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<概要>
 エネルギー問題の国際化が認識されるようになり、消費国間の協力は、前年の国際エネルギー機関の設置に続いて、11月にはエネルギー問題を主要議題とした第1回先進国首脳会議(サミット)の開催へと進んだ。1月に通産省(現経産省)及び科技庁(現文科省)の指示によるBWR 非常用炉心冷却設備配管の一斉検査で、米国で起ったと同様な応力腐食割れによるクラックが追認されるとともに、故障も相次ぎ、その対応に追われることになり、原子力発電の稼働率は低下した。一方、反対運動はとみに気勢が上がり、地域の市民団体、消費者団体、原水禁の諸団体が反原発市民連絡会議を結成、タンプリン博士らを招いて国際連帯への動きも見せるようになった。総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)は7月に、原子力開発目標を1985年4900万kwへ下方修正した。同じ7月、原子力委は、核融合研究の第2段階計画を策定し、国家プロジェクトとした。ソ連の臨界プラズマ試験装置トカマク-10が6月に運転開始した。


<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)


<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1974年
(昭和49年)
1/7 東京電力福島第二原発1号機設置反対派住民、設置許可取消しを求める行政訴訟を福島地裁に提出  
1/8 美浜2号、蒸気発生器の故障で運転停止  
1/13   OECD、長期エネルギー見通し発表。1985年の原子力発電設備7億kWを予測
1/17   西独ウイル原発着工(1/18反対派住民ら敷地内占拠、州政府が実力で排除。1/24州政府、着工延期を勧告)
1/19   AECを廃止、エネルギー研究開発局(ERDA)と 原子力規制委員会(NRC)発足
1/21   カナダ政府、インドヘの原子力機器、特殊核物質の輸出を禁止
1/22 高浜1号、タービン故障で運転停止。2/10運転再開  
1/28 九州電力玄海1号臨界(PWR、55万9000kW)  
1/29   米NRC、国内のBWR23基に対し非常用炉心冷却設備バイパス配管のクラックの点検を指示
1/30 通産省(現経産省)と科技庁(現文科省)、BWRの非常用炉心冷却設備の配管クラックに関する点検を指示  
2月   米ERDA、民間ウラン濃縮プロジェクト委員会を設置
2/25 政府、原子力行政のあり方を再検討するため原子力行政懇談会を設置(首相の私的臨時諮問機関、有澤廣巳座長)。3/18初会合  
2/27 電源3法に基づく初の電源立地促進対策交付金、福井、福島、愛媛3県に交付  
3/6   米NRC、BWR23基の非常用炉心冷却装置バイパス配管クラックの点検結果を発表(23基中21基は異常なし、うち17基はすでに運転再開)
3/17 電源関発調整審議会、東京電力福島第二原発1号(110万kW)と四国電力伊方原発2号(56万6000kW)を認可  
3/19   韓国、核拡散防止条約を批准
3/20 東京電力、柏崎刈羽原発の設置許可を申請  
3/22   西独フライブルク行政裁判所、ウイル原発建設の一時停止を命令
3/22   米ブラウンズ・フェリー原発のケーブル室で火災事故。1号及び2号機が運転停止
4/7   南ア連邦、ジェット・ノズル法によるウラン濃縮パイロット・プラントの運転に成功
4/15 政府、総合エネルギー対策閣僚会議(座長三木首相)の設置を決定  
4/21 原研(現日本原子力研究開発機構)、機構改革.動力炉開発・安全性研究管理部、安全性試験研究センター、核融合研究部など新設  
4/25 政府、核拡散防止条約(NPT)批准承認案を国会に提出  
4/30   米NRCが軽水炉からの被曝線量設計目標値を決定(気体放出物からの個人全身被曝線量は、年間最大5ミリレム)
5/5   ジュネーブで核拡散防止条約再検討会議はじまる(〜5/30)
5/13 原子力委員会、発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値をALAPの精神に則して全身被曝線量で年間5ミリレムに設定すると発表  
5/28   米ローレンス・リバモア研、レーザーによるウラン濃縮実験に成功
5/31 四国電力、伊方原発2号機(PWR、56万6000kW)の設置許可申請  
6/4 反原発団体の招きで、米のタンプリン博士来日  
6/6 東京電力とデニソン・マインズ社のウラン鉱購入契約、カナダ政府認可  
6/7 原水禁など、反原発市民集会開催  
6/10 玄海原発で蒸気発生器伝熱細管の損傷で放射能漏れ  
6/11 原子力委、むつ問題と原子力船むつの開発計画に関する見解を表明  
6/13 通産省、福島第一原発2号機の燃料チャンネル・ボックスに損傷ありと発表  
6/19 政府・自民党、核防条約の第75通常国会での批准見送りを決める  
6/20   米ERDA、ウラン濃縮サービス料金引き下げ
6/26   フォード米大統領、民間のウラン濃縮事業進出を認めるよう議会に要請
6/29   ソ連クルチヤトフ原子力研の核融合研究装置「トカマク」が運転開始
6/30 原産原子力船懇談会、第2船開発は政府主導の方向打出す 米の高速増殖炉計画、ERDAのエネルギー研究開発計画案の最優先項目から外される
6/30 原研の原子炉安全性研究炉NSRR臨界(TRIGA型、パルス運転可能)  
6月   米連邦控訴院、ベイリー原発建設禁
7/4   IAEA大型トカマク実験専門家会議(ドブナ、〜7/10)
7/12 総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)需給部会、長期エネルギー計画で原子力の開発目標を1980年度1660万kW、1985年度4900万kWに下方修正  
7月   米ERDA、原発建設計画の遅れに対応し濃縮サービス契約条件を変更
7月   米下院、ERDAのクリンチリバー高速増殖炉計画を承認
7/29 原子力委、原発安全審査資料(商業機密を除く)の公開を決める  
7/31   原子力委、核融合研究の第2段階計画を策定し、ナショナル・プロジェクトとする
8/5 科学技術庁(現文科省)、動燃(現日本原子力研究開発機構)再処理工場の海中放出管に関する異議申立てを棄却  
8/6   仏政府が軽水炉開発をPWRにー本化することを決定
8月   ハリス・アソシェーツ社の原発建設に関する米国民世論調査、賛成63%
8月   仏の原発建設世論調査、賛成55.5%
8/17   米商務省がNPT未批准国への原子力機器24品目の輸出規制を決定
9月   米で130万kW級PWR着工(WH製、サウステキサス原発1号、2号)
9/4 原子力白書、2年ぶりに発表される  
9/9 関西電力が福井、京都など6府県漁連と高浜原発の安全協定結ぶ  
9/23 原子力委、むつ開発計画の推進施策を決定  
9/27 海外ウラン資源開発会社、仏原子力庁及びニジェール政府とアファスト地区で共同探鉱開発を行うと発表  
10/6 動燃再処理工場のウラン試験に一部住民が行政不服審査法に基づき異議申立て  
10/15 九州電力玄海1号、営業運転開始  
10/30   米NRC、ラスムッセン調査最終報告書(WASH−1400)を発表
11/11 原子力委、核融合会議設置 米最高裁、ベイリー原発の建設許可取り消し命令(4/1シカゴ控訴院決定)を棄却
11/14 関西電力高浜2号、営業運転開始  
11/19   西独グンドレミンゲン原発、バルブ修理中冷却材噴出事故
11/25   むつ総点検・改修技術検討委員会、原子力船事業団の遮蔽改修計画は妥当との結論出す
12/4   米マサチューセッツ州原子力モラトリアムに関する署名運動、法定署名数が選られず不成功
12/15   米トロージャン原発1号臨界(PWR、110万kW級)
12/19 総合エネルギー対策閣僚会議、「総合エネルギー政策の基本方向」を決定。石油依存低減、原子力傾斜開発へ  
12/28   米NRC、原子炉規制局機能の強化のため機構を改革
12/29 原子力行政懇談会(有澤廣巳座長)が「原子力行政体制の改革、強化に関する意見」をとりまとめ、首相に提出  
12/30   仏CEA、フラマトム社、EDFと米WH社の4者が仏原子力産業再編に関する協定に調印


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1974年
(昭和49年)
3/10 新幹線、岡山−博多間開通  
4/25 総合エネルギー対策閣僚会議開く  
4/30   ベトナム解放
6/5   スエズ運河、8年ぶりに再開
7/11 私立学校振興助成法公布(大学・高専の経常費の半分までを国庫補助可能とする)  
8/15 総合エネルギー調査会総会「1975年代エネルギー安定化政策−安定供給のための選択」について中間答申  
8/26 東京女子医大、日本で初めて、X線コンピュータ断層撮影(CT)開始  
10/14 経団連、研究開発推進に関する意見を発表。民間負担分を減らし国の負担増を要請  
10/31 新日本製鉄、減産のため室蘭製鉄所3号高炉の操業を11月下旬より停止  
11/15   第1回主要先進国首脳会議(サミット)開催(フランス、ランブイエ城)、日・米・仏・英・伊・西独の6か国参加
12/1 東京外国為替市場でドル相場高騰。12/31ドル = 306円85銭に下落  
12/12 経団連ほか9経済団体、経済政策運営に関する緊急意見を政府・自民党に提出。不況脱出の積極政策を要望  



<関連タイトル>
わが国の試験研究用および開発中の原子炉一覧(2003年12月) (03-04-01-02)
核融合研究開発の経過 (07-05-01-03)
核融合反応装置の形式と作動原理 (07-05-01-05)
原子力船「むつ」の安全性 (07-04-02-01)
核兵器不拡散条約(NPT) (13-04-01-01)


<参考文献>
1.森 一久編:原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
2.原子力委員会(企画)、原子力開発三十年史編集委員会編:原子力開発三十年史、日本原子力文化振興財団(昭和61年10月26日)
3.森 一久編:原子力は、いま(下巻)−日本の原子力平和利用30年−、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
4.科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産
  業会議(1996年4月26日)


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