<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 世界のエネルギー情勢
<小項目> 世界の原子力発電
<タイトル>
世界の原子力発電の動向・アジア(2005年) (01-07-05-02)

<概要>
 アジア地域では、現在、日本、韓国、中国、台湾、インド、パキスタン、インドネシアの7か国で原子力発電所の運転、建設、計画が進行している。ここでは、日本を除いたアジア地域における原子力発電開発の動向を示す。
 2005年12月末現在、運転中の原子力発電所の設備容量および基数は3,363万kW・52基で、それぞれ世界全体の8.73%と11.8%を占めるに過ぎない。しかし、アジア各国とも原子力発電開発に活発な動きを示しており、2000年以降新たに営業運転を開始した原子炉は19基・合計出力1,372万2,000kWで世界全体の52%を占める。
<更新年月>
2006年07月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 2005年12月末現在、運転中の原子力発電所の設備容量および基数は、3,363万kW・52基で、各々、世界全体の8.73%と11.8%を占めるに過ぎない。しかし、建設中の原子力発電所の設備容量は世界全体の44.3%(合計出力1,392万kW)、基数ベースで50.0%(18基)を占め、計画中は39.7%(合計出力1,590万kW)、基数ベースで38.5%(15基)を占める。表1にアジアの原子力発電開発の現状を、図1にアジアの原子力発電所の立地サイトを示す。
 なお、2000年以降に営業運転を開始した基数は、世界全体で合計30基(合計出力2,649万7,000kW)に達した。地域別に見ると、日本、韓国、中国、インドなどのアジア地域が19基(合計出力1,372万2,000kW)、新たに営業運転開始をした原子炉の約52%をしめる。表2に2000年〜2005年までの間にアジアで新たに運転を開始した原子力発電所を示す。
 以下、日本を除いたアジア地域の原子力発電開発の動向を示す。
1.韓国
 国際原子力機関IAEA発電炉情報システム(PRIS)および世界原子力協会(WNA)によると、2005年の原子力発電電力量が前年より約153億kWh増の1,393億kWhで、平均設備利用率は前年より3.14%増の95.3%に上昇した。一方、原子力発電電力量が総発電電力量に占める割合は、前年より6.8%増の44.7%となった。
 韓国は、2005年4月に蔚珍6号機(PWR、100万kW)が営業運転を開始したため、稼働中の原子力発電所は霊光(Yonggwang)、古里(Kori)、蔚珍(Ulchin)、月城(Wolsong)などの4サイトで20基、発電設備容量は計1,771万6,000kWである。なお。蔚珍6号機は、韓国の100万kW級国産PWR(OPR−1000)である韓国標準型炉(KSNP)としては、6番目に当る。
 建設中の原子力発電所は、2010年12月と2011年12月に運転開始の予定である新古里1、2号機(PWR、各100万kW)と、2011年10月と2012年10月に運転開始の予定である新月城1、2号機(PWR、各100万kW)の計4基。
 なお、韓国産業資源部(省)は2005年内に、初の改良型韓国標準炉(KSNP+)となる新古里3、4号機(APWR、各140万kW)と新蔚珍1、2号機(同)の計4基の建設を承認、2012年6月から順次営業運転を開始する予定である。
 韓国の次世代原子炉の開発は、1992年に韓国政府と韓国電力公社(KEPCO)により、130万kW級標準化改良型軽水炉として、韓国次世代炉(KNGR)の開発をスタートした。新型炉(KSNP)はコンバッション・エンジニアリング社(現、ウェスチングハウス社)のシステム80型をベースに、建設工程および運転・保守の改良がなされた。その後、経済状況の悪化で1998年から計画は一時中断していたが、韓国政府とKEPCOは2000年に設計を再開させた。2001年3月、出力を140万kW級に増強し、安全性・経済性を向上させた改良型加圧水型炉(APR−1400)となった。
 また、韓国産業資源部(省)が2004年12月に発表した電力需要見通しによれば、韓国経済熟成化による産業構造の変化に伴い、電力需要の伸び率は1999年〜2003年の年平均9.1%から、2004年〜2017年は年平均2.5%に大幅に鈍化するとしている。しかし、電力消費は2003年の2,936億kWhから2017年には4,165億kWhに増加するため、2017年には2003年より57%増の8,804万kWの発電設備が必要である。不足分は、原子力と天然ガス火力により補われる予定である。
2.中国
 中国で稼働中の原子力発電所は、2005年末現在、広東大亜湾(Guangdong Daya Bay)、嶺澳(Lingao)、秦山(Qinshan)、の3サイトで9基、発電設備容量は計699万8,000kWである。2002年から秦山II期1号機(PWR、64万2,000kW)、嶺澳1号機(PWR、99万kW)、秦山III期1号機(CANDU、70万kW)と、2003年から嶺澳2号機(PWR、99万kW)、秦山III期2号機(CANDU、70万kW)、2004年から秦山II期2号機(PWR、65万kW)が新たに運転を開始したため、2000年末の設備容量と基数と比較すると、467万2,000kW・6基増加し、世界では20位(226万8,000kW・3基)から12位に上昇した。2005年の総発電電力量(2兆4,747億kWh)の2%に相当の503億2,900万 kWhを供給した。
 建設中の原子力発電所は、2006年10月と2007年に運転開始の予定である田湾1、2号機((Tianwan、PWR、各100万kW)である。中国初の国産100万kW級PWR、広東・嶺澳II−1号機の建設は2005年12月に開始した(運転開始:2010年12月)。同サイトでは、嶺澳II−2号機も近く着工を予定している(運転開始:2011年8月)。
 また、国務院は、2004年に浙江省・秦山III期と三門第I期(最終:100万kW級・6基)、広東省・陽江第I期(最終:100万kW級・6基)の建設計画を承認したほか、広東省・陸豊市田尾第I期(最終:100万kW級・6基)の着工を2007年末に予定している。また、第11次5ヵ年計画(2006〜2011年)では、遼寧省・紅沿河(PWR、108万kW・2基)と山東省・海陽(炉型未定、100万kW級・2基)の建設計画が盛り込まれている。
 なお、2004年3月に発表した国家電力網公司の「第11次電力産業5ヵ年計画」では、2020年時点の総発電設備容量は、9億5,100万kW(水力:2億3,000万kW(シェア24.2%)、石炭:6億500万kW(同66.1%)、天然ガス:6,000万kW(同6.6%)、原子力:3,600万(同3.8%)、再生可能エネルギー他:2,000万kW(同2.1%))としている。
3.台湾
 台湾は現在、金山1、2号機(Chinshan、BWR、各63万6,000kW)、国聖1、2号機(Kousheng、BWR、各98万5,000kW)、馬鞍山1、2号機(Maanshan、PWR、各95万1,000kW)−の計6基の原子力発電所が運転中である。
 建設中の原子力発電所、龍門1、2号機(Lungmen、ABWR、各135万kW)は、2000年5月に反原子力を掲げる陳水扁が総統に就任したため状況が大きく変わり、行政院は同10月に同発電所の建設を中止した。その後2001年4月に建設継続が決定したが、2005年10月に台湾電力公社は原油価格の高騰と国内経済の低迷を理由に、同発電所の営業運転開始を2009年7月と2010年7月に延期した。工事進捗率は63.75%と、大幅に遅れているが、2006年に出力140万kWのLNG火力を運転することで不足電力を補う予定である。
4.インド
 インドの運転中の原子力発電設備は、2005年9月にタラプール4号機(PHWR、54万kW)が営業運転を開始したことにより、現在は15基・331万kWとなった。建設中の原子力発電所は2000年に着工したタラプール3号機(PHWR、各54万kW)、2002年に着工したカイガ3、4号機(PHWR、各22万kW)、クダンクラム1、2号機(PWR、各100万kW)、ラジャスタン5号機(PHWR、22万kW)、2003年に着工したラジャスタン6号機(PHWR、22万kW)、2004年に着工したPFBR(FBR、50万kW)の8基、392万kWである。PFBRはFBRの原型炉で、2011年の完成を目指している。
 インドは、従来の重水炉路線に続く第2段階として、高速増殖炉(FBR)の開発を進めている。1997年には実験炉FBTR(FBR、1万3,000kW)の運転を開始した。FBRの第3段階としては、国内資源トリウムを利用した、新型重水炉(AHWR)実現を目指している。また、インド政府は、急増するエネルギー需要を賄うため、2005年9月にカクラパー、クダンクラム、ジャイタプール、ラワトバータの4地点への新規建設のための立地計画を原則承認している。
5.パキスタン
 パキスタンでは、カラチ原子力発電所(CANDU、13万7,000kW)とチャシュマ原子力発電所(PWR、32万5,000kW)の2基が運転中である。
 カラチ原子力発電所はカナダとの協力により1972年12月に営業運転を開始したが、西側諸国が核拡散上の懸念から、協力は中断された。その後1992年2月にパキスタン原子力委員会(PAEC)と当時の中国核工業総公司(旧CNNC)との間で原子炉供給協定が交わされ、1993年8月にはチャシュマ1号機が着工、2000年9月には運転を開始した。同原子炉は、中国の秦山1号機(PWR、30万kW)の改良型が採用されている。また、同国で3番目となるチャシュマ発電所2号機(PWR、30万kW)に関しても、 2005年12月末に建設を開始している。米国は核拡散を懸念しているが、中国およびパキスタン両国は、国際原子力機関IAEAの保障措置下に置かれ、問題ないと主張している。なお、パキスタンでは経済成長が著しく、2010年までに553万kWの発電設備容量が不足すると見られている。
6.北朝鮮
 朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)は、1994年の「米朝枠組み合意」に基づいて、プルトニウム生産の容易な既存の黒鉛減速炉の凍結・解体と引き換えに、北朝鮮へ100万kW級の軽水炉2基を提供するとともに、軽水炉第1基目の完成までの代替燃料として、年間50万トンの重油を供給することを目的に、1995年3月、日本、米国、韓国の3か国によって発足した(現在、日、米、韓、EU)。
 KEDOの軽水炉建設プロジェクトは1997年8月に北朝鮮東海岸の琴湖(クムホ)サイトで基礎工事がスタートした。その後、KEDOは1999年12月に同プロジェクトの主契約者である韓国電力公社(KEPCO)との間で本体工事のターンキー契約を結び、2002年8月7日に原子炉を設置する土台部分のコンクリートが注入され、ようやく建設工事が本格化した。しかし、2002年10月に北朝鮮がウラン濃縮計画を認めたことから、核兵器開発疑惑が深刻化。KEDOは、2002年12月に重油供給を停止、2003年12月から軽水炉プロジェクトを停止した。北朝鮮は2005年2月に核兵器保有宣言を行うなど、KEDO・北朝鮮間の供給協定に定められた措置の不履行と判断された。KEDOは2006年5月、軽水炉プロジェクトの「終了」を正式に決定。今後、保障措置協定の履行、IAEAに対する全面協力、黒鉛減速炉および関連施設の放棄、金銭的損失への支払いを、北朝鮮に要求する見通しである。
7.ベトナム
 ベトナムの原子力発電導入計画は1996年に着手した「ベトナムへの原子力発電の導入に関する総合調査プロジェクト」をもってスタートし、1998年10月に最終報告書草案が取りまとめられた。草案では、2010〜2020年にかけて初号機の運転開始をめざし、早急に原子力発電所建設に向けた政策を策定するよう勧告している。
 その後、ベトナム政府は予備的な調査を行い、6つのサイトに絞り込んだ。これを受け、「原子力発電導入に関する運営委員会」が設置され、「原子力発電所の初号機建設に関する予備的実行可能調査(PFS)」の実施が承認された。2005年8月、国家原子力発電開発運営委員会は、PFSの報告書を首相府へ提出。評価検討が行われ、首相の承認を得て、2006年中に議会へ提出する予定である。報告書では、2017年〜2020年の間に200万kW〜400万kW相当の原子力発電設備(100万kW×2基〜4基)を建設するとしている。炉型はPWR、BWRまたはCANDU炉のいずれか。立地点は中南部沿岸のフォック・ディン、ビン・ハイ、ホア・タムが有力視されている。
8.インドネシア
 インドネシアでは1989年8月、当時のスハルト大統領が2000年以降に原子力発電を導入するための準備を当時のアヒムサ原子力庁(BATAN)長官に指示したが、1997年後半から続く経済危機などにより、計画は棚上げされた。しかし、法整備の面では、新原子力法が1997年4月に成立している。その内容は (1)原子力施設の事故による損害が生じた場合、プラントの運転者または所有者に対し最高9000億ルピアの損害賠償責任を課す、(2)これまでBATANに一元化されていた原子力規制業務を切り離し、新たに原子力規制機関を設立する、(3)原子力発電所建設に関する諮問機関を設置する−ことなどを規定している。これにより、1998年5月に新原子力規制庁(BAPETEN)が発足。インドネシア原子力庁(BATAN)は2008年にも初号機(100万kW級PWR)となるムリア1号機(仮称)の国際入札を実施し、2010年に着工、2016年の運転開始を目指している。ムリア半島のサイトには2020年までに100万kW級PWR・4基が、半島以外のサイトで2基の建設が計画されている。
<図/表>
表1 アジアの原子力発電開発の現状
表2 アジアで新たに営業運転を開始した原子力発電所(2000年−2005年)
図1 アジアの原子力発電所立地地点(日本を除く)

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<関連タイトル>
世界の原子力発電の動向(2005年) (01-07-05-01)
朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO) (13-01-01-22)
韓国の原子力発電 (14-02-01-04)
中国の原子力発電開発 (14-02-03-03)
台湾の電力事情、発電計画、原子力発電 (14-02-04-02)
インドネシアの原子力開発と原子力施設 (14-02-06-01)
インドの原子力開発と原子力施設 (14-02-11-02)
パキスタンの原子力開発と原子力施設 (14-02-12-01)

<参考文献>
(1) 日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向 2005年次報告 (2006年5月)
(2) 日本原子力産業会議:世界の原子力発電開発の動向 2004年次報告(2005年5月)
(3) 日本原子力産業会議:世界の原子力発電開発の動向 2003年次報告、http://www.jaif.or.jp/ja/news/2004/0412-doko.html
(4) 日本原子力産業会議:世界の原子力発電開発の動向 2002年次報告、http://www.jaif.or.jp/ja/news/2003/0410-doko.html
(5) 日本原子力産業会議:世界の原子力発電開発の動向 2001年次報告、http://www.jaif.or.jp/ja/news/2002/0410-doko.html
(6)日本原子力産業会議:世界の原子力発電開発の動向 2000年次報告、http://www.jaif.or.jp/ja/news/2001/doukou00-1.html
(7) 世界原子力協会(WNA)ホームページ:Nuclear share figures, 1995−2005 http://www.world-nuclear.org/info/nshare.htm
(8) IAEA発電炉情報システム(PRIS)ホームページ:
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