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<概要>
 2006年度末現在、国内において民生用および産業用として設置されているコージェネレーションシステムは合計8,786MW(7,359件、11,610台;見込み含む(注1)と、国内の総発電設備容量274GW(事業用発電設備と自家用発電設備の合計)の約3.2%(注2)を占めるまで成長し、今後ともエネルギーの有効利用並びにCO2排出量削減における有用な設備として一層の普及が期待されている。
注1:導入量数値は日本コージェネレーションセンター調べ/スチームタービン、燃料電池、家庭用を除く
注2:国内の総発電設備容量は「電気事業便覧 平成18年版」(経済産業省資源エネルギー庁(監修)電気事業連合会統計委員会(編))の2005年度実績値を用いた。
<更新年月>
2007年09月   

<本文>
1.コージェネレーションシステムとは
 「コージェネレーション(cogeneration)」とは、1種類の燃料から電気や熱など2種類以上のエネルギーを同時かつ連続的に得る状態をいい、JIS B 8121「コージェネレーションシステム用語」においては「単一又は複数のエネルギー資源から、電力又は動力と有効な熱を同時に生産する操作」と定義されており、その操作を行う設備の呼称については通常「コージェネレーションシステム」(略称「CGS」)と表されているが、「熱電併給システム」あるいは「熱併給型発電システム」等とも示される場合もある(本稿では以下、本文中CGSとする)。なお、欧米においては「コンバインド・ヒート・アンド・パワー(Combined Heat and Power:CHP)」と示されることが多い。
2.CGSの位置づけ
 京都議定書の発効から2年余りを過ぎ、早くも2008年度から第一約束期間を迎えようとしている。議定書発効においては目標として設定された総排出基準年比6%削減を達成すべく、また、地球温暖化対策推進法の定めるところによって「京都議定書目標達成計画」が策定された(2007年4月)が、その後現在に至るまで「地球温暖化対策の推進に関する法律」、「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」や「エネルギー基本計画」等の重要な環境およびエネルギー施策の策定および改正等が施行され、エネルギーを使用するものに対して、環境保全に向けての対応および省エネルギーに向けての努力に関して従来以上の注力を求めている。CGSは、国内においてもCO2削減並びに省エネルギー対策技術の一つにあげられているが、2007年6月にハイリゲンダムで開催されたサミットにおいて、発電における省エネルギーに関し、「発電におけるCGSの割合を大きく増加させる手段と措置を採用する」と明記されており、今後の地球規模的なCGSの一層の普及に大きな期待が寄せられている。
3.国内のCGS導入状況
 2006年度末現在のCGS設置状況の内訳は、民生用5,190件・7,461台・1,715MW、産業用2,169件・4,149台・7,071MWであり、合計7,359件・11,610台・8,786MWである。CGS設置年度ごとのストックを図1に、また、年度ごとの導入実績を図2に示す。図1では着実な成長を遂げている状況が、図2では年度ごとにCGS導入量が増減している状況が確認できる。次に国内におけるCGSの誕生から現在に至るまで、大きく次の4つの期間に区分し、これまでのCGSを取り巻く環境について整理した(表1)。
(1)誕生〜成長期(〜1990年度)
 原油価格の低下に伴ってエネルギーおよび経済情勢は好転し、また、省エネルギーや石油代替エネルギーの開発推進やエネルギー利用率の向上を目指した時期である。主に天然ガス利用における分散型高効率CGS導入課題の抽出と対応がなされ、産業用や民生用CGSとして用いる新たな原動機およびシステムの開発とともに、電気事業法における系統連系、予備電力供給、余剰電力購入や特定供給などの活用方法の検討が進められた時期である。
 日本コージェネレーションセンターの情報によるとCGS初号機は1970年に設置されたが、その後1985年までの15年間の導入実績は累計で221MWに留まった。その後、民生用における大阪ツイン21ビル(1986年)を初めとする大型物件での採用や産業用における旺盛な導入によって、1990年度までの5か年平均では355MWと急速に導入が加速した。1990年度末の導入実績は2,004MWとなり、日本国内の総発電設備容量の1.0%を賄う状況となった。
(2)減衰期(〜1995年度)
 バブル崩壊に伴う景気停滞にも拘らず、導入の進捗はそれまでの約8割程度で進捗している。この期間には法改正等によってCGS導入に係る規制緩和等の環境整備が進展し、電力会社の余剰電力購入(1992年)、NEDOの「環境調和型コミュニティー事業」による補助事業(1993〜2001年)、「長期エネルギー需給見通し」によるCGS普及奨励(1994年)、「系統連系ガイドライン」の改正並びに「電力の自由化」など、分散型電源としてのCGSが急速に認知された時期といえる。
 また、技術開発においては、小規模CGSの発電の高効率化に向けての取組みやコストダウン策、信頼性の更なる向上に関する検討が図られた。また、官庁手続きの簡素化、工数削減のための機器パッケージ化に関する検討などのソフト面に関しても整理された。
 CGS導入の勢いは若干減衰したものの、基礎的かつ広範囲の環境整備が成された時期であり、1995年度末の導入実績は3,462MW、国内総発電設備容量の1.5%に至っている。
(3)第二次成長期(〜2000年度)
 CGSの優れた省エネルギー性、環境保全性が着目され、また、広く認知されたことによって、年平均300件、420MWと設置ペースが増加した。この期間は、国内で「地球温暖化対策推進法」が施行(1999年)されたように、地球温暖化対策に関しての世界規模的な取組みの必要性が意識された時期でもある。エネルギー有効利用促進のための法律整備においては「省エネルギー法」の改正(1999年施行)があり、高効率CGSの推進に関する指針が示されている。また、「新エネルギー利用等の促進」においては天然ガスCGSが新エネルギーに分類され、また、「地球温暖化対策推進大綱」では天然ガスCGSに関しては2010年:464万kW(燃料電池を含む)の導入目標が示された。さらに導入事業者への支援措置として、新エネルギー事業者支援(1997〜)、地域新エネルギー導入促進(1998〜)、先導的エネルギー使用合理化(1998〜)が新たに追加された。また、電気事業法においては電気主任技術者不選任範囲の拡大など、CGSの成長と平行しつつ規制緩和も加速している。
 この時期は、民生用・産業用共に拡大を続けたことに加え、前半は10kW以上30kW未満、後半は10kW未満の小型CGSの成長があり、2000年度末の導入実績は5,554MW、国内総発電設備容量の2.1%まで進んでいる。
(4)成熟期〜現在(2001年度以降)
 この期間の大きな特徴としては、件数における30kW未満ガスエンジン(GE)の旺盛な導入と産業用における規模の拡大が挙げられる。規制緩和の進展や事業者支援策(補助金)等の普及促進に向けた諸施策や環境保全に向けた各企業の真摯な取り組みを背景に、件数、導入量とも大きく進展しているが、2004年度に過去最大の導入量を示した大きなピークを境に、その後の2年間は対前年を下回っている。
 事業者支援および導入促進事業(補助金)の継続や系統連系技術要件の整理、「電力自由化」枠の拡大、主任技術者制度の見直しや消防法の改正など、CGS導入のための条件整備は継続している。また、天然ガスCGSに関しては先に策定された「地球温暖化対策推進大綱」を34万kW上回る約498万kW(2010年目標)が「京都議定書目標達成計画」(2005年4月)に盛り込まれ、CGSへの期待が改めて示された。
 燃料価格高騰による2005年度以降のディーゼルエンジン(DE)導入量の急激な減少にも拘らず、前年度比432MW増加した。直近2年間の導入量は減少してはいるものの、2003年度以前の5か年平均導入量454MWと比較しても遜色ない実績といえる。
 2006年度末現在の導入実績は8,786MW、国内総発電設備容量の3.2%に達した。
4.CGS導入量分析
(1)分野別導入量
 民生用は1995年頃から件数、導入量とも増加した。大型CGS導入物件の減少によって、導入量は2003年度から下降気味であったが、2006年度は若干回復している。件数に関しては、近年、機器のラインナップの拡充および性能の向上があった30kW未満GEの効果によって大幅に増加している(図3)。
 産業用では1997〜2003年度は着実な増加傾向にあり、年平均発電容量320MW/年、導入件数115件/年である。更に2004年度には過去最高の204件・467台・688MW増加している。2005年度以降、件数・導入量とも減少傾向にあるが、1件・1台あたりの発電容量は増加しており、導入されるCGSが大型化していることが窺える。
(2)原動機別導入量
 民生用では小型のGEの件数が多くを占めている。一方、産業用においては件数ではDEが多く、発電容量ではガスタービン(GT)がおよそ半数を占めている。
 原動機別設置件数は、GT837件・GE4,358件・DE2,164件、合計7,359件であり、GEが半数以上を占めている。続いてDE、GTの順である。発電容量においてはGT3,770MW・GE1,941MW・DE3,075MW、合計8,786MWであり、GTが約4割を占め、DE、GEと続いている(表2)。
(3)燃料別導入量(図4
 民生用においては都市および周辺部の導入が多いため、地域の環境規制遵守の必要や燃料である都市ガスインフラが整備されている事などから都市ガスの導入比率が高い。
過去10年間(1996〜2005年)と直近5年間(2001〜2005年)の年平均導入量を比較してみると、設置件数および発電容量はそれぞれ、都市ガスは約4.8倍および2.5倍、油類(オイル)は1.6倍および1.7倍であり、都市ガスの伸びが著しい。また、DEはこれまで堅調に導入されていたものの、燃料価格の高騰等による影響もあって成長が見られなかった。
5.CGS技術開発動向
 原動機別の性能比較を表3に示す。
 CGSの中心となる原動機においては、主に高効率化を目指した技術開発が進められているが、近年ではGEにおいて大きな変化を見せている。20kWクラス小型GEではミラーサイクルの導入によって発電の高効率化が飛躍的に進み、3年前と比較すると5ポイント以上も向上している。また、大型GEにおいては、効率が46%を超える機種が次々と発表されており、最近では48%を超えるシステムも実証試験段階にある。
 一方、新たな分野にCGSを適用する技術開発も進められており、最近では消化ガスを燃料としたμ−GTの技術開発や有機溶剤を取り扱う事業所において有用な揮発性有機化合物(VOC)除去に用いる等の技術開発がある。また、GEの低温排熱を一層有効活用する為の装置開発、脱硝装置の高効率化やDEの黒煙除去技術の開発等、CGSを支える周辺機器においても技術の進展がなされている。
6.おわりに
 CGSは初号機の導入から35年余りを経過したが、その取り巻く環境に影響を受けながらも、毎年確実に実績を積み重ねながら成長してきている。これも官民相互の省エネルギー並びにCO2排出量削減に向けた取組みのベクトルが一致した結果ともいえる。
 最近、京都議定書達成計画の見通しとしてその目標達成が危ぶまれる発表があり、今後更なる対策強化の必要性が明らかになったが、幅広いラインナップの実現並びに高効率化の進捗が目覚しく、CO2削減に効果を有するCGSが課題を解決する対策の一つとして期待されている。
<図/表>
表1 これまでの国内CGS導入状況
表1  これまでの国内CGS導入状況
表2 CGS原動機別導入状況
表2  CGS原動機別導入状況
表3 CGS原動機別性能比較
表3  CGS原動機別性能比較
図1 CGSの年度別推移(ストック)
図1  CGSの年度別推移(ストック)
図2 CGSの分野別年度推移
図2  CGSの分野別年度推移
図3 CGSの民生用容量別設置件数
図3  CGSの民生用容量別設置件数
図4 CGSの燃料別年度推移
図4  CGSの燃料別年度推移

<関連タイトル>
石油産業の生産・利用技術開発 (01-04-02-02)
コージェネレーション技術(原理) (01-05-02-15)

<参考文献>
(1)経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部(監修)、電気事業連合会統計委員会(編):電気事業便覧 平成18年版、日本電気協会(2006年10月)、p.16−17
(2)日本コージェネレーションセンター:コージェネレーションシステム年間動向レポート(2006年度)(平成19年7月)
(3)日本コージェネレーションセンター:コージェネレーションシステム関連法規解説書(新版)(2006年)
(4)日本コージェネレーションセンター:コージェネレーションシステム原動機別仕様データ集(2007年)
(5)日本コージェネレーションセンター:コージェネレーションシステム国内導入実績のアンケート調査
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