<大項目> 国際協力・原子力関連機関
<中項目> 海外の原子力関連機関
<小項目> 民間機関(WANO・UI・ENS等)
<タイトル>
世界原子力発電事業者協会(WANO) (13-01-03-15)

<概要>
 1986年に起きたチェルノブイル原子力発電所の事故後、世界的に原子力発電所情報網の必要性が生じた。これを契機に世界の原子力発電事業者が、相互の切磋琢磨と交流により原子力発電所の運転の安全性と信頼性を高めることを目的に1989年5月、世界原子力発電事業者協会(WANO:World Association of Nuclear Operators)が設立された。WANOは(1)原子力事業者間の運転情報の交換、(2)原子力発電所の運転データの収集と運用、(3)重要事象に関する情報の周知、(4)原子力発電所で発生した事象を分類、解析し、得られた教訓の周知徹底、(5)ワークショップ、セミナー及び技術訪問の実施、(6)会員相互の技術面及び制度面での支援、(7)国際機関との協力などの活動を行っている。組織は、総会、理事会、調整センター、地域センターから構成されている。WANOには、2013年版のチャートによれば、世界の32の国と地域から220の原子力事業者が加盟している。
<更新年月>
2015年08月   

<本文>
1.設立の経緯
 原子力発電にたずさわる者同士が情報ネットワークを作り、互いの経験を交換しあい、その安全性の確保に努めようとする試みは以前から行われていた。例えば、1979年3月に発生したスリーマイルアイランド原子力発電所の事故(スリーマイルアイランド事故)を契機に1979年10月に設立された米国のINPO(Institute of Nuclear Power Operations:原子力発電運転協会)も、その活動の基礎をNuclear Networkと呼ばれる情報交換網に置いている。また、UNIPEDE(ヨーロッパ発送電事業連合)による事業者間の情報交換ネットワークがあり、主として発電所で発生した故障・トラブルについての情報交換を行ってきた。
 1986年4月に発生したチェルノブイル原子力発電所の事故(チェルノブイル事故)を契機として、東側の事業者を含めた全世界的な原子力情報交換組織の設立の動きが起こり、1987年、当時イギリスの中央電力庁総裁であったマーシャル卿により世界原子力発電事業者協会(WANO:World Association of Nuclear Operators)の構想が提唱された。これに基づき、1987年10月、パリに30の国と地域から約130の電気事業者が集まり、WANOの設立のための予備的会議が開催され、その結果、次のようなことが合意された。
 (1)WANOは、直接には政府や国家と関係を持たない原子力事業者による民間組織とする。
 (2)WANOの任務は、互いの運転経験を交換することを中心とする。
 (3)ロンドンに調整センター、パリ、モスクワ、アトランタ及び東京に地域センターを置く。なお、ロンドン調整センターの支所が香港に置かれる。
 その後約1年の準備期間を経て、1989年5月、モスクワにおいて設立総会が開催され、出席した原子力事業者の各代表がWANO憲章に署名してWANOが設立された。
2.目的
 設立の趣旨から、WANOには原子力分野における東西交流を深めるとともに、東側の事業者に対して、必要に応じて手助けをしようという基本的姿勢があり、これは旧ソ連が解体した現在でも基本的な認識として残されている。
 WANO憲章では、会員相互間の切磋琢磨と交流を行うことにより、原子力発電所の運転に関する安全性と信頼性の向上を図ることを目的としており、このためWANOは次の努力を行うこととしている。
 (1)二者間及び多者間における運転情報と良好な運転実績の交換を促進する。
 (2)原子力発電所の運転についてのデータを収集・管理を行い、会員が随時それらを利用できるようにしておく。
 (3)重要事象に関する情報を会員に速やかに知らせる。
 (4)全世界の原子力発電所で発生した事象を分類整理するとともに、解析し、より厳しい事象についてのあり得る先駆事象を特定するとともに、得られた教訓の周知徹底を図る。
 (5)ワークショップ、セミナー及び技術訪問を実施することにより、会員の間に方法論と基準を共有させるようにする。
 (6)会員相互が技術面及び制度面で支援することを援助する。
 (7)IAEAのような原子力発電所の安全性と信頼性の増大を推進している国際機関と密接な協力関係を持つ。
3.WANOの会員権(メンバーシップ)
 WANOは原子力事業者の組織であるから、その会員権は基本的には原子力事業者に与えられる。しかし、単純に事業者単位で会員権を認めると総会における投票権について不都合な点が生ずる。例えば、米国の事業者は合計で60票以上の票をもつのに対し、フランスは国全体で1票ということになる。この点を解消するため、総会において投票権を有する正会員(Ordinary Member)は、原則として1つの国または地域毎に1つとしており、1つの国や地域に2つ以上の事業者が存在する場合は、各事業者は合同会員(Joint Member)とする。
 なお、WANOの地域センターは、賛助会員(Associate Member)として参加することになっており、総会には出席するが投票権は与えられていない。
4.WANOの組織
 WANOは英国会社法に基づく法人である。 図1にWANOの組織を示す。WANOは、正会員による年1回の年次定例総会及び原則として年に3回の理事会が定期的に開催される。しかし、合同会員には年次定例総会へ出席する権利が与えられていないため、WANOでは2年に1回、隔年総会が開催されている。隔年総会では、会員の親睦会的要素もあるが、新会員の憲章への署名、次期総裁及び次期理事会議長の選出など議事があり、また、過去2年間に事業報告及び今後2年間の事業方針なども討議されている。
 WANOの活動の中心は、地域センターであり、パリ、アトランタ、モスクワ及び東京の4カ所に設置され、業務の実施に当たっている。各地域センターはかなり自由にその活動を展開できることになっている。
 さらに、地域センター間の業務の調整を図るとともに、WANO理事会の事務局としてロンドンに調整センターが設けられている。調整センターは、理事会を補佐する形で、全体的な方針の立案に当たるほか各地域センターに共通する事項の調整を行うが、地域センターに指示命令を出す立場にはない。これは、地域センター毎の事情が違うことを考慮して、より実際的で動き易い組織にしたためである。
 WANOの理事は、各地域センターから2名づつ、計8名が選出されている。理事会議長は、理事の中から、あるいはそれ以外から選出される。1997年5月のプラハ隔年総会でINPO会長のザック・ペート氏が就任した。総裁は、2年毎に各地域センターまわり持ちで隔年総会の次の開催地域から選ばれることになっており、2002年3月に韓国のソウルで開催された隔年総会で、フランス電力のPierre Carlier元副総裁がWANO総裁に選出され、7月の総会で関西電力(株)前田肇特別顧問が議長に就任した。その後、W.Cavanaugh III氏(2004-2008年)、L.Stricker氏(2008-2013年)、2013年以降、J.Regaldo氏が議長職にある。なお、2013年以降、会長職にはD.Hauthorne氏が就任している。
5.各地域センターの加盟会員の状況
 WANOには世界を4分する形で4つの地域センターが置かれているが、世界の原子力事業者は地理的位置にとらわれることなく、どの地域センターにも自由に加盟することができる。また、ある国や地域内の別々の事業者が別々のセンターに加盟したり、1つの事業者が2つ以上のセンターに加盟したりすることも自由である。各地域センターにおける加盟事業者の属する国と地域は表1のとおりである。表2に東京センターに属する事業者を示す。
 WANOの会員数については、旧ソ連や旧チェコスロバキアなどWANO発足以後に国と地域が分割されたもの、ドイツのように統合されたものなどがあり、状況は様々で必ずしも原則通りにはいっていない例もあるが、2013年版のチャートによれば、正会員の数は32、加盟事業者数は220である。
6.WANOの主な活動
(1)計算機ネットワークによる情報の交換
 WANOの最も基本的な活動で、全世界を計算機ネットワークで結び、原子力発電所で発生した正常でない事象や運転経験などの情報を事業者間で知らせ合うものである。1997年からはインターネットを介した図2に示すWANOネットワークが構築され、パソコンを用いてアクセスできようになった。
(2)交換訪問(Exchange Visit)
 特定の発電所と発電所の間で、発電所の運転や保修などに直接携わる運転員を中心としたチームが相互に訪問し合い、プラント運転経験などの意見交換を行う。
(3)ワークショップとセミナー
 ワークショップとセミナーは、特定のテーマに焦点を絞って開催されている。通常、地域センター単位で開催されているが、1992年度から年に数回程度、全地域センターのメンバーが集まり、共通の問題についての地域間セミナーが開催されている。
(4)運転指標(Performance Indicators)
 運転指標の活動とは、発電所の安全性、信頼性、プラント効率及び従事者の安全確保などに関する10項目の因子(運転指標、表3)のプラント毎のデータベースを作成し、会員の利用に供する。この情報によって、他のプラントの運転状況を知るとともに、自己のプラントが他と比べてどのようなランクにあるかを数値的に把握することができ、プラントの性能向上を図るのに役立てることができる。
(5)良好事例(Good Practice)の交換
 各発電所には、それぞれが工夫して実施し、良好な実績をおさめた経験があるが、それらを事例の情報交換を行い、プラントの安全性と信頼性の向上に寄与するのに役立てるのが良好事例の交換である。
(6)ピアレビュー(Peer Review)
 ピアレビューは、幅広いプラント経験を有するWANOのメンバーで構成された国際チームが、ある特定の発電所に滞在し、従業員の面接や資料の調査を行って、運転管理等の業務の実施状況などを検査し、評価する活動である。
(7)他事業者への支援
 WANOに加盟している事業者が危機に陥ったとき、その事業者に対し情報供与の範囲内で技術支援を行う。
(8)広報活動
 WANOに関する知識や関心を会員間により広く浸透させ、外部の会議や種々の国際会議などの機会を利用してWANOの活動を紹介する努力を行っている。
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
表1 各地域センターにおける加盟事業者の属する国/地域
表2 東京センターに属する事業者
表3 運転指標
図1 WANOの組織
図2 WANOネットワーク

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<関連タイトル>
チェルノブイリ原子力発電所事故の概要 (02-07-04-11)
原子力発電運転協会(INPO) (13-01-03-10)
世界原子力発電事業者協会(WANO)の活動 (13-01-03-16)

<参考文献>
(1)世界原子力発電事業者協会東京センター(編):WANO概要,世界原子力発電事業者協会東京センター(1994年9月)
(2)世界原子力発電事業者協会東京センター(編):WANO概要,世界原子力発電事業者協会東京センター(1997年7月)
(3)WANO(編):What is WANO?,WANO(World Association of Nuclear Operators)
(4)WANO:Fact Sheet ”WANO Ordinary Members”,WANO(January 1997)
(5)WANO東京センター:http://www.wano-tc.or.jp/
(6)WANO:http://www.wano.info/en-gb
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