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原子力発電所の原子炉制御設備は、原子炉設備からタービン発電機設備にわたる起動から定格出力までの出力上昇、定常運転時および負荷変化時、定格出力から停止までの出力降下を行うことにある。このため中央制御室において、制御設備の各種パラメータを集中的に監視し制御機器を操作し調整している。
PWR原子力発電所のプラント制御の特徴は「タービン主原子炉従」方式である。電力系統の負荷要求に従ってタービンの蒸気流量が調整され、これに見合うように原子炉出力が追従し調整される。
原子炉制御設備のはたらきを
表1に、PWR原子炉制御設備説明図を
図1に示す。原子炉制御設備には、制御棒制御系、ホウ素濃度制御系、加圧器圧力制御系、加圧器水位制御系、
給水制御系、タービンバイパス制御系、主蒸気逃し弁制御系、制御棒クラスタ引抜き阻止およびタービンランバックがある。以下PWRにとって特徴的な原子炉の出力制御に関する反応度制御と加圧器圧力の制御による
一次冷却系の圧力制御について主に記述する。
1.原子炉の反応度制御
原子炉の主たる反応度制御は制御棒の制御とホウ素濃度の制御(ケミカルシム制御あるいは化学制御とも呼ばれる)により行われる。小さな瞬間的出力変動は原子炉が固有にもっている
自己制御性(燃料ドップラー係数、
一次冷却材温度係数など)によって反応度が制御される。
1.1 制御棒制御系(一次冷却材平均温度制御)
制御棒制御説明図を
図2に、炉心制御棒クラスタ配置説明図を
図3に、および一次冷却材温度と出力の関係を
図4に示す。制御棒制御は、出力変化、一次冷却材(原子炉減速材)温度等の運転条件における短期の反応度変化を補償している。通常運転状態での出力変更はタービンへの蒸気流量を加減して行なわれ、原子炉側でその出力変化に対応するプラント状態の変化を計測し、設定値を保つように制御グループの制御棒クラスタが操作される。このときの制御棒クラスタ駆動制御信号は一次冷却材平均温度信号、タービン負荷に比例するプログラム平均温度信号および炉出力(中性子束)信号を比較して制御棒制御系より出力される。
1.2 ホウ素濃度制御系
ホウ素濃度の制御系は、燃料の燃焼、
核分裂生成物(キセノン、サマリウムなど)の中性子吸収等の長期にわたる反応度変化、および一次冷却材の低温から高温零出力状態までの比較的緩やかな反応度変化を制御する。ホウ素濃度を高くする場合には、充てんポンプによって一次冷却材中に高濃度ホウ酸水を注入し、逆にホウ酸濃度を薄める場合には、一次系に純水を補給して所要濃度に希釈する。このホウ素濃度制御により全出力運転状態では制御棒クラスタはほとんど引抜かれた状態になり、
出力分布が平坦化されている。
ホウ素濃度制御は、自動補給、希釈、急速希釈およびホウ酸添加の4つのモードがあり、中央制御盤上のモード選択スイッチによって行われる。
1.3 タービンバイパス制御系
10%を超えるステップ状負荷減少および5%/minを超えるランプ(傾斜)状負荷減少に際しては、タービンバイパス弁が作動し、タービンをバイパスした主蒸気の一部は直接復水器に導かれ(ダンプさせ)、その結果原子炉の過渡応答が緩和される。
2.一次冷却系の圧力制御
過渡時の一次冷却系の圧力変化は、加圧器および加圧器圧力制御装置によって制御される。加圧器圧力制御説明図を
図5に示す。
加圧器はサージ管によって一次冷却材高温側配管に接続されており(
図1参照)、加圧器内は原子炉(一次冷却材)圧力の飽和温度に制御・維持されている。原子炉圧力が低下した場合には、液相内に設けられた電気ヒータによって圧力を回復させる。原子炉圧力が上昇した場合には一次冷却材低温側配管から導かれた低温水を気相部にスプレイし、蒸気を凝縮させて圧力上昇を抑える。さらに大きな圧力上昇がある場合には、加圧器逃し弁を通して加圧器逃がしタンクに蒸気を逃がし圧力上昇を抑える。
3.プラントの起動・停止
3.1 プラントの起動
プラントの起動曲線(例)を
図6に示す。起動前点検終了後、
化学体積制御系の充てん抽出流量を調節して一次冷却系の昇圧に入り、加圧器ヒータの投入、停止グループの制御棒クラスタを全引き抜きする操作を行う。一次冷却系の圧力が約28kg/cm2(2.7MPa)に至ると、その圧力を維持し、
一次冷却材ポンプを起動する。その後、一次冷却材ポンプの入熱および加圧器ヒータにより、一次冷却材を昇温する。一次冷却系の圧力が通常運転圧力の約157kg/cm2(15.4MPa)に達したら、加圧器後備ヒータを切り加圧器圧力制御系を自動運転に切り替える。
一次冷却材のホウ素濃度を
臨界ホウ素濃度に希釈した後、制御グループの制御棒クラスタを引き抜き原子炉を臨界にする。引き続き制御棒クラスタを引き抜いて原子炉出力を上昇させ、タービンを起動し、初期負荷(約10%)に見合う原子炉出力でタービン発電機を電力系統に併入する。負荷上昇とともに制御棒クラスタは全引き抜き状態に向かい、炉心内出力分布は次第に平坦化される。ここで出力上昇によるキセノン生成にともなう負の反応度添加によって制御棒クラスタが全引き抜きにならないように、適宜ホウ素濃度を希釈して制御棒クラスタを適切な範囲に保つようにする。
3.2 プラントの停止
プラントの停止曲線(例)を
図7に示す。定格出力状態からタービン負荷減少に追従して原子炉出力を低下させ、原子炉出力約15%で制御棒制御を自動運転から手動運転に切り替える。原子炉出力を徐々に下げ発電機を解列する。タービンバイパス制御系によって約28℃/hの冷却率で一次冷却材系統を冷却していく。この間、ホウ素濃度を所定の濃度に高める。一次冷却系の圧力・温度が28kg/cm2(2.7MPa)、178℃以下になったら、
余熱除去系を使用して冷却を続け、一次冷却系が60℃以下になると停止操作は終了する。
<図/表>
<関連タイトル>
PWRの水質管理 (02-02-03-05)
原子炉機器(PWR)の原理と構造 (02-04-01-02)
PWR原子炉容器 (02-04-03-01)
PWRの原子炉冷却系統 (02-04-03-02)
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PWRの原子炉保護設備 (02-04-07-01)
PWRの蒸気発生器 (02-08-01-03)
<参考文献>
(1)原子力安全研究協会実務テキスト編集委員会(編):軽水炉発電所のあらまし(改訂第3版)、原子力安全研究協会(平成20月9月)
(2)火力原子力発電技術協会(編):原子力発電所−全体計画と設備−(改定版)、火力原子力発電技術協会(平成14年6月)
(3)九州電力(株):玄海発電所原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(3,4号炉増設)本文および添付書類(一?十)、昭和63年12月
(4)通商産業省資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課(編):原子力発電便覧1993年版、電力新報社(1992年10月)