<本文>
1.はじめに
2000年度の需要電力量は約8,581億kWhで、用途別に見ると、電力需要約70%、電灯需要約30%となっている(
図1)。2000年度末の設備容量は約2.3億kW、水力(約20%)、火力(約60%)、原子力(約20%)となっている。環境面やセキュリティ面にすぐれた原子力、水力、地熱の合計設備容量と火力の設備容量の比を見ると、1975年度には約1:2であったが、2000年度には約2:3と原子力等の割合が拡大している(
図2)。また、2000年度までの
電力化率と
年負荷率の推移は
図3及び
図4の通りである。
電力供給計画は、電気事業法第29条に基づき、毎年3月末までに、一般電気事業者10社および卸電気事業者3社から、経済産業大臣に届出が行われるものであり、平成15年(2003年)度供給計画は、電力各社が至近の需要、省エネルギー、電源立地、各種燃料の需要・価格の動向を考慮し、策定したものである。本電力供給計画の概要は、これら供給計画を資源エネルギー庁においてとりまとめたものである。電力各社においては、供給計画に盛り込まれた必要な電源および送変電等の計画的な開発、
電源構成の
ベストミックスの構築、電力供給の効率化や需要側における負荷標準化対策などを、着実に推進していくことが必要であり、その進捗が期待されている。
2.電力需要想定(一般電気事業者の電源対応需要)
今回の供給計画の前提となった、平成24年(2012年)度までの需要電力量、量大需要電力および年
負荷率の見通しは、次の通りである。(
表1、
表2参照)
2.1 平成14年(2002年)度推定実績および平成15年(2003年)度見通し
(1) 需要電力量
平成14年(2002年)度の需要電力量は、外需を中心とした緩やかな景気回復により、民生用需要、産業用需要ともに概ねプラスの伸びとなることから 8,325億kWh、対前年度1.0%増(気温補正後0.8%増)と、2年ぶりにプラスの伸びとなる見込である。
特定規模需要以外の需要を用途別に見ると、電灯については、需要量の伸びが鈍化することに加え、原単位についても、雇用・所得環境が依然厳しいことなどから、前年割れが続くなど低調に推移するが、低圧電力からの移行が加算されるため、1.9%増(気温補正後1.5%増)の伸びとなる見込みである。
業務用電力については、需要量の増勢が鈍化することに加え、原単位も非製造業の業況回復の遅れから伸び悩み、1.2%増(気温補正後1.1%増)と低調な伸びにとどまる見込みである。
小口電力については、中小企業において厳しい経営環境が続いていることに加え、低圧電力から電灯への移行もあったため、1.0%減(気温補正後1.2%減)と2年連続の減少となる見込みである。
また、高圧電力Bについては、内需の不振は続いているものの、アジア・米国向けの輸出増が寄与し、0.5%増となる見込みである。
特定規模需要についても、内需の不振等はあるものの、アジア、米国向けの輸出増の影響で、大半を占める産業用需要が増加となるため、1.3%増の伸びとなる見込みである。
平成15年(2003年)度の需要電力量は、景気回復が緩やかなものにとどまること等から、8,327億kWh、対前年度増加率 0.0%増(気温・閏補正後0.5%増)と平成14年度を下回る低い伸びとなる見込みである(
表1)。
特定規模需要以外の需要を用途別に見ると、電灯については、住宅着工戸数が低水準で推移し、需要数の伸びの鈍化が続くことに加え、原単位も消費マインドの回復の遅れ等から低水準で推移することなどから、0.6%増(気温・閏補正後1.6%増)の低い伸びとなる見込である(
表2)。
業務用電力については、需要数の伸びが鈍化傾向を続けるものの、製造業に遅行していた非製造業の景況改善に伴い、原単位の低下に歯止めがかかることが予想されるため、0.8%増(気温・閏補正後1.6%増)と低めながら前年を上回る見込みである。
小口電力については、中小企業を取り巻く経営環境の厳しさが当面続くものと予想されることから、需要数の減少に加え、原単位も低い伸びにとどまり、1.4%減(気温・閏補正後0.4%減)と3年連続の減少となる見込みである。
また、高圧電力Bについても、内需の不振が続くことに加え、輸出の鈍化等により、0.4%増(閏補正後0.2%増)と14年度の伸びをやや下回る伸びとなる見込みである。
特定規模需要については、内需の不振や、輸出鈍化による生産鈍化等により、0.6%減(閏補正後0.9%減)の前年割れとなる見込みである。
(2)最大需要電力
平成14年度の最大需要電力は、夏季の最高気温が平年に比べると概ね高気温で推移したものの、前年に比べて概ねこれを下回り、その影響で冷房需要が減少したため、1億7,392万kWとなり、平成13年度に対し、0.6%減(気温補正後0.2%増)となった。
平成15年度の最大需要電力は、景気回復が極めて緩やかなことに加え、前年の高気温の反動から、1億7,233万kWとなり、14年度に対し、0.9%減(気温補正後0.8%増)と2年連続して前年の水準を下回る見込みである。
2.2 長期見通し
(1) 需要電力量
今後の需要電力量については、内需を中心とした安定的な経済成長、経済社会の高度化、アメニティ(快適性)志向の高まり、高齢化の進展及び電気の持つ利便性などに起因する電力化率(
図3)の上昇などが押し上げ要因となる一方で、足元での景気回復の遅れ、省エネルギーの一層の進展等により、過去に比べて増勢の鈍化が予想される。
特定規模需要以外の需要を用途別に見ると、電灯は、アメニティ志向の高まりによる冷暖房兼用エアコン等の暖房機器や温水洗浄便座などの機器の普及拡大、冷蔵庫・テレビ等の大型化等の増加要因はあるものの、家電機器の省電力化の着実な進展、人口の減少等による減少要因を織り込んだ結果、平成13年度からの年平均増加率は1.6%増(気温補正後も1.6%増)となる見込みである。
業務用電力は、サービス経済化の進展、余暇の拡大、空調需要の増加等の増加要因はあるものの、省エネルギー型ビルの普及増、労働時間の短縮化等の減少要因により、13年度からの年平均増加率は2.4%増(気温補正後2.5%増)となる見込みである。
小口電力は、非製造部門における生活関連及び空調需要の安定した増加が見込まれるものの、省エネルギーの進展、中小製造部門における生産縮小による需要減が予想されることから、13年度からの年平均増加率は0.5%増(気温補正後0.6%増)の低い伸びとなる見込みである。
高圧電力Bは、ウェイトの高い機械および食料品等の安定した増加が見込まれるものの、素材型産業の生産規模の縮小や省エネの進展等の減少要因を織り込んだ結果、13年度からの年平均増加率は1.1%増となる見込みである。
特定規模需要は、ウェイトの高い産業用の長期的な生産減少懸念に加え省エネルギーの進展等も織り込んだ結果、13年度からの年平均増加率は0.3%増と低水準の伸びとなる見込みである。
以上により、特定規模需要以外の需要と特定規模需要を合計した需要電力量は、産業用関連需要が伸び悩むものの、電灯、業務用電力等の民生用需要の比較的安定した増加により、平成13年度の8,241億kWhから、平成19年度には8,808億kWh、平成24年度には9,463億kWhとなり、平成13年度から24年度の年平均増加率は、同期聞の経済成長率をやや下回る1.3%増(気温補正後も1.3%増)となる見込みである(
表2)。
(2) 最大需要電力
最大需要電力(夏季におけるピーク電力)は、これまで主に電灯、業務用電力の冷房空調機器の普及拡大による夏季需要の増加により堅調な伸びを示してきている。
今後の最大需要電力については、
蓄熱システムの普及拡大、需給調整契約拡充等の負荷平準化対策の推進により、年負荷率が改善されることから、平成13年度の1億7,499万kWから、平成19年度に1億8,180万kW、平成24年度には1億9,412万kWとなり、平成13年度から24年度の年平均増加率は0.9%増(気温補正後1.2%増)と電力量の伸びを下回る見込みである(
表1)。
(3) 年負荷率
年負荷率については、負荷平準化対策を講じない場合、負荷率の低い業務用電力需要の割合が増加する一方、負荷率の高い産業用需要の割合が減少する等の需要構造の変化により長期的に低下していくことが予想される(
図4参照)。
これに対し、本供給計画においては、負荷平準化対策として、夏季ピーク時における需要を他の時期・時間帯にシフトすること等を目的とする需給調整(業務用電力を中心とする蓄熱調整契約、産業用の計画調整契約、蓄熱式自動販売機等)の拡大、また、夜間電力を利用した高効率給湯器の普及によるボトムアップ対策等の効果が織り込まれている。
具体的には平成9年12月の電気事業審議会負荷平準化検討小委員会(当時)の中間報告を受け、見直し・拡充が図られた電力会社における料金制度の多様化・弾力化、奨励金の導入や国における蓄熱空調システム導入促進を目的とする普及・広報等の効果を14年度計画に引き続き織り込むことにより、ピークシフト効果が寄与するものと見込んでいる。このことから、年負荷率は、平成13年度の58.1%(気温補正後)から、平成24年度には58.9%となり、0.8ポイントの改善が見込まれている(
表1)。
(注:年負荷率とは、最大需要電力に対する年平均需要電力の比率をいう)
3.供給力の確保
3.1 需給バランス
電力は、需要に応じ安定的に供給する必要があり、かつ、貯蔵することができないという特性を有しているため、常に最大需要電力の増加に対応し得るよう電源設備を計画的に開発していく必要がある。
(1) 平成14年度需給実績及び平成15年度需給バランス
平成14年度は、全国的に梅雨明けは例年並となっており、最高気温が持続せず、最大電力の記録を更新した地域はなかった。また、8月1日に10社合計最大電力が1億7,954万kW(発電端)を記録した。また、需給バランスの基となる最大3日平均電力(H3、前述の2.2(2)項の「最大需要電力」は「最大3日平均電力」のこと)は10社合計で1億7,392万kW(送電端)となり、平成13年度に比べて0.6%減となった(
表1)。これに対し、供給力については、北日本を除く渇水や一部計画外停止があったものの、その他の電源設億がおおむね安定して運転されるとともに新規の電源が計画通りに運転を開始したことなどから1億9,344万kWの供給力を確保し、供給予備率は10社合計で11.2%であった。
平成15年度は、最大需要電力が10社合計で1億7,233万kWと見込まれるのに対し、供給力としては、新増設電源等の供給力増加対策を着実に推進することなどにより、平成14年度実績と比べ429万kW増の1億9,773万kWを確保している。それによって、供給予備率は10社計で14.7%となる見込みである(
表3)。
(2) 長期電力需給バランス
長期的にも、今後10年間の電源の開発及び供給力の適切な調達により、平成19年(2007年)度には2億41万kW、平成24年度には2億1.573万kWの供給力を確保する計画となっている。それによって、最大需要電力に対して、平成19年度で10.2%、平成24年度で11.1%の供給予備率を有しており、安定供給が確保できる計画となっている(
表4)。
具体的な供給力としては、現在運転中の2億3,347万kW(平成15年3月末現在)に加え、建設中の37基2,385万kW及び着工準備中の34基3,038万kWが計画されている。さらに、平成15年度着手予定として、9地点557万kW(水カ3万kW、火カ0.5万kW、原子カ553万kW)が計画されている。今後とも、将来の電力の安定供給確保の観点から、平成16年度以降着手が予定されている電源等も含め、電源開発を計画的に遂行する必要がある。
3.2 電源構成の多様化
本供給計画が実現した場合の平成24年度末の発電設備の構成は
表5および
図5、発電電力量の構成は
表6および
図6に示すとおりである。
3.3 原子力開発計画
平成24年(2012年)度までに15基1,969.5万kWが運転開始し、
原子力発電の合計は6,508万kWになると計画されている。このうち、平成15年(2003年)度には4基553万kWの着手が予定されている。2013年度以降に運転開始する4基も含め、全体の原子力開発計画は
表7のとおりである。
<図/表>
表1 電力需要見通し(一般電気事業者の電源対応需要)
表2 用途別需要電力量見通し(一般電気事業者の電源対応需要)
表3 平成15年度(2003年度)需給バランス
表4 今後の電源開発量と需給バランス
表5 発電設備構成の推移(一般電気事業用)
表6 発電電力量構成の推移(一般電気事業用)
表7 原子力開発計画
図1 電力需要の推移
図2 電源構成の推移
図3 電力化率の推移
図4 年負荷率の推移(9電力会社平均)
図5 発電設備構成の推移(一般電気事業用)
図6 発電電力量構成の推移(一般電気事業用)
<関連タイトル>
各種電源の特徴と位置づけ(1995年度末) (01-04-01-02)
電源別耐用年発電原価試算(1992年度運転開始ベースでの通商産業省の試算) (01-04-01-03)
電力需要の変遷と需要構造 (01-09-05-03)
平成14年度電力供給計画 (01-09-05-18)
日本の発電電力量と2010年度までの電力供給目標(1994年6月) (01-04-01-01)
長期エネルギー需給見通し(2001年7月・総合資源エネルギー調査会) (01-09-09-06)
<参考文献>
(1)経済産業省 資源エネルギー庁:平成15年度電力供給計画の概要、(2003年3月)
(2)資源エネルギー庁:報道発表、平成15年度電力供給計画について、
(3)資源エネルギー庁:最近の電力需給の動向、電気事業分科会、第5回会合、資料3、
http://www.meti.go.jp/policy/electricpower_partialliberalization/bunkakai/5th/5thshiryou3.pdf
(4)成田 達治:機関誌「電機」、経済産業省 資源エネルギー庁、平成15年度電力供給計画の概要、(社)日本電機工業会、
www.jema-net.or.jp/Japanese/denki/de-0307/p24-27.pdf
(5)資源エネルギー庁(編):エネルギー2002、(株)エネルギーフォーラム(2001年12月10日)、p.259
(6)資源エネルギー庁長官官房総合政策課(編):総合エネルギー統計(平成13年度版)、(株)通商産業研究社(2002年12月10日)、p.10、11
(7)(財)日本エネルギー経済研究所計量分析部(編):エネルギー・経済データの読み方入門、(財)省エネルギーセンター(2001年2月23日)、p.248
(8)(財)日本エネルギー経済研究所計量分析部(編):EDMC/エネルギー・経済統計要覧2003年版、(財)省エネルギーセンター(2003年2月5日)、p.187