<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> エネルギー政策
<小項目> 石炭政策
<タイトル>
太平洋コールフロー構想 (01-09-02-02)

<概要>
 太平洋コールフロー構想とは、石油代替エネルギーの柱である石炭に着目し、アジア太平洋地域における石炭需要拡大を通じて、域内石炭貿易拡大に資することを目指している。この構想は、1986年3月の第1回太平洋エネルギー協力会議においてわが国が提唱したものであり、1987年9月わが国がJAPAC(太平洋コールフロー推進委員会)を設立したのに続いて、豪州、カナダにもそれぞれ推進機関が設立されている。これらの委員会は、コールフロー拡大のため、A.石炭需要拡大、B.石炭資源の開発、C.総合的な計画の立案および実施、D.石炭利用に伴う環境保全、E.石炭開発・利用にかかわる情報交換の分野で各種の協力を推進している。
<更新年月>
2004年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.アジアにおける石炭の需給動向
 石炭は他の化石エネルギー資源と比較して相対的に豊富に賦存し、経済性等で大きな利点を持つため世界的に広く利用されているが、輸送コストの問題等から生産国での消費が大きく、輸出量は生産量に比して小規模に留まり、その輸出入市場も、地理的に欧州とアジアに概ね二分されている(図1)。
 アジアの中でも成長著しい東アジア地域においては、今後とも予想される高い経済成長を支えるため1990年代において石炭火力発電能力の大幅増加が進められてきた。石炭需要は今後も電力用を中心に大幅に増大する見通しである(図2)。日本、NIES(Newly Industrilizing Economies:アジア新興工業国群)、アセアン(ASEAN:Association of South-East Asia Nations:東南アジア諸国連合)諸国(インドネシアを除く)では、電力用を中心とする一般炭需要が増加する。アジア太平洋地域では、2010年の石炭需要は1995年のそれの約1.4倍に達する見通しである(表1)。
 表2に世界の石炭貿易統計を示す。供給面では東アジア地域に対する主要な一般炭供給国としては、豪州、中国、インドネシア等があるが、いずれも将来の供給増に向けて不安定要素を抱えている。豪州はこの地域において最大の供給国であり、大きな供給拡大ポテンシャルを有している。2000年における世界の石炭の輸入量は約485百万トンであり、わが国の輸入量は145百万トンで全体の約30%を占め、主要輸入地域であるヨーロッパおよび日本を含むアジア諸国の輸入量は、それぞれ128百万トンおよび266百万トンで、これら諸国を合わせて世界の約81.1%を占めている。IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)の石炭貿易見通し(表3-1表3-2)では、IEA諸国の石炭輸入量は1998年の301百万tce(ton of coal equivalent:石炭換算トン)から2010年には324百万tceへ伸びると予測されている。特にフランス、ドイツが高い伸びを示すと考えられている。原料炭輸入は1998年の123百万tceから2010年には113百万tceと減少するとしている。輸出についてみると、IEA諸国ではアメリカ、豪州が着実な増加をすると見込まれている。石炭輸出量は1998年の268百万tceから2010年には298百万tceへ伸びると予測している。原料炭については1998年に158百万tce、2010年には155百万toeと横ばいが続くと予測されている。一般炭については、1998年の110百万tceから2010年には142百万tceへ増加し、供給国としては、アメリカ、豪州(53%増)と予測されている。この予測によると、一般炭について、今後世界的規模で需給の逼迫化が予想される。
 供給面での不安定さが現実のものとなった場合には、アジア・太平洋地域の一般炭需給は大きく逼迫化する懸念があり、省エネ対策の強化などが必要である。
2.太平洋コールフロー構想
(1)「太平洋コールフロー構想」とは
 太平洋協力の重要な協力分野であるエネルギー協力の一貫として、アジア・太平洋地域の潜在的な石炭需要と豊富な石炭資源を適切な経済協力・技術協力を通じて結びつけることにより、
 A. 太平洋地域の石油依存度の低下によるエネルギー需給の安定化
 B. 石炭火力を中心とする石炭利用の推進による、アジア・太平洋地域の産業の発展と民生の向上
 C. 太平洋地域における石炭貿易の円滑な拡大
 D. アジア・太平洋地域における石炭利用と環境との調和
を図ることを目的とするもので、1986年3月の第1回太平洋エネルギー協力会議においてわが国が提唱したものである。
(2)コールフロー拡大のための経済・技術協力の実施
 コールフロー拡大のため、各種経済協力・技術協力制度を活用し、次のような分野での協力を展開している。
 A. 石炭需要拡大に関する協力
  (a) 石炭火力発電所の建設
 アジア・太平洋地域における計画中および既設石炭火力発電所について資金面、技術面(建設、運転、保安、環境対策等)での協力。
  (b) 一般産業・民生用の石炭利用拡大
 セメントその他の産業における石炭転換の促進、利用拡大を図るための資金面、技術面での協力。
 B. 石炭資源の開発に関する協力
 アジア・太平洋地域における炭鉱開発、低品位炭の品質向上、鉄道、港湾等のインフラ整備のための資金面、技術面での協力。
 C. 総合的なプロジェクトに対する協力
 石炭利用、関連石炭開発・インフラ整備等が一体をなしているプロジェクトについて、各種制度を組み合わせることによる総合的な計画の立案および実施に関する協力。
 D. 石炭利用に伴う環境保全に関する協力
 石炭ボイラーの脱硫、脱硝技術の開発、普及、石炭ボイラーの熱効率の改善、炭鉱における環境保全等の協力。
 E. アジア太平洋地域における石炭開発・利用にかかわる情報の交換
 アジア太平洋地域における石炭関連統計・情報交換を円滑に行うため、域内ネットワークを整備。
(3)太平洋コールフロー推進委員会
 太平洋コールフロー推進委員会(Japanese Committee for Pacific Coal Flow:JAPAC)は、1987年9月29日、太平洋コールフロー構想の民間レベルの推進母体として、電力、石炭等エネルギー関連企業、プラントメーカー、コンサルタント、商社、金融機関の参加により設立された。本委員会の主たる事業活動は、次のとおりである。
 A. 石炭関連プロジェクトにかかわる調査活動
 B. 関係国との石炭需給等に関する情報交換・交流活動
 C. 普及啓発活動
 また、豪州における本構想の推進機関として、豪州石炭貿易・技術委員会(ACTT:Australian Coal Trade and Technology Committee)が1988年9月に設立され、カナダにおいてもパシフィック・コールフロー・ワークショップが1989年4月に開催された。
 JAPACはNEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organization:新エネルギー・産業技術総合開発機構)とともに、APEC(Asian-Pacific Economic Cooperation Conference:アジア太平洋経済協力会議)地域における今後の石炭需給の動向とこれに影響を及ぼす諸要因について産炭国および消費国との間で情報交換を行うことを目的とする「APECコールフローセミナー」を豪州および開催国の石炭関係機関との共催により1994年から年1回開催している。これまでのセミナーの概要は次項のとおりである。
(4)セミナーの概要
 第1回テーマ「今後の石炭需要と供給の見通し」
   (1994年10月4日〜6日:東京)
 第2回テーマ「中期的な石炭貿易の見通しと環境への影響」
   (1995年12月5日〜7日:中国上海)
 第3回テーマ「瀬間丹と当市石炭、電力インフラおよび技術移転のための地域の投資戦略について」
   (1996年11月26日〜28日:豪州)
 第4回テーマ「変化する石炭市場と将来予測」
   (1997年11月11日〜13日:ハワイ)
 第5回テーマ
   (1999年2月3日〜5日:横浜)
 第6回テーマ「新千年紀における石炭の将来展望」
   (2000年3月13日〜16日:韓国)
 第7回テーマ「発電における化石エネルギーのクリーンで能率的な利用」
   (2000年10月30日〜11月1日:タイ)
 第8回テーマ「21世紀における石炭の持続的な開発」
   (2001年3月4日〜8日:マレーシア)
<図/表>
表1 アジア地域内のエネルギー源別一次エネルギー需要見通し
表2 世界の石炭貿易
表3-1 IEA諸国の石炭貿易見通し(1/2)
表3-2 IEA諸国の石炭貿易見通し(2/2)
図1 世界の石炭生産量と輸出量(2002年)
図2 アジア地域の一次エネルギー需給見通し

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<関連タイトル>
日本の石炭情勢 (01-03-01-01)
コールチェーンとコールセンター (01-03-01-02)
石炭利用技術の新体系 (01-04-02-04)

<参考文献>
(1)資源エネルギー庁(監修):1999/2000資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(1999年1月),p.400-432
(2)資源エネルギー庁(編):エネルギー2004、エネルギーフォーラム(2004年1月21日)
(3)資源エネルギー庁資源・燃料部監修:コール・ノート2000年版、資源産業新聞社(2002年3月)
(4)資源エネルギー年鑑編集委員会(編):2003/2004資源エネルギー年鑑、通産資料出版会(2003年1月)
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