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<概要>
 加圧水型原子力発電所(PWR)の原子炉の冷却系統は、炉心(核燃料)から熱をとる一次冷却系と、蒸気発生器を介してこの一次冷却系から熱をとって蒸気をつくる二次冷却系とからなっている。一次冷却系では、一次冷却材加圧器によって原子炉容器全体にわたって沸騰しないよう高温高圧(325℃、約157気圧(15.4MPa))に制御されていて、一次冷却材ポンプの働きで一次冷却材が原子炉容器と蒸気発生器(伝熱管)の間を循環している。蒸気発生器内では、伝熱管によって一次(内側)から二次側(外側)に熱伝達され、発電機タービン用の蒸気(約277℃、約62気圧(約6.08MPa))を発生する。発電の仕事をした蒸気は復水器内で海水によって冷却されて水に戻され、主給水ポンプのはたらきで蒸気発生器に戻される。一次冷却系を原子炉冷却系、二次冷却系を主蒸気・タービン系とも呼ぶ。
<更新年月>
2008年12月   

<本文>
 加圧水型原子力発電所(PWR)の概要図を図1に、主要系統図を図2に示す。原子炉容器の中の燃料(炉心)から熱を採って蒸気発生器に送る一次冷却系と、蒸気発生器内で一次冷却系から熱を採って蒸気を発生させ発電機のタービンに送る二次冷却系とで構成されている。以下では、ループ式(分離式と呼ぶこともある)の1100MWe級WH型PWR(以下PWR)を例にとって記述する。
 一次冷却系は放射性物質を含むので原子炉格納容器内に格納されており、放射性物質を含まない二次冷却系とは蒸気発生器を介して隔離されている。このため二次冷却系の機器は放射線防護対策が不要となり、運転・保守上から火力発電所と同様の取扱いができる。
1.一次冷却系
 一次冷却系の設備仕様を表1に、系統図(4ループ)を図3に、および主要設備の配置を図4に示す。一次冷却系は原子炉容器、蒸気発生器、一次冷却材ポンプ、加圧器などから構成されている。炉心(核燃料)で加熱された一次冷却材は原子炉容器から高温側配管(ホットレグ、内径:約70cm)を経て蒸気発生器に入り伝熱管によって除熱され、一次冷却材ポンプによって低温側配管(コールドレグ、内径:約74cm)を経て原子炉容器に戻される。一次冷却材の加圧維持は高温側配管に接続している加圧器によって行われる(図3参照)。
(1)原子炉容器
 原子炉容器は炉心(核燃料)を収納している鋼製の圧力容器である。主要材料は低合金鋼であり厚さ約4mmのステンレス鋼で内張りされ、内径約4.39m、全高約12.9m、最小肉厚約13.5cm(下部半球鏡部)の円筒型である。一次冷却材は入口ノズルから原子炉容器内に入り、炉心槽外側で下降流となって炉心下部から炉心に入り、上昇流となって出口ノズルから原子炉容器を出て蒸気発生器に向かう。詳細については「PWR原子炉容器<02−04−03−01>」を参照されたい。
(2)蒸気発生器
 蒸気発生器の設備仕様を表2に示す。一次冷却材は底部の入口ノズルから蒸気発生器入口水室に入り、多数の伝熱管(内側)を流れて出口水室に入り、底部の出口ノズルから出て行く。一方胴上部の給水入口ノズルから入った二次冷却系の水は伝熱管(外側)によって加熱されて蒸気となり、上部に内蔵されている気水分離器を介して水分が分離され、さらに湿分分離器を介して除湿され、上部の蒸気出口ノズルから主蒸気として取り出され、発電機タービンに向かう。詳細について「PWRの蒸気発生器(02−08−01−03)」を参照されたい。
(3)一次冷却材ポンプ
 一次冷却材ポンプは一次冷却材を一次冷却材ループ内で循環させるための電動駆動ポンプであり、WH型PWRでは各ループごとに蒸気発生器の出口側に設けられており、必要な炉心冷却流量を確保している。一次冷却材ポンプにはポンプ電源喪失時などで急に冷却能力が落ちないようフライホイール効果を持たせてある。
(4)加圧器
 加圧器は原子炉運転時に一次冷却材を未飽和状態に加圧維持する設備であり、加圧器本体、電熱ヒーター、水スプレイ、加圧器逃がし弁、加圧器安全弁などから構成されている。加圧器容器内の約2分の1が液相で他は気相となっており、一次冷却材の加熱・加圧は電熱ヒータによって行われ、減圧は水スプレイによって蒸気を凝縮させて行っている。このようにして、一次冷却材は原子炉容器内全体にわたって沸騰しないよう高温高圧(325℃、約157kg/cm2g(15.4MPa))に維持されており、通常の負荷変化にともなう圧力変化を許容値内に制限するとともに、一次冷却材の圧力を規定値に保っている。
2.二次冷却系(図1および図2参照)
 主蒸気系あるいは主蒸気・タービン系とも呼ばれる。また一次冷却系と合わせて原子力蒸気供給システム(NSSS)と呼ばれることもある。蒸気発生器で発生した高温高圧の蒸気(タービン入口で273.9℃,約59.7kg/cm2g(5.85MPa))は主蒸気止め弁・蒸気加減弁を通して高圧タービンに導かれる。高圧タービンで仕事をした(発電した)蒸気は、湿分分離・加熱器を介して改質された後、低圧タービンに導かれる。低圧タービンでも仕事した蒸気は復水器に排出される。蒸気は復水器内の冷却管を通して海水(海外では河川水が多い)によって凝縮され水に戻され(復水され)、給水加熱器を介して昇温され、主給水ポンプを介して昇圧され、蒸気発生器に給水される。また蒸気発生器からの蒸気を直接タービンに導くタービンバイパス配管(バイパス弁)が設けられており、定格主蒸気流量の約40%を処理でき、また定格負荷の10%以上50%までの負荷急減に対し一次冷却系の温度・圧力を許容範囲内に抑えて運転継続ができる。プラント構成としては火力発電所と殆ど同じである。詳細は「原子力発電所のタービン・発電機と付属設備(02−02−02−06)」を参照されたい。
<図/表>
表1 一次冷却系の設備仕様
表1  一次冷却系の設備仕様
表2 蒸気発生器の設備仕様
表2  蒸気発生器の設備仕様
図1 加圧水型原子力発電所(PWR)概要図
図1  加圧水型原子力発電所(PWR)概要図
図2 PWRの主要系統図
図2  PWRの主要系統図
図3 一次冷却系系統図(4ループ)
図3  一次冷却系系統図(4ループ)
図4 一次冷却系主要設備の配置
図4  一次冷却系主要設備の配置

<関連タイトル>
加圧水型原子炉(PWR) (02-01-01-02)
原子力発電所のタービン・発電機と付属設備 (02-02-02-06)
PWR原子炉容器 (02-04-03-01)
PWRの工学的安全施設 (02-04-04-01)
PWRの蒸気発生器 (02-08-01-03)
改良型加圧水型原子炉(APWR) (02-08-02-04)

<参考文献>
(1)(社)火力原子力発電技術協会:原子力発電所ー全体計画と設備ー(改訂版)、平成14年6月
(2)原子力安全研究協会実務テキスト編集委員会(編):軽水炉発電所のあらまし、平成20年9月
(3)電気事業連合会:「原子力・エネルギー」図面集 2008年版(2008年4月)、p.83、 
(4)三菱重工(株):一次冷却剤設備
(5)九州電力(株):玄海原子力発電所原子炉設置許可申請書(3,4号炉増設)、昭和63年12月
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