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<概要>
 原研(現日本原子力研究開発機構)は2月、長年の念願だった高温工学試験研究炉HTTR)の設置許可申請を行った。地球規模での原子力発電に関する情報交換を行うため、世界原子力発電事業者協会WANO)が5月に発足した。情報ネットワークとしては、アジアでは東京が拠点(電中研狛江研究所)となって情報交換を行う。通産省(現経産省)と科学技術庁(現文部科学省)は7月、それぞれ原子力発電所及び核燃料サイクル施設・研究炉の事故・故障をランク付けして発表する制度をスタートさせた。地震の震度などと同様に、事故・故障の大きさを国民にもわかりやすく理解してもらうことに狙いがある。7月パリのアルシュ・サミット及び9月モントリオールの世界エネルギー会議において、原子力発電は、地球環境の面からも経済的で安全な電力を供給する重要な手段である旨の認識が深まった。海外では、米 NRCが4月、に原子力発電所の許認可手続きの簡素化を決めた。また、原子力産業界の再編、国際化が行われた。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1989年
(平成元年)
1/7 東京電力福島第二3号機、再循環ポンプの故障で停止  
1/11   英原子力公社とロールス・ロイス社、小型 PWR 開発で合意
1/12   仏産業相、FBR 実証炉スーパーフェニックスに運転再開を認可
2/10 原研(現日本原子力研究開発機構)、高温工学試験炉(HTTR、熱出力3万kW)の設置許可申請  
中国電力島根2号機、営業運転  
2/11 総理府(現内閣府)、世論調査で「原子力環境問題に関心」が30%  
2/16   仏、西独、英が高速増殖炉開発協定に調印
2/20 政府、ECと核融合協力協定を締結  
2/22 中部電力浜岡4号機着工  
2/28 通産省、東北電力女川2号機に設置許可 米シッピングポート原発、廃棄物撤去終了
3/23 動燃(現日本原子力研究開発機構)東海事業所、MOX燃料 製造累積100トンを達成  
3/24 原研OBによるPA講師派遣グルー  
3/27 日本原燃サービスなど三者、青森市に「原燃合同本社」を設置、三者一体となって核燃料サイクル施設建設を推進するため  
3/30 日本原燃サービス、六ヶ所再処理施設で事業申請。1991年着工をめざす  
4/7   米NRC、原子力発電所の標準化と建設・運転認可を一本化する新規則を承認
4/20   米NRC、ショーラム原発に全出力運転認可
4/28 原研、インドネシア原子力庁とRI生産で協力  
5/5   米NRC、使用済み燃料の乾式キャスク貯蔵許可
5/9 原子力委、核燃料リサイクル専門部会を設置  
5/15 世界原子力発電事業者協会(WANO)モスクワの設立総会で正式発足。138の事業者、団体が参加  
5/16 ウラン濃縮懇談会、原子力委に報告書提出  
5/18 動燃ウラン濃縮原型プラント、第2運転単位(100トン SWU/年)操業開始。第1運転単位と合わせて200トンSWU/年の能力となる  
5/23   国際低温核融合会議(米ロスアラモス国立研究所)
5/26   米原子力規制委、シーブルック原発に低出力運転認可
5/29 文部省、核融合科学研究所(岐阜県土岐市)設置  
6/1   米WH社とアセア・ブラウン・ボベリ(ABB)社、サービス分野で合併会社設立合意
6/6   西独、バッカースドルフ再処理工場設置計画中止を決定
  米カリフォルニア州ランチョセコ原発の閉鎖を求める住民投票で反対派が勝利
6/15 創造学会、常温核融合で発表会、火付役の米ジョーンズ准教授も来日  
6/19 科技庁、大型放射光研究所の敷地を兵庫県播磨学園研究都市に決める  
OECD/NEA 燃料サイクル委、「オメガ」計画を正式決定  
6/22 北海道電力泊1号機、営業運転  
7/10 通産省、原子力発電所の事故・故障のランク付けを行い発表する制度を  
7/12 大阪大、レーザー核融合で世界最高密度の爆縮に成功  
7/16   アルシュ・サミット(主要先進国首脳会議)、温室効果ガス排出を制限する上で原子力発電が重要性な役割を果たすことを明記
7/18 科技庁、核燃料サイクル施設、研究炉の事故・故障のランク付けを行い発表する制度をスタート  
科技庁、マレーシアと放射線利用で協力  
7/20 東京電力柏崎刈羽5号機臨界  
8/1 原研、小型ストレージリングで放射光の発生に成功  
8/3 東北電力女川2号機着工。わが国50番目の商用炉  
8/25 通産省(現経産省)、電源開発など五者会議、大間原発の着工を1993年4月に決定  
9/10 社会党、土井ビジョンを発表、「原発問題でも国民的討議を」  
9/11 総務庁、原研、動燃に「効率的な研究開発を」勧告  
9/14 原子力安全委、原子燃料加工4社の回収ウラン再転換、加工を認める 仏フラマトムと米B&W社、保守業務で合弁会社設立
9/17   第14回世界エネルギー会議(モントリオール)、地球環境の面から電力供給手段としての原子力発電の重要性が高まっていること強調
9/19 科技庁(現文科省)、原子力基盤技術クロスオーバー研究をスタート  
10/9 WANO東京センターを電中研狛江研究所内に設置  
10/16 民社党、永末ビジョンを発表、社会党に原発推進求める  
10/17   米サンフランシスコ近郊で大地震、原子力発電所に影響なし
10/20 原子力安全委、原子力安全白書を発表  
10/25   英スコットランド相、FBR用再処理工場設置計画を承認
10/27 総合エネルギー調査会、長期エネルギー政策で中間報告  
日本原燃産業、六ヶ所村の低レベル放射性廃棄物貯蔵施設で補正申請  
10/30 公明党、石田ビジョンを発表、「電力安定供給めざす」  
10/31 動燃、FBR「もんじゅ」用燃料製造をスタート  
11/1 政府、ウィーンにIAEAの日本代表部を設置 米環境保護庁(EPA)、原子力施設からの放射性核種放出基準を発表
農水省、奄美群島でウリミバエ根絶を確認  
11/9   英、電力民営化計画見直しを公表
11/17 原子力委、原子力白書を発表 米産業界、環境保護庁の放射性核種放出基準に反論
11/21 原研、JT−60で世界最高の電流駆動効率3.4を達成  
11/28   米エネルギー省副長官、高レベル放放性物貯蔵所の計画遅延を公表
11/31 東京電力柏崎刈羽2号機臨界  
12/10 六ケ所村長選挙で、燃料サイクル施設凍結を唱えた土田氏が当選  
12/11 原子力委核燃料リサイクル専門部会、返還プルトニウム海上輸送の方針を決定  
12/19 政府、プルトニウム護衛巡視船の建造を決める 加オンタリオ・ハイドロ社、90万kW級 CANDU 炉10基を2014年までに運転する25か年計画を発表
  全米科学アカデミー/学術研究会議、BEIR−Vを公表


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1989年
(平成元年)
1/7 昭和天皇崩御、皇太子明仁親王第125代天皇の即位  
1/20   ジョージ・ブッシュ氏、米大統領に就任
2/15   ソ連軍、アフガニスタンからの撤兵完了、9年2か月ぶりに幕
2/23 佐賀県吉野ヶ里遺跡に弥生中期の最大級の環濠集落跡見つかる  
3/23   米ユタ大ジョーンズ准教授と英の研究者、簡単な化学反応装置で、室温で核融合反応を達成したと発表
4/1 商品、サービスに消費税3%を課税する税制改革を実施、戦後のシャープ勧告以来の大改革  
5/15   ゴルバチョフ・ソ連最高会議議長、中国を公式訪問(〜18)全面的な関係正常化を宣言
6/4   北京天安門事件発生
8/11 「しんかい6500」、金華山沖の総合海上試験で水深6527mに到達  
8/25   米の無人惑星探査機「ボイジャー2号」、海王星に最接近
10/17   サンフランシスコ一帯で、M7.1の大地震発生。死者65人、負傷者約3000人
11/9   ベルリンの壁崩壊、ドイツ再統一の問題浮上
12/2   ブッシュ米大統領とゴルバチョフ・ソ連最高会議議長がマルタ沖で首脳会談(〜3)東西冷戦への決別を強く印象づける



<関連タイトル>
原子力施設の故障・トラブル・事故の国際評価尺度 (11-01-04-01)
日本における高温ガス炉技術の開発と国際協力 (03-03-06-01)
高温工学試験研究炉(HTTR) (03-04-02-07)
世界原子力発電事業者協会(WANO) (13-01-03-15)

<参考文献>
1.(社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑 平成2年版(平成2年12月15日)
2.原子力委員会編:原子力白書 平成元年版、大蔵省印刷局(平成元年12月25日)
3.原子力委員会編:原子力白書 平成2年版、大蔵省印刷局(平成2年12月15日)
4. 科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産
  業会議(1996年4月26日)
5.読売新聞社(編集発行):読売年鑑 1990年版(1990年3月1日)
6.(財)科学技術広報財団(編集発行):科学技術ジャーナル 平成8年3月号(通巻48号)(平成8年3月1日)
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