<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 石炭は他のエネルギー資源と比較して豊富な埋蔵量、供給安定性、経済性といった数多くの利点を有する、優れたエネルギー資源である。わが国のエネルギーの安定供給上重要な資源として、石油代替エネルギーの第1位の位置が期待されている。しかしながら、近年、世界的に地球温暖化問題、酸性雨問題等の地球環境問題への関心が高まっており、石炭は他の化石燃料よりも地球温暖化および酸性雨への影響が大きいと言われている。また、現在の石油・天然ガスを中心とする流動燃料を使うエネルギーシステムに適用するには、使用・流通の不便及び燃料形態の転換等の必要がある。大量に使用するには、これらの点を克服する必要がある。これらの問題を解決するため、環境に調和した石炭利用技術(クリーン・コール・テクノロジー)の開発を積極的に推進する必要がある。
<更新年月>
2006年06月   

<本文>
 石炭は、石油、天然ガスに比較して燃焼時における二酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物などの排出量が多い、また、石炭は固体資源で、石油、天然ガス等の流体エネルギー資源に比べて取り扱いしにくく、燃焼に伴って発生する多量の石炭灰の処理が必要になる。このことが石炭利用における課題である。
 したがって、石炭利用政策の基本は、第一に、石炭利用に伴う環境上の様々な課題に適切に対応して、環境と調和した形で石炭利用を進めることである。
 第二に、アジア地域における石炭利用の拡大は、域内のエネルギーの需給の安定化及び、わが国(日本)のエネルギー需給の安定化にとって極めて重要である。このため、わが国のクリーン・コール・テクノロジー(CCT)をアジア地域へ積極的に技術移転し、域内での石炭利用を実現していくことも重要な課題である。
1.石炭利用技術の基本戦略
 21世紀の石炭利用技術の基本戦略としては、今後30年間を開発目標期間とし、2010年、2020年、2030年を節目とし、2000年までの技術開発を「高効率化第1世代」とすれば、2010年までを「高効率化第2世代」、2010年から2020年を「高効率化ハイブリッド世代」、2020年以降2030年を目途として「ゼロエミッション世代(CO2等環境中への排出をゼロにする)」と位置付け、3段階で効果的・効率的かつ総合的な技術開発を展開することが必要である。
(1)高効率化第2世代(2000〜2010年)
 CO2削減20%を開発目標とし、発電部門では石炭燃焼及びガス化による複合サイクル発電技術の実用化、鉄鋼部門では溶融還元製鉄技術(DIOSの普及、石炭高度転換コークス製造技術(SCOPE21)の完成によるCO2削減を大きな柱とし、SO2、NO2、ばいじん等の全エミッション削減については、3Ten技術(SO2<10ppm,NO2<10ppm,ばいじん<10mg/Nm3)を確立する。
(2)高効率化ハイブリッド世代(2010〜2020年)
 CO2削減30%を開発目標とし、石炭ガス化による燃料電池発電の実用化、石炭利用CO2回収型水素製造技術の完成、さらには炭層メタンや石炭ガス化をコア技術として発電技術とジメチルエーテル(DME)やメタノール等の輸送用燃料製造技術及び化学原料併産技術の開発を行い、石炭から発電用燃料のみならず輸送用燃料や化学原料を製造する技術を開発する。
(3)ゼロエミッション世代(2020〜2030年)
 水素エネルギー時代になることを想定し、燃料電池発電、燃料電池自動車、水素自動車、水素ガスタービン複合発電システムの開発・普及を考慮して、石炭ガス化、石炭利用CO2回収型水素製造技術、炭層メタン等からの水素製造技術をコア技術として発電と化学産業、鉄鋼業、その他の産業が融合した、言わば石炭をとした新業態(エネルギー・化学融合センター等)の可能性を追求する。
2.技術開発等の展開
 石炭利用技術の体系を図1-1図1-2図1-3および図1-4に、重点課題の開発状況を表1-1表1-2および表1-3に示す。
(1)CO2削減に係わる技術開発課題
<主に電力分野>
・噴流床石炭ガス化複合サイクル発電技術(CO2削減率:20%程度)
 この技術は現在の実機の1/2スケールのプラントを用いて実用化に向けて最終実証試験を2009年度までの計画で実施中であり、その後逐次実用化される予定である。発電効率の向上とCO2量が石油火力なみに低減。
・その他の石炭ガス化複合サイクル発電技術(CO2削減率11〜16%)
 上記の「噴流床ガス化」と同様のシステムであるが、異なったタイプ(流動床燃焼タイプ等)のガス化炉・燃焼炉によってシステムを組むもので、2010年頃のパイロットプラント試験を経て、2015年初頭に実証兼商用機による実用化が期待される。
・石炭ガス化燃料電池複合発電技術(CO2削減率:31%)
 燃料電池、ガスタービン、蒸気タービンを組合わせたトリプルサイクルによりCO2削減率31%が可能となる。現在パイロットプラントを建設中であり、2015年頃50MW級の実証機の試験が終了し、2020年頃までに600MW級の商用機建設を目指す。
<一般産業分野>
・石炭高度転換コークス製造技術(CO2削減率:20%)
 新しいコークス製造法として現在6t/hパイロットプラント試験が行われており、実用化に向けて開発中である。2005〜2010年の実証機による試験を経て2010年代には、商用機が導入されることを目指す。
<CO2固定・分離技術〉
・石炭利用CO2回収型水素製造技術
 石炭を高温高圧水で処理することにより水素を大量に製造する革新的技術で、同時に副生するCO2が完全に分離・回収可能である。現在はまだ基礎段階であるが、2010年頃にパイロットプラント試験、2015年頃までに実証機、2020年までに商用機が実用化されることを目指す。
<石炭を核とした新業態の可能性>
・エネルギーと化学等の融合技術
 2020〜2030年においては、燃料電池発電や燃料電池自動車の普及、水素ガスタービンやこれをシステム化した水素利用高効率発電システム等の普及に伴って、石炭から水素を製造する技術や石炭ガス化による発電と化学原料併産技術が次第に普及することにより、それらの石炭利用技術をべースにしたクリーンとエネルギーと化学、エネルギーと鉄鋼等が融合した石炭を核として新業態の可能性を追求する。
(2)多目的石炭利用、ハンドリング性向上に係わる技術課題
<流体化技術>
・石炭液化技術
 150t/dのパイロットプラント試験が1998年に終了した。石炭資源保有の発展途上国で、経済成長が旺盛かつモータリゼーションが進行している国では、輸送用燃料として石炭液化のニーズが高い。現在、中国、インドネシア政府の要請により技術移転を行っている。
<燃料転換技術>
・DME(ジメチルエーテル)製造技術
 炭層メタンガスや石炭ガス化ガスを改質・転換してDME(LPG相当の燃料になる)を製造するもので、CO2の21倍の温暖化効果があるメタンを利用するのでCO2削減効果も43%が期待できる。炭層ガスを原料としたベンチプラント試験を太平洋炭鉱・釧路鉱業所で実施した。2010年前後には商業化を目指す。
・ハイパーコール(完全無灰炭)製造・利用システム
 石炭中の石炭質のみを溶剤により抽出してハイパーコールを製造し、得られた石炭を直接ガスタービンにて燃焼し、複合サイクル発電を行うシステムを2007年頃までに技術的に確立する。
<高付加価値化技術>
・多目的石炭転換技術
 石炭の急速熱分解により中カロリーガス、BTX、タールを生産する技術で、2000年度に100t/dパイロットプラント試験を終了し、2010年頃商業化を目指す計画である。
(3)石炭灰の有効利用に係わる技術開発課題
・高強度・超軽量人工骨材
 石炭灰の焼成により砂利並みの高度の粒状体に開発。現在は要素研究中であるが2001年から2005年にかけて実証試験を行い、2006年頃に実用化を目指している。
・微粉炭灰養生固化体
 2005年頃の実用化を目指す。
・石炭灰情報・集配システムの構築
 港湾工事等に大量の石炭灰を利用するためには、石炭灰の在庫情報の把握、集荷・納入システムの構築が必要となる。
(4)SOx、NOx等の排出量低減に係わる技術課題
脱硫脱硝・脱亜酸化窒素技術>
 高度排煙処理技術
 高度排煙処理技術として「ラジカル照射法による脱硝技術の開発」を施している。2010年に実用化することを目指している。
 亜酸化窒素除去技術
 亜酸化窒素はCO2の400倍程度の温暖化効果があると言われており、流動床ボイラ等の低温燃焼時に発生する。現在球状アルミナ等を流動媒体の一部に用いて除去する技術であり、2005年に実証試験後、2010年には実用化計画である。
<ばいじん除去技術>、<微量元素除去技術>
ガス化プラントの排出ガスで実証試験後、いずれも2010年以降の実証を目指す。
3.開発体制
(1)体制
 利用技術の開発については、基礎研究を国立研究機関、大学が行い、応用技術については、民間業界等が実施している。しかしながら個別企業では研究人材、資金等に限りがあり、多くのテーマについてその開発は基礎段階に止まっている。
 このため、重点課題について研究開発とその成果普及をより促進するように、石炭業界、ユーザーである電力業界および鉄鋼業界等、プラントメーカー、研究機関等の関係者の研究開発への参加、協力による開発体制を強化することとし、その一環として1978年9月(財)石炭技術研究所に石炭利用技術部が設置され、短・中期の重点問題についてその研究開発の推進、技術成果の普及、指導にあたる体制がとられた。また、サンシャイン計画等開発が大型かつ長期にわたるものについては、1980年10月から発足した新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO:New Energy and Industrial Technology Development Organization)で推進することとなった。
 上記石炭利用技術部の業務は1991年4月に、1989年6月設立された(財)石炭利用総合センターに移管され、同センターにおいて石炭利用技術の研究開発の推進等の体制がとられることとなった。また新たに、1992年10月、NEDOにおいて、クリーン・コール・テクノロジー・センターが設立され、環境に配慮した次世代の石炭利用技術の開発・普及を推進することとなった。NEDOでは1992年度からクリーンコールテクノロジー推進事業としてCCT開発における動向調査を実施している。
(2)助成
 流動床燃焼技術、石炭スラリー技術、ハンドリング技術、石炭灰の有効利用技術、石炭直接利用製鉄技術などの石炭の実用化技術については、短・中期の課題として、国が補助金を交付して、民間が主体となって開発を進めている。
 中・長期の重点課題として、NEDOが主体となって1992年度から新規事業として実施している次世代技術、クリーン・コール・テクノロジー推進事業および1995年度から新規事業として実施している石炭利用基盤技術については、国が補助金を定額で交付している。また、石炭ガス化複合サイクル発電技術、石炭利用水素製造技術及び石炭液化技術については開発資金が大きく、開発期間も長期にわたるためリスクが大きく、民間では開発が進まないので、国が主体となって高率補助金により推進されている。
 2006年現在、環境調和型エネルギー技術の開発の一環として、NEDOは多目的石炭ガス製造技術開発(EAGLE)、石炭利用次世代技術開発調査ハイパーコール利用高効率燃焼技術開発等を支援している。EAGLEでは2003年度に実施した中間評価を踏まえて、経済産学賞のプロジェクト「ガス精製技術開発」の実施内容が取り込まれ、マネージメントの一本化が図られている。
<図/表>
表1-1 重点課題の開発状況(1/3)
表1-1  重点課題の開発状況(1/3)
表1-2 重点課題の開発状況(2/3)
表1-2  重点課題の開発状況(2/3)
表1-3 重点課題の開発状況(3/3)
表1-3  重点課題の開発状況(3/3)
図1-1 クリーン・コール・テクノロジーの技術体系(1/4)
図1-1  クリーン・コール・テクノロジーの技術体系(1/4)
図1-2 クリーン・コール・テクノロジーの技術体系(2/4)
図1-2  クリーン・コール・テクノロジーの技術体系(2/4)
図1-3 クリーン・コール・テクノロジーの技術体系(3/4)
図1-3  クリーン・コール・テクノロジーの技術体系(3/4)
図1-4 クリーン・コール・テクノロジーの技術体系(4/4)
図1-4  クリーン・コール・テクノロジーの技術体系(4/4)

<関連タイトル>
日本の石炭情勢 (01-03-01-01)
コールチェーンとコールセンター (01-03-01-02)
太平洋コールフロー構想 (01-09-02-02)

<参考文献>
(1) 資源エネルギー庁石炭部(監修):コール・ノート 2002年版、資源産業新聞社(2002年3月)、p.287-423
(2) 資源エネルギー庁石炭・新エネルギー部(監修):コール・ノート 2000年版、資源産業新聞社(2000年3月)、p.269−279
(3) 資源エネルギー庁(編):エネルギー2004、(株)エネルギーフォーラム(2004年1月)、p.104-113
(4)資源エネルギー庁 燃料部(監修):コール・ノート2003年版、資源産業新聞社(2003年3月)、p.209-373
(5)資源エネルギー年鑑編集委員会(編):2005−2006 資源エネルギー年鑑、通産資料出版会(2005年4月)、p.737-747
(6)NEDO事業報告書
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ