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<概要>
 加圧水型原子炉PWR)では原子炉を冷却するループ(蒸気発生器一次冷却材ポンプ→炉容器→蒸気発生器、以上を一次系という)とタービンサイクル(蒸気発生器→タービン→復水器給水ポンプ→蒸気発生器、以上を二次系という)とが蒸気発生器を境として分離され、タービンサイクルと一次系とが分離している。沸騰水型原子炉BWR)では、炉容器→タービン→復水器→給水ポンプ→炉容器というループで、タービンへ蒸気を直接送っている。軽水炉における発生蒸気は飽和蒸気であるため、原子力発電用タービンでは湿分分離器が設けられ、また多量の蒸気を処理する大出力の原子力発電用タービンは回転数の低い1,800rpmまたは1,500rpmとし、4極の発電機と結合される。高速増殖原型炉(FBR)では、冷却材のナトリウム温度が高いため過熱蒸気を発生させることができ、これによりタービン効率を上げている。
<更新年月>
2000年10月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.軽水型発電炉のタービンサイクル
 軽水型発電炉(以下「軽水炉」という)では、水を原子炉冷却材として原子炉容器内の炉心に送り、核分裂によって生じた熱を炉外に取り出す。加圧水型原子炉(PWR)では、原子炉容器を含む一次系全体を加圧器により約157気圧まで加圧して、原子炉容器内で水が沸騰するのを抑える。原子炉容器を出た水は蒸気発生器に入り、ここで放熱(熱交換)して一次冷却材ポンプによって原子炉に戻される。蒸気発生器では、この熱によりタービンサイクルからの水を50〜70気圧の飽和蒸気にする。このようにPWRでは、原子炉を直接冷却するループ(蒸気発生器→一次冷却材ポンプ→原子炉容器→蒸気発生器、以上を一次系と称する)とタービンサイクル(蒸気発生器→タービン→復水器→給水ポンプ→蒸気発生器、以上を二次系と称する)とが蒸気発生器を境として分離され、タービンサイクルと一次系とを分離しているのが特徴である( 図1 参照)。
 一方、沸騰水型原子炉(BWR)では、原子炉冷却材である水は約70気圧に保たれた原子炉容器内の炉心で加熱され沸騰し、飽和蒸気となって直接タービンに送られる。すなわち水は、原子炉容器→タービン→復水器→給水ポンプ→原子炉容器というループで循環する。このようにBWRでは、タービンへの蒸気を直接原子炉で発生させ、中間に蒸気発生器のような熱交換器がなく、タービンサイクルと一次系が同じであることが特徴である(図1参照)。
 タービンサイクルの主要設備である蒸気タービン・発電機設備、復水設備及び給水設備について概要を次に説明する。主要機器の役割について 表1 に示す。
1.1 蒸気タービン・発電機設備
 蒸気タービン及び発電機はプラントの中の主要な機器であって、タービン建屋に設置される。プラントの出力(又は容量)は、このタービン・発電機の定格出力で表される。
(a)タービン主機
 軽水炉のプラントではタービン入口蒸気は50〜70気圧の飽和蒸気であるため、再生サイクルや湿分分離方式を採用しても、タービン熱効率は33〜35%前後である。蒸気がタービン内部で膨張する仕事量(熱落差)も小さいため、蒸気消費量は同一出力の火力用再熱タービンに比し1.6〜1.8倍である。また入口蒸気圧力が低いため、タービン入口蒸気の体積流量は火力タービンの4〜5倍となる。多量の蒸気を処理する大出力の原子力発電用タービンには、回転数の低い1,800rpmまたは1,500rpmが用いられ、4極の発電機と結合される。原子力発電用タービンは、高圧タービン1台と出力に応じて低圧タービン1〜3台で構成される。原子力・火力のタービンの例を 表2 に示す。低圧タービンの台数は主に最終翼長によって決まる。1,100〜1,200MW級では高圧タービン1台と41インチまたは44インチ最終翼をもつ低圧タービン3台の構成となっている。これに発電機が1軸につながれたタンデムコンパンウンド形で1,800MW級まで可能である。タービンの型式と出力の関係について 表3 に示す。タービン発電機の全長は、3車室の500〜600MW級で50メートル程度、1,100〜1,200MW級では65メートルにも達する。タービン基礎架台の高さは、復水器のスペース等を考慮し、500〜600MW級で19メートル、1,100〜1,200MW級では24メートル程度である。タービンに流入する蒸気量は、火力タービンに比し多いので、主蒸気配管に要するスペースも大きい。大容量原子力発電所タービン室の例を 図2 に示す。
(b)発電機
 原子力用タービン発電機は、回転数が1,800rpm又は1,500rpmであるため4極同期発電機となり、経済性の点から大容量のものになっている。タービン発電機の大容量化は冷却方式の進歩によるところが大きい。冷却方式はまず空気冷却から始まり、容量が50MWを超えるころから水素冷却が採用されるようになり、現在大容量の冷却には必ず水素が使用されている。水素は空気に比べて密度が1/14程度であるため風損が小さくなり、熱伝達率が1.51倍で冷却効果が大である。また水素は空気に比べて不活性であるため、固定子コイルなどに対しても寿命上有利である。水素冷却タービン発電機は、機内水素ガスの漏れ及び機内水素ガスへの空気の混入を防止し、爆発混合気体を形成させないよう複雑な軸シール機構をもち、また付属装置として信頼性のあるガス及び密封油の制御装置を備えている。タービン発電機は同期機であるため、その励磁は直流電源を必要とする。励磁方式は始めのころ駆動源をタービン軸からとる直結直流励磁機であったが、その後別置電動駆動の直流励磁機が全盛となった。やがて半導体分野の技術が進歩するに従い、励磁機を交流発電機として、これを整流器によって直流に変換した励磁方式が出現し現在に至っている。最近では、サイリスタ励磁方式とブラシレス励磁方式( 図3 )が主に採用されている。
(c)湿分分離器
 軽水炉の性能上、原子炉で発生した蒸気は飽和蒸気であり、タービン入口において既に0.2〜0.4%程度の湿り気を有する蒸気が流入する。適当な湿分分離器を設けずにタービン出口圧力まで膨張させると、低圧最終段出口湿り度は約25%にも達し、この状態でタービンの運転を行えば、その湿分により動翼の浸食が著しくなるばかりでなく、タービンの内部効率を大幅に低下させる原因となる。したがって、この膨張過程で発生する水分を有効に除くため、原子力発電用タービンでは湿分分離器が設けられている。湿分分離器により高圧タービンの排気の湿分を除去し乾き蒸気に近い状態にする。非再熱サイクルでは、この蒸気が低圧タービンに送られるが、再熱サイクルでは、湿分分離器から蒸気は更に主蒸気との熱交換により60〜80℃の過熱蒸気まで再熱して低圧タービンに送られる。再熱サイクルの加熱蒸気源が主蒸気のみの場合を1段再熱方式、高圧タービン抽気と主蒸気を併用する場合を2段再熱方式と呼んでいる。熱効率は、非再熱サイクルに比較して、1段再熱方式は1.8〜2.2%増、2段再熱方式は2.2〜2.6%増と優れている。
1.2 復水設備
 復水器は、蒸気タービンの排気圧を真空に保ち蒸気熱落差を大きくしてタービン効率を上げるとともに、蒸気を凝縮し非凝縮性のガスの抽出、凝縮した復水を回収し再び原子炉または蒸気発生器へ戻す機能を有している。火力発電所に比べて原子力発電所では復水が多く、またタービンのバイパス装置から直接導かれる蒸気を処理するため大型になるので、占有空間を減らすため冷却水の流路は1パス方式を採っている。BWRでは海水の復水側への漏入を避けるため、細管の管板への取付けは拡管のみによらず、シール溶接の方法を採っている。細管の材質は浸食や腐食に強いチタン管およびチタン管板を用いている。復水器ホットウェルは、復水を汲みだす低圧復水ポンプに安定した吸い込み条件を与えるとともに、BWRでは復水器に流入する蒸気が放射能をもっているので、その放射能を減ずるために復水の滞留時間(2〜3分)をとるようホットウェルの容量が決められる。なお復水器の空気抽出装置は、BWRの場合、原子炉で水から分解した酸素、水素ガスを抽出する必要があり、多量のガスが処理できる蒸気噴射式を採用している。PWRの場合は、起動前の復水器真空確保に便利な電動真空ポンプ方式を採用する場合が多い。復水脱塩装置が、復水と給水の水質保全のために設けられている。水質保全の目的は、(a)腐食作用及び化学的損傷を許容以内に保つ、(b)伝熱表面や機器の汚染を最小限にする、(c)BWRにおいては、原子炉内の中性子照射領域で放射化される不純物を最小限にする。復水脱塩装置は、万一、復水器内で復水中に少量の海水が漏洩しても処理できるようにしている。
1.3 給水設備
(a)給水加熱器
 蒸気発生器(PWR)又は原子炉(BWR)に送られる給水の温度は、原子炉側の要求によっても異なるが、定格出力時190〜225℃程度に選定されている。給水加熱器段数も給水温度の選定及びプラント出力により4〜7段としている。PWRの場合、低圧給水加熱器のうち一つを直接接触式の脱気器と置き換えている。給水加熱器の系統数は、プラントの出力によって異なるが、800MW級以下では2系列、それ以上では3系列とすることが多く、低圧第1及び第2給水加熱器は、復水器の中間胴(復水器上部本体)に配置することが多い。
(b)給水ポンプ
 給水ポンプは、蒸気発生器(PWR)又は原子炉(BWR)へ水を送る重要なポンプである。ポンプ吸込圧力は給水ブースタポンプ(脱気器がある場合)又は復水ポンプあるいは復水ブースタポンプ(脱気器がない場合)により確保される。給水ポンプは50%容量機を3台設置し、常用機2台、予備機1台とする。常用の給水ポンプの駆動源はプラント出力750〜850MWを境にして、大容量側ではタービン駆動、小容量側では電動機駆動が採用される。駆動タービンはタービン主機とは別の復水タービンで、蒸気源は通常運転時は主タービンの抽気(湿分分離器又は湿分分離加熱器出口蒸気)、起動時と低負荷時は主蒸気であり、排気は主復水器に導かれる。予備機の駆動源は急速起動のため電動機となっている。原子力発電プラントではプラントを停止した後も原子炉崩壊熱を吸収するため給水を行う必要がある。このために小容量の補助給水ポンプを設置しており、原子炉保安上の観点からタービン駆動1台、電動機駆動2台合計必要量の300%分を備えている。
2.高速増殖原型炉(FBR)もんじゅのタービンサイクル
 炉心で約530℃に加熱された一次系ナトリウムは中間熱交換器に入り、その熱を二次系ナトリウムに伝え、約400℃に冷却された後、一次系循環ポンプで昇圧されて再び原子炉に戻る。中間熱交換器で約505℃に加熱された二次系ナトリウムは過熱器及蒸発器に入りそれぞれタービンサイクルの蒸気及び水と熱交換し、約325℃に冷却され二次系循環ポンプで昇圧されて再び中間熱交換器に戻る。二次系ナトリウムは蒸発器で給水を蒸気とし、その蒸気はヘリカルコイル形の過熱器において更に加熱され約127気圧、約483℃の過熱蒸気となり、高圧タービンへ送られる。高圧タービンを駆動した蒸気は、2台の低圧タービンを駆動し、発電機によって定格出力時約280MWを発電する(図1参照)。
 蒸気タービンにおいて、高圧タービンは高圧・高温に耐える火力タービンに準じた設計とし、低圧タービンは非再熱性のため、浸食・腐食防止などのドレン対策に主眼を置いた軽水炉タービンに準じた設計となっている。もんじゅのタービンサイクル主要設備の仕様を 表4 に示す。また、軽水炉、火力、高速増殖炉のタービン蒸気膨張線図の比較したものを 図4 に示す。
<図/表>
表1 主要機器の役割
表1  主要機器の役割
表2 原子力・火力タービン比較例
表2  原子力・火力タービン比較例
表3 タービンの型式と出力
表3  タービンの型式と出力
表4 もんじゅタービンサイクル主要設備仕様
表4  もんじゅタービンサイクル主要設備仕様
図1 タービンサイクル系統概略図
図1  タービンサイクル系統概略図
図2 大容量原子力発電所タービン室の例
図2  大容量原子力発電所タービン室の例
図3 発電機励磁方式
図3  発電機励磁方式
図4 蒸気タービン膨張線図比較
図4  蒸気タービン膨張線図比較

<参考文献>
(1)(社)火力原子力発電技術協会編:火原協会講座(3)タービン・発電機、平成2年
(2)(社)火力原子力発電技術協会編:原子力発電所講座(全体計画と付属設備)、昭和57年
(3)(財)原子力安全協会:実務テキストシリーズNO.1、軽水炉発電所のあらまし、平成4年
(4)動力炉・核燃料開発事業団:PNC-TN2410-94-023、高速増殖炉原型炉もんじゅ、−設計・建設・試運転の軌跡−(1994年)
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