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<概要>
 第2次石油危機以後、経済安定成長時代に入ったこともあってエネルギー需要の見通しが、以前に比べかなり下方修正される事態になった。そうした中にあっても、原子力発電は電力供給の中核的な役割を担うものとして、通産省(現経産省)総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)は4月に1985年度の目標を4600万kwとした。原子力委員会は、6月に新たな原子力開発利用長期計画を策定し、その中でウラン濃縮再処理などの実用化移行段階を迎えたプロジェクトは、民間が中心になって実用化を目指すという方針を打出した。人形峠のウラン濃縮パイロットプラントでは、3月に第2運転単位(OP-2)の3000台の据付けを終え、運転に入った。OP-1と合わせて7000台の規模となり、それは100万kw発電所の年間ウラン所要量の半分をまかなう能力に相当する。このほか、5月にFBR 原型炉もんじゅ」の建設計画が閣議了解された。9月には原子力船「むつ」が4年ぶりに大湊に入港した。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1982年
(昭和57年)
1/14 動燃(現日本原子力研究開発機構)東海、プルトニウム・ウラン混合酸化物燃料製造累積量50トンに  
1/18   仏で建設中の高速増殖炉実証炉スーパー・フェニックスにロケット砲弾
1/20 電気事業連合会、FBR原型炉「もんじゅ」建設の1975年度分担金として37億円の拠出を決定  
1/25 東北電力、巻原発の設置許可申請  
1/26 通産省(現経産省)、原電敦賀2号設置許可  
1/27 科学技術庁(現文部科学省)長官、ATR 実証炉検討を民間に正式要請  
2/1 三菱重工、APWR事務所を開設。米WH社・関西電力など5社参加  
2/11   米NRC、原子力発電所の安全目標に関する政策声明発表
2/17   西独政府、カルカール高速増殖原型炉(SNR-300)の建設継続を決定
2/22 動燃、FBR原型炉「もんじゅ」の安全性に関する地元説明会開く 米バッテル・パシフィック・ノースウェスト研、PWR用蒸気発生器伝熱管破損問題で5カ年試験計画開始
3/2 中川科技庁(現文科省)長官、北海道幌延町が低レベル放射性廃棄物の陸地貯蔵施設を誘致していると発表  
3/4   米TVA理事会、イェロークリーク1号(CE社製 PWR)、ハーツビルA1、2号(GE社製 BWR)の建設を無期延期
3/5 新日豪原子力協定調印。8/17発効 米 NRC、クリンチリバー増殖炉計画向け敷地整備工事申請を否決
3/16 原子力委廃炉対策専門部会、「原子炉の廃止措置について」の報告書をまとめる  
3/19 四国電力伊方原発2号機、営業運転開始  
3/26 動燃、ウラン濃縮パイロットプラン  
3/31 原研(現日本原子力研究開発機構)JT‐60用中性粒子入射加熱装置、高エネルギーのイオンビームを、10秒間発生に成功  
4/20 東京電力福島第二原発1号機、営業運転開始  
4/21 総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)、長期エネルギー需給見通しを発表。1979/8の見通しを下方修正し、1985年度原子力4600万kWに  
中央電力協議会、1981年度の原子力発電量が初めて、水力発電量を上回ったと発表  
4/28   仏、高速増殖炉原型炉フェニックスの蒸気発生器1台で発火事故
4/29   米上院、放射性廃棄物法案を可決
4/30   DOE、新ウラン濃縮技術開発で原子蒸気レーザー同位体分離法を選定(AVLIS、ローレンス・リバモア研が開発)を選定
5/7   米で古いPWRの圧カ容器の熱衝撃が問題になり、議会が公聴会
5/14 閣議、FBR原型炉「もんじゅ」の建設を了解  
5/24   米上院マクレーア議員ら「エネルギー省廃止法案」提出
6/2   米NRC、許認可改善案「1982年原子力標準化法案」を公表
6/3 京大核融合研究センター、ヘリオトロンE装置で1500万度、40ミリ秒のプラズマの長時間閉じ込めを達成  
6/4   米レーガン大統領、再処理・プルトニウム利用基本政策に署名承認
6/8 全国原子力発電所所在市町村協議会、公開ヒアリングの運営改善を要求  
6/16 電気事業連合会、ATR実証炉の建設方針を決定、建設主体は電源開発が適当と判断。6/29電源開発は受諾  
6/30 原子力委、原子力開発利用長期計画を決定  
7/2 FBR原型炉「もんじゅ」の第2次公開ヒアリング開く  
7/16 九州電力の玄海3、4号機の第1次公開ヒアリング開く  
7/30   米NRC、クリンチリバー高速増殖炉の最終環境影響声明書補足案発表。8/5サイト整備工事許可
8/1 原子力工学試験センター、多度津工学試験所を設立  
8/4   米下院エネルギー商務委、廃棄物法案を可決
8/12 通産省、新型PWR開発計画を第3次原子力発電改良標準化計画に組み入れることを決定  
8/20 ATR実証炉建設推進委員会、資金分担、建設スケジュールなどで基本的に合意8.30科学技術庁、原子力船事業団、青森県、むつ市、青森県漁連の5者、原子力船「むつ」のむつ市大湊港への入港条件で合意、調印。9/6約4年ぶりに入港  
8/29 原研、日米共同実験で米GA社の核融合試験装置「ダブレット3」を使って、トカマク炉で世界最高のべータ値4.6%を達成  
8/30 関西電力、改良型PWR(APWR)開発で、北海道電力・四国電力・九州電力・原電・三菱重工・米WHの各社と共同研究契約結ぶ  
9/10 日加原子力協定(改訂)に仮調印  
10/4 原研、多心型ニオブ・スズ化合物の導体を使った大口径超電導コイルで10テスラの高磁界発生に成功  
10/5   仏、高速増殖炉実験炉ラプソディーの解体撤去を決める
10/19 九州電力の玄海1号機、わが国の軽水炉として、最長の367日間の連続運転記録を達成  
10/20   仏CEA及びEDFとフラマトム社、米WH社、PWR研究開発協カ協定調印
  国際プルトニウム貯蔵制度の検討を行っていたIAEA 専門家グループ、4年間の作業をまとめ報告書作成
  IAEA国際プルトニウム貯蔵専門家グループ最終報告まとめる
10/25 原研、古河電工と共同で難燃性と耐放射線性をもつ電線ケーブルの試作に成功  
10月 原研大阪支所、放射線グラフト重合によるポリエチレンの耐熱性の向上に成功  
11/8 原子力安全委、新潟県及び柏崎市に第2次公開ヒアリングの改革案提示  
11/9 米NRC、ハリスバーグでTMI1号運転再開に関する公聴会(大半が反対)  
11/18 四国電力伊方3号機第1次公開ヒアリング開く  
11/25 原子力安全委、第2次公開ヒアリングの実施方法として文書による意見聴取方式の採用を決定  
11月 旭化成、化学交換法によるウラン濃縮実験開始(宮崎県日向市)  
12/1 原研、廃棄物安全試験施設で高レベル放射性廃棄物のガラス固化ホット試験開始  
12/2   米下院、放射性廃棄物法案を可決
12/9 原研、JPDRの解体届を提出  
12/15 動燃、高レベル放射性物質研究施設で実廃液のガラス固化のホット試験開始  
12/16   仏フェニックス高速炉の蒸気発生器で一次冷却系ナトリウムの小規模漏れ発生。1983/2にも同様な事故起る
12/20   米議会、クリンチリバー高速増殖炉の1983年度予算承認
12/24   米プリンストン大の核融合試験装置TFTR、初のプラズマ生成に成功


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1982年
(昭和57年)
3/22   米議会上院の核問題公開討論会で、広島の被爆者4人が証言
3/25 環境庁(現環境省)、大隅半島志布志湾の石油備蓄基地計画に同意表明  
4/2   フォークランド紛争起る
4月 1982年度より高等学校教育課程社会科に「原子カの活用」の項、登場  
4/9   西独、各地で反核・平和の復活祭大行進、48万人参加(〜4.12)
4/23 閣議、1990年度の石油代替エネルギー供給目標を決定  
5/1   米でエネルギー博覧会開幕(ノックスビル)
6/6   第8回主要先進国首脳会議(ベルサイユ・サミット)、自由貿易などの宣言採択
6/12   ニューヨークで100万人国際反核デモヘと続く
6/23   IBM機密情報不法入手事件.米で日立・三菱らの社員逮捕される
10/10   ソ連ブレジネフ共産党書記長没.後任アンドロポフ書記
12/8 産業構造審議会、構造不況の基礎素材産業の構造改善促進を提言  
12/9 科学技術会議、カナダと共同して北極輸送路の技術開発を行うことを決める  


<関連タイトル>
石油危機と世界 (01-06-01-01)
石油危機と日本 (01-02-03-04)
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の開発(その1) (03-01-06-04)
原子力船「むつ」の概要 (07-04-01-02)


<参考文献>
1.森 一久編:原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
2.原子力委員会(企画)、原子力開発三十年史編集委員会編:原子力開発三十年史、日本原子力文化振興財団(昭和61年10月26日)
3.森 一久編:原子力は、いま(下巻)−日本の原子力平和利用30年−、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
4.科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)


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