<本文>
コージェネレーションとは、「一緒に」とか「ともに」という意味を持つ「CO:コ」に、「生産する」とか「発生する」という意味を持つ「GENERATION:ジェネレーション」を組み合わせた合成語であり、一般的には「熱併給発電」または「熱電併給」と訳されている。また、欧米ではCHP(Combined Heat and Power)と呼ばれることもある。
熱や蒸気が欲しいときに、これまでは蒸気ボイラーを導入するのが普通であった。これからは、熱が欲しかったら、まずディーゼルエンジンやガスタービンを導入し、高温の熱は熱機関で動力化し、温度を下げて排出された熱を冷暖房や給湯等に用いることが、エネルギーの合理的な使い方である。排熱利用が上手に行われればエネルギー利用効率が70%〜85%となり得る。発電だけの目的で燃料を焚き熱機関を駆動することと、熱が欲しいときにボイラーを焚くことの二つの操作は独立で“並列”である。コージェネレーションでは、発電した後の排熱(役にたたないことを意味する「廃熱」という字は用いない)を熱として利用して、二つの操作が“直列”に入ることになる。これがコージェネレーション(Cogeneration:熱電併給)の基本的な概念である。このように、コージェネレーションとは、一つのエネルギー源から熱と電気等、二つ以上の有効なエネルギー形態を取り出して利用するシステムのことである。すなわち、その原理は次のようなものである。
燃料を焚くことによって得られる高温の熱が、動力や、電力や、光・
電磁波などに姿を変えながら、最後はすべて常温の熱ヘ向かって流れて下りてくる間に、途中で集めて利用する。例えば、石油や天然ガスなどの燃料を燃やして得た熱をディーゼルエンジンやガスタービン等を用いて動力または電力に変換し、その排熱(未使用熱)をプロセス蒸気や冷暖房、給湯等の熱源として利用する。このようなコージェネレーションシステムは、エネルギー利用効率が80%以上になる。近年の国際的な地球環境問題を背景に、一次エネルギーの大部分を輪入に頼る日本において、省エネルギーシステムとしてエネルギー利用効率の高いコージェネレーションは、技術開発の推進、社会制度の整備のもとに急速に普及してきている。
コージェネレーションを今後加速的に普及・拡大させるためには、技術開発の推進および制度の整備が急務である。現在、コージェネレーションの技術開発は、国および民間企業において積極的に進められている。国の関係機関により進められている主な技術開発は次のとおりである。
(1)1992年度まで行われたアドバンス・コージェネレーションシステム技術研究組合による技術開発に続き、1993年度から6年計画でセラミック天然ガスエンジンシステムの開発が実施されている。本開発では動力変換効率が高く、軽量、コンパクトで環境適合性の高い省エネルギー型天然ガスエンジンシステムの開発が行われた。
(2)
ニューサンシャイン計画では、1988年から9年計画で300kW級の
セラミックガスタービンの研究開発が進められた。これは、中小型ガスタービンの高効率化、低公害化、燃料多様化を促進するためのものである。
(3)1997年度からエネルギー・セキュリティの確保、CO
2排出抑制対策等環境問題への積極的対応の観点から「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」に基づき、認定を受けた計画に従って新エネルギー導入事業(例えば、天然ガスコージェネレーション、温度差エネルギー、廃棄物熱利用、バイオマス熱利用など)を行う者に対する助成措置が講じられている。また、地方自治体の積極的な取組みが重要であることから、地方自治体に対する助成が開始されている。
コージェネレーションの設置に関わるコストは15〜35万円/kW程度といわれているが、今後は設置に関わる諸コストの低減が期待される。
コージェネレーションシステムは、電気と熱の消費のバランスがとれていないと、効率が低下してしまう場合がある。このため、コージェネレーションシステムは、病院、ホテル、デパートなど電気・熱需要の多い施設や自家発電設備を備えている大規模な施設の常用の電源や熱源として適している。わが国において導入されたコージェネレーションは2003年末で民生用2915件、発電容量142.9万kW、産業用1600件、発電容量507.4万kW、合計4518件、発電容量650.4万kWであり、2003年度末の各電力会社の設備と自家発電設備の合計2.66億kWの2.4%を占めるに至っている。(参考文献2)
主要原動機である、ディーゼルエンジン、ガスエンジンおよびガスタービンは以下のとおりである。
1.ディーゼルエンジン
ディーゼルエンジンは、空気をエンジンシリンダ内に
吸入し、ピストンで圧縮して、高温・高圧になった状態のところに液体燃料を高圧噴射し、自己着火により燃焼する形態である。この型のエンジンはコージェネレーションで重要となる正味熱効率、すなわち発電効率や燃料価格面で有利であるが、排ガスによる公害の面で不利を背負った原動機である。
これを原動機としたコージェネレーションシステムでは、熱効率向上や排ガスの環境対策と熱回収を均衡させるために、複合化されたシステムが開発されつつある。例えば、エンジン本体で過給機を出た排ガスにさらにターボ機械を取り付け、出力回収を行うターボコンパウンドディーゼルや、ディーゼルエンジンの排ガスの下流に、ボイラー、蒸気タービンを配置したコンパウンドサイクルによるシステムでの高効率化が行われつつある。
2.ガスエンジン
図1にLNG(天然ガス)を用いたガスエンジン発電機の発電効率と総合効率を示す。希薄燃焼方式は(5.用語解説を参照)発電効率35〜38%と高い効率を示しているが、排熱回収は35〜40%程度で総合効率は65〜75%と低くなり、大型になるほどその傾向が強い。これに比較して、ストイキ燃焼方式は(5.用語解説を参照)、小型を除けばおおむね発電効率30〜33%程度であり、排熱回収も50〜55%程度で総合効率80〜85%とかなり高い値を示している。
図2にガス燃料を使ったコージェネレーションシステムの概念図を示す。
3.ガスタービン
ガスタービンとは、一般に高温・高圧のガスを作動流体とするタービン形式の原動機の総称であり、種々の構造・形式のものがある。ガスタービンの基本構造は、圧縮機・燃焼機・タービンの三要素からなっており、作動流体の圧縮・燃焼・膨張の各工程がそれぞれの要素で独立して、かつ連続的に行われる。つまり圧縮機で加圧した気体を、燃焼器で燃料と混合して燃焼(加熱)し、得られた高温・高圧ガスでタービンを作動させて、圧縮機の駆動力と外部への有効仕事を取り出す。この有効仕事(出力)を回転としてとりだし、発電機、ポンプ、コンプレッサ等の原動機として使用するものが、一般にガスタービンとして区分される。
図3にガスタービンコージェネレーションシステムの概念図を示す。
4.その他の原動機
コージェネレーション用原動機は上記の3つが一般的である。その他のものとしては、蒸気タービンを除けば、スターリングエンジン(シリンダー内部にガスを詰め、このシリンダーを外部から加熱したり冷却したりしてピストン運動を行わせるエンジン)、
燃料電池などがある。スターリングエンジンはディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関とは違い外燃機関である。また、燃料電池は従来の熱機関とは異なった化学反応によるものである。
表1に各種コージェネレーションシステムの比較を示す。
5.用語解説
[ストイキ燃焼]
燃料ガスに、燃焼に必要な理論空気量で空気を混合し、空気比=1で燃焼させる方式。
[希薄燃焼]
燃料ガスに、燃焼に必要な理論空気量の1.3〜2倍程度の空気を混合し、空気過剰状態で燃焼させる方式。
<図/表>
<関連タイトル>
ムーンライト計画 (01-05-02-06)
高効率ガスタ−ビン (01-05-02-07)
セラミックガスタービン (01-05-02-14)
海外におけるコージェネレーションの利用状況 (01-05-02-17)
省エネルギーの必要性 (01-06-01-02)
省エネルギー関連法の概要 (01-06-02-01)
省エネルギ−技術の開発推進 (01-06-03-01)
省エネルギー推進のための普及、広報活動 (01-06-04-01)
<参考文献>
(1)資源エネルギー年鑑編集委員会(編):2005−2006資源エネルギー年鑑、通産資料出版会(2005年4月)、p.666-673
(2)資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー対策課(編):新エネルギー便覧 平成15年度版、経済産業調査会(2004年3月31日)、p.62-69
(3)資源エネルギー庁(編):エネルギー2004、(株)エネルギーフォーラム(2004年1月21日)、p.190-192
(4)資源エネルギー庁公益事業部:コージェネレーションの現状と将来、通産資料調査会(1993年6月26日)、p.50-64
(5)(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構ホームページ:
http://www.nedo.go.jp/