘事項
 主要事象に対する原子力安全委員会の指摘事項の概要を表8に示す。
<図/表>
表1 わが国におけるレベル1に満たない事象(2001年〜2006年)
表2 わが国におけるレベル1の事象(2001年〜2006年)
表3 静的機器および部品における応力腐食割れ事象(2001年〜2006年)
表4 静的機器および部品における疲労割れ事象(2001年〜2006年)
表5 静的機器および部品における減肉等の事象(2001年〜2006年)
表6 動的機器(システム)の機械的機能低下事象(2001年〜2006年)
表7 動的機器(システム)の電気的機能低下・その他事象(2001年〜2006年)
表8 主要事象に対する原子力安全委員会の指摘事項(2001年〜2006年)
図1 燃料からの漏えい事象発生件数
図2 燃料からの漏えい事象の発生率

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<関連タイトル>
日本における原子力発電設備の維持基準 (02-02-03-15)
原子力施設の検査制度の改正(平成15年改正の概要) (02-02-03-17)
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浜岡原子力発電所1号機余熱除去系配管破断事故 (02-07-02-19)
原子力安全委員会の当面の施策の基本方針について(2004年9月) (10-03-02-14)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会事務局:平成13年以降の実用発電用原子炉の法令報告事象について(平成18年12月15日)
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