<本文>
1.電力需要の推移と発電電力量
戦後の経済の高度成長に対応して電力需要が急速に増大するなかで、わが国ではこれまで安定的な供給により、電力は経済発展を支える原動力としての役割を果たしてきた。
表1-1及び
表1-2並びに
図1に日本の一次エネルギー供給実績を、
表2及び
図2に電灯・電力需要の推移を示す。過去のエネルギー供給実績及び電力需要の推移をみると、経済成長を反映して需要が増大してきたのみならず、電力の有するクリーン性、安全性、利便性等の優れた特性を反映して、エネルギー供給に占める電力供給の位置付けは増大してきている。
図3に示すとおり
電力化率(一次エネルギー供給に占める電力の割合)は、1970年度に26%であったものが、1990年代後半には40%を超えている。電気事業者による年間発電電力量は、
表3、
図4に示すとおり1975年度の3876億kWhから2002年度の9447億kWhへと大幅に増加した。こうした需要増大への対応と同時に、わが国は1973年(昭和48年)と1979年(昭和54年)の二度の
石油危機を経て、電力の長期安定供給を確保するための基盤整備として石油代替エネルギーへの転換に努めてきた。これにより、電気事業の石油依存度は1975年度の62.1%から2002年度の8.6%へと低下している(
表3及び
図5)。一方、国民生活を支える基礎的エネルギー供給として、送配電ネットワークが全国津々浦々にまで整備され、全国のどこでも電力供給サービスをほぼ同等のレベルで受けられるようになった。また、停電時間の短縮や周波数の安定という点でも世界最高の水準を達成した。
電源構成については、供給安定性、経済性、環境特性等を考慮して、特定の電源のみに依存することなく、多様化の観点からバランスの取れた電源の開発をすることとなっており、2000年度の電源構成は、
水力発電が9.6%、
火力発電が55.9%(石炭が18.4%、
LNGが26.4%、石油が9.2%、その他が1.9%)、原子力が34.3%となっている(
表3参照)。
2.2003年度電力供給計画の概要
2003年度電力供給計画は、電気事業法第29条に基づき、2003年3月末までに、一般電気事業者10社及び卸電気事業者3社から、経済産業大臣に届出が行われた。届け出られた供給計画、電力各社が至近の需要動向、省エネルギーの動向、電源立地の動向、各種燃料の需要・価格動向を考慮し、策定された。2003年度電力供給計画の概要は、各事業者から届け出られたこれらの供給計画を資源エネルギー庁が取りまとめたものである。
2.1 電力需要想定(一般電気事業用)
2.1.1 需要電力量
今後の需要電力量については、至近年における調整期間の終了後は内需を中心とした安定的な経済成長、経済社会の高度化、アメニテイ志向の高まり、高齢化の進展等に加え、電気の持つ利便性・制御性等からの電力化率の高まりを反映して、産業構造の変化、省エネルギーの着実な進展による減少要因を踏まえても、着実に増加していくものと予想されており、2001年度の8241億kWhから、2007年度には8808億kWh、2012年度には9463億kWhとなり、2001年度から2012年度の年平均増加率は、1.3%(気温閏補正後1.3%)となる見込みである。
2.1.2 最大需要電力
今後の最大需要電力については、更なる
蓄熱システムの普及拡大、需給調整契約拡充等の負荷平準化対策の推進により、
年負荷率が改善されることから、最大需要電力は、2001年度の1億7499万kWから、2007年度には1億8180万kW、2012年度には1億9412万kWとなり、2001年度から2012年度の年平均増加率は0.9%(気温補正後1.2%)となる見込みである(
表4、
図6)。
2.1.3 年
負荷率
負荷平準化対策を講じない場合、負荷率の低い業務用電力需要の割合が増加する一方、負荷率の高い産業用需要の割合が減少する等の需要構造の変化により長期的に低下していくことが予想される。これに対し、本供給計画においては、負荷平準化対策として、夏季ピーク時における需要を他の時期・時間帯にシフトすること等を目的とする需給調整(業務用電力を中心とする蓄熱調整契約、産業用の計画調整契約、蓄熱式自動販売機等)の拡大、また、夜間電力を利用した高効率給湯器の普及によるボトムアップ対策等が織り込まれている。具体的には1997年12月の電気事業審議会負荷平準化小委員会(当時)の中間報告を受け、見直し拡充が図られた電力会社における料金制度の多様化・弾力化、奨励金の導入や国における蓄熱空調システム導入促進を目的とする普及・広報等の効果を2002年度計画に引き続き織り込むことより、ピークシフト効果が寄与するものと見込んでいる。この結果、年負荷率は、2001年度の58.1%(気温閏補正後)から、2012年度には58.9%となり、0.8ポイントの改善が見込まれている(
表4、
図7)。(注:年負荷率とは、最大需要電力に対する年平均需要電力の比率をいう)
2.2 供給力の確保
2.2.1 需給バランス
電力は、需要に応じ安定的に供給する必要があり、かつ、貯蔵することができないという特性を有しているため、常に最大需要電力の増加に対応し得るよう電源設備を計画的に開発していく必要がある。電源設備の開発に当たっては、認可出力から定期検査、水力発電の出力減少等を控除した上で、異常高気温、景気変動等の予期し得ない事態が発生した場合においても電力を安定的に供給することができるように、想定される最大需要電力に対して一定の予備力を加えた供給力を確保する必要がある(
表5)。
2.2.2 長期電力需給バランス
供給力は、今後10年間の電源の開発及び供給力の適切な調達により、2007年度には2億0041万kW、2012年度には2億1573万kWの供給力を確保する計画となっている。その結果、最大需要電力に対して、2007年度で10.2%、2012年度で11.1%の予備率を有しており、安定供給が確保できる計画となっている。
2.2.3 電源構成の多様化
電源構成については、非化石エネルギーの中核として原子力の開発を推進するとともに、電源の多様化の観点から、原子力に加え、石炭火力、LNG火力、水力(一般及び揚水)等についてバランスのとれた開発をすることとなっている。また、石炭火力、LNG火力については、地球環境問題への対応及び省エネルギーの推進の観点から、高効率発電方式を採用し発電効率の向上に努めることとしている。さらに、国産エネルギーである一般水力及び地熱発電についても、着実な開発を進めることとしている。
2.2.4 原子力開発計画
原子力発電は、今後10年間で15基1969.5万kWhが運転開始し、2012年度末において6508万kWhなると計画されている。また、2003年度には4基553.0万kWhが
電源開発基本計画への組み入れが希望されている。
3.長期エネルギー需給見通しについて
(2001年7月総合資源エネルギー調査会総合部会/需給部会報告書)
総合エネルギー調査会(2001年1月からは総合資源エネルギー調査会)は、1996年6月策定以降の電力需給等を取り巻く環境変化を踏まえ、長期需給見通しについて再検討すべく、2000年4月に第1回を開催し、以降、省エネ部会、新エネ部会、原子力部会等での検討を経て、2001年7月に報告書を取りまとめた。
発電電力量の見通しについては、
表6下段(発電電力量の推移と見通し)に示すとおり、2010年の基準ケースでは10292億kWh、目標ケースでは9970億kWh程度を見込んでいる。
<図/表>
<関連タイトル>
電源別耐用年発電原価試算(1992年度運転開始ベースでの通商産業省の試算) (01-04-01-03)
平成13年度電力供給計画 (01-09-05-17)
電力需要の変遷と需要構造 (01-09-05-03)
長期エネルギー需給見通し(2001年7月・総合資源エネルギー調査会) (01-09-09-06)
各種電源の特徴と位置づけ(1995年度末) (01-04-01-02)
<参考文献>
(1)資源エネルギー庁(編):エネルギー2004、エネルギーフォーラム(2004年1月21日)、p.165-172
(2)日本エネルギー経済研究所計量分析部(編):EDMC/エネルギー・経済統計要覧2004年版、省エネルギーセンター(2004年2月13日)
(3)資源エネルギー庁:平成15年度電力供給計画の概要、資源エネルギー庁(2003年3月)
(4)総合資源エネルギー調査会総合部会需給部会:報告書〜今後のエネルギー政策について〜(2002年8月)