<本文>
1.三つのタイプの供給力
電源を供給力の面からみると、一般に大別して、(1)常にほぼ一定の出力で運転を行うベース供給力、(2)電力需要の変動に対応して稼働し、主としてピーク時に必要な供給を行うピーク供給力、(3)両者の中間の役割をもつミドル供給力の三つのタイプに分類される。ベース供給力は利用率が高くなるので、長期的な経済性及び燃料調達の安定性の両面において優れた電源を、ピーク供給力は年間の利用率が低く負荷追従性が要求されるため、資本費が安く、負荷追従性に優れた電源を、ミドル供給力は両者の中間的な特性を有する電源をそれぞれ充て効率的運用が行われている(
図1 参照)。
電源構成の基本的な方向としては、ベース供給力には原子力、石炭火力、流込式水力及び地熱を、ミドル供給力には石油火力及びLNG火力を、ピーク供給力には石油火力、LPG火力、調整池式・貯水池式水力及び揚水式水力をそれぞれ充てている。
2.各種電源の特徴と位置付け
(1)水力
一般水力発電は、CO
2等の
環境負荷の点で優れ、また純国産エネルギーとして極めて高い安定供給性に優れ、初期発電コストは割高となるものの、長期的な経済性に優れていることから、基本的にはベース供給力を担う電源として開発を推進する。揚水発電については、瞬時負荷追従能力に優れることから、最大需要電力の増加に対応して電源構成の一定比率を確保できるよう開発を進める。
(2)火力
石炭火力発電は、石炭資源の賦存量が多く、太平洋地域を中心として広く賦存していることから優れた燃料供給の安定性を有しており、また、化石燃料として最も経済性に優れていることから、ベース・ミドル供給力を担う電源として開発を推進する。その際、地球環境問題への対応から高効率発電技術の開発導入を図るとともに、電源構成に占める適正な水準を確保していくことが必要である。
LNG火力発電は、クリーンエネルギーであるLNGの優れた環境特性や出力調整機能を有することから、需要地に接近した都市型の電源として、また、ミドル・ピーク供給力を担う電源として開発を推進する。しかし、既に相当量の導入が進んでいるため、電源構成における適正な比率及び長期安定的な燃料調達に配慮しながら開発を進める必要がある。
(3)原子力
原子力発電は、我が国のエネルギー自給率向上、優れた燃料供給及び価格の安定性、経済性における優れた長期安定性、CO
2等の環境負荷が少ないという環境特性等に着目し、今後とも増大する電力需要を賄うベース供給力の中核を担う電源として位置づけ、安全確保に万全を期しつつ着実に開発を推進する。
3.電源構成のベストミックスの構築
今後の電源構成の構築に当たっては、電源多様化の観点から、供給安定性、経済性、環境特性、各電源の運転特性等を踏まえた最適な構成(ベストミックス)としていくことが必要である(
図1参照)。
燃料供給の安定性では原子力、石炭火力や純国産エネルギーである水力・地熱が優れ、LNGも長期契約による供給安定性が高く、石油は燃料調達の柔軟性に優れる。経済性では、固定費集約型電源である原子力、石炭火力が供給コストの長期的な安定性に優れるとともに、高稼働率下で優れた経済性を示す。一方、変動費集約型電源であるLNG火力、石油火力は燃料価格の動向は不透明であるが、低位安定に推移すれば優れた経済性を示すとともに、ミドル・ピーク需要に対応した低稼働率下では、固定費集約型電源に比べ優れた経済性を示す。環境面では、原子力、水力、地熱等の非化石電源は地球温暖化防止の観点では優れ、化石燃料ではLNG、石油、石炭の順に、環境負荷が大きくなる。
このため、原子力、一般水力、地熱等をベース供給力として位置づけ、次いで石炭火力をこれらに準ずるものとして位置づける。またミドル及びピーク供給力には、石炭火力、LNG火力、石油火力、揚水発電を各電源特性を踏まえ位置づける。
また、平成7年12月に
電気事業法が改定され、卸供給事業者が位置づけられた。電力供給の効率化、電気事業者全体としての供給力の確保・電源構成の最適化の達成との観点から、卸供給事業者からの調達を一層推進する。
表1 および
図2 に一般電気事業用の年度末発電設備の推移を、また発電設備構成の推移を
表2 および
図3 (いずれも平成7年度は実績を示し、四捨五入などで
表1および
図2の数値と一致しないものもある)に示す。1995年(平成7年)度末現在の総発電設備容量(一般電気事業用)は、20,135万kWでその電源構成は、水力4,200万kW、火力11,816万kW(石炭火力2,014万kW、LNG火力4,354kW、石油火力4,953万kW、LPG火力53万kW、その他ガス火力377万kW、歴青質混合物火力16万kW、地熱49万kW)、原子力4,119万kWとなっている。一般電気事業用の発電設備に占める石油火力の割合は1973年(昭和48年)度の57.7%から1995年(平成7年)度の23.5%まで年々減少し、これに対し原子力は2.8%(1973年度)から20.5%(1995年度)まで増加している。
(注)1973年(昭和48年)度末における一般電気事業用の発電設備に占める石油火力および原子力の容量と割合の数値は、平成9年12月3日に通商産業省(現経済産業省)資源エネルギー庁公益事業部開発課からデータを提出していただいた。
<図/表>
<関連タイトル>
平成8年度電力供給計画(「電源開発の概要」から) (01-09-05-01)
電源別耐用年発電原価試算(1992年度運転開始ベースでの通商産業省の試算) (01-04-01-03)
電力需要の平準化対策 (01-09-05-08)
<参考文献>
(1)通商産業省資源エネルギー庁公益事業部(編):電源開発の概要−その計画と基礎資料−(平成8年度)、奥村印刷株式会社出版部(平成8年10月31日)p.2?4
(2)資源エネルギー庁(監修):電力産業のリエンジニアリング−競争の時代へ向けて−(株)電力新報社(1994年9月)
(3)資源エネルギー庁公益事業部(監修)、電力年報委員会(編集):電気事業の現状− 1996年・平成8年版−(社)日本電気協会(1996年12月25日)p.85?91
(4)(社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑平成8年(1996年)版、(1996年11月)p.35-37,p.45-48
(5)日本工業新聞社(編集発行):エネルギー、Vol.30,No.4,p.150-165(1997)
(6)日本工業新聞社(編集発行):’94 エネルギー総合便覧(1993年12月15日)