<本文>
1.
原子力発電所における事故・故障・トラブルの年度推移
電気事業法および
原子炉等規制法に基づき、1980年度から2005年度にかけて電気事業者から通商産業大臣(現、経済産業大臣)に報告されたトラブル等(法律対象)の推移を
図1に示す。1基あたりの報告件数は、1993年度以降0.2〜0.4で推移している。これらのトラブル等は、運転中(試運転・調整運転を含む)に発生したものと
定期検査中に発見されたものに分かれる。これらの内訳の推移を
図2に示す。また、
表1に、1966年度から2005年度までのトラブル報告件数の推移を内訳もあわせて示す。
運転停止の原因となった発生機器(
表2、
表3参照)および定期検査のときに発見された箇所の主なものについて以下に述べる。
1.1 運転中に自動停止したもの
発生機器の所属システムとして件数の多いものは、計測制御系統設備、蒸気タービン設備、電気設備の順となっている。計測制御系統設備では、BWRプラントにおける検出器の不調、電子回路の故障等による制御回路の不調によるもの、PWRプラントにおける制御回路、計測制御用弁の不具合によるものが、主なものである。蒸気タービン設備については、BWRプラントに多く、湿分分離器や圧力制御装置の誤作動等が主なものである。電気設備については、発電機界磁喪失等が主なものである。
原子炉の自動停止に対しては、系統別の予防保全対策などを強化することにより、近年この件数は減少傾向にある。
1.2 運転中に手動停止したもの
毎年数件発生しており、原子炉冷却系統設備に属する機器の漏えい等により、機器監視パラメータに有意な変化が認められて、点検補修のため原子炉を手動停止したものが大部分である。主な内容としては、PWRプラントにおける
蒸気発生器伝熱管損傷による二次系への漏えいにより調査、補修のため手動停止したもの、BWR・PWRプラント共通である配管の疲労割れ、
応力腐食割れ、フランジ部締付け不良等による漏えい等により調査補修のため手動停止したものなどである。
蒸気発生器伝熱管については、定期検査時の
渦電流探傷検査の実施による漏えいの未然防止の対策をとり、また、配管の疲労割れ、応力腐食割れ等についても材料・施工方法の改良、配管の取替え等により対応している。
1.3 定期検査等停止中に発見されたもの
主なものとして、PWRプラントにおける蒸気発生器の損傷については、定期検査毎に実施する伝熱管の渦電流探傷検査で有意な信号指示のでるものがあるが、蒸気発生器の取替え、
水質管理の徹底等により減少傾向にある。
1.4 その他のもの
プラントの運転に直接影響を及ぼさない人身にかかわるもの、
被ばく、
放射性物質の漏えい等をいう。
2.発生機器、原因、発生時運転状況、および発見方法
トラブル等発生機器の所属システムを
表2に、トラブル等発生機器を
表3に、トラブル等の原因を
表4に、トラブル等発生時の運転状況を
表5に、およびトラブル等の発見方法を
表6に示す。
(前回更新:2003年12月)
<図/表>
<関連タイトル>
平成11年度原子力発電所の事故・故障 (12-01-02-21)
<参考文献>
(1)科学技術省原子力安全局(編):原子力安全委員会月報、Vol.19, No.4, 大蔵省印刷局、p.13−14(1996)
(2)(財)原子力発電機構 安全情報研究センター:平成7年度のわが国の原子力発電所におけるトラブルについて、p.5-6(1996年9月)
(3)経済産業省 原子力・安全保安院 原子力保安管理課(編):原子力発電所運転管理年報 平成14年版(平成13年度実績)、火力原子力発電技術協会(2002年9月)
(4)原子力安全委員会(編):原子力安全白書、平成12年版?13年版
(5)独立行政法人 原子力安全基盤機構 JNES−トラブル等情報データベース
(6)INES(国際原子力評価尺度)ホームページ:評価した事故・故障等
(7)原子力安全基盤機構(編集発行):原子力施設運転管理年報平成18年版(平成17年度実績)(2006年8月)